荒地の家族 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2025年5月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784101059617

作品紹介・あらすじ

40歳の植木職人・坂井祐治は、十数年前の災厄によって仕事道具を全てさらわれ、その2年後、妻を病気で喪う。自分を追い込み肉体を痛めつけながら仕事に没頭する日々。息子との関係はぎこちない。あの日海が膨張し、防潮堤ができた。元の生活は決して戻らない。なぜあの人は死に、自分は生き残ったのか。答えのない問いを抱え、男は彷徨い続ける。止むことのない渇きと痛みを描く芥川賞受賞作。

みんなの感想まとめ

様々な形の別れや喪失を淡々と描きながら、生きることの意味を問いかける作品です。主人公の坂井祐治は、東日本大震災で仕事道具を失い、その後妻を病気で喪うという過酷な運命に直面します。彼は再婚を果たすも、そ...

感想・レビュー・書評

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  • 佐藤厚志『荒地の家族』新潮文庫。

    第168回芥川賞受賞作。

    様々な形の別れや喪失を淡々と描きながら、読者に生きることの意味を問いかけるような生々しい小説だった。

    自分の経験からすれば、死別よりも生き別れの方が悲しみと苦しみが深いように思う。本作の主人公である坂井祐治が会わせてもらえないことが解っているのに、何度も元妻の職場を訪ねて行くことも理解出来る。自分にもそういうことがあった。

    また、この歳になってみると、自ら生命を断つことが如何に卑怯で家族や知人にどれほど迷惑を掛けるかよく解る。数年前に風の噂で、以前勤めていた会社で同じように出世を重ねていた同期が自殺したと聞いたが、不思議と心が痛まなかった。その同期が自殺するに至った理由も何となく解った。自分はそうなる前にその会社を辞めたのだ。


    さて本作。舞台になる阿武隈川の河口の荒浜の近くというと、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた地域である。大震災の発震した日の夜、毛布に包まりながらラジオに耳を傾けていると『荒浜で2、3百体の遺体が……』という、とても信じられないニュースを聞いたことを覚えている。

    そんな海辺の街で40歳の植木職人である坂井祐治は十数年前の東日本大震災の津波で2トントラックに積んだ仕事道具を全て失い、その2年後には妻を病気で失う。その後、祐治は知人の紹介で再婚するが、その妻は出奔し、一方的に離婚届を送り付けて来た。

    以来、息子と母親と3人で暮らしていた祐治であるが、息子との関係はぎこちなく、自分の肉体を痛めつけるかのように仕事に没頭していた。目にするのは巨大な防潮堤。再び海が膨張すれば、そんな防潮堤も意味をなさぬはずなのに……

    生きるというよりも、何かに追い立てられながら、逃げるように彷徨い続ける淋しい男の物語。

    本体価格520円
    ★★★★★

  • 仙台の丸善(作者の元職場)で購入
    →しかし、帰りの高速バスに置き忘れる・・・

    妻の実家が物語の舞台でもある宮城県の亘理町で、何度も行ったことがあるので読みながら『あの辺かな』『この辺かなぁ』と思いながら読むことができました。

    震災をテーマにする場合『再生』をテーマにするか『再生』でオチをつける物語が多く見受けられます。しかし解説で小川洋子も言ってるとおり本書に『再生』はありません・・・
    一度壊れてしまっても再生する物もありますが、再生しない物もあります。
    形の無いものは、あの日あの時『壊してしまった』と後から自覚する事はあっても、その時に『壊した』という自覚は無いものです。
    自分だけの物を壊してしまっても、誰かとのモノは壊したく無いと本書を読んで思いました!


    植木職人の坂井祐治は東日本大震災で商売道具が流され、その二年後妻をインフルエンザで失う・・・
    その後再婚するものの・・・
    祐治は肉体を酷使する事で仕事に没頭する。
    息子との関係はイマイチで何をどうしていたらと悩む・・・
    仕事に没頭しながら悩み続ける男の物語。


    舞台となる亘理町には郷土料理の【はらこ飯】があります!
    本書を秋口までに読み終えて是非【はらこ飯】をご堪能ください!

