友情 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057019

感想・レビュー・書評

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  • 野島の自分本位な恋情に、己の過去を見ては穴に入りたくなる。たしかにこの作品名には、「恋」でも「失恋」でもなく『友情』が相応しいんだろうけど、私はできた人間ではないので大宮も杉子も許せないし、野島も好きになれない。あと杉子、めっちゃ嫌いなタイプの女(?)
    なにはともあれ、言わずと知れた名作はやはり超良書でした。若気の至り的な恋にひと段落つけた若者は皆すべからく読み、恥ずかしさに悶え苦しむべし。

  • 野島が杉子の内面に恋してるわけではないことに杉子は気づいている。そら、上手くいくわけないけど...

  • 最後の一文にゾッとする。

  • 薄いので、すぐ読める。
    だけど、内容は濃い。
    恋愛観と結婚観がとても面白い。
    今とは時代が違うけど、女性が随分行動的だし、結婚に積極的だなと思う。
    まだ二十歳にもならないうちから。
    今みたいに、交際期間を経て結婚相手に相応しいかどうか選ぶのではなく、好きになったら結婚相手として見るから、思いの深さが違う。
    これからの人生全てをかけて恋をしているかのよう。
    そういう相手に出会ってしまった野島と、まだ出会っていないであろう仲田の恋愛観が異なるのは無理もないところ。
    野島も辛いだろうけど、大宮も辛いんだよ。
    何かを得ようとすれば、何かを失うものだ。
    どちらが悪いとかいうことじゃない。
    どちらも幸せになってほしいと思う。

  • 大失恋物語。
    痛々しいが心情に心ひかれる。

  • 『文豪とアルケミスト』舞台を見て読了。
    野島のモデルは作者である武者小路実篤自身。
    大宮のモデルは白樺派の作家で親友の志賀直哉。
    この作品で描かれているのは一種の理想の友情。
    高潔な友情。

  • 健全な恋愛小説です。まがまがしいほどのエネルギー。青春の原液を飲んでしまったら、きっとこんな感じなんだろうなという読後感。

  • 「恋か友情か」という題材はありふれたものだが、作品のもつ濃度がきわめて高い。
    本作において「友情」は、単なる信頼や絆などではなく、より重く厳しいものとして描かれる。
    上篇で悲劇的な結末がほのめかされているが、下篇の畳みかけるような往復書簡により、主人公の心は深くえぐられ、激しく打ちのめされ、完膚なきまでに粉砕される。
    それでもなお腐らず、復讐を誓うわけでもなく、自らを奮い立たせ、先へ歩もうとする主人公には、獅子のような勇猛さとともに悲壮な美しさを感じる。
    読後にひりひりとした痛みと燃えるような激情が残る名作。

  • 90年前に書かれたとは思えないほどの活き活きとした人物描写。素晴らしい人間賛歌やね。男が恋に溺れだしたときの心理描写が鮮やかで深く印象に残った。ずっと読み継がれるべき古典作品。

  • この作品は主人公が失恋する話である。しかし、決して不幸な、ブルーな気分になるような話ではないと思う。かと言って幸せな結末でもない。彼は恐らくその先も苦労する。しかしそれもまた青春なのであって、彼にもいつかは幸せが訪れる・・・そんな優しく、温かな願いが流れている物語なのではないだろうか。
    この話のメインは友情と恋愛、それも一方通行な恋愛だ。野島の杉子への想いは儚くも破れ、彼女は野島の唯一無二の親友・大宮の元に行ってしまう。大宮は野島と固く結ばれた友情と杉子への想いに葛藤しつつも、最後には杉子と共に歩む道を選ぶ。恋愛の図式としては単純な三角関係であるけれど、野島の日に日に募っていく杉子への想い、願望、懇願のその様は、片思いの経験がある世の男性ならば思わず共感してしまうものなのではないかと思う。
    青春には”中二”が付き物で、現実を超えた妄想に陥りやすい。恋も然り、「結婚したら・・・」とか「自分のことが好きなのかも・・・」とか、足が地に着いていないような野島の姿を見ていて、何とまー痛々しいのやらと読んでいるこちらが恥かしくなってしまった。或いは彼女の行動の一つ一つを自分に結び付け、「好かれている」「嫌われている」で一喜一憂している姿が端から見て痛かったり。
    そんな野島の私情を客観的に描いている訳だけれども、青春の痛々しさを丁寧に描く筆遣いには作者の洞察力の深さを覚えずにはいられなかった。だからこそ、この作品で描かれる恋愛は極めて現実的に近い側面を持っているのではないかと思う。
    一方で、深刻に話が進む(漱石の『こころ』みたいな)のかと言えばそうでもなく、むしろ明るく軽妙である。同時に、作者の優しく温かな眼差しが終始一貫感じられた。それは、結果として親友との友情に裏切られる形での失恋にはなってしまったけれども、それもまた青春の一ページ、失恋という孤独に耐えねばならぬ運命に進む野島を、或いは幸あれ―とそっと見守っている・・・そんなようでもある。

