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Amazon.co.jp ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784101055725
作品紹介・あらすじ
都会での仕事を三十五歳で辞め、北海道の小さな村で郵便配達をする女。川のほとりの木造家屋で世界中の「音」を集めながら暮らす男。偶然出会った両者は、急速に惹かれあっていく。からだでふれあうことでしか感じない安息と畏れ、そして不意に湧きあがる不穏な気配。その関係が危機を迎えた嵐の夜、決して若くはないふたりが選択した未来とは。深まりゆく愛と鮮やかな希望の光を描く傑作。
みんなの感想まとめ
自然豊かな北海道の小さな村を舞台にした男女の恋愛物語が描かれています。主人公の女性は都会の喧騒を離れ、郵便配達の仕事をしながら静かな生活を送る中、音を収集する男性と出会い、心と身体を通じて急速に惹かれ...
感想・レビュー・書評
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松家仁之『沈むフランシス』新潮文庫。
デビュー作の『火山のふもとで』を皮切りに本作の『沈むフランシス』『光の犬』と、3ヶ月連続で新潮文庫から刊行されるようだ。
タイトルの『フランシス』とは一体何か。表紙に犬かキツネのような生き物の顔の写真が掲載されているが、これが『フランシス』ではない。読んでみてのお楽しみなのだが『フランシス』とは全く予想外の意外なものだった。
自然豊かな北海道の小さな村を舞台に描かれる男女の恋愛の物語。静謐な自然を背景に儚くも、綺麗ごとだけでは済まない恋愛の形が少しずつ明らかになっていく。
他人との付き合いに煩わされることなく、自分のことなど誰も知らない自然豊かな田舎でひっそり暮らしたいという主人公の撫養桂子の気持ちはよく解る。自分も昨年、隣近所の無い田舎の中古の平屋に住み始めた。地域の住人とは最低限の付き合いをすれば良いし、他人の目など気にしなくとも良いので、非常に楽である。
本作に描かれる撫養桂子と寺富野和彦の30代半ばの男女の肉体を優先する恋愛関係も解らないでもない。恐らく2人は結婚などという形式的なことなど頭には無く、残された若さを肉体的なつながりで費やしたいと思うのだろう。
都会での仕事を35歳で辞め、男とも別れ、北海道の小さな村に郵便局の非正規社員となった撫養桂子は郵便配達をする毎日を送っていた。やがて、桂子は川辺に佇む木造家屋で世界中で収集した音をオーディオで楽しみながら暮らす37歳の寺富野和彦と知り合う。2人は急速に惹かれ合いながら、身体を重ね合う日々を送る。
桂子は、和彦の噂を耳にすると共に和彦に対する疑惑から心が揺れ動きながらも、肉体は和彦を求めていた。やがて、村を嵐が襲い、和彦の川辺の家にも危機が迫る。
読んでみるとデビュー作の『火山のふもとで』の出来が良く、そこまでのレベルではないが、巧い小説であると思う。
本体価格550円
★★★★詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
耽美で夢心地な言葉選びと読み口。
200ページ足らずのコンパクトな文量ながらも、目眩く背徳と、粛然とした筆運びによってアバンチュールを静かに、でも身じろぎを感じられるくらいの気配は保ちつつ導かれたな、という読後感。
密かに真ん中が火照る感じ。
表紙は「飼っていた北海道犬がおしつけてくる湿った鼻」(p67)、これがなんと男性器の見立てであることに横転。そんな可愛いものだったかしら。つまり、表紙にでかでかとアレしたアレが載っている訳であります。雪の結晶まで付けてオシャレさん⭐︎
まずもって、冒頭から死体が水路を流れてくる場面で入るわけだが、うっかりすると読んでてその事を忘れてしまうくらいの静かな展開。
わたしはメモを取っていたからああそういえば、と思い至ったけどもぽーっと読んでたらスルーしてたかもしれない。そのくらいの静けさ。
タイトルにも掲げられている『フランシス』とは水車機構のこと。読む前でも後でもいいので「フランシス水車」については調べておくと良いかもしれないです。
ちなみに、一口に水車の仕組みといっても奥が深い。ペルトン式とかカプラン式とか色々あるようです。
フランシス水車の特徴としては高落差に向いた仕組みとのこと。ダーッと勢いがよいということでしょうか。なんとなく、よからぬ男女の仲とも通じませんか?水面から離れた平常時はスン…としていながらくるっと回って接着した時はビシャビシャ、ガヒャガヒャ、ジャバジョボと激しく波打つ感じ。
そんなことないですか?
