春の雪 新版 豊饒の海 一 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2020年10月28日発売)
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本 ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784101050492

感想・レビュー・書評

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  • この作品は『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の豊饒の海四部作の一作目です。

    解説によると、豊饒の海は日露戦争後の明治末から、昭和七年から太平洋戦争にかけての時期、さらには執筆時におけるぎりぎりの現在まで取り込もうとしていたといいます。

    副主人公で、観察者、記録者役の本田繁邦は十八歳の青年として作中に登場して、やがて八十歳の老翁として最後の場面にも現れるそうです。

    この四部作は「『浜松中納言物語』を典拠とした夢と転生の物語」だそうです。


    この第一巻『春の雪』は恋愛ロマンスです。
    松枝侯爵の嫡男清顕、十八歳は、二つ年上の綾倉聡子とは幼なじみですが、聡子の方は清顕を慕っていますが、清顕の方は最初は幼なじみ以外の何物でもないという態度をとっています。
    しかし、聡子はその美貌が功したか、宮家の宮様に見初められてしまいます。
    清顕は周りから「今ならまだ間に合う」と言われますが気にも留めません。
    納采の儀の決定後、聡子は清顕の自分宛ての出さなかった手紙を読み、清顕の本心を知り燃え上がります。
    清顕も納采の儀が決まってから聡子への想いが募り出し二人はとうとう道ならぬ道を進んでいきますが…。

    美男美女カップルの三島による描写、特に聡子の美しさが際立っていました。


    この本は、ずっと家の本棚にあった積読本でしたが、ヤマザキマリさんの本にこの四部作のことが書かれていて読みたくなりました。
    読んでみれば意外に簡単なストーリーで面白かったです。

    解説を読むと更に輪廻転生などがこの先あるようで面白そうです。
    清顕と聡子にも、もう一度会えるのでしょうか?
    この本では清顕の親友として出てくる本田が次巻ではどのような役柄で出てくるのか楽しみです。

    • まことさん
      おびのりさん♪
      コメントが削除されたみたいなので、このコメントが届くかわかりませんが、共読、嬉しいです。
      私のレビューは結構ネタバレすれ...
      おびのりさん♪
      コメントが削除されたみたいなので、このコメントが届くかわかりませんが、共読、嬉しいです。
      私のレビューは結構ネタバレすれすれだったりするので、読まない方が作品を楽しめるかもしれないですね。
      レビュー楽しみにしています。
      2023/01/22
  • 豊饒の海 1 春の雪
    著:三島 由紀夫
    新潮文庫 み 3 21

    侯爵家の子息清顕の、幼なじみの伯爵家の娘聡子へのゆがんだ愛
    18歳の少年の揺れ動く心、自分勝手な思い込み
    三島由紀夫の描く、肉欲的な愛は、狂おしいまでに暴発していく愛である
    汗とか、血の匂いがするような気がしました

    きらびやかな華族の中で進行していく許されざる恋、清顕の行動に引きずられていく
    書生、友人、そして、娘の姥

    二人の手紙のやり取りは、妻問い、相聞を思い起こさせる

    美しい景色、華麗なる舞台には似つかわしくない、醜い人と人との交わり

    清顕をまっていたものは、京都月修寺の「春の雪」であった

    大正浪漫

    ISBN:9784101050492
    出版社:新潮社
    判型:文庫
    ページ数:496ページ
    定価:900円(本体)
    発行年月日:2020年11月
    1977年07月30日 発行
    2019年08月10日 86刷
    2020年11月01日 新版発行
    2023年04月15日 4刷

