友情 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.64
  • (283)
  • (390)
  • (619)
  • (60)
  • (10)
本棚登録 : 3094
レビュー : 446
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057019

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 新潮文庫の表紙の裏に作者の写真が掲載されているのだが、最初はこのように恋に苦悶する青年をこんなジジイ(失礼!)が描いているのかと思うと可笑しくてならなかったのだが(笑)、付録の年表をみると実篤36歳の時の作品なんですね。
    「失恋の達人」(ちょっと違うか)という著者の失恋物語。平易な文章なのでとても読みやすい。「神への救い」や「世界貢献」「個人主義」といった実篤の内面もよく出ている作品のようです。
    正直な話、いじいじと片思いに悶絶する様は個人的な話すぎてあまり心地よいものではないですが(笑)、いろいろと湧いてくる心理の流れがかなり網羅されていると思われ、これはよく練られた作品なのではないかと・・・。下篇で明かされる野島と大宮の葛藤の真相はとてもよくまとめられていました。その初々しくストレートすぎる心情の表れは、誰もが身に思いのある(と思われる)話であり、悲劇的な展開でしたが、微笑ましく読了することができました。つーか、野島さん、かなり思いこみの激しい人なんだね。(笑)
    最後の野島の発する一文は状況からとてもよく理解できる反面、物語の行方を考えると少し違和感が残った。

  • 何年も前に友人に薦められたままだったこの小説を手に取ったのは、今ならここらの時代の恋愛小説を読むだけのエネルギーが自分にはある、と判断してのことだったのだが、それを根こそぎ持っていかれた、と感じるほど、情熱と幸せと寂しさと、その他あらゆる感情に満ち満ちた作品だった。あらすじというほどのものもなく先も予見されているのだが、描かれる感情が、それが例え負の感情であろうとも、瑞々しく前向きに溌剌と表現されていて、それがあまりに真に迫ってくるので、読後はもう、疲れた!の一言。この時代の恋愛小説における、切実で、一途で、直情的な感情の発露は、現代の諦め混じりのスレた感覚しかない私にはいささか荷が重い、が、薦めてくれた友人には感謝しなければ、と思わされる一冊だった。

  • 夏目漱石の「こころ」が暗~い三角関係の話なら、これはその対極にある三角関係の話だ……という感想をどこかで見ていたので、てっきり男二人が川原で殴り合いをした後スッキリ和解する話しかと思ったら全く違っていた……。

    上篇で、初めから主人公・野島は杉子に一目ぼれをします。
    もうそこから怒涛のように続く杉子age。杉子を勝手に聖女のように位置づけ、交際もしてないのに「結婚するならこの子だ」と思い込む。杉子への惚れっぷりが本当にすごい。
    「新聞を見ても、雑誌を見ても、本を見ても、杉と云う字が目についた」
    とかね。
    あとはその杉子に変な手紙を寄越してちょっかいを出してくる男がまるで野島みたいな男で、野島は「あ、俺もこんな変な事してるかも」という自覚がありつつも、やっぱり変な手紙(プロポーズの)を出してしまうw
    上篇は、本当になんというか野島が杉子をスキスキ言ってて余りに気持ち悪……いや一方的です。
    ああでもこの時代って恋愛するのに女性の気持ちはあまり関係ないのかな…なんて騙されかけたんですけど、下篇を読んだらそんなことなかったwww 
    ですよねー!

    下篇では散々想いを寄せられていた杉子が野島のことをこれっぽっちも好いてなかったことが明らかになります。
    杉子は
    「野島さまは私と云うものをそっちのけにして勝手に私を人間ばなれしたものに築きあげて、そしてそれを勝手に賛美していらっしゃるのです」
    と野島の愛のゆがみ具合をバッチリ指摘してる。
    「死んでも結婚したくない」とか「どうしても野島さまのわきには一時間以上は居たくないのです」という衝撃的すぎる感想が出て来て吹き出しました。
    そこまで言う?!

