さがしもの (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.74
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  • (34)
本棚登録 : 7600
感想 : 791
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058245

作品紹介・あらすじ

「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」、病床のおばあちゃんに頼まれた一冊を求め奔走した少女の日を描く「さがしもの」。初めて売った古本と思わぬ再会を果たす「旅する本」。持ち主不明の詩集に挟まれた別れの言葉「手紙」など九つの本の物語。無限に広がる書物の宇宙で偶然出会ったことばの魔法はあなたの人生も動かし始める。

感想・レビュー・書評

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  • R2.4.30 読了。

     本にまつわるエトセトラ。
     『旅する本』、人が旅するように、本もまた旅をする。
     『不幸の種』、最初は難解と思えた本が、自分の成長に合わせて姿かたちを変えてゆき、いつの間にか自分にぴったり寄り添うようになる。同じ本を読むことで、自分の変化、成長の度合いがわかる。
     『さがしもの』、おばあちゃんが亡くなる前に孫娘に探してほしいと託した本。孫娘はおばあちゃんが亡くなってからも探し続け、おばあちゃんがその本を熱望したのかをその本を読むことによって知ることができる。などなど。
     角田さんのこの短編集のような世界観がたまらなく好きですね。ストーリーが気になって先を早く読みたいが、居心地の良い世界観から出たくなくなるような。

    ・「私の思う不幸ってなんにもないことだな。笑うことも、泣くことも、舞い上がることも、落ち込むこともない、淡々とした毎日のくりかえしのこと。」
    ・「あいかわらず、いろんなことがある。かなしいこともうれしいことも。もうだめだ、と思うようなつらいことも。そんなとききまって私はおばあちゃんの言葉を思い出す。できごとより考えのほうがこわい。それで、できるだけ考えないようにする。目先のことをひとつずつ片づけていくようにする。そうすると、いつのまにかできごとは終わり、去って、記憶の底に沈殿している。」
    ・「だってあんた、開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか、本しかないだろう。」
    ・「本っていうのは、世界への扉」

  • まず、1話目からガツンと心を掴まれた!
    旅の途中の古本屋で昔手放した本と何度も何度も出会う、まさに宿命的な縁を感じさせる本
    自分はここまでの奇跡的な出会いではないけれど、一冊の本と出会って、今まで全く本なんて読んだことがなかったけれど、大の本好き、読書好きになるきっかけとなった大事な本はあるのです…

    2話目「だれか」を読んで思わず片岡義男の本を
    買ってしまいました…笑

    4話目「彼と私の本棚」
    ユニコーンの名曲♪「フリージャズ」が頭の中に流れてくるような、切なくて愛おしいお話

    その他のエピソードも全部素晴らしくて
    自分が本が好きで、この本に出会えたこと
    そして、この本が世界に存在することに感謝します。

    • sinsekaiさん
      はい!なんでしょうか?
      はい!なんでしょうか?
      2021/02/20
    • sinsekaiさん
      どの話も面白かったので選ぶのは難しいですが、最初の旅する本は好きですね
      絶対にあり得ないけど、こんな事が起こったらほんとに面白いなと思います...
      どの話も面白かったので選ぶのは難しいですが、最初の旅する本は好きですね
      絶対にあり得ないけど、こんな事が起こったらほんとに面白いなと思いますね♪
      さがしものも好きですよ!
      どちらも意味合いは違えど運命的な本というか人生に影響を与えた本ですよね

      自分も運命的に出会って大好きな本が
      角田光代の「この本が世界に存在することに」と言う本なんですが、未読でしたら是非読んでみて下さい。
      2021/02/20
  • 一冊の本を巡り、物語を綴る、本への愛が溢れた短編集。

    単行本発売当時の「この本が、世界に存在することに」というタイトルが、この短編集を言い得ていると思う。

    私も、著者と同じように、駅前に小さな本屋があるだけの田舎で育った。古本屋さえなく、BOOKOFFなんか、ほんの最近のシステムだ。

    「旅する本」のように、奥付の右下に、小さな名前のハンコとNo.を付けていた。手放したら、もう手に入らないと思っていたのだ。

    私が不在の時、親戚の叔父さんとか、文庫だし沢山あるし、貰えるんじゃないかと思っていて、時々、無くなるものがあったのだ。思い入れを理解しない親が、児童書はもう読まないだろうと、歳下の従姉妹に勝手にあげてしまい、しばし、茫然となったのは一度や二度ではない。

    まあ、子供だったしね、暴れたような記憶もあるなあ。

    そんな田舎から出てきて、横浜ジョイナス有隣堂や、東京丸善を知った時、動揺さえした。角田さんも、後書きで同じような気持ちを書いていた。
    懐かしさと、嬉しさで、後書きで泣きそうだったわ。