    1 春の雪  1~55
      又、会うぜきっと会う
      夢と転生の一大物語絵巻

      自らの死を意識しつつ書かれた
      三島最後の作品、全四巻

    2 奔馬   1~40
      刀を腹へ突き立てたその時、
      右翼青年が見たものとは

      「これを読めば本当の僕がわかって
      もらえるだろう」と語った

    3 暁の寺  1~45
      世界は、一瞬一瞬ごとの「滝」ー
      おそるべき認識が物語を貫く

      本作の完成は「実に不快だった」
      と謎めいた言葉を残した

    4 天人五衰 1~30
      劇的かつ稀有なる物語
      三島文学、究極の到達点

      1970年11月25日、本作を脱稿し
      三島は市ヶ谷に向かった享年45

  • 初めての三島由紀夫。そして最後の作品。
    50年経つと言葉は変化するというけど、約50年前のこの小説の言葉には知らない日本語がたくさんあった。
    読みにくいと思うことも多々あったけど、それ以上に言葉が洗練されていると感じた。守らなければならない消え行く日本語もあるかもしれない。

    この時代の背景をもう少し知りたいと思った。

    ※少しネタバレ

    19歳という年齢から仕方がない部分があるけど、清さまが幼すぎて、聡子さんの想いはとても強かった。

  • まだ読んでいる途中だけれど、今抱えている興奮をどうにか書き留めたくて書いてみる。

    日本語の豊かさ美しさ、三島由紀夫の「美」に対する観察眼と操る言葉の引力とに、もうノックダウン寸前。ページを捲る手が止まらない。
    時間を忘れて言葉の渦に入り込める嬉しさと、改めて認める日本語の美しさとにニヤニヤしながら読んでいる。

    追記:
    読み終わった。いつの時代も男子は軟弱だ。最後のページに鳥肌がたった。美しい。
    そして三島の脳内メーカーは「死への羨望」に占められている。

  • 聡子と伯爵、父娘の会話の妙。

  • 「冷たく見えるほどに高くはないが、象牙の雛のように整った形の鼻をした聡子の横顔は、ごくゆるやかな流し目のゆききにつれて、照り映えたり翳ったりした。ふつうは下品だと思われている流し目が、彼女の場合はかすかに遅くて、言葉の端が微笑へ流れ、微笑の端が流し目へ移るという風に、表情全体の優雅な流動の裡うちに包まれているので、見ている人に喜びを与えた」

    三島由紀夫の遺作として有名な、四巻から成る「豊饒の海」の第一巻。四巻全てを連ねて読めば、色々なテーマが重層的に織り込まれているが、本書単体では、明治•大正の華族の青年である清顕(きよあき)の悲劇的な恋愛を描いた作品となっている。初めて読んだのは十五年くらい前で、久々に読みたくなり本書を手に取った。

    清顕の友人である本多が法を探究する場面や、清顕のお婆さんが土壇場で豪放な性格を見せるシーンは好きだし、再読して、二巻以降の伏線が散りばめられている事を発見し、とても緻密に練られたストーリーなのだと気付かされた。ただ、総じて言うとストーリーはあまり好みではなく、清顕に対して「いや、めんどくせえな!」と終始ツッコミながら読んでいた。

    私が本作に最も惹かれるところは、その文体で、初めて冒頭に引用した文章に触れた時の感銘をよく覚えている。世界中のどの言語にも、その言語でしか表現できない趣があり、その趣に触れることができるのは、それぞれの言語の話者の特権だと考えている。日本語話者にとっては、この作品の文体を楽しめることがその特権だとすら思う。

    歌詞は好みでないが、とんでもなく美しいメロディーの曲を聴いたような、そんな読後感だった。

  • 華族に生まれた清顕と聡子の叶わぬ恋物語。

    物語の冒頭から一心に清顕への想いを感じさせる聡子だが、
    思春期という混乱の最中にあり、さらに意志ではなく優雅に生きる信念の清顕は、真っ直ぐ自分の心と向き合えない。

    彼がやっと素直に聡子への想いを受けとめられるようになった頃には時すでに遅し。聡子は宮家との婚約が決まって勅許もおりた後でした。

    あってはならない禁忌。
    幸せな結末などあるはずのない恋。
    当然ながら2人は破滅の道を進むことになります。

    「春の雪」とネットで検索すると、
    「春の雪 こじらせ」と出てくるほどに物語全体を通して清顕の未熟さが目立ち、聡子の凛とした生き様と強い覚悟がより際立って見えました。
    女性のが大胆で決断する時も潔い傾向なのは、いつの時代も一緒ですね。

    自分の想いと向き合ってからの清顕は健気でもあり、捉えようによっては独り善がりでもあり。とはいえ、懸命に月修寺に通い詰める姿は読んでいてさすがに切なく、彼の想いをなんとか叶えてあげたい!と親友・本多と同じ気持ちになりました。

    私にとって初めての三島作品でしたが、無事に完走できました!

