お目出たき人 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1999年12月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784101057149

みんなの感想まとめ

自己肯定感に満ちた主人公の恋愛模様が描かれている作品で、失恋を通じて内面の葛藤や理想の女性像が浮き彫りになります。主人公は想い人と話したこともなく、会うことすらないのに、彼女に対する恋心が膨れ上がり、...

感想・レビュー・書評

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  • 白樺派の武者小路実篤による、大胆な自己肯定に溢れた作品。「自分」の当然の失恋を、直接的な内面描写で描き出している。

    「自分」は想い人「鶴」と話したことがなく、直近1年に至っては会ってすらいない。にも関わらず、勝手に恋心を募らせている。その上、自己の理想の女性像をそのまま投影しているため、彼の中でその存在が肥大化している。楽天的であるため、結婚出来るものとして疑わない。客観的に見ると滑稽であるが、彼は至って真剣に恋愛しており、流石に閉口してしまった。

    興味深く感じた点は、これ程までに「鶴」を慕う「自分」が、自我は恋愛に勝ると考えていることだ。恋愛至上主義の中に生きているようでありながら、実際は大正的教養主義の影響を強く受けており、恋愛もあくまで人格完成の手段としている。この時代特有の精神がよく表れていると感じた。

    最後に。「自分は女に飢えている」気持ち悪い独白ではあるものの、率直な吐露には爽やかさすら感じさせる。「文壇の天窓を開けた」と評される武者小路ならではの自己表現であろう。

  • 私の読書嫌いを変えてくれた武者小路実篤が久しぶりに本屋さんで目に入ったので購入しました。
    もう、さすが!この主人公の童貞感、身勝手さが武者小路実篤作品だったな〜と思い出しました。不気味で気持ち悪いところもあるけど、決して嫌にはならないからおもしろいです。タイトルの通り、見事なお目出たき人でした。
    作者はどういう感覚でこういう物語を書いていたのか気になります。

  • まさに恋は盲目、どんな些細な事象も都合よく解釈し、自分にとっての理想を妄想として膨らませる、まさに狂気、恐怖すら感じるのは現代的な感覚なのか、あるいは。

  • おめでたい主人公が私に似ていて面白かった

  • 片想いのすすめ。
    てゆうか片想いよ、すすめって感じ。Go ahead!

  • 鶴がなんとも思っていないならば鶴を妻にすることを好まない、多くの人をわずらわしてまで鶴の夫になりたくない。それ程お目出度い男になりたくない。

    なんだか、憎めない。うむむ。おもしろかった。

  • 自分は祈りのきゝめのあるものとは思わない。しかし祈ると、祈らない時よりは幾分かの安心を得られる。だから何か心配事や、こうあってほしいと思う時は一寸心で祈る癖がある。

  • 「自分は女に餓えている」
    なんて潔い言葉でしょうか。妄想が妄想を呼び、まさにお目で出たき人ではありますが、なんだか応援したくなってしまう。どうなるの?どうなるの?と最後まで楽しかった!

  • 何かどこかで紹介されていた本である。昔読んだ気でいたが読まなかったのかもしれない。鶴という近所の女性は自分と結婚すると思って、その鶴のことばかり思っているお目出度い人である。

  • まさに恋は盲目、どんな些細な事象も都合よく解釈し、自分にとっての理想を妄想として膨らませる、まさに狂気、恐怖すら感じるのは現代的な感覚なのか、あるいは。

  •  主人公の身勝手な恋の失恋までの物語。題名の通り主人公はおめでたき人、過ぎる。
     しかも、その割には自分で動く事はなく、グダグダしてて何の進展もしない。人に頼ったりする。そしてその結果次第でその人にいちゃもんをつけたりする。憤慨ですね。
     でもそれが面白い。グダグダがあったからこその後半の高揚感があった。
     また、本編後に本編主人公が書いたと考えながら読む物語が幾つか入っていて、その描写はすごく面白かった。
     総じて、憤慨だった。

