愛の渇き 新版 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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感想 : 36
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  • 本 ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050423

感想・レビュー・書評

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  • 三島由紀夫文学忌、憂国忌

    ほんと“憂国忌”ってかっこいい
    今年は山梨の三島由紀夫記念館に行きたいなと思っていたけど叶わず
    来年は生誕100年記念展が予定されているようですので、春を待って行こうかな

    1950年の作品だから、もうネタバレでもないですから、ちょっとだけあらすじを

    主人公の悦子は、夫を病気で亡くしていた
    夫の生前は、度々の不倫に苦しめられた
    夫は、その嫉妬を楽しんでいたようである
    悦子は、舅の別荘的な農園へ身を寄せる
    そこには夫の兄夫婦、若い雇用人の男女が
    同居していた
    妻を亡くしていた舅は、悦子と関係を持ち
    悦子は若い雇用人に惹かれて
    その雇用人の男は、同居の女中と恋愛中
    愛に渇いた女が再び嫉妬に翻弄されていく

    新潮社の紹介では「犯罪小説」となる
    この家庭内恋愛関係の果てが、驚きの結末を迎え、ラスト数ページで犯罪小説となるのです

    これも新解説が追加されていて、
    芥川賞の石井遊佳さん
    なかなかの三島由紀夫愛を語る
    新潮文庫のオレンジ色の背表紙の連続が読書史の
    原点とのこと
    ですよね、って思う
    オレンジ連続しますよねと、うなづく

    石井さんも書かれているのだけれど
    この小説もなかなか美文名文の連続から始まる
    ほぼほぼ、三島小説の難解熟語はイメージ読みで流すのですが
    ー驟雨が沛然と落ちていたー
    おおよそ ふったらどしゃぶり かな
    この一文は、記憶に残りました





    • 1Q84O1さん
      とりあえず便乗しておこう
      (´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      とりあえず便乗しておこう
      (´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      2024/11/26
    • yukimisakeさん
      ヤンマガwebで連載中のやつですね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      ヤンマガwebで連載中のやつですね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
      2024/11/26
    • おびのりさん
      皆さんお涙ありがとうございます

      そうです、それだと思います
      私達は、当然にして 7巻まで紙タイプで
      保存しております
      そして、以前、井上佐...
      皆さんお涙ありがとうございます

      そうです、それだと思います
      私達は、当然にして 7巻まで紙タイプで
      保存しております
      そして、以前、井上佐藤の10ダンスの原画展を
      ヴァニラ画廊へ見に行ったのです
      めっちゃ 怪しくて一人で入るの怖かったです笑
      もう平気だす
      2024/11/26

  • 三島再読シリーズ。

    三島由紀夫は本当に女性が恐かったんだろうな、というのがわかりすぎるくらいわかる小説。

    主人公の悦子は夫の度重なる浮気に悩まされた挙句その夫を病気で失う。
    田舎の夫の実家に引き取られてからは舅の性的欲望の対象となる。
    戦争直後の貧しい時代だ、こういうこともままあったのだろう。

    その彼女が屋敷に住み込む庭師の若者、三郎に惚れてしまう。傍若無人なまでの若さに惹かれる悦子の心理を描く三島の筆は鋭く、ゆえにああこれだけ女性の内面をあれこれ考えていたら、あの繊細でコンプレックスの塊だった三島は到底女性との恋愛には耐えられなかったろう、そんなことを感じた。

    「三郎は人間がいつでも誰かを愛さないなら必ず他の誰かを愛しており、誰かを愛しているなら必ず他の誰かを愛していないという論理に則って行動したことがたえてなかった」(p248)。

    三郎は異性関係を性欲の範疇でしか捉えられていない。この単純さ。それはつまり、若いから。
    一方で、異性との心の通いあいを通じて、今ここにある人生の完全な充足を期待する悦子。なんという圧倒的な乖離だろうか。

    悦子はかわいそうだ。
    しかしこんなものを書いてしまう三島も三島だ。
    ぼくは自分に自信がなくて女性と向き合えないんです。そういう告白小説だよなあ。

  • テーマが凡庸でもソロが充実している場合、ジャズでは「名曲」と呼ばれる。「愛の渇き」はそれに似ている。言葉の操り方に惚れぼれしてしまって、それだけでもう満足させられてしまう。