    野島の友達の大宮は一生懸命友達のいいところを杉子に解くけど、結局は自分も杉子のことが好きなので自分の気持ちに正直に行くことにした。
    大宮「もう万事きまったと自分では思った。これが罪ならば罪でもいいと思った」
    この台詞で、もう大宮の勝ちです。
    世界中を敵に回しても好きだと思ったら強い。
    最後、振られた主人公の野島は人生にめげずに芸術の世界に生きて行くことに決めたようなのでまあ良かったのかなと思います。

    それから、
    話のあちこちから、この時代の若い人が「日本を強くしないと」という使命感を負っていて、みんな頑張っていたというのが読み取れました。そう言う時代だったんだなぁ。
    あ、あと、随分昔に書かれた話なのに青空文庫に入っていないなと思ったら、武者小路先生はずいぶん長生きされた方なんですね。
    昔に書かれた話ですが、現代の青春エンタメ小説ですと言ってもおかしくない、色褪せないストーリーだと思います。

  • それはそうなるわ

  • 薄いので、すぐ読める。
    だけど、内容は濃い。
    恋愛観と結婚観がとても面白い。
    今とは時代が違うけど、女性が随分行動的だし、結婚に積極的だなと思う。
    まだ二十歳にもならないうちから。
    今みたいに、交際期間を経て結婚相手に相応しいかどうか選ぶのではなく、好きになったら結婚相手として見るから、思いの深さが違う。
    これからの人生全てをかけて恋をしているかのよう。
    そういう相手に出会ってしまった野島と、まだ出会っていないであろう仲田の恋愛観が異なるのは無理もないところ。
    野島も辛いだろうけど、大宮も辛いんだよ。
    何かを得ようとすれば、何かを失うものだ。
    どちらが悪いとかいうことじゃない。
    どちらも幸せになってほしいと思う。

  • 文人は不幸であらねばならないという考えが透けて見える。
    彼は孤独に苦しんでいるけれど、人は生まれながらに孤独だと思う。
    ただ、それに気づくか気づかないだけで。

  • 前半は女々しい男の心情をリアルに書いて、後半への良い振りになっている/ 心を許した親友が自分の好きな女と結婚するというのは、友と女の二つを同時に失うものだ/ 読んでいてあまりの仕打ちに同情するが、これもまた自然なのだろうと思う/ 手紙公開の所は、このような女が自分の周りにいない事が悲しくなってくる/ 良い終わり方だとも思う/

  • 武者小路実篤の代表的作品。割とすらすら読めたけれど衝撃を受けました。

    タイトルからすると純情を絵に描いたような友情物語のようだけれどそうではありません。『友情』のあいだに『恋愛』がからむと人間はどうなってしまうのか。あるお嬢さんのことが好きな主人公のために力を尽くす友人。だけどその友人もお嬢さんのことが好きだった・・・。

    『友情』をとるか『恋』いや『愛』をとるか・・・。ぎりぎりの選択。3人の心の揺れるさまが苦悩を感じさせる文章で綴られている。その結末とはいかに・・・きれいなだけじゃない。人間の深い部分をも描いた作品。

  • 野島の自分本位な恋情に、己の過去を見ては穴に入りたくなる。たしかにこの作品名には、「恋」でも「失恋」でもなく『友情』が相応しいんだろうけど、私はできた人間ではないので大宮も杉子も許せないし、野島も好きになれない。あと杉子、めっちゃ嫌いなタイプの女(?)
    なにはともあれ、言わずと知れた名作はやはり超良書でした。若気の至り的な恋にひと段落つけた若者は皆すべからく読み、恥ずかしさに悶え苦しむべし。

  • 大宮くんが最初から最後まで好き。
    野島くんが苦手。
    でもわかる。
    恋する気持ち。
    友達に対しての嫉妬。
    青春を思い出す。

  • 話はありがち。恋と友情の狭間で迷う男性たちの話。
    でも、なんやろ。いい。

    タイトルと違って、私は恋の感情の表現やら、男性の同性のできる友人に対する嫉妬や羨望、それと友情の間の揺れ動きの表現などが心地よかった。
    細かく心理描写をしているのに、くどくどしくなくて、「あー、みんなそうだよね」という共感を催す事ができた。

