友情 (新潮文庫)

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レビュー : 446
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057019

感想・レビュー・書評

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  • 白樺派というと『お坊ちゃんたちの道楽』とか『生活の大変さを知らない理想主義者』といったイメージが世間一般のイメージです。本作は大失恋小説であり、親友との三角関係を描いた小説であり、現代ですともっとドロドロとした内容になりそうなもんですが、そこは白樺派です。性善説に立ったピュアな描写、清く正しく美しいプラトニックな恋愛讃歌に貫かれています。
    本作の特徴は冒頭の武者小路実篤自身の自序でネタバレしてることでしょうか。
    これががなかったらこの本はまじでつまらなかったかもしれない。この自序が失恋という喪失経験が実は獲得経験の萌芽であると解釈できるし、その個人的失恋を前提として他人の新たなる可能性が開かれるということも示唆している。つまり因果は人知を超えるという達観した視座が加わっている。この一ページあるとないとで恋愛小説の次元がまったく違うものになりました。

  • 90年前に書かれたとは思えないほどの活き活きとした人物描写。素晴らしい人間賛歌やね。男が恋に溺れだしたときの心理描写が鮮やかで深く印象に残った。ずっと読み継がれるべき古典作品。

  • この作品は主人公が失恋する話である。しかし、決して不幸な、ブルーな気分になるような話ではないと思う。かと言って幸せな結末でもない。彼は恐らくその先も苦労する。しかしそれもまた青春なのであって、彼にもいつかは幸せが訪れる・・・そんな優しく、温かな願いが流れている物語なのではないだろうか。
    この話のメインは友情と恋愛、それも一方通行な恋愛だ。野島の杉子への想いは儚くも破れ、彼女は野島の唯一無二の親友・大宮の元に行ってしまう。大宮は野島と固く結ばれた友情と杉子への想いに葛藤しつつも、最後には杉子と共に歩む道を選ぶ。恋愛の図式としては単純な三角関係であるけれど、野島の日に日に募っていく杉子への想い、願望、懇願のその様は、片思いの経験がある世の男性ならば思わず共感してしまうものなのではないかと思う。
    青春には”中二”が付き物で、現実を超えた妄想に陥りやすい。恋も然り、「結婚したら・・・」とか「自分のことが好きなのかも・・・」とか、足が地に着いていないような野島の姿を見ていて、何とまー痛々しいのやらと読んでいるこちらが恥かしくなってしまった。或いは彼女の行動の一つ一つを自分に結び付け、「好かれている」「嫌われている」で一喜一憂している姿が端から見て痛かったり。
    そんな野島の私情を客観的に描いている訳だけれども、青春の痛々しさを丁寧に描く筆遣いには作者の洞察力の深さを覚えずにはいられなかった。だからこそ、この作品で描かれる恋愛は極めて現実的に近い側面を持っているのではないかと思う。
    一方で、深刻に話が進む(漱石の『こころ』みたいな)のかと言えばそうでもなく、むしろ明るく軽妙である。同時に、作者の優しく温かな眼差しが終始一貫感じられた。それは、結果として親友との友情に裏切られる形での失恋にはなってしまったけれども、それもまた青春の一ページ、失恋という孤独に耐えねばならぬ運命に進む野島を、或いは幸あれ―とそっと見守っている・・・そんなようでもある。

  • 野島と同じ二十三歳で手にすることが出来たのは、遅かったながらも幸運であった。力強い思想の中にも人間の弱さがこれでもか、と出ている。自分とひたすら向き合いながら、先を先を読もうともがいて、それでも結局運命は思い通りに動かない。自分をいくら突き進めても、最後は相手次第だったという儚さ。圧巻の物語だ。

  • 名作。必読。
    散々片想いして、親友に裏切られるっていうまぁ最低のパターンを気持ちいいリズムで描く。
    この文章の気持ちよさは何じゃろ。
    これが名作たる所以なんでしょうか。

    主人公野島が不憫で不憫で。
    最後にガッツみせてくれます。

    あ、カバーデザイン変えたら、きっともっと売れます。

  • 「読書力」の35ページにある本…
    法政大学第一中・高等学校で岩井歩教諭が実践した、定期テストに読書問題を取り入れた実践。

    1冊目…中3の定期テストに

    読みやすい本。
    3年前に読んだので、内容は覚えていない。

  • 男の視点からみた恋愛と友情。
    恋は盲目とはいつの時代も同じ。
    私もこんな風に人を愛し、愛されたいな。

  • 恋に盲目になるところから始まり、友人達の言動を通して自分の姿に少しずつ気づく主人公。気付くコトと受け入れるコトの狭間で苦しみながら、親友への感謝も忘れない。親友もしかり。泥沼の展開なハズなのに、何となく清々しい気分にしてくれる1冊でした!!

  • 救いがない上に答えもないなぁ。
    果たして大宮は友情のない人間かと問われれば、そうではないと思う。

    人によって捉え方が変われば、答えも変わる小説って、誰かと話し合いたい。いわゆる価値観に帰結することになるけど議論がしたい。

    そう考えると、この小説は教科書向きだなぁって思う。いや実際、掲載されてるだろうけど。

  • たまには昔の名作も。

    親友として、そして同業者としての最後のふたりの手紙のやりとりが格好よい。

    主人公、大宮、杉子、それぞれの一途さゆえの傲慢さ(好きな人を理想化する、自分を好きだと言う人への冷たい扱い、親友を悪く言い人でも好き…)がリアル。

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著者プロフィール

武者小路実篤(むしゃのこうじ さねあつ)
1885年5月12日 - 1976年4月9日
東京府東京市麹町区(現・千代田区)生まれの小説家・詩人・劇作家・画家。ある時から「むしゃこうじ」と当人が自称しているが、一般的に「むしゃのこうじ」読みされている。学習院初等科~高等学科に在学し、東京帝国大学哲学科社会学に入学したが、入学初年で中退。創作活動をはじめ、1910年に志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと文学雑誌『白樺』を創刊。これにちなみ、彼らは「白樺派」と呼称される。
1918年宮崎県児湯郡木城村に「新しき村」を建設。その後も多くの創作活動に勤しんだ。1951年、文化勲章を受章。1976年4月9日、尿毒症で逝去。
代表作に、『お目出たき人』『わしも知らない』『幸福者』『友情』『人間万歳』『愛と死』『真理先生』など。

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