- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050379
感想・レビュー・書評
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文章の感じ好きなんだけど、労働争議の熱気があまり感じられず、思想の対立の割には浅く物足りなかった。
あっさり読み終わった。 -
三島由紀夫後期の娯楽小説.言葉の(無駄とも言える)豊かさは感心するが中身の深さに結びついていかないのが虚しい.
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参考になる論文
・『絹と明察』・『月澹荘綺譚』・『天人五衰』--認識を越えるものの表象について 柳瀬 善治
・三島由紀夫論 駒沢とコミュニティの関わりについて 九内 悠水子
1、風雅
風雅と道話、思想と金儲け、青空と蠅の番い、ふたつがぴったり合っているように見えた駒沢、戦時中はふたつが合っており社会の表に出ていたが今では引っ込んでふたつは合わないと思っている岡野。
2、事業
3、賞罰
ハイデッガーの実存について
聖戦哲学研究所を開いた岡野は、戦死者を愛らしく親しみがあると感じ祖国ということばのパセティックな響きや杉の香のようなものが好きだった。
岡野のあいまいな破滅的な野心と詩がはためいていた。誰も恨んでも愛してもいなかったが、ただ無意味な根深い公明正大な情緒の持ち主(駒沢)はこなごなにしてしまいたかった。
岡野は、大槻に向かって「父親なのに直接話したことがないのか?駒沢高校は体のいい労働力提供機関だ」と言い睨む大槻の目を「いろいろな感情の板挟みになりながら、なお烈しい解放の欲望に憑かれてあがいていた。もうちょっとで本当のことを叫び出す目であり叫び出したら破壊の喜びへまっしぐらに駆け出す目だった、しかもいかにも悩ましい憎悪の裏に性欲が赤く灼けている目だった。」と高く評価した。
4、家族
駒沢は妻の性格を代行する。
駒沢は、ある感情を自分のうちに信じる時それがどんなに不自然なものだろうとその感情はすでに彼のものなのだと房江は知っている。
めづらしく房江に心のやましさについて語る。
房江に意見を求め安心させてもらいたい。
それは、若い2人が率直な進言、父に対する甘え、会社への意見を言った結果、秩序を乱した罰を与えた。これは愛の鞭であって、自分は家長として間違っていなかったことを信じたくて。
この話に房江は、あんたは正しいと言う。
駒沢は心安らかになり、自分の善意の一等信頼できる反響版である。
ひそかに怖れている自分の善意に対する世間の無理解無反響をくつがえしてくれた。
彼の善意はかなりわかりにくく彼自身にとってもわかりにくいその善意を高級なものだと信じるようになったのは自然である。
そう言った夫婦の馴れ合いによって、美しい家庭の夢を語った。
房江は反対し、駒沢の一等触れたがらない戦死した息子(養子)について話し出した。 -
琵琶湖のほとりに絹糸製造の会社を運営する駒沢善次郎は
「社員みな家族」をモットーに急成長を果たしたことで
まるで神様のような尊敬を集めていたが
その内実は
貧しい若者を囲い込み、洗脳し
厳しい規律でがんじがらめに縛り付け、生産性の向上をはかるという
非人間的なものであった
まるで戦時中を思わせるそのやり口は
いろんな意味で、内外からの密やかな反発を招いていた
戦前、フライブルグでハイデガーの薫陶を受けた岡野という人物も
駒沢善次郎への敵意を隠し持つひとりだった
善意の仮面をかぶり、人に近づくフィクサー岡野は
数滴の毒を落とし
自らの手を汚すことなく、駒沢を破滅へと導いた
しかし、にもかかわらず
すべてが終わったとき彼は
天皇主義に基づく純粋な善意の人、駒沢善次郎への畏れを
新たにするしかなかった
おそらくは世界人類滅亡の夢を抱いている岡野にとって
駒沢の示すヒューマニズムこそ最大の障壁となろうから -
初読の感動が、今回なかった。実在の労働争議をもとに、ブラック企業の社長を描いた。相変わらず、三島の女性像は滑稽極まるが、本当にいそうで怖い。
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近江絹糸の労働争議を題材にした作品。日本古来の家父長的企業の経営者と改革を図る若者。会社の転覆を図る第三者、社長夫人、愛妾、それぞれの異なった欲望、思惑が錯綜する。2018.5.11
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東洋も西洋も関係なく、資本家は労働者を搾取するんじゃ〜!
岡野も大槻も駒沢と何ら変わらんのじゃ〜〜!
とてもスラスラ読めました。 -
今まで読んだ三島作品のなかでは二番目くらいに好き。
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長かった。
家族主義の名の下に過酷な労働条件で従業員を働かす経営者の話。
そして、従業員を巧みに誘導して、
会社を乗っ取るフィクサー。
従業員、経営者、フィクサー、それぞれに思惑や狙いがあったのだけれども、この話の本筋はいったいどれなんだろうという感じがしました。
一つの状況を俯瞰で進めていく中で、
話の本筋がわからなくなりました。
難しい。。
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