宴のあと (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784101050478

みんなの感想まとめ

政治と恋愛が交錯する物語が描かれ、主人公の女性は年齢を超えて情熱を持ち続けます。高級料亭の女将であるかづは、都知事選に挑むことで自らの信念を試され、恋愛と政治の複雑な関係を体験します。彼女は独身の理想...

感想・レビュー・書評

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  • 1960年雑誌「中央公論」連載
    政治と情事は、瓜二つだった
    三島由紀夫が描く都知事選
    フィクションをドキュメンタリーのように描いた
    モキュメンタリー

    高級料亭の女将・福沢かづ
    独身で50を過ぎても女性としての魅力は衰えない
    保守党の御用達の料亭であったが、ある日革新党顧問元大臣野口と出会う
    野口は妻を亡くし独身の60を過ぎた理想家の紳士
    二人でゆっくり老後をと思っていたのかもしれないが、都知事選出馬の依頼が来たところから
    かづの情熱的本質が溢れ出す

    「宴のあと」はモデルとされた人物からプライバシー侵害で訴えられ裁判
    表現の自由が争われ、東京地裁でプライバシー侵害の判決を受ける
    三島由紀夫は控訴 お相手が亡くなり和解、出版
    “この物語はフィクションです”の始まりの小説として認知されています

    そんなこんなでざっくりは知っていたのですが
    今回初読
    プライバシーの侵害は難しいなと思う
    訴えると小説の真実性を認めるようなものだし
    大物なら放置でも良いような気もするし

    主人公かづは都知事選で圧倒的な存在感を見せるが選挙には負ける 夫とは気持ちのズレがおきる
    気持ちは離れて離婚となる
    かづは再び自分の店を取り戻し拠り所としていく

    新解説は辻原登氏
    三島由紀夫最良の小説の一つとする
    当時の選挙戦の具体的な戦い方が読めて面白い
    この女将の強さ明るさは、誰かの奥様で収まる事はないんだろうなと思う

    • yukimisakeさん
      その文言って、この作品からだったんですか!凄!
      ツキイチミシマは確かにきつそう笑
      その文言って、この作品からだったんですか!凄!
      ツキイチミシマは確かにきつそう笑
      2025/02/26
    • おびのりさん
      ツキイチミシマ年内続けるつもりなんだけど
      読めるんだけど
      レビューすることがないのよね_| ̄|○
      ツキイチミシマ年内続けるつもりなんだけど
      読めるんだけど
      レビューすることがないのよね_| ̄|○
      2025/02/26
    • 1Q84O1さん
      ツキイチミシマの悩み…w
      ツキイチミシマの悩み…w
      2025/02/26
  • 皆さんは『政治家』という人びとに、一般にどのような印象を持っているだろうか。
    好ましい印象を持つ方もいるのかもしれないが、今のご時世、もしかしたらそうでない方のほうが多いかもしれない。

    だがいずれの立場にしても、彼らの実生活の舞台装置を、少し伺い見てみたいと思ったことが、どなたにも一度はあるのではないだろうか。
    僕もそういった一人だったことに、この作品を読んで図らずも気付かされたのだった。

    そして、この物語はそんな僕ら読者のおぼろげな希望を、きわめて精緻な形で叶えてくれる。
    彼らのような各界の名士を相手取る、料亭の女将『福沢かづ』を主人公に置き、彼女の視点から彼らを眺める人間ドラマが、そこに展開されていたからである。

    そう、政治家といえども特別な人種ということは全くなくて、その時代を純粋に生きている、純然たる『人間』なのだということが、この作品を読むとよく伝わってくるのだ。
    そこには僕らとの人格的な隔たりはないと言っていいだろう。われわれより、ほんの少しだけ世の中を俯瞰して見ている程度の違いではないだろうか。

    ここからはネタバレが入ってくるため、今後この小説を読みたい方は気をつけてほしい。


    主人公かづは、職業柄厳格な女将を演じることもできるが、その真の内面はきわめて明瞭だ。
    つまり好奇心旺盛で非常に情熱的、純粋で一本気という、誰しも一度は出会ったことがあるであろう、あの人間像なのである。

    彼女の熱情は、クールな勉強家で、普段は感情を表に出さないながらも、時として人間的な若さや優しさを垣間見せる、野口という政治家に次第に魅せられてゆく。
    私事で誠に申し訳ないが、彼らの人間像は、僕の母と父のそれをそのまま連想させた。
    そしてそれゆえに、この物語の成り行きに、親しみに満ちた興味を感じることさえ、できるようになったのである。