  • 早起きして地下鉄に乗り、病院へ行った。
    定期検診の為だ。予約はしてあるものの、大きな病院はやはり時間がかかる。
    ブク友さんの人気も高い、この本を待ち時間に読むことにした。本に纏わる、短編集。
    私も古本屋が好きで休みの日は、よく足を運ぶ。
    古本に抵抗がある方もいるようだか、ほんのり甘い紙の匂いも好きだったりする。
    ラインが引いてあったり、ふりがなが記入されていたりは、よく見かけるけれど、一度だけラブレターの様な文章が書いてあったものに出会った事がある。
    「委員会の時だけじゃなく、もっとずっと話がしたい。気づいて欲しい。」この短い文章から、同じ 委員会で集まり、議題にそって話し合いした後、すぐに立ち去る彼女は、おそらく他クラス、または学年違い。よく目は合うけれど、すぐにそらしてしまう。
    互いに本が好きで、自分が読んでいた本を貸すことになった(大チャンス到来)。本が好きな彼女ならあとがきまで読むはず、そしたら最後のページも気づくはず。
    と、妄想にひたった経験があるので、まさにこの短編集の登場人物達のように、本には香り、音楽、出会い、別れなど人を呼び、人につなぐ力があると思った。
    読書好きを内緒にしていた遠い昔、ご飯に行った相手の鞄から小説が見えて、借りた事がきっかけに、お互いに部屋の本棚から、数冊ずつ選び、本を貸し借りする口実で会い、いつしかデートになり、大好きになり、大切な人になった。
    私の体験談も、この短編集に入っていても違和感ないのでは無いか?(笑)と思うほど、身近な感じがした。
    本を読み終えた頃に、通院も無事済み、また半年後に受診することになった。
    帰りに、無性に本が読みたくなり久しぶりに、図書館へ。探していた本が見つかり、重かったがエコバッグにぎゅうぎゅうに詰めて帰ってきた。
    今夜からまた本を読んで世界を旅してみたい!


  • 上白石萌音「妹に迷惑がられている」 こだわりの読書スタイル、愛読書3冊を明かす | テレビ・ラジオで取り上げられた本 | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/article/576700

    角田光代 『さがしもの』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/105824/

  • もう一度いつか読み返したいと思える本になりました。
    本の何が楽しいのかを言葉で説明するのは私には難しいです。
    でもこの本にはそれが書かれています。
    本の何が楽しいのか聞かれたらこの本を読んでもらえれば分かります。
    さがしものが見つかります。

  • お気に入りの本です。
    旅する本が一番好きです。運命の本があるんだなと思いました。
    私にとってどれがその本なのか?それともまだ出会ってないのか?

  • 新潮文庫の夏のフェアの冊子をペラペラと捲り、何か面白い本はないかと思っていた時に目に付いたこの本。人と本の様々な出会いについて書かれた短編集。
    自分は体験した事のないシチュエーションであれ、なんだか共感できるのは、本との出会いとその時の気持ちというのは普遍的なものだからではないか。ともあれ、この本の中の様々な人物が思ったように、私もこの本に出会えて良かったと思った一冊だった。
    特に後半の「引き出しの奥」「ミツザワ書店」「さがしもの」が良かった。じんわり涙ぐんでしまった。

  • 本にまつわる短編9話。

    本が好きな者にとっては、なるほど〜とか意外だとかこの感じわかる〜など楽しめる。

    本の一番のおもしろさは、その作品世界に入ると著者はあとがきに書いていたが、同感だ。

    本屋に行っても何時間もいるタイプ。
    好きな本が多くて選ぶのにひと苦労するのはいつものこと。
    なので本にまつわる本も好きなのだ。

    この短編で好きな章
    ① 旅する本
    ②彼と私の本棚
    ③不幸の種
    ④さがしもの
    ⑤初バレンタイン

    というか、半分以上好きやん。


  • 意思を持っているような本との不思議な縁、本を介した人との縁を描いた9つの短編。

    古本屋の空気、古本の以前の持ち主の痕跡、夜中、夢中なって読みふけり空が白んでいた朝、同じ本を読んで共感し合える喜び、本を誰かのために選ぶときの気持ち…うん、うん!と嬉しくなる。

    読みたい本リストが増え続け、次々と新しい本に手を伸ばしてしまうが、一冊の本を時を経て再読することをもっと大切にしたいと思った。 
    同じ本を開くと昔の想いが鮮やかに蘇る。逆に全く違う捉え方をしていることに驚いたりもする。年を経るごとに意味が変わる時がある。それは自分自身の変化なのだが、まるで話が違っているかのよう。一冊の本とじっくり向き合いたいと思った。

    旅に出るとき、ガイドブックではなく、その地が舞台の小説を読むのが好きだ。皆さんは旅のお供の本をどのように選んでいるのだろう。
    お供をした本を旅先に置いてくるのも一考だ。そこから物語が始まる、そんなワクワクした気持ちにさせられた。
    この状況下では、なかなか旅に出られないが、開くだけで時空を越えてどこへでも連れていってくれる本があることは、なんて幸せなんだろう。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞を受賞。著書多数。

「2023年 『明日も一日きみを見てる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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