  • 愛と幸福の関係は複雑だ。
    愛を求める渇望は、時に逆説的な(不幸を求める)形となって現れてくる。
    幸福を感じるためには、退屈というものを知らなければならない。愛を知るためには、苦悩を必要とする。
    だから悦子は、忠実で、忍耐強く、執拗と言っていいくらいにそれらを受け入れる。
    しかし、受け入れすぎた故に、目前に迫った幸福を受け入れることができない。それを受け入れると、残されるものが何も無いから。
    渇望を、渇望したまま生きていくしかない一人の女を、生々しく美しく描ききった三島は、やっぱり天才なのだと思う。

  • 悦子は不倫ばかりする夫が腸チフスにかかり、甲斐甲斐しく世話に励んだが夫は亡くなり、舅の弥吉の別荘に住むことになる。弥吉と体の関係を持つようになり、その一方、若い庭師・三郎へ寄せる想いがどんどん狂気のような嫉妬に変わっていく。

    三島の文章は独特で慣れるのに時間がかかったが、その文章が癖になっていく。

    悦子の気持ち、ちょっと分かるなぁ。身寄りがなく、どこにも行くことができない袋小路でどん詰まりの女性。三郎は無邪気。まだまだ少年。悦子はその命の煌めきに惹かれてしまった。

    意外と共感できるのは弥吉かな。寂しいお爺ちゃん。実際にこんな行動するお爺ちゃんは気持ち悪いけど。

    当初のタイトルは黙示録<大淫婦の章>の「緋色の獣」、主人公・悦子はまさしく真っ赤な獣、究極の拗らせ女子だった。

    偶然読むことになったけど、舞台(豊中市)が地元近く。三島が書く故郷・大阪。今、これを書く、書ける作家はいないでしょう( *´艸`)

    「大阪の町というものを、(中略)ー紳商の、ルンペンの、工場主の、株式仲買人の、街娼の、阿片密輸業者の、勤め人の、破落戸の、銀行家の、地方官の、市会議員の、義太夫語りの、妾の、しまりやの女房の、新聞記者の、寄席芸人の、女給の、靴磨きのこの都会にー」(P5~6)

  • 読了して感じたことは、愛の渇きとは言い得て妙だな、と。
    亡き夫は女遊びに耽り家に帰らず。そしてやがて腸チフスで死ぬ。
    その時から悦子の渇きは始まっていたのではないか。
    ここまで人に対して嫉妬出来るって、そのエネルギーがすごい。
    亡き夫に対する殉死ではなく、亡き夫に対する嫉妬への殉死。

    亡き夫の実家へと身を寄せた悦子が惹かれるのは、三郎と言う少年とも言える年齢の庭師。
    この庭師の内面が、クライマックスにかけて変わっていくシーンが凄かった。
    そしてカタストロフ的な終わりを迎える。

    異常とも思える悦子の言動は終始"嫉妬"と言う感情によってもたらされているが、この心の動きは、悦子にとっては当たり前のことなんだろう。

    人を愛したい、そしてその人に愛されたいと言う気持ちが、女の気持ちをここまで持っていくとは。

  • 比較対象がいることで普通だと思ってたことが、満たされなく感じてしまう。

    不幸スパイラルにはまるとその分の振り幅で幸せが欲しくなる。

    ささやかな幸せでいいのにね。

    この人、現代に生きてSNSでも見てたらもっと狂うと思う。

  • (2023/07/14)

  • メンヘラ悦子の騒動記。

    再読。悦子の三郎に対する屈折した愛の渇望の描写が兎に角素晴らしい。縦横無尽に的確な修飾語を操り、読み手の想像の斜め上を行く感情変化と行動が、非現実的なあまりある面では人間の本質はこちらにあるのではないかと思わせる説得力がある。この深淵かつ静かなる激情の愛憎劇を24歳のとき書き上げた三島由紀夫の才能は恐ろしいものである。

  • 夫の浮気からによる発狂のすえ

    うまく読み込めなかった気がするから変なこと言わないでおきます

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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