    ともかく、幸せな晩婚を果たすかづと野口。その後彼らは次なる目標、つまり野口の都知事選への立候補に向けて動いていく。
    ここでかづは野口に無許可で、彼の広報に勤しむことになるのだが、その活動の仕方が、また健気なのだ。

    彼女本人は、有権者を票としてしか見ていないつもりなのであるが、そのような彼女の姿勢は、すべて野口に対する献身的な愛から来ているのである。
    そして有権者の人びとも、かづの行動の根本にある夫への情愛をしっかりと見抜いているものだから、彼らの彼女たちへの好感度も、増していくばかりなのだ。

    この好循環の中には、どこか甚だいじらしいものがある。
    読者である僕たちも、思わず全力で彼女たちを応援したくなるのではないだろうか。そのような元気一杯の魅力を、かづは持っている。

    だが、このような気質を備えた人の常として、匙加減を知らない可能性がありうることは、多くの方にも容易に想像できる点ではないだろうか。
    しかも彼女の場合、これらの行為は全て無許可であったのだ。だからそれがたとえ好意だけに基づいたものであったとしても、野口を怒らせるには十分だったのである。

    どちらかと言えば、野口よりもかづに共感してしまうように出来ているらしい僕にとっては、その怒りの一幕は、わが事のように恐ろしく、しかも痛ましかったことを記しておこう。
    善意が理解されず、それどころか裏目に出てしまい、あたかも悪意がそこにあったかのように思われてしまうことは、なんと悲しいことだろうか!


    ……さて、以上のように一見では惹かれあっても、人格的にはほぼ正反対のものを持つ二人である。
    共通しているのは、今この瞬間よりも将来を大切にし、そこへ向けてのビジョンを見ようとすることを生き甲斐にしている、あの一点だけだろう。

    選挙戦の結果、そしてかづと野口の行末については、あなたの目で確かめて欲しい。

    先ほど僕は、野口よりもかづに共感してしまうと書いたが、終盤の展開を見てみると、必ずしもそれだけではなかった。
    野口の、自己への励ましのために、詩や自然を愛そうと頑張るのに、どうしても本心から愛せない不憫な様子には、これまた大変いじらしいものが感じられたのだ。
    それは作中でも何度も確認されていたように、理論で武装された理想主義の最終形態だったと捉えてもいいだろう。

    最後の展開は、その『宴のあと』の野口の内面にぽっかり会いたような理想像の穴を、かづの情熱と行動と、自己の魅力を頼りにした、いわば現実ナイズされた理想像がすっぽり埋めてくれるようであった。


    そう、この物語はバッドエンドと見ることもできるが、ハッピーエンドと見立てることもできるのだ。
    そして、僕はそのどちら側にも共感することができた。これは幸せな発見だったということができるだろう。

    蛇足になるが、選挙の仲立人を務めた、愚直なまでに実直な山崎という人物も、僕にはそれはそれで魅力的に見えた。
    次回この小説を読むときには、この人物に着目してみるのも面白いかもしれない。

  • 初老の男女の恋愛と政治を組み合わせた作品。
    モデルとなった政治家と三島由紀夫の間で裁判が起きたと知り、まずそこに驚かされた。内容自体はとてもわかりやすく、読みやすい。
    50,60代という年齢になっても、相手に惹かれ合いピュアな恋愛ができるのは素敵。
    かづは田舎の貧しい生まれで、野口の高潔な家系の墓に入れることに強い喜びと執着を持っている。
    現世での成功ではなく、死後の世界を夢見ている点が意外で印象的だった。
    成金根性と言われるように、かづの政治活動は派手で見栄っ張りな一面が目立つ。
    一方、野口は無口で華美なものを好まず、慎ましい人物だ。そんな野口が、なぜかづに惹かれたのかは正直不思議に感じた。
    ただ、女性の視点から見ると、かづが野口を好きになる気持ちは何となく理解できる。
    正反対の性質だからこそ惹かれ合ったのだろうか。

    政治活動を通して、二人はそれぞれ自分の進む道や信念を改めて確認していく。
    その結末は決して不幸ではなく、あるべきところに帰ったという山崎の考えが、まさに的確だと感じた。