  • 隣県のしかも現役書店員という もう読んでみたいしかない。さらわれた街の再生と新しい風景と、海から人間を守るのではなく人間から海を守っている錯覚するとある様に海の景色がガラッと変わる本当にこれでいいのだろうか、が自分も感じるんだが。ギリギリまで肉体を痛め付けて追い込んで、死者に懺悔なのだろうか、何もかも捨てて逃げ出したい気持ちとも戦っている、焚火するおじいさんにも葛藤がある、六郎さんにも。これを読んで救われて欲しいとしか言えないちっぽけな自分が見えた。

  • 佐藤厚志、初読み。
    『芥川賞』受賞作品。

    40歳の植木職人・祐治。東日本大震災で仕事道具を失い、その2年後、妻・晴海を病気で亡くす。再婚し、妻・知加子との間に子どもを授かるも、生きて産まれてくることはなかった…そして、知加子は、祐治と啓太のもとを去る。
    幼馴染・明夫は妻と娘を震災で亡くし、みずからはがんを患っていた…

    元の生活に戻りたい…
    が、戻れない…
    その思いを打ち消すように、身を粉にして、働く祐治。
    同じ時代なのに、なぜだか昭和三十年代のような感じを受ける。
    白黒でしか言い表せないような、薄暗い世界が広がっている。
    そんな中、息子・啓太のために懸命に働く祐治。思春期を迎えた啓太との関係はぎこちない…
    震災から10年以上が経った今も、震災から立ち直れない人たちはたくさんいるのだろう。

    祐治のように、なんとか、なんとかして生きている人たちが。



  • 閉塞感。雨が降りそうで降らない暗い空。空気が重い。
    未来が見えないまま毎日がただ続いている。
    防潮堤が出来て、お店が再開されて、戻って来た人もいる。それでも暗い空のまま進んで行く。
    読んでいた自分の周りの空気も一段重くなった気がした。

  • 芥川賞のわりに(?)それほど尖ったところがない。読者は物語の中でいくつもの死に遭遇するが、そのすべてが震災に直接結びつくわけではなく、震災はあくまでも背景として抑制的に描かれるのみである。
    死を待つ行列に並ぶ一人である、との主人公の述懐に象徴されるように、生も死も一つの偶然であり、その無意味さが故に残されたものは自責を苦しみ抜く。
    季節や草木、海といった風土や自然、そこに根を張ってきた老人たち、やがてはそこに溶け込んでいくであろう主人公とその肉体が事実そこにあるものとして素朴に淡々と描かれ、巨大な防潮堤や重機で均された何もない空地との対照が死と生を区切る壁と重ねられているように感じた。

  • 40歳の植木職人・坂井祐治は、十数年前の災厄によって仕事道具を全てさらわれ、その2年後、妻を病気で喪う。自分を追い込み肉体を痛めつけながら仕事に没頭する日々。息子との関係はぎこちない。あの日海が膨張し、防潮堤ができた。元の生活は決して戻らない。なぜあの人は死に、自分は生き残ったのか。答えのない問いを抱え、男は彷徨い続ける。止むことのない渇きと痛みを描く芥川賞受賞作。


  • 東日本大震災の津波によって自分を見つめ直してる男の回想記、過去と今を行き戻りながら進んでく。失うものが多いほど悲哀も大きくなるのかしら。失う可能性があるものを積み重ねてく方が喜びも大きくなるのだろうか。
    リアリティのある小説には特殊な性癖の人を特殊と感じさせずに紛れ込ませてる気がする(今回は噛みグセのある元嫁)。そもそも特殊と思う人はほんとは特殊じゃないくらい居て、その事実を違和無く表現できてるからリアリティがあるのかな。
    何も成し遂げられない人間の悲哀と少しでも何かを残せた人の対比が悲しかった。

  • 読んでいるとその光景が目に浮かぶそんな表現を、されており話が面白いというより文学的な面白さよりです。
    地震のあとの情景が、たいけんできるかのようです。

    読む人を選ぶかもですが、そんなにページ数も多くないので読んでみてください?

