あすなろ物語 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 138
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063058

感想・レビュー・書評

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  • 何かの本を読んだ折り、宮本輝がこの小説をたしか「初めて読んだ大人の小説」だったか、そのような風に紹介していたのをキッカケに、以来この作者の本をいつか読もうと思っていた。

    蔵の中で血の繋がらない祖母と暮らす小学生の鮎太を主人公に、学生から大人へ成長する過程を6人の女性と通じ、6つの章に分けた構成で綴られる。
    読み始めは退屈を感じていたが、1章の終わりに衝撃を受け、読み続けるというモチベーションを維持し、読了までに至った。
    3章の大学時代は、当時の若者世代の考えがそのままなのかと考えると、現代とは偉い違いだと驚いてしまう。明日は檜になろうと切磋琢磨する学生なんて今は少数でさえいるかどうか…。そして、そんな仲間を妬む主人公や周りの陰湿な気のある人間に失望とも呼べるショックを受けた。この章が自分の中ではある意味で一番考えさせられ悩まされ苦悶した蜜な部分だった。
    良い小説であることに間違いはなく、若いうちに読むと何かしら思い得る所はあるだろうが、しかし、今の人たちが興味を示す内容であるかと問われればそれは疑問である。

  • 新潮文庫100冊2015から。読み終えた第一の感想としては、時代背景が興味深い。本当にその時代を生きてきた作者ならではの、戦前戦後の空気というか風習がごくごく自然に描かれている。これこそが物語の持つ力なのか。

    主人公が俺TUEEE系でも超人でもなく、ハーレムラノベの主人公のような平凡さとも違い、まさにあすなろ。明日には楢になろうと決心するも禅に耽溺し学問から遠ざかり、年上の未亡人に恋心を抱くと思えば新聞社でライバルと出会い尊敬し付き合い、とかく完璧とは言い難く、一つの目標へ向かって邁進するのでもなく、流されたり流れたり、たまに与えられた場所で燃えてみたり、たどり着いたりする。
    人生はままならぬものと達観しているでもなく、空気というか雰囲気というか、なにかが昨今の小説とは違うのだ。人生を単純に「成功」や「失敗」の二つに分けるという考えがない。

  • 梶鮎太とそのぐるりのお話。
    印象に残る人物がたくさん。の描写はとても詳細で、
    鮎太と他の人たちとの対話は少ないように思われて、
    こんなもんかな?とは思った。
    自伝なのでしょうか。

    いのうえひさし、と、いのうえやすし、を間違えてて、読み進めてから、真面目な方だなぁ?あれ?とあとで気付いたことは内緒。

  • 中学生の頃に初めて読んで、それから何回読んだかな?なんかわからないけど好きな本で、暇あればまた読みたいです。

    最近の作家さんとは時代背景も価値観も全然違って新鮮なのかな?

    • jyunko6822さん
      私もです。

      はじめまして。
      フォローさせていただきます。
      私もです。

      はじめまして。
      フォローさせていただきます。
      2013/01/13
  • 私はあすなろなのか?あすなろにすら、なれていないのか?と、考えさせられた。
    一人の人物の成長が見れることが楽しい。人ってこうやって、自分の生きてきた歴史を背負うのか、と思った。

  • 井上靖の「しろばんば」からはじまる自伝的要素の強い作品を全部読むのが大変!という方におススメ。
    「あしたヒノキになろう」と想い続ける主人公をはじめとする登場人物のそれぞれの人生に、たぶん誰もが共感し、心温まります。独りでいたいけれど、独りではさびしいときに、どうぞ。

  • 明日は檜になろう物語。明日は何かになれるかな。むしろ明日は何かになろうとしているのかな。そのための行動を起こしてるんかな。というか自分のことを疑問形でしか語れなくなったら終わりやなと反省。