  • 三島特有の心理描写や風景描写などの表現方法が見事としか言いようがありません。一つ一つの言葉の選び方が計算されていて、ここでこう表現するのか、と感嘆の息が思わず漏れてしまう文章力がとにかく凄まじくある意味狂気じみています。

    物語自体も旅亭の女主人のかづと、都知事選に立候補した野口が夫婦で選挙戦に挑む話で分かりやすく展開されていきます。
    旅亭で様々な政界人の汚い裏側を見てきたかづと、自らの信念と志で真っ当に戦おうとする野口がまさに対比的に描かれています。
    また、一癖も二癖もある登場人物が多く、政界の裏側の黒い面も見事に表現されています。
    三島自体が当時の政界に抱いていた批判的な視点が作品全体に色濃く反映されているようにも思えました。実在する人物をモデルにしており裁判にまで発展していることからも、強烈な作品であることが伺えます。250ページと短いながらも濃厚な人間ドラマがこれでもかと展開される重厚感のある内容でした。

    三島作品の中でも読みやすい部類に入ると思います。
    三島に苦手意識のある人にもぜひ読んで欲しい、入門にもオススメの紛れもない名作です。

  • 日本で始めて「プライバシー権」が認められた有名な「宴のあと事件」のきっかけとなった本。ずっと気になっていたけれど、ようやく読了!

    「宴のあと」って三島由紀夫の作品だったのか!

    というレベルでしたが、人生初の三島文学、読了しました!日本語ってこんなに美しいの!?とびっくりしました。三島文学にハマってしまいそうですʕº̫͡ºʔ。

    作品そのものもとても面白かったですが、作品を巡る裁判や、三島由紀夫自身の生涯の方が正直面白かったです(笑)。事実は小説よりなんとやら…ですね。

    --

    『宴のあと』は高級料亭「般若苑」の女将・畔上輝井と、元外務大臣・東京都知事候補の有田八郎をモデルにした作品で、三島氏は「自分の念頭にあるのは政治と恋愛との対立というような主題で、私は女主人公に非常に美しいイメージをいだいており、小説では一つの理想の姿、肯定的な人間像をあなたを通して描いてみたい」という趣旨の説明をして、後日も何度か交渉を重ねたのち畔上氏の承認を事前に得ていたようです。有田氏へも畔上氏から事前に連絡をしていたのだとか。

    しかし、小説の連載が始まると、畔上氏から「自分が淫らな女として扱われている」という連載中止を求める抗議があり(注意書きを入れてなんとか連載を続けたらしい)、単行本として出版されることが発表されると、今度は有田氏から中央公論社と三島に刊行しないよう申し入れがあったと。

    中央公論社は出版からは降りたそうですが、代わりに新潮社が刊行本出版を引き受けたことで、有田氏が、三島氏と新潮社に対して慰謝料請求の訴訟を起すことになったそうです。

    その結果、「私生活をみだりに明かされない権利」が東京地方裁判所で認められ有田氏側が勝利したのですが、三島氏は控訴、その後、有田氏が亡くなり、ご遺族との和解が成立して出版されたのだとか。

    (Wikipediaより)

    なんというか、えーと…

    読んでしまって、申し訳ありませんでした…


    オマケ:
    なんか、ちゃんとした懐石料理、食べに行きたくなりますよね。



  • 三島氏の流れるような文章に終始感心させられる。艷やかで華やかな表現の数々は珠玉。他作品にも見られるが、炎に関する表現はまさに圧巻。

  • 文章もわかりやすく、構成もシンプルでとても読みやすい。読み終わるのが惜しくなる本は幾冊かあるが、そのうちの一冊。
    女性のしたたかさを感じさせながら、最後は何か切なさを強く感じさせる。
    面白い小説を読みたい方はぜひ。

  • てっきり政治家の女性スキャンダルの話と思っていたが違った。まったく情欲の匂いがしない。
    かづは情念というより衝動に取り憑かれているように思った。政治家の夫のために情熱的に選挙活動するかづは、夫以上に政治的才能に溢れ逞しくあった。
    選挙で熾烈な戦いをしているというのに、野口とかづの愛情や情欲は極めてドライな印象。
    政治と情事は瓜二つ。
    政治を情事に例えたエンタメ小説として楽しめた。

