音楽 (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050546

感想・レビュー・書評

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  • 1964年「婦人公論」掲載
    1972年映画化

    精神科医汐見氏の「音楽」
    精神分析における女性の冷感症の症例
    という手記という形態をとている

    「私、音楽が聴こえないんです」
    汐見の診療所へ 美しい女性が訪れる
    彼女は恋人と愛し合うことができない冷感症に悩んでいるという

    しかし 彼女の告白には嘘と幻想が入り混じる
    治療は困難と思われるが
    医師はすでに彼女の魅惑に落ちている

    新潮文庫のか三島作品の分類によればサスペンス
    そして解説は澁澤龍彦氏で
    三島由紀夫の主流の作品ではないとしている
    私もほぼ知らなかった

    没後50年の時の新装版新解説の一冊
    新解説は村田沙耶香さん
    初めて買った三島由紀夫作品で
    彼女にとって完璧な理想的物語という
    精神治療、近親相姦、そして心理学
    まさに「箱庭」だそうです

    天才が天才を解説して 沙耶香様が再解説というか、賛美 余計にわからなくなる ƪ(˘⌣˘)ʃ

    精神科医の手記であるから精神分析論とか象徴アイテム等は出てくるけど それを全て肯定的に使っているかというとそうでもなさそう
    私は、もっと単純に当時の婦人公論読者に
    女性の深層心理と性行為の深潭のエンタメ提供だったような気もしますね

    • shintak5555さん
      村田先生の解説だけでも読みたい!
      村田先生は私によって神ですから!ぽうっ!
      村田先生の解説だけでも読みたい!
      村田先生は私によって神ですから!ぽうっ!
      2024/10/25
    • おびのりさん
      雪様 おはようございます
      そうそう読み手によって作品も変わるから
      300ページないし
      お堅い話でもないので すぐ読める

      三島由紀夫が 婦人...
      雪様 おはようございます
      そうそう読み手によって作品も変わるから
      300ページないし
      お堅い話でもないので すぐ読める

      三島由紀夫が 婦人公論の連載を受けて
      反響を気にしていたんじゃないかなって
      状況が好き
      2024/10/26
    • おびのりさん
      shin様 おはようございます
      私も沙耶香様好きなんです
      この「音楽」の主人公の女性は 沙耶香さん好みかもしれません
      でも そこまでクレイジ...
      shin様 おはようございます
      私も沙耶香様好きなんです
      この「音楽」の主人公の女性は 沙耶香さん好みかもしれません
      でも そこまでクレイジーではないけれど
      図書館の予約は きっとありませんから
      すぐお手元に来ますよ 笑
      2024/10/26
  • 徹底的に作り込まれた人物と世界観。それ故に現実感があまりなく思える。
    しかし内容は流石と言ったところか、美しい文で記述されるえげつない物語には天晴れ。
    「音楽が聞こえない」という比喩は、(もしそれが比喩であるとするのならば)漱石の「月が綺麗ですね」よりも好きかもしれない。

  • 普通に面白かったです。エンタメ小説として読みました。
    ただ、三島由紀夫特有の美麗な文章は比較的少なかったように思いました。
    フロイトの心理学を少し読んでいてよかったです。

  • 罪に罪を重ねた人間が最後にほっとするのは電気椅子に座った時だ。

    この価値観がたまらなく愛しいと思った。
    誰かに許されたい、もう自分が分からなくなって誰かに自分を正して欲しい。そんな感覚が人間過ぎる。大丈夫でない、可哀想な無力な他人を可愛がる。メサイアコンプレックスの成れの果てのような作品でニッコリとすらすら読んでしまった。

