敦煌 (新潮文庫 い-7-4 新潮文庫)

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  • 新潮社 (1965年7月2日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784101063041

みんなの感想まとめ

壮大な歴史ロマンが描かれた本作は、敦煌という地を舞台に、官吏任用試験に失敗した主人公が運命的な出会いを果たし、歴史の重みを感じさせる物語です。西夏の女を救うことで始まる彼の冒険は、20世紀初頭に実際に...

感想・レビュー・書評

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  • 著者、井上靖さん(1907~1991)の作品、ブクログ登録は4冊目。

    本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    官吏任用試験に失敗した趙行徳は、開封の町で、全裸の西夏の女が売りに出されているのを救ってやった。その時彼女は趙に一枚の小さな布切れを与えたが、そこに記された異様な形の文字は彼の運命を変えることになる…。西夏との戦いによって敦煌が滅びる時に洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて陽の目を見たという史実をもとに描く壮大な歴史ロマン。

    ---引用終了


    壮大な歴史ロマンです。
    日本の小説には、中国の宋と周辺国との衝突作品というのは、あまりないように思います。
    それ故に、新鮮な感じで、じっくりと堪能させていただきました。

  • 11月に井上靖さんの短篇集を読み、いずれは長篇も、と思っていたので、まず、本作「敦煌」を読んでみた。

    20世紀初頭清朝末期に、敦煌の石窟から四万点を超える経典が発見され、漢語、西夏語、ウイグル語、他多言語で書かれていた、という史実(世紀の大発見)から、作者が西域に思いを馳せ、経典が陰徳されるまでの話をフィクションで描いた作品。

    分量的には大作の一歩手前だが、描かれたスケールは空間的にも時間的にもスケールが大きく、喜多郎の「シルクロードのテーマ」をBGMとして耳に入れながら読んだ。

    ウイグルの王族の女が飛び降り自殺する流れは、作者の女性観を反映していて(出版は1960年代)、共感が難しいかも。

    話は逸れるが、米中の覇権争いでは、政治体制としては共産党一党独裁よりも民主主義の方が圧倒的に魅力的だが、歴史の厚みとしては、四千年対250年の差を感じる。反中のひともきっと三国志は好きだったりするだろう。

  • (⭐4寄り)
    一ヶ月前映画を観た。
    そして小説も読んでみようと思った。手にすると長編小説でなく、しかもとても解りやすいし面白い。なのにずいぶんと時間がかかってしまった。
    中国は現在も14の国々と国境を接しているが、遙か昔もそこでは始終覇権争いが起こっていた。
    シルクロードにより有形物は言うまでもなく、文化、政治、宗教等々多くが伝えられた。
    主人公は敦煌の地に辿り着きそこで仏典と出会う。著者が何度もこの地に足を運びえがいた歴史ロマン。この地に旅をした経験者はさぞかしこの一冊は興味深いだろう。
    ※(2024.5.16 映画鑑賞)


  • 淡々とした描写が大陸の歴史の壮大さをかえって引き立たせる。行徳が流れ流れて敦煌にたどり着いたように、大量の経巻も千年の時を越えて現代に届けられる運命にあった。無数の人々が行き交い、悲喜交々の人生があるなかで、何か大きなものの意思によって人間は動かされているのかもしれない。そんな歴史の因果を感じさせる小説だった。

    この小説ではフィクションとして経巻が保存された経緯がドラマチックに描かれているが、これが真実でないとしても、千年以上の昔に保存しようとした人がいたことは間違いないわけで、それだけでも尊い行為だ。何とか自分たちの時代の知識を次の世代へ繋ぎたい、存在していたという証を残したいという人間の意志。

  • 高校時代に読んだのの再読。手元になかったので市立図書館で借りてきた。再読とはいえ、全然覚えていなかったからほぼ初読。
    漢検の準1級の練習問題をやっていたら「敦」の字が出てきたのでそこからの連想ゲームで読んだ。

    時代は宋の時代。西から宋を脅かす西夏との戦いが描かれる。「キングダム」を読んだ後だったから、戦いの描写がよりリアルに感じられた。
    人の生き様、死に様、主人公の運命が二転三転する様を転がる球のようだな、と思いつつ読む。
    いつの時代も獲った、獲られたの戦いなのだなぁと、むしろ日本の戦後70年くらいが例外であって、平和ボケしていると言われても仕方ないのかも、などと思う。まぁ、その日本の戦後もまた経済戦争を戦っていたのかもしれないけれど。

