お目出たき人 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 542
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101057149

作品紹介・あらすじ

自分は女に、餓えている。この餓えを自分は、ある美しい娘が十二分に癒してくれるものと、信じて疑わない。実はいまだに口をきいたことすらなく、この一年近くは姿を目にしてもいない、いや、だからこそますます理想の女に近づいてゆく、あの娘が…。あまりに熱烈で一方的な片恋。その当然すぎる破局までを、豊かな「失恋能力」の持ち主・武者小路実篤が、底ぬけの率直さで描く。

感想・レビュー・書評

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  • 片想いのすすめ。
    てゆうか片想いよ、すすめって感じ。Go ahead!

  • 誇り高き失恋ロマンチスト、武者小路実篤!
    友情、愛と死に続いて3作目読了。

    あ、目が合った!
    いま、絶対俺に微笑んでくれた!
    俺のこと好きに違いない!
    結婚だ!やったぜ!

    他の方と婚約しました…orz
    ってゆーお話。

    これは、本当におめでたい。主人公が笑けるくらいおめでたい楽天的夢想家。
    鶴という恋する女性をこれでもかってくらい理想化し偶像化して、チマチマあーでもないこーでもないって一人で考えて何のアクションも起こさぬまま振られるっていう、救いようの無いストーリー。

    巻末の阿川さんの解説がなんとも痛快。

  • 「自分は女に餓えている」

    「自分の個性をまげずに鶴とならば夫婦になれるように思われて来た」

    「自分には鶴と一緒になって始めて全人間たることが出来るように思えた。何かかくにつけ、読むにつけ、見るにつけ鶴が居たらと思う。嬉しい時も淋しい時も悲しい時も、美しいものを見るときも、甘味いものを食う時も鶴と一緒だったらと思う」

    然し、物語を通して鶴との具体的な交渉は一切なく、独り善がりの空想に終始する。自他の隔壁が融解することでなければ、個々の強張った自我がほどけて互いにまた撚り合っていくことでなければ、わざわざ愛に特別な場所を与える理由も無かろうに。

    現代、この男にいろんな名前が与えられているのは、周知の通り。

  • 2019/7/27
    全然モテなかったと噂の武者小路実篤の本は前にも友情で読んだことがあるが、それに近いような、簡単に言うとウジウジ妄想男の話?
    もともと月子という女性を好きだった26歳の主人公は、月子にフラれた後から近所に住んでいた鶴に恋をするのだが、別に鶴との関係が進展したり後退したりというような内容ではなく、言ってしまえば一目惚れした後、特に鶴との接点もないままにどんどん主人公が妄想や想像を膨らませていき、鶴が別の人と結婚したという知らせを聞いて勝手にショックを受けた的な感じの話です。
    主人公と鶴の関わりがあったとするところもいくつかありますが、電車の中で偶然に遭遇した、とか、代理の人に結婚したい的な手紙を送ってもらってお断りの返事をされた、とか、会釈をされた、とか、とにかく直接的な関わりが一切ありません。
    妄想だけでこうも話が進むものかと思うのですが、現代の小説ならきっと内容が薄っぺらくてつまんないなとか感じてしまうであろうところを、明治期のこうした文学作品は何でかつまらないと感じさせないところがあると思います。
    どうしてそう感じるのか色々考えてはみるもののよくは分からず…。でも色々な描写がすごく丁寧に書かれているからなのではないかなという気はします。読書素人ですが、こうした文学作品に時々触れるのも良いなと思います。

  • 根拠はないけれど、鶴と結ばれるに違いないと思いこめる心の強さはいっそ痛々しい。
    こじつけにもほどがあるような自分と彼女とのつながり?に満足して微笑んだり、鶴の容姿が醜くなって人が離れて行っても自分は鶴にためらいなくプロポーズするだろう…という中学生のような妄想を思い描いたりと、鶴との恋愛というより自分への陶酔のようなポジティブさに笑いがこみあげてくる。
    わが身を顧みればけっして彼のことは笑えないのだけれど。

  • 気持ち悪くて笑った でも恋ってそんなものかも 愛すべき童貞

  • 空想にふけってもいいじゃない!

    幸せな空想で仕合わせ、幸せになれるなら
    たとえ恋が実らなくてもいいと思えてしまうお話でした。

  •  ほうき相手にプロレスができる。そんな言葉を思い出した。一流プロレスラーは相手なしで技の応酬などショーができるといったもの。「お目出たき人」が一流かどうかはさておき独善的な主人公のショーを見ている気分だった。
     これはこれで狙って書いているのだろうから大したものではないか。小説としてはあまりおもしろくなかったけれど、風景の描写や主人公の鶴への距離感など筆致に見るものがあった。簡潔な文章なのは好印象。主人公の言動がダメなお坊ちゃんそのもので、その設定自体は楽しめるものの、その他の登場人物にはスポットがあたることがなく、それが小説の幅を狭めているように感じた。会話文も多くなく、主人公以外の心情は描かれない。ただ、それを目指したものではないから仕方ない。独善的な主人公の一人称だからそれを楽しめるかどうか。
     付録についている、たった9ページの「空想」が一番おもしろかった。やはり戯曲的な会話文があったほうが、この作家は躍動感が出る。画家の兄が新聞の批評におびえている、寂しいお話。
     解説(?)が山本健吉氏と阿川佐和子氏による二本立て。武者小路氏を現代の読者に結びつけてくれる。ここだけ読んでも十分楽しめる。

  • あの武者小路実篤の自伝的小説。道端で一目会った娘に一目惚れし、絶対に結婚する、相手もそう思っているに違いない、これは天の意思だ、という妄想が膨らみ、家族や友人を巻き込みつつ、数年間思い続ける。その間の言動はまさに「おめでたき人」の一言で、嫌になるほど。しかし、これほどまでにあれこれ空想を膨らませることは、忙しくしている現代に人には欠けているのではと思うと、羨ましい面もあったりする。

  • 独りよがり、というのは男性に多いような気がします。

    別な言い方をすれば、ヴィジョンがあるから、ということになるのでしょうか。実現させたい何かを心に思い描いて、そのために現実に働きかける。

    一方、この作品の主人公は鶴という女性に恋をしますが、実際には没交渉のまま関係が進展しません。念ずれば通ず、と信じているようですが、自我を傷つけてまで女性にアプローチしようとしません。

    1911年に出版された小説ですが、今でも通じる現代的な心理描写が秀逸です。

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著者プロフィール

武者小路実篤(むしゃのこうじ さねあつ)
1885年5月12日 - 1976年4月9日
東京府東京市麹町区(現・千代田区)生まれの小説家・詩人・劇作家・画家。ある時から「むしゃこうじ」と当人が自称しているが、一般的に「むしゃのこうじ」読みされている。学習院初等科~高等学科に在学し、東京帝国大学哲学科社会学に入学したが、入学初年で中退。創作活動をはじめ、1910年に志賀直哉、有島武郎、有島生馬らと文学雑誌『白樺』を創刊。これにちなみ、彼らは「白樺派」と呼称される。
1918年宮崎県児湯郡木城村に「新しき村」を建設。その後も多くの創作活動に勤しんだ。1951年、文化勲章を受章。1976年4月9日、尿毒症で逝去。
代表作に、『お目出たき人』『わしも知らない』『幸福者』『友情』『人間万歳』『愛と死』『真理先生』など。

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