    音楽というあまりに綺麗すぎる比喩。
    人間の内面の複雑さと爪弾きのアルペジオ。
    題材に似合わず上品で素晴らしい作品だった。

  • ここ二週間ばかり、僕の思考は停止していた。行き詰まってしまった。話し相手が不在ということが大きな理由で。これまでの僕の思考の鑑としてきたものは“彼女ならどうするか”という問いだった。
    さて“彼女”とは。僕のいう“彼女”とは俳優の松岡茉優さんのこと。松岡さんなら、どうするか、どんな答えを出すのだろうか、と常に僕の思考の“話し相手”としてきた。
    松岡さんの執筆した文章が胸に沁みて、以来ずっと“彼女ならば”と考えてきた。何を馬鹿なことを、とお思いでしょうが…僕自身、そう思わなくもないけれど、思いや考えをまとめる一助として、身近に感じてきたことは事実なのです。
    そんなにまで思ってきた“彼女”は、なぜ現在、僕の中から消えてしまったのか。それは、あの日の夜のこと。松岡さん、といえば最近大きな知らせがありましたこと、皆さまも既にご存知かと。僕は第一報の直撃を喰らい、心臓の鼓動が止まってしまうのではないかと、慌てて深呼吸を繰り返す事態に。視界は隅から暗くぼやけてしまい、音も聞こえないし、その場にへたり込んでしまった。そうしなければ、倒れていたかもしれない。衝撃、という言葉が、これほどまでに相応しい事態も経験がなかった。部屋に居たときでよかった。不幸中の幸いだった。6月6日が悪魔の日なら、6月7日は悪夢の日として、これから僕は記憶するだろう。
    あの知らせをどうしても直視できなかった僕の思考回路から、それまで、その大部分を占めていた松岡さんの存在から目を逸らすことにした。無視するより他になかった。耐えられなかった。
    いくら僕が松岡さんを想おうとも、何がどうこうなるわけでもないし、それはじゅうぶん、わきまえていたけれど、僕の中から松岡さんの存在を消すこと以外に、無視する以外に、僕は、自分を保つことも、自分を守る手立ても見出すことができなかった。彼女のステイタスが変化しただけなのに、僕は受け止めることができなかった。理由はまったく分からない。分からないけれど、彼女は、もう以前の“松岡さん”ではなくなってしまったのだという事実を直視できなかった。なんて身勝手な僕のエゴだろうか。松岡さん自身は、まったく関わりのないことで、僕の勝手な独りよがり。不様極まりない。以来、二週間以上に渡り、思考停止という次第。まったく馬鹿な話なのだけれども。わかりやすく決着をつけるとすると、それは僕自身の、いわゆる自己嫌悪。現状では持ち直しつつも、こんな程度で大騒ぎしてしまう僕自身が許せない。
    そう。僕は、こんな自分が大嫌いです。

    『音楽』
    物語の中の“音楽”とは、つまりそういうことだった。僕の中での“音楽”とは“彼女”の存在だったとは言えまいか。つまりそういうことだったのでは、と。僕は、そう理解した。
    何かしらのきっかけで、何かしら心身への影響を受ける。深く考えるまでもなく、そういうこともあり得る話で。僕自身、思い当たることは多々ある。しかしながら今回のことも踏まえつつも、現在に至るまで、躓くこともあるけれど、僕の心身は大事に至らず日々を送ることができている。僕は鈍感なのだろうか。

    精神の在処は脳だと思う。精神を機能させる装置は脳だと思うけれど、心はどうか。
    精神と心は似て異なる。精神の在処は脳だとして、はたして心は、いったい僕らの身体の何処にあるのだろうか。
    心に受けたダメージは胸にくる。シンプルに胸が痛くなる。心の所在を訴えている?
    しかし、胸の、いったいどんな仕組みが心を機能させるのか。それらしいものは、まったく見当がつかない。もしかしたら心臓かな。心臓は、文字通り“心”の臓器なのかな。

  • やっぱり三島は深くえぐり込んでくる。
    不協和音なのに美しく酔わせる音楽みたいに。

  • 冷感症を題材にしたストーリー。「音楽」というタイトルからは想像もつかず…いい意味で裏切られた。
    物語は精神分析医・汐見の視点で繰り広げられる。患者である麗子の魅力に翻弄されつつ、冷静な分析を続ける汐見が格好良い。
    解説でも言及されていたように、推理小説のような感覚で読み進められた。
    題材の通り性描写が軸にあるが、どれも美しく繊細に描かれていて読みやすい。
    三島作品のなかでも、特に好みの作品だった。

  • "音楽"を聴く。

  • 貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00191409
    (当館所蔵は1990年の改版です)

  • 三島由紀夫先生の文章は非常に良い、難しいがしかし、、

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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