知的なのに痴的。
「だって、わたしとあなたはここにいる」(p196)
水車さながら、水流と羽根車が接する度、呼応するように心がざわめいてざばざば取り乱す様子と似通ったイメージ。
「冬眠ってね、いったん死ぬことなのよ。引きかえしてこられるし、行ったきりでは終わらない」(p161)
そう、フランシス水車の羽根は行ったっきりでは終わらない。
流れが続く限り、やがては一周して返ってきてまた水面をざばざばと掻き乱してゆくのであります。
「ピエール・マントゥーのストッキング」(p43)という知見を得ました。
静かに、静かに。
1刷
2026.2.6
2026.2.7 ちょっと追記-
shintak5555さん
いつもありがとうございます!『火山のふもとで』、PRタイムズの紹介記事のタイトルが「静かな傑作」ですからね。しか...shintak5555さん
いつもありがとうございます!『火山のふもとで』、PRタイムズの紹介記事のタイトルが「静かな傑作」ですからね。しかもすごく評判が良いですね。積読のどこかにあるはずですので見つけ出します…!2026/02/07 -
2026/02/07
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2026/02/07
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タイトルと装丁から 動物絡みのサスペンスかな?と思ったわたしは いい感じで裏切られる。大人の恋の話じゃありませんか?恋愛小説だったんだぁ〜!筆致が大人。たまには こういうのもいいなと思う。途中収集された音の描写が これでもかというくらい繰り返されるのが 個人的に う〜ん の感じ。大人だからかほどほどの距離感で深まっていく関係…んなわけないじゃん!とツッコミいれながらも 大人だからねーで。桂子目線じゃなく和彦目線なら どんな話になるんだろう?と 余計なことを考えてしまいました。
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ただ何も考えずに読みたい時に良い¨̮⃝
恋愛話だけじゃなくて自然の素晴らしさと恐ろしさもすごく伝わる内容だった。
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なぜこの2人が惹かれ合うのか、ぼくにはついにわからない。そして、わからせない路線においてそのわからせなさをなんらかのパッションでごまかすようなだらしなさもない(言葉にしようのない情念・官能で惹かれ合う関係がありうることくらいならぼくにだって想像はつくのだが、そうした下品さ・下世話さから著者はきちんと一線を引いている)。映画的とも言えるきっちりした構成やシチュエーションの設定、そして凝った細部や洒脱な文体に唸る。ゆえに、小粒・小ぶりに終わった感はあれど一個の作品としての完成度はあなどりがたく「強度」を感じる
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「火山のふもとで」がとても良くて、「沈むフランシス」も手にとりました。
やっぱり情景描写がすばらしく素敵だった。
私の祖父母が道東に住んでいたこともあり、一層目に浮かぶ景色だった。
この小説で感じるのは「瞬間」を生きているという感覚。自然も、佳子と和彦の関係も。
こんな生き方してみたいなと思ったり思わなかったり…。
この小説は登場する「場所」が少ないのが魅力になってると思う。
2人の過去は多く語られないのもいい。
安地内村の、特に和彦の家にスポットライトがあたっている感じが北海道の深々とした雰囲気と相まって素敵でした。
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いきなり物騒な始まりですが、中は至ってまともな恋愛小説。
都会に疲れ北海道の寒村で郵便配達を始めた女性と、小水力発電の管理をする謎の男性。あるいみ、ごく有りがちなストーリー。主人公の女性のキャラクターだけ綺麗に立って、周り登場人物が全体にぼんやりした感じがありますが、何と言っても素晴らしいのはその文体。奇を衒うでもなく平易な文章なのですが、何故か染み込んで来るます。
『火山のふもと』程の充実感はありませんが、これはこれで良い小品です。 -
連綿と続く川の流れの中で意図せず出会い意図して一緒に過ごすことを選んだふたり。
フランシスに堰き止められ灯りを灯し続ける未来が垣間見えた矢先に沈むフランシス。
連綿と続く川の流れの中で今度はふたり離れずにどこまで寄り添い流れるんだろうか。
そうかもしれないし枝分かれする川の流れに逆らえず手を離してしまうかもしれない。
流れてときにとどまる煽りだけは確とした揺るぎない自分自身ですよね覚束なくとも。
…ジャケ買いしたんですが。
(雪の結晶鼻に乗ってるし…) -
恋愛描写(というか性愛描写)要らね
って思うくらい、環境とか
メインキャラ以外の人物ディテールが
素晴らしかった。
これだったら ックス描写じゃなく美味しいご飯とか美しい風景描写だけで攻めてほしかったなぁ…
やっぱり私は、
環境描写がびっしり且つ美しく