  • 名作。必読。
    散々片想いして、親友に裏切られるっていうまぁ最低のパターンを気持ちいいリズムで描く。
    この文章の気持ちよさは何じゃろ。
    これが名作たる所以なんでしょうか。

    主人公野島が不憫で不憫で。
    最後にガッツみせてくれます。

    あ、カバーデザイン変えたら、きっともっと売れます。

  • 「読書力」の35ページにある本…
    法政大学第一中・高等学校で岩井歩教諭が実践した、定期テストに読書問題を取り入れた実践。

    1冊目…中3の定期テストに

    読みやすい本。
    3年前に読んだので、内容は覚えていない。

  • 恋に盲目になるところから始まり、友人達の言動を通して自分の姿に少しずつ気づく主人公。気付くコトと受け入れるコトの狭間で苦しみながら、親友への感謝も忘れない。親友もしかり。泥沼の展開なハズなのに、何となく清々しい気分にしてくれる1冊でした!!

  • 主人公はほぼストーカーと化しています。
    武者小路実篤の文体は結構好きです。
    スッと入ってきて読みやすいです。

  • 若い時に読んでいたが再読。なんという残酷な友情だろう。かけがえのない友情をコントラストにすることで、それでも抑えきれない恋の瑞々しさや眩しさが際立つ

  • 若い時に読んでいたが再読。なんという残酷な友情だろう。かけがえのない友情をコントラストにすることで、それでも抑えきれない恋の瑞々しさや眩しさが際立つ

  • 【あらすじ】
    若い脚本家の野島が、知り合いの妹、杉子を好きになったことから始まる。
    新進気鋭の作家として世間から一目置かれ始めた、年上で親友の大宮に、野島は恋した事を打ち明ける。野島に対して大宮が親身になって相談や恋の後押しをしてくれるが、杉子を狙う相手も多く、中々踏み切れないでいた。
    大宮の親戚である、武子は杉子の親友で、武子との繋がりもあって距離は少しずつ縮まっていく。
    しかし、野島は杉子が他の男や大宮の事を好きにならないかという心配が尽きる事は無く、その度に大宮に励まされ続けていた。
    やがて大宮は西洋で絵画や音楽、彫刻といった芸術に触れる為、数年の渡航を決意する。
    その後、野島は杉子へ求婚を行うが、断られてしまう。
    野島の仕事は徐々に認められていくが、それでも一人きりという淋しさは付きまとい続けていた。
    そんなある日、大宮から謝罪の葉書が届き、大宮を尊敬している人たちが出版した同人雑誌を見てくれと書かれていた。
    その同人雑誌には、杉子から大宮にすがりつくような愛の告白から始まる、杉子と大宮との葉書による一連のやり取りが収められていた。
    当初は野島を勧めていた大宮は、野島との友情への後ろめたさに苦悩しながらも杉子への愛を吐露し始める。
    誰よりも欲していた杉子の恋が成就した様を見せつけられ、野島はかつてないほどに苦しむ。
    友人の真摯な態度に感謝や怒りや落胆といった多くの感情を抱きつつ、大宮に宛てた手紙を書き、これからも続く淋しさを憂いて日記を書く所で物語が終わる。