  • 2022.04.23 朝活読書サロンで紹介を受ける。200回記念。自分は女に飢えている。一目惚れ。話したこともないのに結婚を申し込む。

  • 一般的にはおそらくこんな感想だろうというのが浮かぶが、それはともかく、僕はこんなことを考えた。時間の流れ。そんな時の数分はとてもとても長く感じる。そんな時のそんながそれではなくて、さんざん考えているときでもそうかも知れないが。

    多くの人、テンポよくはっきりと生きていこうとしているけれど、ふとした時にごちゃごちゃ考えているのではないか。聞いてもいないのにあれこれしゃべって何かの説明をするのは、いっぱいいる。

    ともかく。

    予感は当たるか外れるか。

  • かなり昔の本だけど、共感できるところも多くて面白かった。読みやすいし、主人公の気持ちが細かく綴られていてよかった。最後はうまくいかなくて残念だったけどまあそうだよなーと思った。

  • 話した事もない女性へ恋心を爆発させる男の「超・妄想純愛劇」

    世が世ならPTAの皆様が意気揚々と出版社に凸しちゃう粘着ストーカー小説の題材になりそうだが…

    本主役はひたすら純粋で夢見がちでポジティブで高尚な侍か賢者だ。少し笑えて、割と切ない。

  • 誇り高き失恋ロマンチスト、武者小路実篤!
    友情、愛と死に続いて3作目読了。

    あ、目が合った!
    いま、絶対俺に微笑んでくれた!
    俺のこと好きに違いない!
    結婚だ!やったぜ!

    他の方と婚約しました…orz
    ってゆーお話。

    これは、本当におめでたい。主人公が笑けるくらいおめでたい楽天的夢想家。
    鶴という恋する女性をこれでもかってくらい理想化し偶像化して、チマチマあーでもないこーでもないって一人で考えて何のアクションも起こさぬまま振られるっていう、救いようの無いストーリー。

    巻末の阿川さんの解説がなんとも痛快。

  • 「自分は女に餓えている」

    「自分の個性をまげずに鶴とならば夫婦になれるように思われて来た」

    「自分には鶴と一緒になって始めて全人間たることが出来るように思えた。何かかくにつけ、読むにつけ、見るにつけ鶴が居たらと思う。嬉しい時も淋しい時も悲しい時も、美しいものを見るときも、甘味いものを食う時も鶴と一緒だったらと思う」

    然し、物語を通して鶴との具体的な交渉は一切なく、独り善がりの空想に終始する。自他の隔壁が融解することでなければ、個々の強張った自我がほどけて互いにまた撚り合っていくことでなければ、わざわざ愛に特別な場所を与える理由も無かろうに。

    現代、この男にいろんな名前が与えられているのは、周知の通り。

  • 失恋文学の白眉を読破。短い小説だが、主人公の「自分」が何度「自分は女に飢えている」と発したか数え切れない。恋する青年×「自分」に無関心な美少女。彼女と付き合ってすらないのに「自分」の恋愛妄想が激しすぎて、本当におめでたい人だなぁ、と思いました。

  • 鶴、月子。無事で良かった、と現代人は思ってしまう。何もなくても心象の観察だけで小説が一つ出来てしまう、と思わせる描写。

    ダンテのビヤトリス。

  • 話した事もないのにそこまで想いを拗らせられるとはと思った。自分の中で相手を作り上げる…現代でいう推し活で夢見る相手に拗れて行くような気持ちに見えてしまった…。『幸あれ!』と言われるとさっぱりしていて好き。

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著者プロフィール

東京・麹町生れ。子爵家の末子。1910(明治43)年、志賀直哉らと「白樺」を創刊、「文壇の天窓」を開け放ったと称された。1918(大正7)年、宮崎県で「新しき村」のユートピア運動を実践、『幸福者』『友情』『人間万歳』等を著す。昭和初期には『井原西鶴』はじめ伝記を多作、欧米歴遊を機に美術論を執筆、自らも画を描きはじめる。戦後、一時公職追放となるが、『真理先生』で復帰後は、悠々たる脱俗の境地を貫いた。1951(昭和26)年、文化勲章受章。

「2023年 『馬鹿一』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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