  • プライバシー権について争われた「宴のあと」事件からこの作品を知り、内容が気になって読んだ。この内容がどこまで事実なのかは知らないが、たしかに恥ずかしい内容なのかもしれないと感じた。第18章「宴のあと」と第19章「宴の前」というふたつの章題がなんとなくすき。

  • 再読。
    この小説のモデルは誰某彷彿させるだとか、政治や選挙にはお金がかかるを、描くところもうまいが、一人の熟女「かづ」の恋ゆくえが、生き生きと描かれているのがさすがだ。

    もう恋は卒業したと思ったのに、なぜ、元外相という外交官肌、野口と結婚したか。
    「これで身寄りのない私が、立派な野口家のお墓に入れる」とつぶやく「かづ」

    そしてなぜ、「お墓なんてどうでもいい」と現代の女性を彷彿させるような別れが来たか。
    そのストーリー展開の端正だげど現実的、流れるような文章が味わい深い。
    三島由紀夫さんは女性のみかた!?

  • 三島由紀夫らしいはそのままに社会派小説をここまで描き切れるのはさすが。
    三島由紀夫の分岐点的小説。

  • 7月は?宴のあと!選挙もあるし、とのことで笑
    本作を知ったのは学部生の時に「宴のあと事件」として知ったことのような気がする。勝手に抱いていた政治のドロドロ小説とは違い、さらっと読めるエンタメ小説のノリで、もっと早く読んでおけばよかったと思った(これはいつも通り)
    主人公のかづの生命力がただ心地よく、魅力的で、読み手側に活動したいという意欲を沸かせるような、そんな造形だった。

    以下好きだったところ
    ここにいると電車のひびきも自動車の警笛もまったくきこえぬ。世界は一幅の静止した絵になった。どうして一度燃え立った情念が跡方もなく消えてしまうのか、かづにはその理由がわからない。自分の身を一度たしかに通り抜けたものが、どこへ行ってしまったのかわからない。さまざまなものが蓄積されて人間が大をなし、成長してゆくというのは嘘のように思われる。人間とはただ雑多なものが流れて通る暗渠であり、くさぐさの車が轍を残してすぎる四辻の甃(いしだたみ)にすぎないように思われる。暗渠は朽ち、甃はすりへる。しかし一度はそれも祭の日の四辻であったのだ。(p.9)

    それからかづの野口に対する恋の描写が可愛くって、そして私もこういうタイプなのでわかる〜〜となってキュン。
    …野口と会っているあいだはさほどのこともなかったのに、別れたあとで忽ち色々な感情が暴風のように起った。第一に、野口にいつもきれいな洗い立てのYシャツを着せ、仕立卸しの洋服を着せるという空想に熱中した。(p.42)

    …告別式の前夜になっても野口の電話はなかったので、かづは一種の敗北感を味わった。ところが彼女にとっては、敗北感を味わうということがそのまま熱情なのである。(p.45)

    …まことに理不尽な理由を辿って、かづはこの無表情な野口の目に接した途端に、自分ははっきり野口に恋していると感じたからでらある。…
    「うるさき繰言をおきかせ申上ぐるは、本意なく候えども、これもお慕い申上ぐるあまりの心はやりと、何卒思し召し捨てられたく、お願い申上げまいらせ候。一日も早き、又のお目文字を生甲斐にいたしおり候。かしこ」
    ーあくる日かづは、踊りの温習会の義理の見物に出かけ、「保名」の冒頭の、「恋よ恋、われ中空になすな恋」の文句をきいて涙を流した。(p.49)

    …旅へ出る着物にかづはいろいろと工夫をしていた。これはいわば野口との間柄を世間へはじめて公表する旅であるから、なんとか野口雄賢の名前を着物に染め出そうと思ったのである。(p.62)
    かわいーーー!となるのと同時に、わかる…笑となった。

    かづは良人の人格は尊敬していたが、彼も政治に関わり合っている以上、雪後庵で見聞きしている政治と、彼の政治と、どこがちがっているのか分からなかった。雪後庵で保守党の政客たちが垣間見せる様相は、かづの頭に見事な政治の概念を叩き込んでいた。それは厠へ立つふりをして行方をくらましたり、炬燵に当たって詰将棋のような相談事をしたり、怒っていながら笑って見せたり、少しも怒っていないのに激昂してみせたり、永いこと黙って袂屑をいじっていたり、…要するに芸者のやるようなことをすることだった。その大仰な秘密くささも情事に似ていて、政治と情事とは瓜二つだった。野口の考えている政治には何分色気がなさすぎた。(p.95)