    本には「大村智氏寄贈」のゴム印。ノーベル賞の大村先生が寄贈したらしい。本文中には先生が付けたと思われる赤鉛筆の印がところどころにあり。

  • 約1000年前の、フィクションだけど、時を越えてくる物語。こんな壮大な体験が500円せずに味わえるって、本ってつくづく凄いと思う。中国大陸の奥深さ多様さ無常などを感じました。

    地球儀で見てみると、主人公趙行徳が移り渡ってきた開封から敦煌は、ちょうど北海道から鹿児島くらい。意外にそんなに長くはない、いや長いかとか思ったり。仏教が中国に伝わってきたルートという意味では敦煌〜開封はぜんぜん一部でしかなく、インド〜敦煌もめちゃくちゃ長いし、インド自体もデカいし。あと、シルクロードという捉え方だとさらに長い。丸い地球儀だと中国から中東が見えない、当たり前だけど。

    そんなふうに距離感を確認した上で、改めて開封から敦煌まで移動しながら生涯を送った趙行徳の波乱に浸ったり、そしてやはりそんな彼の生涯も(フィクションだけど)長い長い歴史で見れば点でしかない、けど今に繋がっている、みたいな読後の感慨が楽しい一冊でした。

  • 1959年(昭和34年)。
    散文的な筆致にもかかわらず、無性に旅愁をかきたてられ、その地を訪れて直に空気に触れてみたくなる。この小説には、そんな力があるように思う(私も昔、本書に触発されて莫高窟へ行った)。解説にあるとおり、この物語の主人公は敦煌をはじめとする西域の地、その興亡そのものである。人物はいわば風景の一部であり、流転する万象の一部にすぎない。そのような仏教的無常観を基調としながら(或いはだからこそ)、儚い生をひたむきに生きる人間の、なんと愛おしいことだろう。この小説のような、或いはこれ以上のドラマが実際にあったかもしれない。経典が実在するという事実と相まって、ついそんな空想を抱いてしまうような、浪漫に満ちた物語である。

  • 20世紀初頭、敦煌で大量の経典が見つかった。それはかつて西夏に支配された敦煌が守るために莫高窟の穴に隠したものだった。壮大な歴史ロマン。

  • おもしろかった

    とくに後半に進むにつれてその内容に惹きつけられた

    語学学習が趣味の私ですが、西夏文字に魅了されて故郷を離れ自分の人生を全うした行徳、素敵だなと思うと同時に、言語を身につけることで、普通に生きてるだけは出会えない人々や価値観に出会えるのは、今も昔も変わらないことだと感じた。

    敦煌、いつか行ってみたいな

  • 大陸の広さが目に浮ぶ作品でした。砂漠、ずーっと続く砂漠と、そして街の物語。人間のエネルギー、民族の興亡を感じました。

  • 小学生の頃に金曜ロードショウでやっていたのが頭を掠め読んでみようと思った。

    舞台は中国の西域
    主人公の趙行徳は官吏採用試験でまさかの居眠りをしてしまい、当たり前の不合格!
    失意の彼の眼の前に現れた異国の女!
    彼女を何となく助けたことにより異国の文字が書かれた布切れを貰い、何となく西を目指して旅立つことに!

    周りに流されやすい趙行徳は西に歩を進め時代の潮流に流されながらも愛する人や友と出会い、西の果ての地、敦煌に辿り着く。

    敦煌で彼を待ち受ける運命とは!


    西夏の版図拡大と、20世紀初頭に発見された万巻の経典!
    この二つの史実の結び目は敦煌にあり!!


    昔の小説にしては読みやすい。
    旅小説。
    舞台は中世の中国、水滸伝の舞台となる少し前の時代?


    次は同作者の【楼蘭】を読んでみたい!

  • 悠久の時の流れと人々の想いが交錯する歴史ロマン。1900年、敦煌 莫高窟の秘密の部屋から約4万点におよぶ大量の仏教文書が偶然発見された。調査によるとこの文書群が封印されたのは11世紀前半、西夏によって沙州(敦煌)が滅ぼされたころ。なぜここに文書を隠したのか。本当の理由は当時の人々しか知る由もないが、本書では史実とフィクションを織り交ぜて、文書封印に至る背景がドラマティックに描かれている。

    約900年もの間、誰にも知られずに封じられていた文書群。その背後には文字、知識を未来に託そうとする人間の強い意志を感じざるを得ない。命を賭して本を守った『ワンピース』のオハラの学者や、『チ。』の登場人物たちが自然と重なった。

