外科室・天守物語 (新潮文庫)

  • 新潮社
4.09
  • (1)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 170
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101056050

作品紹介・あらすじ

私はね、心に一つ秘密がある──。伯爵夫人手術時に起きた〝事件〟を描く『外科室』。眷族を伴として姫路城天守閣に棲む妖姫が、若き武士と出逢う『天守物語』。二つの代表作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆『縷紅新草』。そして『化鳥』『高桟敷』『二三羽──十二三羽』『絵本の春』を収める。アンソロジスト東雅夫が選び抜いた、鏡花文学の精髄八篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 抒情的な言葉の並びがリズミカルで流麗
    独り言のような語り口調が笑いを誘うところもある
    赤蜻蛉の唄が印象的で刹那
    怪異な物語の情景がありありと浮かぶ

  •  幼くして美しい母を失った鏡花の母への思慕の情と、鳥や虫への偏愛を窺わせる『化鳥』、少年のときに家で見た二人の怪しい婦人、それは一体何だったのだろうと振り返る『霰ふる』、自分の心の秘密を譫言で言ってしまうかもしれないからと麻酔を拒んで手術を受ける伯爵夫人を描く『外科室』、当てもなくブラブラしていたときに見た光景に心を奪われていた男が、一気に怪異に見舞われる『高桟敷』、家の庭に来る雀を慈愛をもって可愛がる様子がほほえましい随筆『二三羽―十二三羽』、しかしこれもやはり鏡花、終盤不思議な出来事に出くわすこととなる。家の近くの様子を描写していたかと思いきや、大水により流された古屋敷に巣食っていた大量の蛇が白浜から鎌首を擡げている怪異の様がラストに描かれる『絵本の春』、恥ずかしめを受けお堀に身を投げた零落の工女の墓石を巡る不思議と彼女を悼む人たちの愛憐の情を描いた鏡花最晩年の作『縷紅新草』、そして傑作戯曲『天守物語』。

     副詞、接続詞に使われる漢字がひらいているのはちょっと残念だがやむを得ないだろうし、難しい読み方にはルビが付されているので、読むのにそんなに苦労はしないだろうと思う。
     各編ともそれほど長いものはないし、怪異幻想の作家、鏡花の入門編としては適当な作品が選択されているのではないだろうか。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

(いずみ・きょうか)
1873年金沢市生まれ。1893年、「京都日出新聞」の「冠弥左衛門」連載でデビュー。主要な作品に、「義血侠血」(1894)、「夜行巡査」(1895)、「外科室」(1895)、「照葉狂言」(1896)、「高野聖」(1900)、「婦系図」(1907)、「歌行燈」(1910)、「天守物語」(1917)などがある。1939年没。近年の選集に、『泉鏡花集成』(ちくま文庫、全14巻、1995-1997)、『鏡花幻想譚』(河出書房新社、全4巻、1995)、『新編 泉鏡花集』(岩波書店、全10巻+別巻2、2003-2005)、『泉鏡花セレクション』(国書刊行会、全4巻、2019-2020)など、文庫に『外科室・天守物語』(新潮文庫、2023)、『高野聖・眉かくしの霊』、『日本橋』(ともに岩波文庫、2023)、『龍潭譚/白鬼女物語 鏡花怪異小品集』(平凡社ライブラリー、2023)などがある。

「2024年 『泉鏡花きのこ文学集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泉鏡花の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×