禁色 新版 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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本 ・本 (720ページ) / ISBN・EAN: 9784101050430

感想・レビュー・書評

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  • 禁色に☆5の評価をしたからと、ひまわり高級化粧箱入めろんさん、私の本棚をそんな目で見ても、禁色の事は、嫌いにならないでくださいっ。
    十月の私の課題図書であったような本作品。たっぷり一月かけて堪能しました。全編、連載物でありながら、美文・寂文(調べないで下さい。調子にのって造語しました。)であり、煌めくボキャブラリーの広さと濃厚さ。

    老作家・檜俊輔は、作家としての名声もあり、知識人としての地位もある。加えて、自由になる資金も持ち合わせていた。無いものは、美貌。
    彼は、大理石の肉でできたような(作中表現のまま。その他、この青年の賛美の表現は小説を手に取ってご確認ください。)美貌の青年、南悠一と知り合う。そして、青年は老作家に女性を愛せない苦悩を告白する。
    老作家は、自分の青年期からの醜貌の為、数度、女性に裏切られてきた。その復讐を、青年を利用して果たそうと密約を交わす。
    檜と出会うまで、その性向から孤独であった悠一は、勧められて、愛する事のできない女性と結婚する。そして、自ら、その同族世界に足を運ぶようになる。作家が、復讐を企てた女性達はもちろん、その良人や、彼の友人達、当然その世界の人々、全て彼の美貌に支配されていく。
    資金ある物は、その力で、我が物にしようとする。美しき女達は、決して愛されずとも、良き理解者であろうとする。
    どうしたらこの甘美さが伝わるかと思っていたのだけれど、後書の後書きで、フランス文学者という森井さんが「気絶するほど悩ましい」と評していた。
    彼は、学生服時代、読んで途中で嘔吐したらしいです。この作品を擁護する訳ではありませんが(もちろん、ありますが)現代のBLコミックの様な表現はございません。ただ、彼らの隠しても隠しきれない視線の絡み、理解しあった時の刹那の心情が、文学として表現されているだけです。

    果たして、檜は、自分の策の中、悠一を愛してしまう。32章は、檜俊輔による「檜俊輔論」となるのだが、この章だけで、文学論的短編となりそうなのだ。彼の作品として、短い作中作が何編か投入されていく。どれも素晴らしい小品ですが、「仙人修行」という作品が秀逸。
    最後は、大団円というタイトルで、二人の別れが書かれている。檜は、存在として悠一を愛してしまった。愛されているという意識は、残酷さを伴う。檜は、真っ当なクズを世に送り出してしまったのかもしれない。
    三島は、檜と悠一に、自分に存在する複数の側面を表現したのか。彼の求める美しさの象徴なのか。
    孤島に持っていくなら、この一冊。(現時点)

    • おびのりさん
      作家は、川端康成モデルかなと思ったけどやっぱり違うなとか。
      ハーフ系の美少年出てくると、三輪さん思い出したり。
      私も知識不足だったけど、昔か...
      作家は、川端康成モデルかなと思ったけどやっぱり違うなとか。
      ハーフ系の美少年出てくると、三輪さん思い出したり。
      私も知識不足だったけど、昔から、いろいろあったんだねえ。
      メロリン、もうレビューも避けそうだから、あおりました。
      2022/11/07
    • ひまわりめろんさん
      マジでこのレビューはスルーしてました
      でも土瓶さんが余計なことを…
      (よっけいな〜こ〜と〜など〜なっいっよっね〜♪)

      うーん、そうねぇ〜
      ...
      マジでこのレビューはスルーしてました
      でも土瓶さんが余計なことを…
      (よっけいな〜こ〜と〜など〜なっいっよっね〜♪)

      うーん、そうねぇ〜
      ゆっきーね〜
      うーん、特にないかな〜
      わりと一生懸命考えたんだけど特にないかな〜w
      2022/11/08
    • おびのりさん
      弱点を見つけた気分
      弱点を見つけた気分
      2022/11/08
  • 20代の総まとめで書いた長編…だと?!20代の…まとめ…
    天才だ!!天才がいる!!三島さんが天才なのはもう分かり切った事ですけどね、びっくりですよ。

    今回はおびのりさんの沼落ちシリーズです♪

    図書館の書庫から出すと言えばこの人、位に毎回書庫から何かしら出して頂いているのですが(魔界水滸伝に続いて魔獣狩りも書庫)ハードカバーでドーン!と出された時には鞄に入るか不安になり、手で抱えて世間様に『禁色』を晒して帰る事になりかけましたが、一緒に行っていたもこさんに紙袋を頂けたので事なきを得ました(別に晒しても良いんですけど、鈍器で誰かを殴りに行くと思われそう)

    位に太かったんですが、この熱量たるや…。寝る前にいつも読んでいたのですが、すっかり三島由紀夫ワールドに誘われて夢にまで出てきました。
    (夢の中の私、かなり美少年でした。起きて鏡見た時のギャップに笑いました)

    本作は奥が深すぎて、きちんと語ろうと思うと私の長い感想でも足りなさそうなんですが軽くお話をまとめますと。

    女に裏切られ続けた老作家の俊輔が、女を愛せない超絶美青年であり同性愛者である悠一と出会い、彼と共謀して自身を裏切った女達に復讐していくのがベースです。
    悠一には病気の母親がおり、その治療費も馬鹿にならない家庭状況を知った俊輔が莫大な報酬金と引き換えに、復讐者として自分の指示通り動けと持ちかけるのです。
    俊輔が懲りずに10代の女の子の尻を追っかけて(この女性、康子と悠一は復讐の為に結婚をする事になります)伊豆まで向かった際にギリシア彫刻のような悠一と出会う訳です。復讐により女性と接する事で悠一の精神にも影響を及ぼすのですが、まさかの最後で俊輔があんな事になるとは思わず「凄いものを読んでしまった…」と『仮面の告白』の時と同様に表紙をただ見つめてしまったのですが、単なる男色のお話ではありません。

    少し話が逸れるのですが、写真好きの友人に女性1人では行けない場所を撮りたいので着いてきて欲しいと頼まれた事があります。
    彼女は大正や昭和ロマン(主にアングラ面)に惹かれており写真の題材もそれらが多くモノクロで撮っています。
    同行先は大阪の新世界辺り、旭町です。
    天王寺公園と言う公園が、昭和時代には男娼の森と呼ばれており、化粧を施した男性が身を売っていたりしていたそうです。

    本作にもこのような公園が出てきます。我々は昼間に訪れましたが、昼間と夜とで顔が違う公園を三島さんが色気のある文章で書かれているので、その時の事を思い出しました。
    家族が楽しげに闊歩する日曜日の昼間は、同性愛者にとっては肩身の狭い時間だという表現がありましたが、確かに昼間の天王寺公園はそんな過去があった事を微塵も匂わせない空気感でした。

    当時の同性愛者の方は殆ど妻帯者であり、夜な夜な自我を解放しに公園やカフェに集まる。
    海外のゲイストリートにまで取材をした三島さんの再現力により目の前にカフェが現れたようでした。
    それはもう耽美オブ耽美。
    真の耽美とは何かを知りたければこれを読めば良いんじゃない?と思う程に耽美。

    耽美の定義が美を最高の価値として浸ることであるならば、これ程に徹底して追求している書物も無いような気がします。(若輩者なのでまだまだ世の中にはあるのかも知れませんけれど)

    悠一が男も女も関係なく周りを狂わす程の美しさを持つ自身に対するナルシシズムと成長が、懊悩と共に描かれていて三島さんの集大成というのも頷けます。
    生々しいラブシーンは一切ありません。なのになんという背徳感!
    悠一と同じ学校の学生である青年が、昼間から純和風の隠れ宿のような所にしけこむくだりなんかは、こっちまでいけない事をしているような気持ちになりドキドキしました。

    悠一が家を空けては男達と刹那的な時間を過ごしている間にも、復讐は継続されて行きます。
    康子が1番可哀想ではあるのですが、この復讐劇も予想外な心情の変化を悠一にもたらします。これには私も驚きました。
    始めは悠一に狂わされていた女性、鏑木夫人との変わっていった関係性がせめて悠一に安らぎを与えていれば良いのですが。
    老作家の俊輔に関しては、常に死生観が漂っています。老いと美と女達への憎しみ、社会的地位、数々の問題がずっと彼を取り巻いていて、実は1番幸せになって欲しい人物でした。
    けれど、俊輔はあの結末で良かったとも思えます。ある意味、幸せだったのかも知れない。あれしかないか…ないよなあ…。
    おじいちゃん…涙

    『仮面の告白』でも驚きましたが、昭和25年辺りに美青年の同性愛者を主人公にして、しかもギリシア彫刻に準えて美の化身のように表現している本作は、当時の文壇会にどれほど衝撃を与えたんでしょうか?
    しかも芸術論、社会問題、風俗、美の観点など文学としても濃厚で構成もしっかりしており、こんなに盛って良いの?!という位につゆだくです。
    シンさまの言葉をお借りすると、濃厚どろソースの5
    度がけ位。

    やっぱりこの世界観を伝えるのは難しいですね、評論は専門の識者の方々にお任せするとして、私はとにかく昭和ロマンと背徳と耽美、三島さんの美しい文章、たっぷり堪能させて頂きました。例の友人にも勧めようと思います。
    ダンスパーティーのシーンなんかは昭和ロマンの塊で、少しで良いからタイムスリップして踊り明かしてみたいと思った程。
    もし私が作家を目指していたら、この作品を傍に置いて事ある毎に見返していたと思います。ここまで凄いものは書けなくても、得られるインスピレーションが多そう。
    海外の著名人に人気なのも頷けます。

    ところで悠ちゃんこと悠一には実際のモデルがいらっしゃったそうで、三島さんが大変可愛がっておられたそうです。
    作家って己の性癖を全て丸出しにする勇気のある職業だなと感心しました(こう書くとなんだか陳腐ですけども…)

    おびのりさんが教えて下さらなかったら一生出会うことがなかったと思う作品です。
    ありがとうございました!大変格調高いお耽美でございました!