    「敦煌」の物語では登場人物がみな個性的でとても魅力的。特に朱王礼がいいキャラだった。勇敢で男気にあふれ、趙行徳の能力を素直に認め、西夏文字の習得を勧めるなど、度量の広い人物であると同時に、回鶻の女性に心を寄せる一面もあり、完璧ではない人間らしい弱さを持っている。その純粋さやまっすぐさに心打たれた。

    一方の趙行徳は、時に流されながらも、常に誰かの「想い」を背負いながら「生かされてきた」人物のように感じる。当初は軽い気持ちで西域に渡ったが、朱王礼や延恵、回鶻の女性など、多くの人との出会いを経て、次第に覚悟と責任を帯びた存在へと変わっていく。約束を破ったことへの後悔が、仏教への関心、さらには莫高窟への文書封印へとつながった流れがとても印象的。朱王礼の死を知り一度は生きる意味を見失っていたが、朱王礼の碑を建てるという約束や、曹家の家伝を託されたことで、生きる意味を再び与えられたのだと思う。

    全体的に静かな筆致だが、想いを未来に託していくという、儚くも熱い心意気を感じる小説だった。

    敦煌行きたい。

  • 壮大すぎる舞台設定と奥深すぎる歴史。歴史上消え去った数多い人物を架空で思い描いてストーリーにし、一部を史実に繋げる見事さが際立つ。

  • 中国西域でのちょうど1000年前の空想物語。都から遠くかつ広いゆえに宋時代の中国が統治しきれない西域、群小民族の覇権争い。現代のウイグル自治区の様相を思い浮かべてしまう、のと同時に、映画やTVシルクロードドキュメンタリーの映像記憶があるから、やすやすと思い浮かべるイメージが、なお空想を馳せさせて面白く且つ意義深く読んだ。

  • 世に残る文章ってのはこういうのをいうんだなと、この手の書物を読むたびに思う。
    中国の歴史について基礎知識がほとんどないから、地図を見ながら、脚注を2度読み、なんなら本文も2度読んではじめて目の前に風景が浮かぶ。
    コロナ終わったら絶対敦煌行く。莫高窟行く。

  • 古い時代なのに、
    色鮮やかな光景が思い浮かぶ。

    賑やかな街や、荒々しい争い。
    砂と岩と、人間の感情。

    読書で世界旅行できた。


    この作品は、井上靖の「天平の甍」と同様に、
    同じようなテーマ、つまり貴重な経典や史書を
    後世に残したいというミッションに身を捧げる
    主人公の高揚感で満ちている。

    今の時代、身を捧げて守り抜こうと思える
    経典は、あるのだろうか。
    やはりそれは仏教典や聖書、などなのだろうか。
    科学技術などは対象になるのだろうか。

    色々と面白く考えてしまう。

  • 実際に起こった出来事に結び付くまでの経緯を書いたってところに、すごい想像力だな、作家ってすごいな、と思いました。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 中国は西域辺境の地、沙州(敦煌)。新興勢力の西夏が宋にたびたび侵攻し、吐蕃(チベット)、回鶻(ウイグル)等の周辺部族を打ち負かして勢力を拡大していった11世紀。その戦禍を逃れるために沙州の寺院から持ち出され、千仏堂の石窟に埋蔵された大量の経典。
    主人公、趙行徳の冒険譚はともかくとして、寂寥で過酷な砂漠の旅の風情と、1000年の時を越えて残されることとなった経典の運命が印象的な作品ではありました。

  • 敦煌で二十世紀に、洞窟から数万巻の経典が発掘された、というところが史実。その経典がどのような事情で、誰によって隠されたか、というところが作者のフィクション。
    ひとつの史実から、ここまで物語を膨らませることが出来る、というところに単純に感動できる。物語構成的にも、ある意味、小説のお手本と云えるような安定感がある。
    主人公の述懐するところ、運命に抗わずに生きてきたら途方もなく西の辺境にいる身、これは作者の憧憬でもあるのだろう。

  • 15年ぶりの再読。井上靖は文章が上手すぎるので物語に大きな起伏が無かったり目立つ展開が無かったりしても読めてしまうものが多いが、敦煌に関しては物語も非常にドラマティックでありとにかく満足度が高い。蒼き狼の勢いと天平の甍のカタルシスを一本に詰め込んだような濃密な作品。個人的には敦煌の王である曹氏の堂々たる語りが大好きです。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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