友情 (新潮文庫)

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感想 : 510
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057019

感想・レビュー・書評

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  • 一目惚れから始まった情熱的な片思いがどんどん大きくなり、確かに野島の人生に張り合いを齎した。
    恋のどこまでも個人的な部分があまりにも辛く、幾つもの残酷な場面を想像させる。
    それでもなお友の幸福を願う気持ちは否定されない。
    抜けがけのない幸福などあるのだろうか。
    こんなん何歳になっても食らいますからねー。

    認め合う友と2人だけでいれたなら感じずに済むはずの孤独を、それ以外の人達の介入でまざまざと思い知らされるような感じ、キツすぎませんかね。友達の方ばっか褒められるの。
    だけどその友が大宮のような人だったから、タイトルに偽りなしだなと思う。

  • スマホもSNSもないこの時代の恋愛小説は何だか色っぽくて好き。

  • 解説求む。近代日本文学。なんかいろいろ意味が隠されてる気はするけど分からないので授業でやってほしい。

    童貞の野島が杉子に恋をしてからずっと杉子との未来を想像してて、前半気持ち悪いなあとおもってた。絶対に嫁にならなきゃいけない、家庭に入れよ、みたいなところが気に食わなかった。女を何だと思ってんねん。時代か。。まあ恋をした乙女のような感じだった。野島が。
    大宮との「友情」は死ぬほど感じた。最後の手紙のやりとりもグッと来たし、ラストの野島の手記?もよかった。強く強く生きていこう。

    難しいけど読みやすかったし、恋愛と友情なので共感しやすかった。時代背景とかも絡めて、恋愛と友情の犠牲と力強さというか、それぞれの身勝手さと思いやりみたいなのが描かれていたのでは。

  • 傷ついた孤独な獅子(野島)
    激流にのみこまれた男(大宮)
    可憐な容姿で中身は寅さん(杉子)
    が織りなす恋愛古典。

    恋愛ものの基礎ともいえる、1人の女を巡り2人の男が三角関係を繰り広げる話。漱石の「こころ」よりも明るくて良い。
    主人公の野島に「ここに自然のつくった最も美しい花がある。」と言わしめる程の美少女、杉子。瑞々しく可憐に描かれているのだが、私はその中に「男はつらいよの寅さん」を見た。

     恋に恋している野島は、自分よりちょっと(だいぶ?)素敵な友達の大宮に杉子が好きだと明かし牽制する。恋愛話の王道だけど、どうして振られる者は、無理な予防線を張るんだろう。人は禁じられれば禁じられれほどそれに惹きつけられるのに。
     野島も類に漏れず、恋に敗れる。前半、うじうじしっぱなしの野島と、友情の為と変にスカして自分の気持ちに嘘をつく大宮に最大限に退屈したところで、後半の杉子の怒涛の攻めにスッキリする。

     「思ってるだけで何にもしないんじゃな、愛してないのと同じなんだよ!!!」風天の寅さんが放った言葉が、杉子の大宮に向けた手紙から聞こえて来る。あなた私のこと好きなんでしょ!だったら友達捨てて私を選びなさいよ!!!それでも男か!!!
    杉子の手紙に「男に選ばれるんじゃない、私が選び取る」という意志を感じた。杉子、、もう私の中では、寅子、、、大いに吠えている。登場人物の中で一番男気ある杉子が好きになった。

    武者小路実篤は、「失恋するものも万歳、結婚するものも万歳」と言う言葉を残しているが、私も同感。恋に敗れた野島は、きっと、これから大宮よりもいい男になる。頑張れ野島!!!

  • あるきっかけで、すっかり忘れていたとあわてて『友情』を読む。中学の時は感激したと思うのだが、再読してみてさすが文章は平明、構成もいい名作ではあるが、主人公をあわれには思えなかった。

     主人公の野島はいまひとつ空気の読めない、しかしいい人ではあるが、失恋をばねに強く生きるというのはなさけなく、こんな人に同情したのかな~。むしろ強靭に自分の意思を貫いた杉子がいきいきとしていた。間に入った親友の大宮はちゃっかりだよ。

     『戦争と平和』を読んだばかりなので、そうそう、武者小路実篤もトルストイに心服していたのだが…と思う。

  • 『文豪とアルケミスト』舞台を見て読了。
    野島のモデルは作者である武者小路実篤自身。
    大宮のモデルは白樺派の作家で親友の志賀直哉。
    この作品で描かれているのは一種の理想の友情。
    高潔な友情。

  • 健全な恋愛小説です。まがまがしいほどのエネルギー。青春の原液を飲んでしまったら、きっとこんな感じなんだろうなという読後感。

  • 前半は女々しい男の心情をリアルに書いて、後半への良い振りになっている/ 心を許した親友が自分の好きな女と結婚するというのは、友と女の二つを同時に失うものだ/ 読んでいてあまりの仕打ちに同情するが、これもまた自然なのだろうと思う/ 手紙公開の所は、このような女が自分の周りにいない事が悲しくなってくる/ 良い終わり方だとも思う/

  • こんなに面白くて読みやすいお話が大正時代に書かれていたなんてビックリです。何だか遠い時代のような気がしたけど、女の子も自分の力で恋愛も未来も切り開いていたんだなぁと思うと、現代も昔も恋する気持ちは変わらないなと思いました。
    野島の杉子に対する暴走気味の妄想も初恋した頃の自分自身をみているようで、なんとも嘆かわしいような恥ずかしいような。だから、わかるんですけどね。杉子の大宮への手紙も、野島のことをキッパリと一時間以上はそばにいることが出来ない、愛していないなどと書いているところがうわぁーとズキズキきます。それだけ彼女も必死なんでしょう。これは女の子だから書ける手紙のように思えます。女子ってやっぱり恋愛の為なら天使にも悪魔にもなれちゃいますしね。それにしてもこの手紙が同人誌に載ってるなんて、野島でなくてもめまいします。大宮の友を思う為に示していた杉子に対する冷淡な態度は、ますます恋の炎を燃え上がらせるものになっていたんじゃありませんか。コレってわかりますよ。少女マンガでも、やっぱり女の子が恋するのは自分のことを好きだと言いまくってくれる人よりどこか陰があったり、反目しあってたり、手の届かないひとだったり、そういう人にいっちゃいますもの。大宮の作戦は、野島にとっては友情の証のようなもんだったけど、逆効果でした。でも、雑誌に載せた大宮の想いをちゃんと受け取った野島は最後男になった気がします。頑張れ!

  • 話はありがち。恋と友情の狭間で迷う男性たちの話。
    でも、なんやろ。いい。

    タイトルと違って、私は恋の感情の表現やら、男性の同性のできる友人に対する嫉妬や羨望、それと友情の間の揺れ動きの表現などが心地よかった。
    細かく心理描写をしているのに、くどくどしくなくて、「あー、みんなそうだよね」という共感を催す事ができた。

    引用をした50ページの恋する者の不安と、恋してない者の羨望もシンプルだけど、いい。

    主人公の1人、野島は杉子に世間の荒波を渡っていく為に、自分自身を信じることのできる力となってくれること、この世で野島だけを信じることを望む。恋愛ハウトゥーで読んだことあるけど、男性は自分を信じてほしいって本当なんだなぁと思ってしまった。

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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