  • 「その老いた静脈のいっぱい浮いた枯れた男の手を、かづは美しいと思った」
    めっぽうおもしろい。
    分別さかり、老境に差し掛かった者同士の抑制された恋の色気。
    貴族的な生活のディテールも楽しい。

  • 太宰の後に読んだら、なんて美しく整理整頓されているかつ力強い文章なんだ!とすごく感動してしまいました(太宰の文章も個人的にとても好きです)。情景がザァッと頭に浮かぶ。

  • 三島由紀夫が実在の都知事選を舞台にしたエンタメ小説。非常に分かりやすいあらすじ。読んでいてスイスイ読めたし、読後感も好き。
    けども、印象に残るような文書の数は、やっぱり『金閣寺』や『仮面の告白』だなと。三島の文章に慣れてきている、というのもあるのかもだけど。

    女将の仕事こそ、政治であるというテーマは好き。恋愛と政治は一緒だと。その通りだと思う。応援したくなる人って、そりゃ軽い恋みたいなもん。そしてそれは結婚とは違うのだ。たぶん。

    初のプライバシー裁判の事例ってのも、歴史的価値がある小説。三島の作品としてトップに輝くことはないだろうけど、読みやすい作品。

    好きな箇所は、自分の料亭に忍び込んだ泥棒のガムを触りながら、思いを馳せるシーンと
    政治家の目からは選挙区の自然は美しく見えなければならず、自然を美しく眺めるには政治家でなければならない。それは収穫すべき果物の、みずみずしさと魅惑に満ちているはずだ。
    p129

    という文章

  • 好き嫌いは分かれるかもしれないが三島由紀夫の文体が心地よい一作だった。中年の女性と高齢男性の情事も、この文体なのでギトギトした、いやらしさがなかった。野口はかづに対して、興味はあったが根底にかづの持つ、彼の生き方、思考に反する部分を「下品」という言葉でしか受け入れられない時点で終わりが見えていたと思う。かづもまた野口の「知的生活に対する大きな偏見があった」ので同様ではあるけれど。選挙に負けた野口が「恩給だけで小さく暮らして行こう。じじばばで暮らして行こうや」という言葉もかづには合わない、そもそも「ばば」とは思ってないし、火の玉のような女性であるかづが小さく暮らすことはない。この作品では出会ってからの幸せよりも対照的な2人が一瞬、惹かれ合い、埋められない溝がより大きくなり離れていく過程が描き込まれていると感じた。

  • 三島由紀夫は感情の澱を描くのが得意で、その技巧的な言葉選びが大好きだ。この作品にはそう言った場面は他の作品に比べると少なく、若干の物足りなさも感じたが、こんな正統派の作品も書けるのねという何様だよという感想をもった。私は野口派の人間なので、かづに付き合わされてもうウンザリだったのだけど、終わり方が爽やかで疾走感があるね。

  • 三島作品を読んでいきたい+あらすじを見て面白そうだったので。

    相変わらずの表現力に加えて、ストーリーがどんどん展開していくので面白く読めた。

    たった数行しかないのに世の中のことから人間関係やら価値観やらをビシッと表現してしまうすごい文章がいくつもあって驚く。書き留めておけばよかったのだけど図書館の返却期限が来てしまったので。

    あくまでかづからみた野口しか描かれないのも実際の人間関係と似ているのかもしれない。
    野口に怒られているシーンで、(かづは)そのように怒られるのが実は好きなのだ、と書いてあるシーンなど、三島の人間というものの描写が裏の裏を読んでいっているようでいて、それを断片的にしか見せない感じが面白かった。

    映画化したら売れただろうなあ、どんな配役なのか妄想するだけでも楽しい。モデル化問題で実現しないのだけど。

  • かづへの野口の心情が理解できなかった一方で、かづの強引さや自分勝手さも好きになれなかった
    両者とも共感できる部分もそうでない部分もあるが、どちらかといえばかづ派かな

    解説を読んでなるほど〜って思った

  • 「政治」と「情事」の対比関係(あるいは類縁関係)が、かづの奔走の物語の中で鮮やかに描かれている。他の登場人物達も魅力的で引き込まれる。読後感は予想外に爽やかだった。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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