若き日の思い出 (新潮文庫 む 1-11)

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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057118

感想・レビュー・書評

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  • 調子が乗って来た読書に勢いをつけようと思い手に取った。武者小路実篤の「人生論・愛について」には手こずったが、「友情」「愛と死」はとても良く読めた感じがあったのだ。多分これも良く読めるだろうと思った。

    良く読めた。前に読んだ二作品と違い、想い合う二人が目出たく結ばれる、読後気持ち良くなれた。

    武者小路実篤はもっと若い頃、中学時代に出会いたかった。もっと立派な人間になれたかもしれない。彼の本を読むととても感化される。

    然し死ぬ前に彼の本に出会えた事の方にもっと感謝すべきだろう。舟橋くん有難う。

  • 2019/11/10
    武者小路実篤の絶版本だったのですが、入手できたので読んでみました。この人の今までの作品の内容からは180度違う、言ってしまえばハッピーエンド。純愛?みたいな感じ。
    正子はどんだけいい人なんだ…。
    この人の作品は、今までは親友に好きな人をぶんどられたり、愛していた人が外国から帰国したら亡くなってたりとバッドエンドのものばかりでしたが、この話はそんなことが一切ないので心穏やかになれると思います。
    主人公の野島と、彼が好きになる正子が出会うまでの経過や、お互いに好きだと判明するときの様子、どっちがどれくらいお互いのことを好きかという謎の自慢合戦もありこの人の今までの作品と比べても明らかに古風なイチャイチャが多く展開されていると思います。
    あー、昔の人は恋をこんな風にしていたんだなと思いました。
    また、二人が一緒になるにあたっての彼らの家族のこともよく描写させれています。結婚に際しての両親の思い。特に正子の父が抱いていた思いが最後の手紙に書かれているのですが、自分の母(=正子の祖母)と自分の娘がそっくりで、そこに母の面影と当時の母の苦労を思って自分のことを考える場面は必読だと思います。
    青春の思い出に加えて家族の愛も盛り込まれている内容だと思いました。こんないい作品が終戦直後に完成したというのもまた驚きです。

  •  この人の本を読んでいると、よし頑張ろう、真っすぐに生きよう、というピュアな気持ちが湧き上がってくる。
     平凡な日常の尊さをさらりと、けれど確かな熱を込めて語っちゃうところが大好き。

  • 何せ明治時代の文章なので読むのに若干疲れるが、つい最近までの若い(思春期の)男女の心の細やかさが良く判って読後感は非常に良かった。はっきり言って最近の情報過多の時代に忘れ去られた純真さが詠む人の心をうつ。そう感じた本であった。実はこの本、高校時代に読んでちょっとまどろっこしかったので好きではなかったのだが・・・友情、愛と死も同じ一連の作品で結論のみ異なるものと言ってよい。

  • 僕は宗教としてこの人の考え方をこれからも信じていこうと思う。

    ・『この世にはどんなことが行なわれようと、時は一向平気な顔をして過ぎてゆきます。私たちは時間を長く思いすぎたり、短く思いすぎたりしますが、時の方はそんなことを一向問題にはしない』
    ・『それは いつも全体を見ることを忘れてはいけない。一方にはよくっても、他方にはよくないと言うこともよくあります』
    ・『私なんか碁なんかやってないと言う気が、ついするので、もう一歩と云う所で、進歩が出来ないのです。やっている時だけは、本気になって、勝ちたいと思うのですが、普段が普段ですから、やはり無駄ですわ』
    ・『人間というものは純粋さを失ったら何処まで迷いだすかわからないものです。昔の人はそれを知っていました。今の人は本を読みすぎたり、いろいろの刺激に逢ったりして、自分を見失って、どうでもいいようなことに夢中になる。そして段々と人間らしくない怪物になっていく。頭のいいもの程、自分を自分で騙すのです。本来の生命を忘れるのです。』
    ・『人生というものは実際。無尽蔵の宝庫のようなものです、どの宝庫に入っても、宝がありすぎるのです。その宝に夢中になりすぎて自分の生命のことを忘れてしまう。その宝は自分をよく生かす為に必要なので、それ以外の宝には目もくれないという覚悟が大事なのですが、私たちはつい宝物に目がくらんで、自分の一生というものを考えない。それは丁度、一人の子どもがご馳走の国に行って、あんまりうまいものが多すぎるので、どれも皆食べなければならないと思って、自分が人間だということを忘れて、自分を胃の腑以外のものでないと思うようなものはなくなり宝物が中心になるのです。それでは一番大事なものが何かがわからなくなるのです。大事なこと、なくては叶わぬことは一つだということは本当です。それは全ての人が人間らしく生きられるということです。他人を益々本当の人間にして、そして自分も益々本当に人間になるようにする。』
    ・『怒った調子でものをいうから、お母さんは話が出来ない』
    ・『恋愛というものは一人前になるために与えられているようなもので、理想の相手を求めると共に、自分を理想の人間にしようという努力が自ずと生まれてくるもの』
    ・『死に物狂いで勉強しよう。自分の生活を根本的によくしよう。心がけをなおそう。怠けたり、ずるけたりすれば、自分の実質はくさりだす。心の心から自分を良くしなければいけない』
    ・『私はなんとなく母の今までの寂しい生涯が考えられてきました。母は実際私たちの為に犠牲になって、生きてきた。そして私たちが少しでも元気だと、喜んでくれる。そして私たちが少しでも元気がないと、心配して、何とかして慰めようとしてくれる』
    ・『人間の値打ちは結局、他人に働きかける質と量できまる。自己を完成するのが値打ちのが個人の務めには違いないが、自己完成というのはつまり円満な人格をつくることを意味している。自分だけを完成する、しかし他人には何の影響も与えないで死んでゆく、それでは面白くない。自分が悟るのはつまり皆を悟らせるために役にたつから尊いのだ。だから愛というものが尊くなるのだ。自己完成をしたことはつまり他人の自己完成に役に立つにだ。人間は他人から切り離された存在ではない』

  • 美しい。ありえないくらい美しい。こんな時代が実在したなら生きたかった。

  • 著者にとっての代表作の一つ、自伝的色合いが強い。「昔の人は偉かった」的なフレーズ、「黙って俺について来い」な部分、また精神論や理想論など、あまりに日常離れしているので、かえって小説の世界の中の話としてストンと入ってくる。今は忘れられてしまった、古きよき日本がこのような形で残されていて、よかった。(2006.1.25)

  • 武者小路実篤の恋愛三部作中、もっともハッピーエンドな物語。それが物足りない部分もあるが…他の二作を読んだらこれを締めに読むべし。
    ≪評価≫
    インパクト─C
    本の厚さ─C
    登場人物の濃さ─C
    共感度─B
    読後の成長性─C
    話のスケール─D
    笑い─C
    暖かさ─A

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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