友情 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057019

感想・レビュー・書評

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  • 武者小路実篤 恋愛と友情の王道青春小説。
    若き脚本家・野島(まださほどうれていない)と、作家・大宮(だいぶ評価されている)は、それぞれ尊敬し合う友人だった。野島は、美しい友人の妹・杉子に恋をする(熱烈系)。彼はその思いを大宮に幾度となく相談する。
    前半は、行間まで野島の恋心が溢れている。もはや妄想まで混じる。彼女の名前を砂浜に書き始めた時は、こちらまで切なくなる。
    大宮は野島との友情を大切にして、二人の仲をとりもとうと努める。海外留学をも早めて、杉子から離れる。杉子は大宮を好きになってしまったから。
    そして、後半は、杉子と結ばれる決心をした大宮の告白となる。野島に対しての謝罪と愛の経緯を小説として発表する。この大宮の人間性の高い告白に心打たれる。野島は凹む。
    さあ、初恋に苦しむ中学生おとこのこ達、読んで、友情と恋を大切に青春してください。

  • 新潮文庫の表紙の裏に作者の写真が掲載されているのだが、最初はこのように恋に苦悶する青年をこんなジジイ(失礼!)が描いているのかと思うと可笑しくてならなかったのだが(笑)、付録の年表をみると実篤36歳の時の作品なんですね。
    「失恋の達人」(ちょっと違うか)という著者の失恋物語。平易な文章なのでとても読みやすい。「神への救い」や「世界貢献」「個人主義」といった実篤の内面もよく出ている作品のようです。
    正直な話、いじいじと片思いに悶絶する様は個人的な話すぎてあまり心地よいものではないですが(笑)、いろいろと湧いてくる心理の流れがかなり網羅されていると思われ、これはよく練られた作品なのではないかと・・・。下篇で明かされる野島と大宮の葛藤の真相はとてもよくまとめられていました。その初々しくストレートすぎる心情の表れは、誰もが身に思いのある(と思われる)話であり、悲劇的な展開でしたが、微笑ましく読了することができました。つーか、野島さん、かなり思いこみの激しい人なんだね。(笑)
    最後の野島の発する一文は状況からとてもよく理解できる反面、物語の行方を考えると少し違和感が残った。

  • 恋愛を巡る友情の話。
    主人公のウジウジと悩むところが、今も昔も青春は変わらないなぁ…と思う。
    しかし、あの頃は時間の流れも緩やかで、人生についてじっくり悩む時間があったのね…とも感じた。

  • (2023/05/18 1.5h)

    野島の態度が女性からあまりもてない男だなあという感じ。恋文も独りよがりな雰囲気がしてしまう。
    最後の杉子の手紙はあまりにはっきりしていて辛い。

    野島と大宮のやりとりがとても良い。
    仮面をかなぐり捨てて手紙を書くラストも良い。
    友情というタイトルがピッタリくる。

  • 何年も前に友人に薦められたままだったこの小説を手に取ったのは、今ならここらの時代の恋愛小説を読むだけのエネルギーが自分にはある、と判断してのことだったのだが、それを根こそぎ持っていかれた、と感じるほど、情熱と幸せと寂しさと、その他あらゆる感情に満ち満ちた作品だった。あらすじというほどのものもなく先も予見されているのだが、描かれる感情が、それが例え負の感情であろうとも、瑞々しく前向きに溌剌と表現されていて、それがあまりに真に迫ってくるので、読後はもう、疲れた!の一言。この時代の恋愛小説における、切実で、一途で、直情的な感情の発露は、現代の諦め混じりのスレた感覚しかない私にはいささか荷が重い、が、薦めてくれた友人には感謝しなければ、と思わされる一冊だった。

  • 野島の自分本位な恋情に、己の過去を見ては穴に入りたくなる。たしかにこの作品名には、「恋」でも「失恋」でもなく『友情』が相応しいんだろうけど、私はできた人間ではないので大宮も杉子も許せないし、野島も好きになれない。あと杉子、めっちゃ嫌いなタイプの女(?)
    なにはともあれ、言わずと知れた名作はやはり超良書でした。若気の至り的な恋にひと段落つけた若者は皆すべからく読み、恥ずかしさに悶え苦しむべし。

  • 同級生の死を知った翌日から読み始め、6日で読了。薄いペラペラの文庫本の奥付を見ると、第140刷とあった。
    明治時代に書かれたこの青春小説、巻末の解説になるほどと思う側面(当時の文壇の自然主義に対するアンチテーゼとしての、徹底した自己中心主義)もありつつ、これは単純な好みの問題で、私にはやや軽過ぎた。
    明るくて、生き生きとし、若者達が前向きにもほどがある。今の時代なら、ラノベになりそうなアオハル感だ。
    そこを面白がりながら読んだ、という点ではスルスルと読めて楽しかった。でも、引っかかるものが見出せなかった。これを読んで、友情や恋愛について思いを馳せることができる頃は、もう過ぎたのか。それとも。