    【感想】
    最初は恋愛小説を装ってはいるが、どうせ手のひら返しが来ると思っていた。
    けれど、このまま野島と杉子がうまくいくかもしれないと思ったりもした。
    野島と大宮は互いに心から尊敬しあっているのが所々感じられ、それだけに最後の手紙は本当に効いた。
    野島の理想を杉子に押し付けすぎているのは作中の序盤でも語られており、杉子もそれを感じ取っていたから、振られたのはやむなしだと思った。
    しかし、きっかけや動機がなんであろうと、杉子への想いの大きさが凄かっただけに、杉子からの駄目だしと、大宮を大いに苦悩させたことに対する、野島のショックは計り知れない。
    ここの所は野島が気の毒で、読んでいて辛かった。
    どうしようもない出来事というのは世の中いくらでもあるけれど、それが人の気持ちだと立ち直るのに時間がかかるよなぁ、と思った。
    野島は一時的には辛いが、まだ決して不幸になったとは、俺には思えなかった。
    野島を含めた主要人物全員、この一連のやり取りで傷付きながらも成長するキッカケになっていると思うし、大宮や野島本人が述べている通り、この経験をバネにして大成してもおかしくはないだろうと思う。
    最後の野島は相当打ちのめされているが、大宮への手紙の中でいつかは立ち上がって大宮に負けないような事を成さんとする意志が見て取れたのが心に響いた。
    この手紙には虚勢や意気込み、大宮と杉子への怒りと赦し、優しさ、恥じらいといったありとあらゆるものが詰まっているように感じる。
    読む人によって最後の解釈は別れるだろうけれど、野島にいつかは再度立ち上がって欲しい、と願わずにはいられない素晴らしい作品だった。

    【好きな所】
    野島はこの小説を読んで、泣いた、感謝した、起こった、わめいた、そしてやっとよみあげた。立ち上がって室の中を歩きまわった。そして自分の机の上の鴨居にかけてある大宮から送ってくれたベートオフェンのマスクに気がつくと彼はいきなりそれをつかんで力まかせに引っぱって、釣ってある糸を切ってしまった。そしてそれを庭石の上にたたきつけた。石膏のマスクは粉微塵にとびちった。彼はいきなり机に向かって、大宮に手紙をかいた。
    「君よ。君の小説は君の予期通り僕に最後の打撃を与えた。殊に杉子さんの最後の手紙は立派に自分の額に傷を与えてくれた。これは僕にとってよかった。僕はもう処女ではない。獅子だ。傷ついた、孤独な獅々だ。そして吠える。君よ、仕事の上で決闘しよう。君の惨酷な荒療治は僕の決心をかためてくれた。今後も僕は時々寂しいかも知れない。しかし死んでも君達には同情してもらいたくない。僕は一人で耐える。そしてその淋しさから何かを生む。見よ、僕も男だ。参り切りにはならない。君からもらったベートオフェンのマスクは石にたたきつけた。いつか山の上で君達と握手する時があるかもしれない。しかしそれまでは君よ、二人は別々の道を歩こう。君よ、僕のことは心配しないでくれ、傷ついても僕は僕だ。いつかは更に力強く起き上がるだろう。これが神から与えられた杯ならばともかく自分はそれをのみほさなければならない」

  • 恋愛、友情、葛藤、恋する若者の心の機微が瑞々しく描かれる。掛け値なしの名作。

  • 〜2022.10.11

    恋する男、心の内が詳細に描かれており、情景が鮮やかに浮かんでくる。

    大宮の余裕ある態度と、そこに隠された葛藤。
    男同士の三角関係。友情と恋心。
    男の側は、相手を想えば想うほど辛く、相手は遠ざかっていく。

    野島が俺そのもののようで、辛い。

  • 自分の本棚を整理するために、読んだら捨てようと思って読みはじめたのですが、読み終わるとやっぱりとっておこうと決めた作品です。昔の文章なのでやや読みにくいですが、それ以上に内容に惹きつけられるので、読んでいるうちに気にならなくなると思います。主人公の恋心、恋するとこうなる気持ち、分かります、、、。少しのことで傷つき、ちょっとしたことで有頂天になり、恋ってこういうものだよなぁと恋というステージから退場した今となっては達観して読める作品です。でも、恋なんて、ホルモンバランスだから。昔恋に溺れに溺れた経験がありますが、20年経てば全て笑い話です。特に独りよがりのものは。主人公の30年後の手記とか読みたいですね。

著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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