- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101063010
感想・レビュー・書評
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井上靖さんの作品、ブクログ登録は初めてになります。
著者、井上靖さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
井上 靖(いのうえ やすし、1907年(明治40年)5月6日 - 1991年(平成3年)1月29日)は、日本の小説家・詩人。主な代表作は「闘牛」「氷壁」(現代小説)、「風林火山」(時代小説)、「天平の甍」「おろしや国酔夢譚」(歴史小説)、「敦煌」「孔子」(西域小説)、「あすなろ物語」「しろばんば」(自伝的小説)、「わが母の記」(私小説)など。
で、本作には、「猟銃」、「闘牛」、「比良のシャクナゲ」の3作品が収められています。
私が読んだのは、「闘牛」。
で、この作品は、芥川賞受賞作になります。
「闘牛」の内容は、次のとおり。(コピペです)
『文學界』1949年12月号初出。社運を賭けた新聞社主催事業闘牛大会の実現に奔走する新聞編集局長の情熱と、その行動の裏側に潜む人生に賭けきれない知識人の孤独な心模様や戦後の日本社会に漂っている悲哀を、敗戦直後の混乱した世相の中に描き出した作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
井上靖の初期3作品「猟銃」「闘牛」「比良のシャクナゲ」を収載。自分的には少し距離感のある作品群のように感じられたが、それぞれ、ストーリー構成が良いのと、3作品とも違った趣の文体であるので、それぞれの形で楽しめたと思う。
「猟銃」は妻と愛人と愛人の娘から送られた手紙を読むことで、全体の想いが詳らかになるという意欲作だが、最後の愛人の想いに違和感があったのと、普通、その順番で読まないだろうという自分の中の意地悪な思いもあって(笑)、構成は面白いがいまひとつ馴染めなかった。
「闘牛」は割と動的な展開で、闘牛大会開催に向けてのとりつかれた情熱も伝わってくるのだが、ラストの展開は個人的には良いのだが、主人公の新聞記者のニヒリズムがいまひとつ伝わってこなかったように思う。むしろこれだけの展開があるのなら、長編にして丹念に心情を描いても良かったのかなと。愛人の使い方ももう少しもったいない。日本の闘牛は静的なイメージを持っていたので、結末の行方にある意味自分自身がニヒルに感じていたかもしれない。(笑)
「比良のシャクナゲ」は偏屈老人の戯言(笑)が書きつづられた作品だが、個人的には短編としてはなかなか良かった。人生のターニングポイントで訪れる比良の旅館の風情が主人公とよくマッチしている。偏屈老人(!)の心情をひたすら吐露する話であるが、学問にとりつかれた因業が良く出ている作品のように思う。
3作品とも部屋の窓から外を眺める(特に前2作品は愛人と)印象深いシーンが出てくるのは作者の強い思い入れがあるのだろうか。どの作品も失敗や挫折の中の孤独が1つのテーマとなっていると思われ、日常の中に潜む心の暗部をよく象徴している。 -
この主人公のように
地位もあって、お金もある程度あって
仕事もできて愛人もいて、
里には妻も子供もいる
それでも何物にも酔えない孤独。
やっと、これだ!と思ったものが
どんどん色褪せてしまう。
井上靖さんのこの短編集は
人生はそういった縋るべき充足感を探す旅である、だけどそれは決して容易に見つからない
見つけたと思ってもまたすぐに逃げていく。
だから人間は孤独だと言っている気がします。
でもそれは寂しいメッセージでもなくて
みんなそうなんだよって言ってくれて
ほんの一時、そっとよりそってくへる
そんな一冊でした。 -
人の気持ちは分からないものだということさえ分からない恐ろしさ。
むなしさを抱えたまま残りの人生を過ごす老後はいやだ! -
《猟銃》
妻・愛人・愛人の娘、その三通からの手紙から
浮き彫りにされる、恋愛をとりまく
さまざまな心もよう。
一つの事実に対して、その人の感情により、
立場により、こんなにも想いが
異なるという事実。
愛すること、愛されることの意味、
そして、そのことによって変わる人生の重み。
短編ではありながら、読んだあと、
しみじみと考えさせられた。 -
ブックオフで見つけて、芥川賞受賞作なので買ってみた。
読み終えて、なぜタイトルが『猟銃』なのか疑問に思った。
三杉が手紙の最後に書き添えたことの意味を考えると、
このタイトルの意味もなんとなく分かってきた。
すると、やはり彼は全てを知っていたのだろう、
どちらの蛇の正体も知っていたのだろう、と思った。
『闘牛』については、津上の孤独の影が強すぎて、
私は惹きつけられると言うより恐いと感じた。
三浦に対して感じてしまう敵意は星廻りのせいだと言い切っていたのが、
どうも納得できなかった。 -
湊かなえの『告白』を読んだ時のような、書き方の新鮮さに衝撃を受ける。
3人の女の手紙から見える男の実態は、それが真実とは限らない。 -
それぞれの作品に「孤独」というものが感じられ、戦後の時代背景もあり、とても新鮮な思いがしました。
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何回読み返しただろう。私は猟銃が好きだ。
「白い河床」。この言葉に出会えただけで幸せだ。 -
井上靖は本当に凄い。短編の鋭い切れ味に、恐れ入るしかない。
日本語の美しさ、その文字から伝わる日本の美しさ、そこに映し出されるあの時代の日本人の男女の孤独感。今も変わらぬ各人の自己中心的な悲哀が、井上靖によって際立つ。
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