潮騒 新版 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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感想 : 218
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  • 本 ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050447

感想・レビュー・書評

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  • 三島由紀夫先生のイメージは、兎に角難解、、、
    何でそう思っていたのか記憶にないが、アホな私には読めないだろうと決めつけており、一度も手に取ったことがなかった。、

    今回おびのりさんがご紹介下さったのでAmazonでポチってみた。

    記念すべき初三島由紀夫!

    数ページ読んでみて、あれ?私読める??
    読めてるんじゃない??
    と。
    そう!読めたのだ!嬉しいー♪


    物語の舞台は歌島。北に知多半島、東に渥美半島。
    え!?近いな、、、と思ってGoogleマップで歌島と検索すると、神島がヒットした。
    しかし、Googleマップが示している神島の場所は、まさにこの物語が書き示している土地と一致する。島の名前は変えているが、どうやら神島が舞台のようだ。

    この都会から離れた離島に住む、心優しい、逞しい漁夫(新治)と、美しい娘(初江)の清純な恋物語だった。

    密かに新治に恋心を寄せる千代子。
    金持ちのいけ好かない恋敵の安夫。

    二人の恋に様々な試練が待ち受ける。



    調べると三島由紀夫も、作品により読みやすかったり、難解だったりするようですね(^^)

    普通に読みやすい、清々しい恋愛小説でした。
    むふふって口角が上がったり、ニヤニヤしてみたり。

    憎き金持ちのボンボンの安夫が蜂に刺されたシーンは、蜂さん、もっとやっちまえ!!!って思っちゃいました( ̄▽ ̄)


    三島由紀夫初読みでこの作品は当たりでした!
    おびのりさん、ありがとうございましたm(_ _)m

    • bmakiさん
      ウルトラマンさん

      ウルトラマンさんは、まず積読本を何とかしてから、老後の楽しみになさって下さい♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
      ウルトラマンさん

      ウルトラマンさんは、まず積読本を何とかしてから、老後の楽しみになさって下さい♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
      2024/07/07
    • ultraman719さん
      _| ̄|○
      _| ̄|○
      2024/07/07
    • bmakiさん
      ウルトラマンさん、頑張れっ!!
      私も積読本、頑張って減らしますから、諦めないでー!
      ウルトラマンさん、頑張れっ!!
      私も積読本、頑張って減らしますから、諦めないでー!
      2024/07/07
  •  伊勢湾の歌島という小さな島。そこで、新治という逞しく、優しい若者が、初江という美しく溌剌とした娘と出逢う。新治は漁師の卵で、貧しい母子家庭の息子。初江は島の有力者の娘で美人だと評判。金持ちの安夫が初江の家の入婿になると勝手に思い込んで自慢している。
     ある日、偶然出逢った新治と初江はその場でお互いビビッときて、休漁の日に(つまり暴風雨の日に)、観的しょう(戦争の時に敵軍を見張っていた場所)で会うことを約束する。
     約束の休漁の日、雨の中、人けのない観的しょうで先に初江を待っていた新治は、焚き火をしたままいつしか眠ってしまい、気が付くと目の前に初江が……。官能的でドキドキしてしまった。猥雑さは一滴もなく、美しい筆致による芸術的描写。二人のウブで真面目な言動にもドキドキ。
     清冽なプラトニックラブを続けているのに、二人を僻む者たちが尾ひれを付けて悪い噂を流す。怒った初江の父により会うことを禁じられるのだが、こっそり友の協力により、文通を続けたり、新治の母が男前な行動をとって協力してくれたり…。
     絵に描いたように美しい男女の若者の恋愛物語。お約束通り邪魔者が入って、最後はビックリするくらいハッピーエンドに終わる。
     でも、ストーリーどうこうではなく、三島さんの文章がいい!表紙裏に「人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧憬が…」と書かれているが、そうそう、ギリシャ芸術のように美しい。それを視覚的な美術で表したのではなく、日本語という言葉で、読む人の想像力を刺激する方法で作った芸術。映画化もされているらしいが、絶対映像では観たくない。キラキラ光る想像の世界を壊されてしまうから。

