人生論・愛について (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057132

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいて清々しい気持ちになった。
    人生論といっても、決して難しい話ではない。人間らしい生き方をしていれば、理解できることばかりだった。
    本に線を引くことは、滅多にしないのですが、この本だけは別で、線の部分を時々読み返してしまいます。
    なかでも特に「小さい寂しさ」という文章が好きです。

  • 岩波新書の「人生論」を読んだ。
    武者小路実篤の「友情」はとてもいい本で、お気に入りの作家になったが、この本を読んでさらに好きになった。
    恋愛、仕事、勉強、心、理性など、様々な観点から若者に向けてグッとくる言葉が綴られていた。1日で読んだため、細かいところは覚えてないが、何度も読み返し、自分のものにしたい言葉がたくさんあった。
    図書館で借りたが、一冊買ってみよう。また、22.23歳までにいい本を読むといいとあった。古典にも目を向けて読者したい。

  • この本は、俺のガキが20歳になるときに
    プレゼントしたいような本だ。素晴らしい。

    ■1部の感想
    侮辱を侮辱ととらない人間は…っていうところで先を読むのに躊躇した。
    俺は、あんまり人から侮辱されても気にしない人間だから。
    尊敬する人にされたら気にするけど。

    で、先を読んで安心した。後者の方みたいだったから。
    まあ、それもどうかと思うが(笑

    武者小路さんは、人類の未来のために自分の力を尽くすことが優先だと、俺は読み取った。
    だけど、俺はそうは思わない。まずは自分の幸せを第一に考えるべきだと思う。
    もちろん、大前提に「誰かに迷惑をかけない限り」というのがあるけど。
    そして、誰かを対して何かをしたいと思ったときに、周りにいる誰かの人生を幸福にする手伝いをする。
    これを2つ目に優先にするべきだと思う。その先に、周りにいない見ることができない誰か(社会)や、
    未来の誰かのためになることに時間を割く。こういう順で、人生の時間配分をしていくのがよいと思う。

    お金についての見解は、初めての視点だったから面白かった。

    ■2部の感想

    すごい理想論。すごく綺麗だと思う。
    ただ、理想論に過ぎない。これは実現しないと思う。
    実現したとしても、すぐに崩れ去ると思う。

    人間はそんなに綺麗なもんじゃない。
    尊敬されるべき誰かの不幸を心から喜ぶ人間もいる。
    自分の欲求の追及にしか興味がない人間もいる。
    人の弱みに付け込んで、うまい汁を吸おうとする人間もいる。
    そういう人間が少数ながら存在することは、残念ながら事実だ。
    そして、そういう人間が競争社会で勝ち抜く確率は高い。
    なぜなら、競争社会では、正義や道徳は時に大きな足かせとなることも多いからだ。

    ただ、一方で尊敬に値する素晴らしい人間がいることもまた事実だ。
    そういう人間だけであれば、武者小路さんの社会は間違いなく実現するだろう。
    そして、社会主義で人は幸せになることが出来るだろう。

    ただ、現実において、社会主義は滅びかけている。
    社会主義が滅びたことは、人が尊敬に足る人間だけではないことの証明である。
    そして、人は尊厳に足る人物かどうかも、判断できなかった。これも事実だ。

    自己の欲求を追及することで、全体が潤うという資本主義が世界を覆っている。
    これについては、俺は否定するつもりもない。いまさら社会主義がいいとも思わない。
    人間には、社会主義は向いてないように自分は思う。
    自己欲が強い人という生き物には、資本主義があっていると思う。

    人は自分の欲望に忠実である。武者小路さんが思っている以上に忠実な気がする。
    自分は他人の自己顕示欲や、物欲の高さについて、正直不思議に思っている。
    ある程度はあってかまわないように思うが、ある程度を超えているように自分には見える。

    武者小路さんは、そろそろ人間もこの理想を実現出来るような口ぶりだが、
    自分が思うに、そういう世界は遠くなっているように思う。

    人間の未来はひどい世界になっているかもしれない。
    でも、自分にとっては死んだ後のことはどうでもいいことだ。

    迷惑をかける気はもちろんない。
    世界を良くしたいから、といっても何も変えられない。
    自分は自分しか変えられない。誰かはその誰かしか変えられない。

    誰かを変えたくはない。
    自分の思考は自分の中では自信を持って生きているけれど、
    それは誰かの中でも、生きていける思考だという保証もない。
    自分はその部分に責任をもてない。だから人を変えたくない。
    ただ、自発的に変わるのなら、それはいいと思う。

    自分を高めることで、誰かを変えることが出来るかもしれない。
    その一抹の思いも、生きる理由のひとつになっているように思う。

    武者小路さんの意見はすごくバランスがいい。理屈も分かりやすい。
    読んでいてそう思った。

    バランスがいいというのは、偏りがないということだ。
    全ての人が、この考えであれば、間違いなく世界は平和だ。

    でも、俺は人類の未来を最優先に生きようと今は思わない。
    自分が「美しい」と思う生き方で生きようと思う。

    そういう意味では、武者小路さんが言う最上のもの=美
    という部分で、意見が一致しているのかもしれない。

    武者小路さんに意見を言うなんて、差し出がましいな、俺(笑

  • 哲学書とかって難しいから頑張らなきゃいけないし、理解するのに時間がかかるけれども、この本は本当に簡単にいろいろな人が本当に身近に感じながらいまだ答えが見つからない本質的な質問に実篤の考えがしっかりと示されている。すごく分かりやすく書いてあるけれどもちろん個人の考えだから反対する人もいるだろうけれども、僕は非常に共感できる部分が多かった。

    人はなぜ生まれたか。
    仕事とは。
    お金とは。
    恋愛はなに。
    愛って何だろう。
    そして死とはどんなものか。

    本当に美し過ぎて目もくらみそうなくらいの理想論なんだけれど、こんな複雑化して迷いがちな世の中だからそんな理想を持つのもわるくないと思う。実篤は理想を理想で終わらせずに「美しき村」を造って実践しようとした実践主義者。最高の一冊。

著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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