キッドナップ・ツアー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.31
  • (124)
  • (311)
  • (678)
  • (119)
  • (25)
本棚登録 : 3230
感想 : 366
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058214

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新潮文庫だけど挿絵もあるし児童文学でいいのかな。ちょっと大人びて冷めた小学校5年生のハルとダメ親父のキッドナップ・ツアー。雰囲気的に北野映画の「菊次郎の夏」を思い出しました。前半にハルとパパが電車に乗るシーンとか久しぶりに2人が手を繋いだシーンなんかは久石譲のsummerが脳内BGMです。
    パパの身勝手さやハルに対するアンタ呼びはイラッとしたけど、ラストがじわりと良い感じでした。
    あんなダメ親父だったからこそなのか、ハルに対して語るダメ人間論が響きました。娘を大切に想っているからこその素敵な別れだったなと思います。それを汲んで頷くハルも本当に良い子ですね。
    なんだかんだで父と娘というラストが好きです。

  • 夏休みの第一日目、私はユウカイされた。衝撃的な一文目。夏休み父にユウカイされあてもない旅にでかける。まさにその日暮らしというもの。小学五年の女の子とは思えない口ぶりに途中どきりとさせられる。どんくさい父に徐々に気持ちよせてく少女。情報量が少なく、日記調でどこか親近感のわく、ゆるい作品。「こういうことだってあるんだ」「よく覚えておいたらいい。こういうことだってあるんだよ…(略)」、「悪かった。ごめん」これは山中での出来事。父なりの娘への教育。しかし不器用だからうまくはいかない。この場面以降少女は父に気持ちを開いてく。

  • 人は本に、思い出を重ねながら読むんじゃないか。
    私はこの本を読んで、2つのことを思い出していた。

    1つめは、この本と同じように、父は私だけを連れて、車でどこかに何日か行ったこと。この本のような長旅ではなかったけど。
    2つめは、小3、4の頃のこと。私は友人3~4人と小学校から下校途中だった。通学路の博物館近くで、見知った顔があった。2~3年会っていない父だった。その時、気まずくて何も話をせず、友達に見られた気まずさから、不機嫌な態度で父に接し、途中で帰った。あの時、父は何を伝えたかったのだろうか。小さい頃から、母より父と仲良かったはずなのに、何年か経たないうちに、こんなに隔たりは出来てしまうものか。あの時何か言葉を交わしていたら、何か未来は変わっていただろうか。もうきっと会えはしない、どこかですれ違っても気付かないであろう父との出来事を思い出した。

    そして、この本がクライマックスに近付くにつれて、「どうして私はこう不器用にしか生きられないんだろう」と泣いた。主人公のハルの行動が、自分と重なったのだろうか。

  • 【本の内容】
    私はおとうさんにユウカイ(キッドナップ)された!

    私の夏休みはどうなっちゃうの!?

    五年生の夏休みの第一日目、私はユウカイ(=キッドナップ)された。

    犯人は二か月前から家にいなくなっていたおとうさん。だらしなくて、情けなくて、お金もない。

    そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの?

    海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。

    ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親の、ひと夏のユウカイ旅行。

    私たちのための夏休み小説。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    夏休みを心待ちにしなくなったら人間は本当に寂しいと思う。

    ルーティーンな暮らしをしていても、夏が来ればうきうきな休暇があり、海水浴に花火にBBQキャンプ…本気で童心に返れるひとときが待っている。

    そんなホットな気分を楽しむ時間的な余裕がないときも心配無用。

    大人は大小の冒険を、読書というバーチャルでだって楽しめるのだから。

    本書は、実父にキッドナップされた少女ハルのひと夏の物語だ。

    小学5年生にしては妙にシニカルな大人目線を持つハルのひとり語りに浮かぶ父への情と反発。

    まるで自分が子ども時代にタイムスリップしてユウカイされてしまったかのように、一連の旅をスリリングな気持ちで味わえてしまう。

    だめパパが率いるビンボー旅行ゆえ、ハルはひもじい思いもするし、疲れていらつきもする。

    娘と山道を歩きながら、父は「こういうことだってあるんだ」「戻ることだって簡単にはできない、前に進むしかないってこともあるんだよ」と誰に言い聞かせるでもなくつぶやく。

    そうだなあと頷いてしまったのは、ハルではなく私だ。

    そんなふうに何気ない場面に書かれた含蓄ある言葉に出合える読書が、実は夏のいちばんのアミューズメントだったりして。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 読み終わって数日経っているのでもうあんまし内容を覚えていませんけれども、非常に…少女の繊細な心情を汲み取った作品だったかと思います!

    いやぁ、角田さんはこういうのを書かせるとウマいですね…! 今作に登場する少女が実際の少女のようかというとそれもまた違うんですけれども、個人的にはこんな風に、ある意味大人びた? 少女が居てもいいんじゃないかと思います! まあ、男の子と女の子、どちらが先に大人になるのかと言えばやはり女の子でしょうから…一方、男の子は大人と言われる年齢になっても精神的には未熟だったりし…そんな奴が社会でデカい面しているんだからやってられません。 ←え?? 社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    まあ、そんなわけであえて漢字などは最小限に留め、あくまでも少女目線で綴られた物語をご堪能あれ! と課題図書などに推薦したい僕がいました…おしまい。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 「なんか児童書っぽいなー」と
    ナメてかかってたけど
    (だってあまりにひらがなが多いんだもの)
    後半戦、涙がじんわり。

    ダメ男なのに、良い父ちゃんだ。
    解説の重松清さんが書かれてた
    「難しい言葉は一切使っていない
    簡単な描写なのに、すごく上手(みたいなこと)」
    を読んでなるほどと思った。

    角田さんは家族を書くのが、どうしてこんなにうまいのだろう。

  • お父さんに「ユウカイ」される話
    カッコ悪くて お金もない お父さん 
    海・肝試し・自転車泥棒 そんなことしているうちに 楽しくなって、大好きって思えるようになった。
    「また、ユウカイしてくれる?」ってとこが好きです。

    お母さんとの交渉は、なんだったのかはっきりは 解らないんですけど、もしかして…そういうこと?って あとからジワジワ解ってくる感じがします。

  • お寺のおばあさんがオチャメで可愛かった。 読後は色んな所にツッコミ入れたくなるぐらい全体的に謎だらけでした。自分が読み飛ばしてるだけかも知れないので目的を知ってる方は教えてください。御願い致します。 頼りない父親でしたが最後にええ事言うてました。

  • 短くて隙間多めでばーっと読めます。
    ハルと同世代の頃に読んだら、もっと来るものがあったかも。
    ちょうど夏休みの終わりに読みたい本。

  • 角田光代さん”キッドナップ・ツアー”読了。父と、父に誘拐された娘による旅の物語。角田さんは天才だと思う‥手放しで好きです‥

全366件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
森 絵都
綿矢 りさ
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×