くまちゃん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101058283

感想・レビュー・書評

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  • 失恋ってもっとブルーな気分かと思ったが、意外に激しい気分をいうんだなあ

    作者の角田光代さんのいう、「ふられ」小説。

    第一章で主人公をふった彼氏が次の章で主人公に。そして彼をふった女性が次章の主人公に、と物語を語る「視点」が次々と変わることによって、ああ、こういうふうに相手に世界は見えていたんだ、こういうふうに感じていたんだ、という新鮮な感覚が。

    次の章に移るたびに、前の章では「何なんだコイツは?」と感じていた登場人物に、いつのまにやら非常に好感を持っている自分に気がつく。
    なんとも不思議な感覚。どんどん読み進めるうちに、キャラクターへの当初の印象がコロコロとかわってしまう、というか視点を変えてみると、こういう風に感じるものなのかとすごく面白かった。そのへんの構成とか読ませる力ははさすがになぁ、うまいよなぁ、好きだなぁと思う。

    別れた後に、新しい恋人なりパートナーが出来て初めて「ああ、あの時の彼女は(彼は)こういう気持ちだったんだな、こんなことを思ってあんなことを言っていたんだな」ということがわかるということなんだよね。皮肉だよね。

    なんとも切ない。

  • 連鎖していく?「ふられ」小説。
    確かに、恋愛って、ふるか、ふられるか のどちらか。

    ふと思い出した…私が高校3年間密かにずっと憧れてた彼は、同じ女の子に3回告ってふられてた。(それを知っても同情や失望する訳でもなく相変わらず憧れてたけど)この小説と同じだわ!

    この本読んで思ったのは恋愛のゴールってどこだろう?てこと。結婚…とは言えないのはハッキリ描かれてたし。
    恋愛って、生きてる間一生付き纏う足枷みたいなものなのかもしれないな。

  • 失恋って文字とは違って失うものも沢山あるけど得るものだって沢山ある。

    ゆりえがまさにそうだったように、人を好きになるってことは好きになった人をを自分の理想や憧れってフィルターを通して見ることな気がする。
    相手の本質が見えるにつれ自分のイメージとの違いに戸惑ったり、自分が何者にもなれないと藻掻いて焦る中で何者かの枠にしっかり収まってる相手と恋することで自分を落ち着かせたり。

    恋は二人で、相手を想いやるものだけど恋ほど人間をわがままに利己的にするものもないな、

    けどひとつの恋が終わって時間が経つとその時の景色や記憶が一気にズームアウトして色々なことを考えるきっかけになるだろうし、その中には失恋しなきゃ気づけないことも沢山含まれていると思う。
    浮き草の話が一番すき。

  • いいですね~
    人ってほんとにみんな違う生き方をしているんだな、と思い、そしてみんな一生懸命なんだな、と。
    とても考えさせれました。
    最初、短いエッセイを集めたものかな、と思いましたが違っていて、全然違うお話(人生)が次のお話に絡んでいく。とても新鮮でした。

  • 最近、生まれて初めて好きな人に振られた。
    毎日の仕事もたくさんあった趣味も、何もかもが意味のないつまらないものに思えて、どうしようもない気持ちを何とかしたくてこの本に辿り着いた。
    何をしていても彼の事しか考えられず辛かったけど、これを読んでいる時はなんだか救われる気がして、この経験も自分には必要だったのかなと思えた。
    自分に必要なタイミングでドンピシャな本を読む事は、自分を助けてくれるんだなと初めて思った。
    あとがきに書いてあったけど、振られた事で人生観変わるぐらいものすごく勉強になったから、間違いなくこれからの私を形成するパーツになる。だから、彼はこれからも私の中にずっといるんだなと思える。私も彼を形成する一部になれたら良いなと思う。奴はもう忘れてるかな…。こんな事思ってる時点で全然吹っ切れてないけど…(汗)
    図書館で借りたけど、立ち直るまで手元に置いて何回でも読み直したいから買おうと思う。

  • なかなか良かった。
    他人の気持ちはわからないけれど、その他人にもそれぞれの生活や考えがあり、その人からしたら、自分のこともよくわからないんだろうなーとか。
    あとは、一方的に大恋愛をしていると思っていても相手にとっては特になんてことはない恋愛だったりしてってところも印象的。

  • 話がテンポよく進んでいくので、読んでいて気持ちがよかった。
    そして、終わり方も気持ちがいい。
    失恋してぼろぼろになっても、後でじわーっと得るものがあるって、何かいいなぁ。
    ふったりふられたりしなければ、別の誰かと違う物語を作ることもないわけだし、出会いってほんと奇跡だなぁって思う。

  • 読んでみて良かった!
    恋愛から遠のいたから分かる気がする小説だった。
    ひとを好きになって相手が同じ気持ちになるって奇跡みたいなものだっておもっているあいだはきっと絶対にうまくいかない。
    全部登場人物がつながっているのが良かった。
    せかいは案外狭い。
    いちばん好きだったのはマキトのはなし。
    マキトがなんにもなくてつまんない男なのが良かった。
    みんなだれかとしあわせになりたくて、なれないのが良かった。
    いちばん好きなひととはたぶんうまくいかない。
    それを小説にしてるのが良かった。
    とうぶん、この本を持ち歩きそうでぼろぼろになる予感しかない。

  • 失恋した時読みたかったなぁ。
    本当、あの頃の私はしんどかった。

    振られた翌日の朝、出勤する時、
    片腕を失ったような、世界が180度変わってしまったような、空がとっても低く感じて呼吸がうまくできなかった。

    この本に出てきた『別人格』の話。
    すごくうまい表現でしっくりきた。

    そうか、あの時
    私がせっかく形成し
    築いてきた彼に合わせた心地よい別人格を
    ある日突然彼に殺されちゃったんだなーと気付かされた。

    彼に『もういらない』と言われたら、その別人格は消えちゃうもんね。

    けどそうなると本当の自分ってなんだろう?

    みんなに共通して言えるのは…結局は惚れたもん負けなんだわ。

  • どうやら私は精神的に辛くなると本に頼りたくなるらしい。
    成人式から数年経ってるというのに初めての失恋を経験し、何をしてもどこにいても辛く、何かを求めて書店に足を運んだ。偶然手に取った本が私の人生を変えるような…というようなことを期待したりもしたが、偶然手に取った本がラブラブサクセスストーリーだったりした時には私の心は死んでしまう。結局ネットで失恋したときに読む本を検索し、出てきた中で気になったのが今作だった。どこまでも単純な人間だなあと思いながらも購入。積読も沢山あるのに…。


    それぞれの主人公が全員失恋する連作短編。ふられる側がメインでありながらもふる側が次の話で恋をして失恋するつくりになっているため、様々な面から作品の世界を見ることができた。

    良くも悪くも他者への“好き”や“憧れ”、“尊敬”が人の性格、考え方、人生に影響を与えあらゆることが変化する。もちろん恋愛に限った話ではない。でも恋愛ってすごい。
    なんていうか、好きになった方が負けってしみじみ感じてしまう。言いたいことが言えなかったり、相手の言葉一つで一喜一憂したり、ああ私ってこんなに弱い人間だったんだなんて気付かされたりもして。でもそれでも楽しくて幸せで嫌ではなかったりして。

    今作を読んでいて、共感する部分や学びの部分が所々あり、失恋というネガティブな題材でありながら前向きな気持ちを持つことができたように思う。こんなに弱いのは私だけじゃないんだ、とかこの辛さも過去になって未来の私の一部になるんだ、とか。
    何よりもこの登場人物達と同じように私も失恋を経験できて良かったなと思う。辛いけど。

    私をふったあの彼のほんの一部にでも私はなれているのだろうか、いつか名前も忘れられてしまうのだろうか、ふとしたときに思い出したりしてくれるのだろうか。彼が主人公となる話は読むことができないし永遠に答えが分からないんだろうけど。


    なんだかただの自分の失恋への感想になってしまった…。

    失恋の連鎖を通じて人と人の繋がりや人生について考えさせられたのは本当のこと。すごく面白かったし読みやすかった。
    だけど読んでいた最中の正直な感想として、なんだかんだで幸せそうな期間の描写が多く少し辛かったし、早くふられてくれと思ったし、ふられるといってもはっきりふられる描写はほとんどなくてもっとしんどいのが見たいとも思った。歪んでるよね



    はあ〜〜幸せになりた〜〜〜〜〜〜い

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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