    これは、亡くなった友人が読んでいた本で、高校生のとき、同じ図書部の活動中に彼女が手にしていた記憶がある。
    勧められたかもしれないし、ただお互いに黙って読んでいたなかの一冊だったかもしれない。
    私はこの世代の作家だと芥川龍之介、少し後になると太宰治、最も読んでいたのは筒井康隆で、彼女と本の趣味が合ったことはほぼ無かった。そもそも他人が読んでいる本を気にしたことが無かった。
    それでもこの本が、友人の死を目の当たりにした時に思い出されたのは、何か興味深いことだと思う。

  • 大正時代の恋愛話だが全く古さを感じさせない作品。「不朽の大失恋小説」という文言に惹かれて手に取った。
    野島の恋はひたすら個人的で、もっと積極的になればまた状況は変わったかもしれないのにと思いながら読み進めた。読み終わって思うと、大宮との友情は本当に友情なのか。あまりにも辛い現実、野島の失恋。大宮が遠くていってしまったような感じ。

  • 野島が杉子の内面に恋してるわけではないことに杉子は気づいている。そら、上手くいくわけないけど...

  • 大宮はあらゆる才能を持ちながらも、非常に人格者でもあり素晴らしけできた人間だと思う。だが、結果としてその友達思いな心が、自分も野島も杉子も傷つけてしまうことになる。その判断が誤っていたのか、正しかったのか人それぞれ解釈は異なるだろうが、自身が同じ立場なら、やはり野島に対する思いを優先していたかも知れない。
    本書には、人生における様々な格言も散りばめられており、また、非常に読みやすい文体で書かれているため一読をお勧めする。

  • それはそうなるわ

  • 大宮くんが最初から最後まで好き。
    野島くんが苦手。
    でもわかる。
    恋する気持ち。
    友達に対しての嫉妬。
    青春を思い出す。

  • 最後の一文にゾッとする。

  • 「実篤の友情?読んだことあるけど(ドヤ顔)」したいが為に読みました。友情か愛情かどちらを取るかという、両方持ち合わせていない当方にとってはなんとも贅沢な悩みについて語られているのが本書。感想は一言で言うと「ずるい」。野島サイドな自分としては最後の対話はオーバーキルに継ぐオーバーキルで、読んでいて軽く鬱になりました。杉子のテンションの上がり方も気持ちは分かるけど酷い。一途なのは時に残酷ですね。大宮が大宮である限り、野島が勝てる訳無いじゃないか。あいつはイケメン過ぎる。野島頑張れマジで頑張れ。

  • 薄いので、すぐ読める。
    だけど、内容は濃い。
    恋愛観と結婚観がとても面白い。
    今とは時代が違うけど、女性が随分行動的だし、結婚に積極的だなと思う。
    まだ二十歳にもならないうちから。
    今みたいに、交際期間を経て結婚相手に相応しいかどうか選ぶのではなく、好きになったら結婚相手として見るから、思いの深さが違う。
    これからの人生全てをかけて恋をしているかのよう。
    そういう相手に出会ってしまった野島と、まだ出会っていないであろう仲田の恋愛観が異なるのは無理もないところ。
    野島も辛いだろうけど、大宮も辛いんだよ。
    何かを得ようとすれば、何かを失うものだ。
    どちらが悪いとかいうことじゃない。
    どちらも幸せになってほしいと思う。

  • 大失恋物語。
    痛々しいが心情に心ひかれる。

  • 文人は不幸であらねばならないという考えが透けて見える。
    彼は孤独に苦しんでいるけれど、人は生まれながらに孤独だと思う。
    ただ、それに気づくか気づかないだけで。

  • 三角関係。
    杉子の手紙が野島嫌いが露骨すぎて、野島が不憫でならない。
    野島が女に好かれない要素が上手く書かれている。

  • 高校生のときおすすめ図書にあったものを今になって読んだ。
    これは夏目漱石のこころと似た衝撃を感じた。。
    最後の終わり方がいい。ざっと幕が閉じるような潔さが余韻を残して気持ち良い。

  • 残酷さは友情をさらに高みに昇華される、ということだろうか。
    しかし、主人公はもっと落ちぶれていいはずだと思う。小説としてストーレトすぎるし、人物が大きすぎるところが少し気になる。
    時代性もあるのか、いやこの時代の方がもっと浮世離れしてたんじゃないか。
    大宮が人類を語るあたりは今だから変に納得するけど、この時代にここまで考えていたのは一部の富裕層だろう。

    最後に手紙のやり取りで回収する構成のうまさや行動に心理を埋め込むさりげなさは、詠む価値はある。

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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