  • 梶鮎太( かじあゆた )の少年・青年期の成長を描いた自伝的小説… と紹介されている。なので、少年らしい爽やかな内容を想像していた。
    ところが、そのイメージはいい意味で裏切られた。「 〜ぼくが出逢った女性たち 〜」という副題を付したくなる内容なのだ。女性遍歴 とまでは言わないが、個性の強い魅力的な若い娘達が各章を彩る。若き鮎太の青春時代に影響を与えてゆく。
    ちょっと不良少女のような年上の従姉妹・冴子は、旧制中学の書生さんに恋焦がれて追い掛ける行動派。だが、彼と心中してしまうファムファタル。
    その後鮎太は伊豆の小都会の高校に進み禅寺に下宿。寺の娘幸枝と出会う。この子がまた、強烈なキャラで面白い。身体もデカくて運動も出来る。ガキ大将のように鮎太の背中を押す女傑である。寺の風呂の薪をくべる鮎太、「 みごとなはち切れそうな幸枝の白い肉体が眩しかった。 」…という場面も。くすぐったいような純情な官能で印象に残る。
    他にも、先輩記者の娘清香。狐火を撮る企画の取材で地方へ出張した鮎太。狐火の夜、真っ暗闇で顔も姿もわからぬなか若い女と結ばれる。幻想的な官能の場面で忘れがたい。
    さらには、戦後大阪の焼跡で出会った女、オシゲ。「三ノ宮の硬派の不良少女」で懐に拳銃を携行しているつわもの。だけど、さみしいからと鮎太の家に泊まりに来た夜 一晩中ずっと腕の小さな入墨を手で隠したまま眠っていた。純情さがいじらしい。そんなオシゲとの別離も切ない。夕暮れの焼け跡。闇市の十字路。 「 ここで別れましょう 」オシゲは秋田の農家に嫁に行くことを決めたという。

    溌剌として逞しい、魅力的な女達との出逢いと別れ。やさしさにあふれたいい小説である。

  • 「なろう、なろう、あすなろう、明日は檜になろう」確か、藤子不二雄Ⓐのマンガ道の冒頭で出会った言葉。ヒノキになりたくて、なろうと努力するけれど、永遠になれない翌檜(あすなろ)の木の説話。そんなきっかけから、この本を手に取った。
    今回読むのは二度目だけど、六つの物語があすなろの一貫としたテーマを下敷きに描かれている。井上靖の自伝小説ではないけれど、血のつながらない祖母に育てられた設定などが自伝的である。
     興味深いのは、多少なりとも6話とも気持ちを持っていかれる女性が登場して、いいねぇ、と思う。一方で、ここで描かれる影の薄い奥さんとは特に恋愛感情がなさそうで、浮気もするけど、守るべきものとして大切には思っている。昔も、今も本音はこんな思いで、暮らしている人多いんだろうな…。

  • 明日は檜になりたいと願う翌檜。子供から大人になると、翌檜ですらなくなっていくのか。そう言われればそうかもなあ。この本も、鮎太が子供時代の頃が一番よかったなあ。ピナクルは、無論後半、激動の戦争時代なのだろうけど、個人的には子供時代にこそ救いがあり、良くも悪くも暗示があり、それら込み込みの翌檜なのだと思う。翌檜は、置いて行くとその願いすらなくなり、その願いすらなくなれば、それはもはや翌檜ですらなくなるという自己矛盾を抱えている。俺は、翌檜なのだろうか。

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著者プロフィール

井上 靖(いのうえ やすし)
1907年5月6日 - 1991年1月29日
北海道旭川で生まれ、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごす。その時代までのことは『しろばんば』をはじめとした「自伝的小説三部作」に詳しい。金沢の第四高等学校(現・金沢大学)で詩作を始め、京都帝国大学を卒業後大阪毎日新聞社に入社。
小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950年デビュー。現代小説、歴史小説、エッセイ、自伝的小説、シルクロード西域関連の作品、詩集など創作範囲は多岐に及ぶ。主な代表作に、『風林火山』『氷壁』『天平の甍』『おろしや国酔夢譚』などがある。
1964年日本芸術院会員に。同年『風濤』で第15回読売文学賞、1980年菊池寛賞、1985年朝日賞などをそれぞれ受賞。1976年には文化勲章も受章しており、多数の受賞歴がある。

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