  • たまたま目について読んだのだが、とても読みやすい ザ・青春恋愛小説だった。

    伊勢湾に浮かぶ小島、神島をモデルにした「歌島」で、18歳の漁師見習い久保新治と養子先から家の事情で実家に戻ってきた初江の溌剌とした恋愛。

    いけすかない恋敵(安夫)や、嫉妬に苦しむ女子(千代子)や、反対する父親、など、ど定番と言える設定・展開が続く。発表当時の1955年は新しめだったのか当時から定番コースだったのか分からないけれど、贅肉のない筆致ですいすい気持ちよく読めた。 

    新治がぐじぐじ悩まず肉体労働に励む姿は清々しい。

  • 文庫の後書は、重松清さん。「ひまわりのような物語である。」と解説している。確かに、茎の太い真っ直ぐに伸びたひまわりのようだ。
    娯楽など何もない素朴な日本の古来の姿のような歌島。島の頂き近くの神社と断崖の灯台が、外の世界を眺めることができる存在として語られ、たびたびこの小説の重要な舞台となる。海は労働の海として描かれる。そこでの、若い漁師と美しい海女の純愛物語。多少の紆余曲折はあるが、若者の気力と体力と純朴さが全てを飲み込み。お伽噺の様な印象が残る。
    重松さんが、誉めていた「あまちゃん」の作中の「潮騒のメモリー」を知らないことは残念だった。

  • 「ボーイ・ミーツ・ガール」の超ド定番展開を、三島らしい論理性と配置美によって、彩い魅せた作品。(※褒めてます)

    世間から隔絶されたような伊勢湾の寂れた島にて繰り広げられる、父を戦争で失い漁師として家族を養う貧しくも気立のいい少年と、家の事情で養子先から比較的裕福な実家に戻ってきた美しい少女の恋物語。

    …と、あらすじを書いてみて改めて思ったのは、本当に、コッテコテな設定だということ。展開も、最初から最後まで、本当にコテコテ。読み終わって拍子抜けするくらい、予想外のことは、何も起こらない。

    それなのに飽きることなく最後までぐいぐい読めてしまうのは、主役の二人だけでなく端役の端役に至るまで、性格や背景、役割設定がとても明確に与えられた上で実に的確に配置され、その絶妙さこそが、無駄がなさすぎるほど無駄なく物語を動かしていることが確かにわかるから。 

    「局面を動かす」役割を担う人物が、場面場面によって違い、複数人いるつくりなのだけど、そこに無理も破綻もないのが本当にすごい。実は序盤からちゃっかりいくつも張り巡らしていた伏線(説明的な人物設定)が効いています。

    個人的には、いかにもヒロインな初江よりも、ヒーローたる新治に積年の思いを寄せながら、コンプレックスもあってそれを口に出せずに悶々と嫉妬して二人の仲を結果的にかき回し、それでも好きな人の何気ない言動に心満たされて事態を収めていくことになる、主役二人の預かり知らぬところで実はかなりの大役を担っていた千代子ちゃんの、鬱屈具合といじらしさが可愛くて、本当に好き。

    三島って、役割分担だけでなく、人物の「キャラ立たせ」もうまいんですよね。展開を一番の目的とした冷徹なぐらいの配置だけど、それでも、嫉妬や怒りなどの感情は生身の人間味に溢れてて、魅力を感じる。

    いかにも田舎らしい、閉鎖的で、噂の娯楽性というか、煽られやすい群集心理をあちこちの場面でたくみに利用している点なんかも、怖いけどすごい。

    本作「潮騒」はあまり三島らしくないとされて異端的な位置にあるそう。
    けれど、ストーリーも展開も単純でこじんまりとまとまっていて、理解に追われることがないからこそ、何にも邪魔されることなく、三島らしい論理性と配置の妙をゆっくり噛み締めることができるので、そういうものを楽しみたい方にはおすすめです。

    (解説を読むと、バレエ演目としても有名なギリシア古典「ダフニスとクロネ」を「本歌取り」した作品だとのこと。この翻案訓練が、その後発表することになる能楽集や戯曲のスキルを育てたそう。)