  • 初めて三島由紀夫の作品を読んだ。

    没入感がすごい。具体的すぎず、抽象的すぎない言葉、これこそがクオリアを伝え得る言葉だと思った。
    清顕の複雑な心情の変化がはっきりと感じられた。
    もっと時代背景を理解していればより楽しめそうだ。

    とにかく面白かった。早く第二巻を読もう。

  • 時代錯誤してない、今更ながらこの圧倒的な表現力に驚かされ、どこを取っても素敵な言葉で埋め尽くされていて、文章がキラキラして見える。笑
    なんでこんな文が書けるんだろう。これを書いた時、三島は三十代?すごい語彙力と表現力。

    物語は言わずと知れた悲しい恋の物語。でも、あえて私は主人公、清顕(きよあき)ではなく、その親友の本多に着目したい。

    清顕に羨望の眼差しを向けるも、相手にもされず、それでも助けを求められたら喜んでその手を差し出す。なんと健気で、究極の愛なんだろう。清顕が失踪する手助けをし、その旅立ちの瞬間の描写がいいですね。

    「じゃ、行ってくるよ」と、清顕は言った。それは明らかな出発の言葉だった。友がこれほど青年らしい晴れやかな言葉を口にしたのを本多は心に銘記した。鞄さえ置き去りにして、制服に外套だけで、その桜の金釦をつらねた外套の襟元を左右に粋に広げて、海軍風の詰襟と、純白のカラーの細い一線を、やわらかな皮膚を押し上げている若い喉仏のあたりに見せている清顕は、制帽のひさしの陰に微笑を含みながら、破れた鉄条網の一部を川手袋の片手でたわめ、身を斜かいに乗り越えようとしていた。。。

    もうね、分かりますね。本多の愛が。どんだけ清顕を、崇拝しているんだ。美化していると言うと語弊がありますが、もう本多の目には清顕はこうとしか映らないんだろうな。
    美しい親友。今まさに遠くへ行ってしまう。その悲しさや悔しさよりも、本多には清顕の美しさの方が目に余るんだろうなぁ。

    愛ですね。これは。

    なんて、ストーリーとは全く別の視点で勝手に感想を述べてますが、悲恋は好きじゃないのです。やっぱり物語はハッピーエンドが好きなのよね。本多の(ちょっといやらしい)妄想にもドキドキでした。
    今で言うBL?なのかなぁ?この小説が書かれた頃の時代を思うとすごい叩かれたか、絶賛されたか、想像もつかないぐらい先を行ってるというか、斬新だったのかも知れません。

    あーでもすごいな~三島。日本語の美しさ、描写の素晴らしさ、どれも手に取るように伝わってきます。こんな私が三島を語るなですが、語彙力を増やしたい。もっと伝える事が出来るのかなぁ。三島文学にはまる人たちの気持ちが少しだけわかったかもです。

  • 最初の30ページぐらいは読みにくかった。
    でも、そこを越えるとどんどん読めて、心情や
    情景の描写にハマっていった。

    映像にしたら数秒ぐらいのことを、何ページも書けるぐらい洞察もすごくて、思想があって、文章力があって、こんな日本語の使い方があるんだとびっくりした。初めての日本語にたくさん触れた。

    波のことを書くだけでも、数行に渡って波の動きの描写や主人公の心情、思想を入れて書かれてる。
    清顕が最初は好きになれなかったけど、途中から、「若さ」ってこういうことなんだな、と思った。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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