  • 東日本大震災を経験した主人公のフラッシュバック、震災時の様子、その後の生活再建など·····天災だとは言え、苦悩が数多くあることに驚き、そこから立ち上がる姿や周りの方達との関わり合いなど読んでいて辛いと感じることもありましたがそういう実態を知れたと思う。
    今もあちこちで天災があり平和な日本といえども住む所を失った人達が毎年、いらっしゃるのを心苦しく思う。

  • 優しくも不器用な男の人生を描く
    東日本大震災を軸に置いたストーリー。
    最後に灯った明かりが暖かく人生を包み込んでくれる。

    もう一つの自分の人生を見てるかの様な気持ちだった。

  • 震災のお話がちょっと入る。
    東北出身としては呼んでみるかーの気持ちで購入。
    あんまり刺さらなかった。

  • ◼️ 佐藤厚志「荒地の家族」

    宮城県が舞台。震災を挟み、空虚な風景が包む中、男の過去がフラッシュバックし現在の心に影を落とす。2023年芥川賞。

    著者さんは仙台出身でずっと仙台在住のようだ。震災でつぶさに感じたことをも小説に落とし込んでいる、と推測する。それだけ、重い気がする。芥川賞受賞時、書店員として働いていて話題になったとのこと。

    造園業者の祐治は震災の2年後、息子の啓太が幼い頃に最初の妻を病気で亡くした。人の紹介で再婚した相手は流産して半年後に家を出、接触を完全に拒絶されている。啓太は小学6年生となり、最近会話が少なくなった。震災で昔と変わってしまった海岸を逍遥しながら、うまくいかなかった人生の記憶がよみがえるー。

    主人公は、社会生活に誠実に向き合おうと、実際に向き合っているつもりであるのに、社会や人に伝わらなかったり、理解されない者。さらに様々な人生上の災厄、苦難が降り掛かりもがいている人間だ。

    年老いた母や息子が身近にいるものの、また仕事はまだバリバリこなしているものの、老いを意識せざるを得ない世代の孤独を背負っている。震災は大きなショックを与えた出来事で、実際、主人公に影響を与える幼なじみの妻子は津波で亡くなっている。ただ、この作品では間接的に大きな要素として入ってきているように見える。

    人知れず、悩みもがき生活に煩わされる。人間関係が影響を及ぼしていく。人の生の姿が繰り返し描かれる。人は些細なことで気分が左右される。さらに本人的に大きな出来事は蝕むように、逃げようもなく心理的に作用する。話せる相手がたとえいたとしても、他人がすべて理解するのは不可能だし、手を施すこともできない。

    津波被災地では自治体が土地を買い上げて、昔は町があった地域もだだっ広い更地になったり、巨大な防波堤が設置されたりしている。読んで改めて驚く。こうしたいまの風景を織り込みながら、等身大の姿をリアルに描きだしている。

    とはいえ、とりわけ佳作にはあるものだが、読後感にはちょっと出来すぎかな・・なんて思っちゃうのが読み手の正直なとこではありました。

  • 失われたものは決して再生しない。
    ただ足跡だけが残り、生き残った者を静かに縛る。
    切れそうな心の糸をつなぐのは、見知らぬ誰かの無言の痕跡。
    身体に刻まれた記憶が真理を照らす。
    3.11の痛みは今も深層に沈む。

  • 数年前に半分くらい読んでリタイアした本に再挑戦。やっぱり苦手。

    特に前半に集中する、まだよくわからないままの祐治をあっさり嫌いになりそうなほど過剰な「祐治は」「と、祐治は」の咀嚼に再度げんなり。これほど強調せずとも読者にはしっかり見えていると思うのですが。

    「厄災から二年後、妻の晴海をインフルエンザによる高熱で亡くした」p.9
    「天災から二年経った頃、晴海が啓太を残し、流感による高熱を発して命を落とした」p.35
    「災厄から二年経ったある日、晴海が高熱を出した。・・・・・・未明に眠ったまま逝った」p.89
    あの事もその事も、何度も同じ場面を見せられるタイムリープ感。160ページという短い物語の中で、読む者にろくな時間を与えず繰り返されるアプデなしの説明的回想は、何かの間違いじゃないかと思うほど不安定で気持ち悪かった。
    重ねて誘い込む手法とか書き分けというよりも、視線の定まらない文や「祐治は」過多からも受け取れる、読み手を信頼しきれていないんだなという印象。もしかしたら読み手だけじゃなく、ご自身のことも信じきれていないのでは、なんて想像してしまうほど。

    こんなに何度も何度も同じことを言われながら「いちばん伝えたかったこと」がよくわからないのが残念だ。

    2022年下半期 芥川賞受賞作。
    苦悩も絶望も美しい日本語で紡いでしまう芥川龍之介なら、これをどう読んだのか。幽霊には喜んだはず。

  • 何度も繰り返し繰り返し同じ描写が差し込まれ、まるであの日に起こったことのような小説だった。

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