書かれてる作品好こなんだな。
後は、川、フィールドワークが出てくる作品に外れはないと改めて実感。更にこれはフィールドレコーディングまで…最高。
ただ、読後、モチーフの意味が分かってしまうと表紙写真やタイトルがあまりにも無粋(安直)だなぁ…となってしまい…w -
派手な話では無いけれど、その時の音、匂い、季節、空気を文章から新鮮に感じられて、しみじみと良いなあ。
沈むフランシスってそういう事だったのね!? -
読んでいると、そこに風景や人の様子がありありと目に浮かぶ文章はすごいと思う。
何人かの人が出てくるが、基本的に善意の人ばかりでほっとする。
久しぶりに小説を読んだけれど、やっぱりいいなと思った。集中力が減退しているのも、感情の揺れが鈍くなっているのも発見した。 -
東京から北海道の小さな村に移住し郵便配達の非正規雇用の仕事をする桂子と音蒐集家の和彦が出会い、距離を縮めていく。和彦の隠された秘密に2人の関係は、、、、。ふわふわしながらも物語が進み、非日常的であり、ありふれていそうにも思える中年男女の情事がすごく文学的であっという間に読了。
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この作家の文章は静謐で自然描写も丁寧で優しく北海道の四季、自然を描いている。
40歳手前の別居中の男と東京から男と別れて子供時代を過ごした道東で郵便配達をしての男女の触れ合いを描いている。
音を主軸に厳しい北海道の冬と短い春、秋の気候の描き方が美しい。
題名のフランシスは何処から来ているかはこの本を読んでください。 -
「火山のふもとで」で感動したので松家仁之さんの作品をふたたび 今作では"音"
「私は何とつながっていればいいのだろう?どこに自分の居場所はあるのだろう?」
ゆっくり時間が過ぎて行く様はまるで名作映画をみているようでした -
冒頭の水死体が流れるシーンはどこに繋がるのか? 物語の後半で水死体を巡るシーンが、主人公である桂子の恋人の、おそらくはかつての不倫相手の夫だと妄想するシーンに繋がるのだろうか? だとしても、このプロローグは何のために用意されているのか? 『火山のほとりで』があまりにも良くできた作品だったので、本書にも期待したが、主人公桂子の不倫?相手である和彦に対して生理的に折り合えない部分が多く、B級映画と同じで、いったんこちら側が醒めてしまうと、あちこちの綻びが気になるという、負のスパイラルに陥る。そのため、本来は良いシーンなのだろうと思われるところでも感情移入ができなかった。そもそも作者がこだわる趣味を並び立てるのは良いが、意図的であるにしても、つねに桂子の思考でしか語られないから、相手が何を考えているのかわからない。
本作の全体を包み込むメッセージは川なのだろうか?「川は父と釣りをした美しい思い出であり、屍体を運ぶ冷徹な物理現象であり、荒れ狂う濁流であったり、フランシスを呑みこむものであったり」するものの、ただただそこに流れ続ける…ということを示したいのか。それもまたうまく機能していないように思える。そもそも女がこれほどセックスに対して観念的なのかと言えば、読み手からすると作家が女を演じているに過ぎない。もちろん身も蓋もない批判だということは承知しているが、先のB級映画の喩えのように、一端引っかかると、粗だけが見えてくるようになるからだろう。
作品の一部をなす装丁だが、本書といい『優雅なのかどうか、わからない』といい、内容とまったく関わりのないイメージカット、あるいはメタファーを使うことに拘りすぎなのでは? ちなみに、カバーに犬のアップを使ったのは「犬の鼻は和彦の秘部の象徴?」「生々しい愛欲シーンの後で見直せば<犬の鼻=セックスシンボル>であったかとも思える」などという感想を見つけた。語るに落ちるような気もする。
*舞台となる安地内や枝留はいずれも架空の集落だ。 -
なんという綺麗な本なの。
聞いている音を通して、実際はわたしはただ活字を読んでるだけなのに、景色がとても鮮明に美しく広がる。
清少納言の枕草子
「春は、あけぼの。やうやうしろくなりゆく山やまぎは、すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの、細ほそくたなびきたる。」
に通じるものがある。
本作
「春はまず空からやってくる。」
「抜けるような青空でもなく、雪を生むぶ厚い雲でもない、かすみで薄ぼんやりした白く明るい空が広がるようになった。」
御法川さんが見た夕焼けのシーンでは、自然と涙があふれてた。
目の前は本なのに、御法川さんの言葉でわたしのまわりが雲とオレンジの夕焼けが広がった。
その後もね。御法川さんの「無理をして起きあがろうとは絶対にしないこと」の言葉に涙があふれた。
呼吸を聞くだけでも、いろいろなことが分かる。
そう、緊張してると呼吸って浅くなるもんね。
でもその音に意識を向けたことってあったかな。
自分自身にも、かかわっている相手にも。
かたちあるものはいつか消えてしまう
消えたものは、かたちを失うことでいつまでも残る
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