    引用をした50ページの恋する者の不安と、恋してない者の羨望もシンプルだけど、いい。

    主人公の1人、野島は杉子に世間の荒波を渡っていく為に、自分自身を信じることのできる力となってくれること、この世で野島だけを信じることを望む。恋愛ハウトゥーで読んだことあるけど、男性は自分を信じてほしいって本当なんだなぁと思ってしまった。

  • 最後の一文にゾッとする。

  • 生誕130年を迎へた武者小路実篤であります。
    我が家にも「仲良きことは美しき哉」と書かれた南瓜の絵がありますが、これは素人目に見ても贋作に見えます。まあ仮に本物でも、武者氏は生前、求められるままに各地で書をしたため、気軽に与へまくつたさうなので、余り高い値はつかないのかも知れません。
    あ、カネの話は武者氏の作品を語るときに邪魔になるので、発言を撤回します。

    若き脚本家の野島君は、友人仲田君の妹である杉子に一目惚れします。何かと理由を付けては顔を見る機会を窺つてゐます。逆に内心を気取られまいと、わざと距離を置いたり。23歳にしては少し純情でせうか。
    杉子への想ひは抑へがたく、親友の大宮君には打ち明けてしまひます。大宮君は新進作家で、野島君よりも一足先に世間に出てゐて、ファンも多いのです。気のいい奴。

    案の定大宮君は、ヨッシャとばかりに、二人の仲を取り持たんと気を使つてくれます。彼は社会的に認められても、遅れを取つた野島君を軽んずる事もなく、敬意を示してくれるのでした。まさに友情。
    一方杉子さんは、いつも大宮君の従妹・武子さんと一緒で、仲が良い。屈託のない様子で、野島君にも好意を持つてくれてゐるやうに見えます。これは、いけるんぢやないか。
    気になるのは、杉子さんが時折見せる大宮君への眼差し、そして必要以上に冷淡な大宮君の杉子さんへ対する態度......

    その後は......あゝ、野島君の心中を慮ると、これ以上は語れません。
    表題は『友情』ですが、それより青春時代に誰もが抱く憧憬や恋愛、焦燥や挫折、残酷さといつたものを余すことなく表現した一作ではないかと思ひます。
    進藤英太郎に言はせたら「貴公は青いよ、若いよ」といふことになりさうですが、この群像劇の人物たちの未熟さを鼻の先で嗤ふやうになることを「成長」とか「成熟」なんて呼ぶのなら、なんだかそれはツマラナイ大人だなあ、と感じるのです。
    現代人の鑑賞には堪へ得ぬとの評も聞きますが、一方で新しい読者も増えてゐます。拙文をお読みの紳士淑女の皆様は如何でせうか?

    ぢや、また逢ふ日まで。ご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-576.html

  • 有名な小説であり、読みやすい。
    作家を目指す青年(野島)が一人の女性に恋をし、厚く友情で結ばれている大宮に相談しながら過ごしていたが、ある時、その親友がその女性のことを好きになってしまう。
    忘れようとヨーロッパに行くが、あることにより、女性に心を知られてしまう。
    苦悩しながらも、自分に正直な道を選ぶ。
    男の友情があり、女性関係により、裏切るというかどうしようもない結果になった。
    大宮の苦悩、野島の苦悩、杉子の苦悩。其々性質が違う。

  • 〈もう万事きまったと自分では思った。これが罪ならば罪でもいいと思った〉

    いやー、おもしろかった!