  • 三島のどれか一つを読むなら「潮騒」を、と三島本人がどこかに書いていたような記憶があったから選んだ。

    健康的で伝説的(ヤマトタケルとかヘラクレス的)な、青春小説。
    まったく予想外。
    坂口からの三島に怯えていたので、思いがけない初恋描写に顔がニヤけて戻らなかった。
    繊細な三四郎タイプとは真逆の、逞しい少年が主人公でとても気持ちがいい。
    失敗をバカ笑いされても、心折れて引きこもるような心配がまったくない。
    うじうじとは無縁。
    皆 生活することに一所懸命で 思考の沼にハマる暇がないのが、実に尊い。
    そして最後の一文がとても重要。
    女が守ってくれた、で終わられたら途端に気色悪いところだった。

    思いがけず、心洗われた。

  • 『三島由紀夫生誕100年』。

    伊勢湾の小島、歌島で出会った新治と初江。
    初江に惹かれ始める新治。
    2人の恋の行方は…

    本当に純愛だった。
    すべてに純粋だった。

    新治も初江も純粋にお互いを想い続けた。
    照吉に反対されようとも、周りから言われなき噂を流されようとも…
    ほんとうによく我慢したと思う。
    新治の立場なら、安夫を殴りに行ってもおかしくないはず。
    まして、初江を襲おうとした安夫を。
    でもそれをせずにじっと耐えるなんて…
    それほど、新治の初江を想う気持ちは強かったんだと。

    純粋だった、すべてに。
    まったく悲劇がなく…
    普通なら、現代なら、どこかに悲劇が…
    三島由紀夫ならどこかに悲劇を…
    と、思いながら、読み進めたが…
    幸せな結末だった。

    三島由紀夫というと、市ヶ谷の陸上自衛隊駐屯地での割腹自殺や、『金閣寺』の暗いイメージが付き纏う。

    三島由紀夫のイメージを覆す、本当に純粋な作品だった。




  • 三島由紀夫の作品というと、何かこう、人の心をざわつかせるイメージ(例えば輪廻転生、例えば偏執的な拘り、例えば同性愛)があったが、この小説はまったくケレン味がなく、ただただ美しい。
    読み方によっては教訓的とまで言ってもいいかもしれない。
    こういう小説も書くということを知ると、三島由紀夫という人は、清濁併せ持ち、思考がとても幅広い作家だったのだろうな、と思う。
    自然の風景と若者たちの美しさに惹かれ、すぐに読み終えてしまった。
    美しい小説を読みたいと思っている方は、ぜひ。

  • 初めての三島由紀夫作品は【潮騒】であった。

    この作品は三島作品の中でも孤立していると言われるような三島らしくない作品だと言われている。
    しかし一方で、初心者におすすめの三島作品として選ばれる事も少なくない。
    それは何故なのか。
    三島は圧倒的な語彙と緻密な文章によってやや難しい印象を与える文章を書く。それを考慮し、やや短く、内容も重すぎないものといえばこの【潮騒】と言えるからだろう。


    三島は情景描写や緻密な心情描写がとても魅力的な作家として挙げられるが、個人的な好みとして、それらも素晴らしいのだが、【潮騒】の中ではあまり多くは見られない、会話文がとても好みであった。
    みずみずしく、屈託のない、そして正直で純潔な少年少女の会話はなんとも気持ちの良いものであった。

  • 三島由紀夫では金閣寺、仮面の告白に続いて3つ目に読んだ本。究極のプラトニックラブを謳っているが、まさにその通り。世間の俗物的な考えを排除し、便利な今のツールをなくすと、こうなるのか、と思わず思考実験の舞台を想像した。

    美しい自然の描写と2人の男女の内的心理を不必要な部分をこれでもか、というぐらいに排除し、研ぎ澄まされた文章で丁寧に描くのはまさに三島由紀夫らしい。彼の織り成す日本語は美しい。

    出会い、惹かれあい、困難が襲い、それを乗り越え結ばれる。王道の展開、ただこれだけ、でもそれだけだが、基本に立ち返り、その基本を突き詰め、極めると、人は心を動かされる。
    そのことを証明したまさに傑作。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島由紀夫の作品

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