    • yukimisakeさん
      1Qさん、ありがとうございます
      ∠( ̄^ ̄)
      さーて今から予備校通うか!!法学部…orz
      1Qさん、ありがとうございます
      ∠( ̄^ ̄)
      さーて今から予備校通うか!!法学部…orz
      2024/05/18
    • きたごやたろうさん
      私がアップした本たちに「いいね」をありがとうございます。
      三島文学は、たまに無性に読みたくなります。
      久々、読みたいなぁ。
      あぁ、でも読む本...
      私がアップした本たちに「いいね」をありがとうございます。
      三島文学は、たまに無性に読みたくなります。
      久々、読みたいなぁ。
      あぁ、でも読む本が渋滞中だった…。
      2024/11/10
    • yukimisakeさん
      きたごやさん、こちらこそありがとうございます♪
      三島さんは文章が本当に美しくて読んでるだけで心地よいですよね(*゚▽゚*)
      僕もまだ読みたい...
      きたごやさん、こちらこそありがとうございます♪
      三島さんは文章が本当に美しくて読んでるだけで心地よいですよね(*゚▽゚*)
      僕もまだ読みたい三島さんのあるんですが、マジで渋滞してるのでタイミング難しいですねー!
      2024/11/10
  • 今作が発表されたのが1951〜1953年。作品の持つ力が未だ衰えていない。ただそれはそれで社会的に問題な気もする‥‥

  •  面白いです。

    かなり読むのに時間がかかりました。

    文字と言うか文章のリズムが今と違うので中々読むリズムに乗れなくて。

     それでもやっぱりいいです。

     三島作品好きです。

  • 図書館本
    本屋芸人の紹介で読みたいと思い、図書館で借りた。読み終わるまで4週間。もしかすると、期限が無かったら読みきることを難しかったかもしれない。内容は、裏表紙の紹介に女を愛さぬことで、私の仇をうってくれ。という内容だが、読んでみるとそれだけでなく、なかなかに長かった。三島由紀夫の考えを記した所が何ヵ所も出てきて、難しい。
    まぁ適当に流し読みしつつ、話の流れは面白い。この題材で小説を描くということは、当時は新しかったのではないだろうか。また、今よりもタブーだったのではないか。そう考えると、難しい所はあるが面白い内容だった。
    解説は野口武彦さんと森井良さん。解説があって良かった。理解が深まり、昔の作品への抵抗感も薄れる内容だった。
    読書メモあり。

  • 今まで読んだ小説の中で一番難しかった。いつか、読みこなせるようになりたい。ただ、文体の美しさは今の私にも分かる。格調高く、読み応え抜群。登場人物それぞれの思惑の交錯など、あんなにも複雑に描き切れるものなのか。尋常ではない。

  • 『何故君はそんなに美しい?』...美とは到達できない此岸なのだ


    これは三島作品の中でも指折りの傑作だと思います。改めて、彼の嗜好が自分のそれと重複するのを感謝しながら読みました。
    こんなに美しく官能的な作品ない...これを書いたのが26歳なの、やばすぎない?

  • やっぱり三島由紀夫の作品は良い。
    コミカルな面白さも兼ね備えた本書だが、根底には『仮面の告白』でも繰り返し出てきた作者のギリシャ彫刻や男色への考え方が強く感じられる。

  • 異性関係に於いていっかな報われぬ人生を美貌の青年・悠一に託し、復讐を試みる老作家。
    その企て通り、悠一が関わる人々は老若男女を問わず青々とした魅力に惑わされた果て、狂おしい恋心の発露に気付く。
    そして片端から、ドミノ牌の如くドラマティックな脱落を演ずるのだ。

    しかし、老作家の筋書きから外れていた点は、彼自身も悠一による外見の飴・内面の鞭に翻弄され始めた事である。
    この喪失は、彼に重大な決意をさせる事となった。
     
     
     
    背表紙に躍る「廿代の総決算」(廿=二十)の文字。
    男色小説と言う俗称は別として本作に限り、概要は背表紙や巻末の解説よりもWikipediaを参考にすると良い。

    度々登場する難解な芸術論や固有名詞は、語り手の陶酔と捉えて程々に受け流す。
    これも三島作品に対峙する、平凡な読者に必要なスキルである。
    この技法を習得したお陰で大変面白く拝読した。
    今後もそうして付き合っていく。
    そうして、ちょっとおつむが充実したら、また読み返す。
    合点の数だけ、三島へ近付く。

    そう言ったお付き合いを三島先生、今後共どうぞ宜しくお願いいたします。(笑)

  • とにかく大変な作品だったかも。
    大変というのは、読み進めていくにはあまりに不快だから。
    現代は差別と言われかねないのだろうけど、この手の人たちに理解はない。吐き気しか催さない。
    三島文学は充分感じたけど、題材にこれしかなかったのかなぁ。悪趣味としか言いようがない。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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