敦煌 (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063041

感想・レビュー・書評

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  • 著者、井上靖さん(1907~1991)の作品、ブクログ登録は4冊目。

    本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    官吏任用試験に失敗した趙行徳は、開封の町で、全裸の西夏の女が売りに出されているのを救ってやった。その時彼女は趙に一枚の小さな布切れを与えたが、そこに記された異様な形の文字は彼の運命を変えることになる…。西夏との戦いによって敦煌が滅びる時に洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて陽の目を見たという史実をもとに描く壮大な歴史ロマン。

    ---引用終了


    壮大な歴史ロマンです。
    日本の小説には、中国の宋と周辺国との衝突作品というのは、あまりないように思います。
    それ故に、新鮮な感じで、じっくりと堪能させていただきました。

  • (⭐4寄り)
    一ヶ月前映画を観た。
    そして小説も読んでみようと思った。手にすると長編小説でなく、しかもとても解りやすいし面白い。なのにずいぶんと時間がかかってしまった。
    中国は現在も14の国々と国境を接しているが、遙か昔もそこでは始終覇権争いが起こっていた。
    シルクロードにより有形物は言うまでもなく、文化、政治、宗教等々多くが伝えられた。
    主人公は敦煌の地に辿り着きそこで仏典と出会う。著者が何度もこの地に足を運びえがいた歴史ロマン。この地に旅をした経験者はさぞかしこの一冊は興味深いだろう。
    ※(2024.5.16 映画鑑賞)

  • 高校時代に読んだのの再読。手元になかったので市立図書館で借りてきた。再読とはいえ、全然覚えていなかったからほぼ初読。
    漢検の準1級の練習問題をやっていたら「敦」の字が出てきたのでそこからの連想ゲームで読んだ。

    時代は宋の時代。西から宋を脅かす西夏との戦いが描かれる。「キングダム」を読んだ後だったから、戦いの描写がよりリアルに感じられた。
    人の生き様、死に様、主人公の運命が二転三転する様を転がる球のようだな、と思いつつ読む。
    いつの時代も獲った、獲られたの戦いなのだなぁと、むしろ日本の戦後70年くらいが例外であって、平和ボケしていると言われても仕方ないのかも、などと思う。まぁ、その日本の戦後もまた経済戦争を戦っていたのかもしれないけれど。

    本には「大村智氏寄贈」のゴム印。ノーベル賞の大村先生が寄贈したらしい。本文中には先生が付けたと思われる赤鉛筆の印がところどころにあり。

  • 1959年(昭和34年)。
    散文的な筆致にもかかわらず、無性に旅愁をかきたてられ、その地を訪れて直に空気に触れてみたくなる。この小説には、そんな力があるように思う(私も昔、本書に触発されて莫高窟へ行った)。解説にあるとおり、この物語の主人公は敦煌をはじめとする西域の地、その興亡そのものである。人物はいわば風景の一部であり、流転する万象の一部にすぎない。そのような仏教的無常観を基調としながら(或いはだからこそ)、儚い生をひたむきに生きる人間の、なんと愛おしいことだろう。この小説のような、或いはこれ以上のドラマが実際にあったかもしれない。経典が実在するという事実と相まって、ついそんな空想を抱いてしまうような、浪漫に満ちた物語である。

  • 20世紀初頭、敦煌で大量の経典が見つかった。それはかつて西夏に支配された敦煌が守るために莫高窟の穴に隠したものだった。壮大な歴史ロマン。

  • おもしろかった

    とくに後半に進むにつれてその内容に惹きつけられた

    語学学習が趣味の私ですが、西夏文字に魅了されて故郷を離れ自分の人生を全うした行徳、素敵だなと思うと同時に、言語を身につけることで、普通に生きてるだけは出会えない人々や価値観に出会えるのは、今も昔も変わらないことだと感じた。

    敦煌、いつか行ってみたいな

  • 大陸の広さが目に浮ぶ作品でした。砂漠、ずーっと続く砂漠と、そして街の物語。人間のエネルギー、民族の興亡を感じました。

  • 小学生の頃に金曜ロードショウでやっていたのが頭を掠め読んでみようと思った。

    舞台は中国の西域
    主人公の趙行徳は官吏採用試験でまさかの居眠りをしてしまい、当たり前の不合格!
    失意の彼の眼の前に現れた異国の女!
    彼女を何となく助けたことにより異国の文字が書かれた布切れを貰い、何となく西を目指して旅立つことに!

    周りに流されやすい趙行徳は西に歩を進め時代の潮流に流されながらも愛する人や友と出会い、西の果ての地、敦煌に辿り着く。

    敦煌で彼を待ち受ける運命とは!


    西夏の版図拡大と、20世紀初頭に発見された万巻の経典!
    この二つの史実の結び目は敦煌にあり!!


    昔の小説にしては読みやすい。
    旅小説。
    舞台は中世の中国、水滸伝の舞台となる少し前の時代?


    次は同作者の【楼蘭】を読んでみたい!

  • 壮大すぎる舞台設定と奥深すぎる歴史。歴史上消え去った数多い人物を架空で思い描いてストーリーにし、一部を史実に繋げる見事さが際立つ。

  • 中国西域でのちょうど1000年前の空想物語。都から遠くかつ広いゆえに宋時代の中国が統治しきれない西域、群小民族の覇権争い。現代のウイグル自治区の様相を思い浮かべてしまう、のと同時に、映画やTVシルクロードドキュメンタリーの映像記憶があるから、やすやすと思い浮かべるイメージが、なお空想を馳せさせて面白く且つ意義深く読んだ。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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