    根暗男子の恋愛小説で、友情モノで、黒歴史モノ。
    主人公のヒネくれたところに共感して、後半でズドンと。
    オチ知ってても「ウワー」ってなります笑
    たぶん文学青年が野鳥に共感し続けたから、100年も読みつがれているのでしょう。愛すべき主人公です。

    あと、女性の権利が書かれた小説でもあります。
    杉子さんは強いなぁ。
    そんなわけで女性にもおすすめ。
    根暗男が惚れるとどうなるかが大体書いてあります笑

  • 失恋小説の金字塔。

    親友と恋人を奪い合うという経験はないが、失恋はつらいよ。何度かあるけれども、身も心も疲れる。

    大宮のような友人がいて野島は恨めしいと思うのと同時に救われたのではないかな。
    三角関係の恋愛と失恋というテーマは漱石文学に通じるが、実篤のほうが明るい。恋愛と友情が個人を陶冶し型作るという倫理観を悲壮感なく失恋話に組み込んだ手腕と、清々しいまでのエゴの全肯定がこの青春小説の魅力だろう。

  • 途中、あんまり過保護なので存在を疑ったけれど、最後で大宮から野島への友情は証明される。手紙の暴露は残酷な仕打ちではあるけれど、大宮は何も知らせずに杉子と結婚することも出来た。それをあえて全て見せたのは、野島の人間性への信頼と大宮の誠実さが表わされている。
    安易に野崎と結婚しなかった杉子もまた誠実だったと思う。独りぼっちの野島は哀れだけれど、杉子と大宮の誠実さに救われたように思える。

    大宮と野島の間には友情があった。ただし、「あった」と理解した時には二人の関係は壊れてしまっている。けれど、以前とは違った形で大宮と野島の友情は存在する。
    恋愛感情でなく、あかの他人同士がお互いを感化できる二人の関係は本当に羨ましい。

  • 「恋か友情か」という題材はありふれたものだが、作品のもつ濃度がきわめて高い。
    本作において「友情」は、単なる信頼や絆などではなく、より重く厳しいものとして描かれる。
    上篇で悲劇的な結末がほのめかされているが、下篇の畳みかけるような往復書簡により、主人公の心は深くえぐられ、激しく打ちのめされ、完膚なきまでに粉砕される。
    それでもなお腐らず、復讐を誓うわけでもなく、自らを奮い立たせ、先へ歩もうとする主人公には、獅子のような勇猛さとともに悲壮な美しさを感じる。
    読後にひりひりとした痛みと燃えるような激情が残る名作。

  • 「実篤の友情?読んだことあるけど(ドヤ顔)」したいが為に読みました。友情か愛情かどちらを取るかという、両方持ち合わせていない当方にとってはなんとも贅沢な悩みについて語られているのが本書。感想は一言で言うと「ずるい」。野島サイドな自分としては最後の対話はオーバーキルに継ぐオーバーキルで、読んでいて軽く鬱になりました。杉子のテンションの上がり方も気持ちは分かるけど酷い。一途なのは時に残酷ですね。大宮が大宮である限り、野島が勝てる訳無いじゃないか。あいつはイケメン過ぎる。野島頑張れマジで頑張れ。

  • 何かをこじらせた主人公が痛々しく生々しい。
    が、ラストでの主人公の思いが綺麗事のようで冷めてしまった。もっと泥臭く足掻くなり世を儚むなりして欲しかった。

    最初は取っ付き難い文章だったが慣れれば気にならなくなった。

全446件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

武者小路実篤(むしゃのこうじ さねあつ)
1885年5月12日 - 1976年4月9日
東京府東京市麹町区(現・千代田区)生まれの小説家・詩人・劇作家・画家。ある時から「むしゃこうじ」と当人が自称しているが、一般的に「むしゃのこうじ」読みされている。学習院初等科~高等学科に在学し、東京帝国大学哲学科社会学に入学したが、入学初年で中退。創作活動をはじめ、1910年に志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと文学雑誌『白樺』を創刊。これにちなみ、彼らは「白樺派」と呼称される。
1918年宮崎県児湯郡木城村に「新しき村」を建設。その後も多くの創作活動に勤しんだ。1951年、文化勲章を受章。1976年4月9日、尿毒症で逝去。
代表作に、『お目出たき人』『わしも知らない』『幸福者』『友情』『人間万歳』『愛と死』『真理先生』など。

友情 (新潮文庫)のその他の作品

武者小路実篤の作品

友情 (新潮文庫)に関連する談話室の質問

友情 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする