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本 ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784101058337
感想・レビュー・書評
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戦時中同じ疎開先で、寂しくひもじい思いをした左織と風美子。終戦後10年、二人は銀座で偶然出会う。戦後から復興そして経済成長からバブルへと変化していく日本に この二人の女性の人生を描いていきます。時代の変化の象徴に 家族の住まいと食事が書かれています。
森さんの「みかづき」と印象が重なりました。
当時の平凡な主婦を望む左織と、料理研究家として華々しく活躍する風美子。性格や考え方も対照的です。兄弟と結婚して義理姉妹となり人生を共にする時間が増えていきます。
二人の女性の関係から生じるものといえば、嫉妬や妬み。人生の折々で、左織の気持ちが波立ちます。
読後、思わず自分の半生を考えてしまう。しかも後悔している事、あまり良く無い事の方を。思いの外長い時間、小説に引きずられたので、良い作品なんだろうと思います。
ただ、途中で何度か入る疎開先のトラブルとか、風美子への不信感の是非などの意味合いを読み取れないところがありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子供(長女)に対しての気持ちだけは、そのような経験がないせいか理解出来なかったけれど他は左織に感情移入して読んでしまった。何人か子育てしたら相性が合う合わない子供っているのかなあ?
一冊の中に長い時間の経過とともに見えてくる沢山のテーマがあり読み応えがあった。風美子の気持ちだけはずっとオブラートに包まれているように感じてしまった。偶然、戦争孤児だった男性のお話しがテレビ放映されている。戦争孤児となった風美子の思いは想像する事すら難しい。 -
いつホラーに変わるのかとドキドキしながら 一気に読んでしまった。でも最後までホラーにはならず ある意味ホッとしたような…。
たしかに記憶って置き換わるって 何かで読んだことあるし 置き換えじゃなくても 思い違いや 受け取り方の違いで 同じ事でも 人が変わると別の出来事みたいに違って見えることはよくあることかも。
家族ってなんだろ?と ため息とともに考えてしまう。
母親とムスメって なかなかに難しい関係だよね。
昔からずっと まわりの仲良し母娘を見るたび 我が身の至らなさに胸が痛くなる。なんで フツーに仲良くできないのかなと。作中にもあったけど 家族にも相性がいい悪いはあるんだろう。読んでいて 切ない話でもあったかな。 -
自身の気持ち、思いを代弁してくれているかのような感覚...。時代、世代、事象、事件のなせる業か、変容する何かに表面上は合わせているようには見せてはいるのだが...。いい意味でどっと疲れたが、今、読んでよかったと思える一冊でした。
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主人公は僕か?
それ程までに主人公左織の考えが自分の頭に流れ込んで、いつも自分が考えてる事や他人に感じている感情にオーバラップし、ドキドキした。
何にもなれない人生を生きる、表面上は幸せだと見えるが内面は色々な感情で押し潰されそうになってる、いや実際潰れてる。そんな人の物語。多分、全ての人に当てはまる物語。 -
疎開先で出会っていたという左織と風美子。戦後に再会した二人の歩みを、時代の流れと共に追った壮大な長編小説。
どんどん深みを増す角田作品、今作もまた大きくうねる物語にすっかりのまれてしまった。
思いがけない再会後親しくなる二人だが、疎開時の風美子のことをまるで覚えていない左織。その後彼女達は結婚を機に義理の姉妹関係となり、左織は一男一女の子供に恵まれ、風美子は料理研究家として一世を風靡するが…風美子に、自分の人生に介入され浸食されていくような錯覚を感じ始める左織…。つい左織目線で物語を追うせいか、風美子の行動一つ一つがきな臭いもののように感じてしまう。何もかもが人任せの左織に時々苛立ちを感じるものの、それ以上に風美子がとんでもないことをたくらんで左織に近づいた?と訝しんでしまったり。そう思うのも無理もないほど風美子は逞しくエネルギッシュだ。私だって嫉妬してしまう。自分が正しいと信じ、常識に捉われがちな左織だけど、凄絶な疎開生活を経て今があることを思うと無理もないのか…とも思ってしまう。が…
読み進むほどに自分の目線に狂いが生じ始める。脂汗をじわじわとかくように、角田さんの筆の怖さを感じていく。読み始めは「ツリーハウス」や「私のなかの彼女」、「平凡」の雰囲気を端々に感じさせるような作品か…と思っていたけど、それを感じさせつつ膨らませつつ更に先を行く展開。今までだったら、母と関係をこじらせている娘の百々子目線で読んでいたと思うけど、母である左織の愚行に共感はできなくても、完全に否定することもできない。だからこそ切なく哀しくなってしまう。息苦しいほどの左織の頑なさが。
正直、風美子の行動に釈然としない面はあるものの、昭和を辿りながら、この時代の女性が抱えてきた思いを色々な面から見つめ、考え直すことが出来たなと思う。千野帽子さんの秀逸な解説も、作品を理解する手助けとなった。果たして自分の人生はどうだろう?決してまっすぐとは言えない、どこかで歪み凝り固まったライフストーリーを別の視点で見れば、全く違ったものになるのだろうか。そんなことを考えるきっかけをくれた角田作品はやっぱりすごい。間違いなく心に爪痕を残すから。 -
疎開先が一緒の縁で義姉妹になった主婦の左織と料理家の風美子。思い通りに進まないのはこの女のせい? 戦後昭和の女たちの物語。
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人から影響されても良い範囲を自分で決めて生きないとなって思ったのと、偏見強すぎるのは良くないなって思った。(ざっくりすぎる)
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なんだか気分が落ちる感じでした。
時代の背景が昭和で、戦後から昭和天皇崩御あたりで、いろんなことが変化していくとき。
登場人物の誰を味方したいわけではないけれど、風美子の存在が怖い。
序盤、沙織が気の毒と思ったけれど、読み進めていくと、沙織も結果、風美子を都合よく使っている感が否めない。
潤司も風美子と同じ。
結局、風美子は沙織への復讐なのか、単なる逢いたくてそばにいたかっただけなのかわからなかった。
読んでてモヤモヤするし、風美子の思うままに支配されていくのではないかと恐ろしかったし。
でも、単なる沙織の弱さが招いたことなのか。
読み終えたけれど、登場人物は誰も好きななれなかった。
感動も喜びもない。
母と娘は最後まで分かり合えないのも辛い。
しかも、どっちにも同情できない。。。
長編を読み切ったのは、結末を知りたかったという、その思いだけだったけれど、嫌な気分になった。
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親に愛される子とそうではない子の物語かと思えば、その原因である過去の傷から解放されるための物語でもある。嫉妬やルサンチマンと言った根の深い闇から逃れられない主人公が他人毎とは思えない位リアルに描かれて怖いくらい。
またしても、エデンの東の「ティムシェル」に通ずる言葉に救われる。
「ティムシェルもの」というジャンルでブックリストを作りたいなぁ。 -
戦時中から戦後の日本を生き抜いた二人の女性の人生を描いた物語。
二人の対照的な人生の生き方を見ていると
一体どちらが幸せだと思ってしまいました。
左織のような昔ながらの専業主婦で慎ましく生きる人生、
風美子のように仕事をバリバリとこなし周囲から羨ましく思える人生。
左織は常に様子を伺い何かするのに
臆病になっているところが見えますが、
まるでこれを見ていると自分の一部分を
見ているような気ににもなってしまいました。
だから風美子が羨ましくも思えたり、
時として不安に駆られることがあるのだなと思いました。
風美子のように自分の人生は自分で切り開いていく
ということが出来るタイプに性格は本当に羨ましいです。
こうしたくても出来ない左織の気持ちも分かるので、
娘となかなか折り合いがつかないところがまた否めないです。
それにしてもいつも風美子は何かにつけて、
左織の家族や人生にまとわりついているので
ちょっとドキドキしながら読んでしまいました。
過去にあった事に対しての因果応報というべき
ものがあるのかと思いながら・・・
風美子は左織がいたから生き生きと過ごすことができたのか、
それとも自分なりの生き方でこんな風になったのか
それは定かには分からないですが、
心の奥底では寂しさや辛さがあったからこそ、
左織という友達のそばにいたかったのかとも思えました。
不幸なできごとはあったけれど、
不幸な人ではないという言葉にちょっと救われたような気もしました。
どんな人生を送っていても、
隣りの芝生は青く見えるものなのかと思ってしまいました。
主人公の家族との相性と人生の切なさが何とも言えない余韻の
ある作品でした。 -
昭和初期に生まれ戦争を体験し、大人になった左織。再開した疎開先で一緒だった風美子と再会。左織の人生に深く深く入り込んでいく風美子。風美子が深く関わってくるのは自分が疎開先で風美子をいじめたからではないかと怯える左織。確かに風美子の左織への接近は不気味でもあり悪意からか?と読み続けていたがそうではなかったみたいだ。左織は思うようにならない人生を嘆く。でもそれは誰もが抱く感情かもしれない。それにしても風美子みたいな友人が身近にいたら、ちょっと嫌だ
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戦中戦後に育った、ごくごく普通の女性の物語なのですが、今の時代を生きる女性が読むと若干イライラするかもしれません。
でも、大半の女性はああだったろうし、自分があの時代を生きていたら、あんな風に過ごしていたのかと思うと、もやもやしたまま読み終わります、
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大河小説。長かった。今の時代の我々には主人公の気持ちに寄り添うことは難しいかもしれないが、少し前ならどこにでもありそうな女性の人生が淡々と描かれる。同じように人生の終盤近くになって振り返ると、嬉しいこと、楽しいこともたくさんあったはずなのに、後悔すべきことばかり思い出される。これから人生の幕引きをどのようにしたら良いのだろう。
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なかなか長い話でいろんなことが起きたけど
1番印象的だったのは過去の自分と
現在の自分の状況のつながりについて。
過去に自分がしたことを
ふとした瞬間に思い出して罪悪感に駆られる。
取り戻せないけど囚われてばかりいてもだめで
消せなくても和らげることはできるのかも、
とちょっとだけ希望をもらった。 -
心理描写が細かくて、暗くてドロドロしたような人の嫌な部分も見事に書かれている感じが、角田光代らしくて素敵なストーリーと思った。読んでいて楽しい気分にはならない。
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読んでいる途中も、読み終わった後も、ざわざわとした不安感と虚しさが一杯になり、読後感はあまりよくありません。所々、共感できる所はあるのですが、親子が理解し合えないまま、特に娘の百々子がなぜあそこまで母親に対して反発するのか、全く理解できない。母親の佐織の辛さと諦めるしかないやるせなさが読んでいるこちらに同化され、たまらなくなります。人生は思うようになんてならない、あるがままを受け容れるしかないのだ、ということ?
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朝鮮戦争の特需に街がわく頃、戦時中の疎開先で一緒だったという風美子に声をかけられた左織。疎開先でいじめられどおしだった風美子に声をかけてくれたのが左織だという。以後、左織の人生は常に風美子がともにいることになる。そんな70代くらいまでの人生が、そのときどきの風俗を織り交ぜながら綴られる。
左織には疎開先で風美子と交流した記憶がまったくない。それどころか、疎開中の記憶はあいまい。後半でつき合いが復活するかつての疎開先の仲間もいじめだの何だのあったことをまったく忘れたかのように話すばかり。
実は左織自身も忘れていたのだが、疎開先でいじめに加担したようなことがあった。そしてその相手が、風美子だったのではないかとの思いにもとらわれる。料理研究家として有名になり華やかな風美子は左織の子どもたちにも理解ある立場として慕われ、典型的な昭和の主婦として生活しそれだけに子どもに疎まれていた左織は、子どもをとられるような気にもなり、実は風美子がかつてのいじめの仕返しに左織の家庭を壊そうとしているのかとさえ思う。
結局、左織に近づいてきた風美子の意図は最後までわからないし、わけがわからないままつきまとわれる気持ち悪さはある意味ホラー。そんな恐ろしさと、人が都合の悪いことは忘れて生きていくことの罪のようなものに迫るのがテーマだろうか。いずれにしてもストーリーの面白さでグイグイ読んでいける。
著者プロフィール
角田光代の作品





