浮雲 (新潮文庫)

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本棚登録 : 347
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101061030

作品紹介・あらすじ

第二次大戦下、義弟との不倫な関係を逃れ仏印に渡ったゆき子は、農林研究所員富岡と出会う。一見冷酷な富岡は女を引きつける男だった。本国の戦況をよそに豊かな南国で共有した時間は、二人にとって生涯忘れえぬ蜜の味であった。そして終戦。焦土と化した東京の非情な現実に弄ばれ、ボロ布のように疲れ果てた男と女は、ついに雨の屋久島に行き着く。放浪の作家林芙美子の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 林芙美子の『放浪記』を読んだ後に、『浮雲』も読んでみたいなぁと、ずっと思っていた。
    どんな内容なのかしら?.....と、先ずは本を手に取りタイトルの“浮雲”に注目し、自分がはるか遠い昔に見た実際の浮雲の印象の記憶を手繰り寄せる。

    大きな青い空に頼りなさそうに浮かんでいる雲。
    よくもまぁ、広い空間に何の支えもなく浮かんでいられるものだと見つめていた。

    見つめているうちに私はなんだか哀しくなってしまい、その儚い雲が、あっけなく終わる人の一生に重ねていたのだった。

    この物語の男女は不倫している。
    ほんとうに仕様がないふたりで、別れたり浮気したりと、まわりの人達をも不幸の踏み台にして罪作りだ。
    結局は、愛しているのかわかんない感じで、寄り戻してと腐れ縁なんでしょう。
    落ちに落ちて呆れてしまう。

    けれども自分は、まっとうに生きているからって、彼らを笑ってはいけないんじゃないかと思う。
    人は誰しも浮雲のようにさすらっているんだから。

    あの日に見た浮雲の印象は、読んだ後も変わらない。

  • 仏印に渡ったゆき子が出会った富岡と日本に戻っても別れきれずにくっついたり離れたりする。いつの時代でもこういことあるんだな。帰ってきてからの二人のやる気のなさがw
    蒲団や時計を売って四五日の生活出来るくらいにはなるんだなと当時の物価に興味が沸いた。百円札とかどれくらいなのかな。←自分で調べろw
    後半の屋久島あたりからはずっと富岡視点で進んでいったので、わたしは最後まで同性のゆき子の声が聞きたいと思った。

  • タイトルが素晴らしい。人が生きるということは、浮雲のようなのだ。流れ流れて、どこへ行き着くでもなく、徐々に体を散らせて行く。

    ゆき子は富岡という浮雲に乗ってしまったばっかりに、自らも漂う運命になってしまった。富岡の流れるところへ、ゆき子も自然と流れて行く。富岡はそんなゆき子をうっとおしく思うが、自分が乗せたゆき子だけに、離れることは出来ない。邦子やおせいは浮雲の流れる早さについていけず死んでしまい、最後までしがみついていたゆき子も力尽きて死んでしまった。

    ゆき子までも失った富岡はきっと、これからも流れていくのだろう。だって浮雲なんだから。

  • 終戦までフランス領インドシナで過ごした恋人との1年の思い出にすがって生きるゆき子と、恋人だった女に絡めとられてさまよう富丘。女は生きるためなら愛人でも宗教でもなんでもやる。男もその場だけの感情と成り行きで女と関係して不安な気持ちをまぎらわせる。愛だの恋だの言ってる場合じゃないけれど、それでも愛が欲しい女。男はそれが鬱陶しいけれど、かといって一人で進めるほど強くないから、結局は女に絡め取られる。
    二人に共通するのは、インドシナの高原の美しい思い出と、圧倒的な飢えである。だからといって、お互いを欲しているのかといえばそういうわけでもなく・・・二人にもそれがわかっているのに、関係は続くばかり。読んでて空しくなる。

    日本人にとって戦後は、新しい希望に燃えた出発ではなくて、終戦における物質的にも精神的にも大きな損失から始まる道程だったのかなと思う。自分以外に頼れるものがない、孤独な二人には、この時代の多くの人が共感したのかもしれない。

    ゆき子は最後に死んでしまうけど、人生にしぶとく勝ったのは、生き残った富岡じゃなくてゆき子かな、と思う。富岡は、結局は中身のない、雲のような男なのだ。成り行き任せで女に手を出し、財産も失い、それでも死ねずに放浪を続ける。そんな男を追いかけてたゆき子は、富岡じゃなくて美しい思い出を追いかけてただけだのかもしれない。それでも、何か求める気持ちがある女、「私、飢えてるのよ!!」と叫ぶ女は、ただ漂ってる男よりは強いように見える。

  • 大人になったらこんな言動を理解できるようになるのか。富岡はゲスいしゆき子はヒステリック過ぎる。ちょっと自分とは種類の違う人間のように思えるけど心情の説明が詳しいからなんとなく飲み込めないこともない。

    "良い"登場人物が現れないのがリアルな感じはする

  • 昨年何度かベトナムを訪れる機会があったので読んでみた。河内=ハノイ、海防=ハイフォンなど、馴染みのある地名の漢字表記を初めて知って興味深かった。戦時に仏印ベトナムで夢のような生活を送った主人公ゆき子は 戦後焦土と化した東京に戻り、恋する男を追って、絶望のうちに死んでいく。ゆき子だけではなく、元恋人富岡の人生もまさに「浮雲」的であった。

  • 仏印での燃えるような恋を経て、戦後帰国したゆき子と富岡。浮雲のように流れゆくしかない人生に希望はなく、ただ暗いストーリーに吸い込まれます。

  • 成瀬巳喜男監督の映画を先に見ていたので、ストーリー、台詞がほぼそのままで、読みやすかった。
    これまたどうしようもない駄目男と駄目女の話。映画版では省略されていたが、ゆき子が死んだ後富岡は酒に溺れ、島の女と交わりを持つシーンで小説は終わる。なんというクズっぷり。でも、時にはこういう文学作品を読んで、「人間ってこんなものかも知れない」と感じるのも悪くない。

  • 映画を観てから本を読んだ。映画ではベトナムでの出来事をはしょっていた。戦後すぐに制作されたので海外ロケをする余裕がなかったのだろう。ベトナムのダラットは坂が多い街で、尾道とよく似た街だった。

  • 色々なことが詰まっていて、とても豊富な物語だったという印象です。ダラットでの生活が美しい思い出とされていて、荒廃した日本での生活と対比されていますし、日本に帰国した後の富岡とゆき子の違いを考えてみても面白いです。着目したいところがたくさん出てきます。
    全体としてはどこか戦後の現実を感じて、何とも言えない気持ちになりました。

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著者プロフィール

1903-51。代表作に『放浪記』。

「2017年 『浮雲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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