- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784101060040
感想・レビュー・書評
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允子と夫が手塩にかけて育てた一人息子の允男は頭も良く、大学生になる。しかし彼は友人の影響で左傾し始める。ついに警察に逮捕され釈放されるがある日、両親に手紙を残し家を出てしまう。彼にとって思想は親の愛よりも重要な捨てがたいものであった。允子は悲しみに打ちひしがれ、やがて病を患っていた夫は他界する。允子はある芝居を観てその中で母親がひたすら子供を頼って生きている姿を情けないと思い、自分と重ね合わせた。そして彼女はまた医者として開院して生きていく決心をする。出産とは子供との最初の別れであり、成長した子供が親元を離れていく時は第二の出産であると彼女は思った。寂しいけれどそうならなければいけないし、親は自分で生きていく道を探していかなくてはいけないのだとわからせてもらった本であった。
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(1966.03.31読了)(1966.03.31購入)
*解説目録より*
山本有三は常に構想に腐心、芸術的良心の強さはわが文壇の一異彩である。「女の一生」の充子の生涯は波瀾に富み、女という不利な社会的地位の重圧をはねのけて、あやまちを重ねながらも人間的自覚と社会的独立へ一歩一歩のぼってゆく過程は、人生の方向に力強い指針を与える。ヒューマンな代表作。 -
允子の送った生涯に、深く共鳴した。彼女が全てを懸けてこの世に誕生させた允男が共産思想に染まり家を出て、様々の困難の末、結ばれた公荘も息子に再会できずに死んでゆく。そこで彼女は絶望しながら老いてゆくことを拒否し、第二の誕生を迎えるのだ。これが戦前の作品だなんて・・・。
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