しろばんば (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101063126

感想・レビュー・書評

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  • 家族と離れ、五歳のときから曾祖父の妾であったおぬい婆さんと、山村の土蔵の中で暮らす洪作の小学生時代を描いた作品です。
    洪作はおぬい婆さんに両親よりもなつきます。そんな洪作へおぬい婆さん(自分が追い出されないようにとの魂胆もありましたが)は半端ない愛情をかけて育てていきます。それは、嬉しくもありながら、鬱陶しくもあり恥ずかしくもあり、でもやっぱりほっと癒してくれる……「おばあちゃん」と一緒に子ども時代を暮らした人には懐かしく感じられる部分もあるんじゃないでしょうか。

    作品は、最初から最後まで洪作からみた日常が描かれます。そのため、幼い頃の洪作には大人たちの言動からは気づくことが出来なかった心の内もありました。それが歳を重ね、時には逃げたり失敗しながらも、自分の目で見て考えていくうちに、たぶん、こうなんじゃないかなという彼らの本当の想いに気づいていくようになっていました。
    大好きなさき子の恋愛と死、様々な村の年中行事、我が儘で奔放な少女、おぬい婆さんと上の家(洪作の家の本家)との確執、伯父である校長の退職、気のおかしくなった犬飼先生、初恋、尊敬、孤独、そしておぬい婆さんの死……大きな事件はないものの、彼の周囲を取り巻く世界は刻一刻と変化していきます。その全てが洪作の成長へと繋がり、読者は洪作の世界が速度をぐんぐんとあげ広がっていくのを目の当たりにします。

    中学入学前に洪作は、両親と暮らすために郷里を離れます。
    思い出の詰まった時代から新しい時代へ。
    おぬい婆さんの両腕の中で愛され守られた雛鳥は、やがてひとりで巣だっていきます。

    わたしにとって、平成最後の日に読み終えることができ、原点回帰へと自分を顧みることができた感慨深い作品となりました。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは☆
      コメントありがとうございます♪
      「わが母の記」教えていただきありがとうございます!ぜひとも鑑賞したいと...
      nejidonさん、こんばんは☆
      コメントありがとうございます♪
      「わが母の記」教えていただきありがとうございます!ぜひとも鑑賞したいと思います。
      「しろばんば」では小学生の洪作は母親に対して複雑な感情を抱いていました。おぬい婆さんと母親が口論すれば、おぬい婆さんの味方になりたくなるし、母親が郷里へ帰ってくるとやっぱり嬉しい……
      子どもの頃には、うまく表すことの出来なかった母親への想いが大人になるにつれ、どのように昇華されていくのか、とても興味があります。
      あと数時間で新しい時代の幕開けです。
      新しい時代へ願うことは、nejidonさんのおっしゃるとおりです。そして、いつでも自由に好きな本が読める平和な時代が続きますように。
      2019/04/30
    • hiromida2さん
      地球っこさん!こんにちは!
      地球っこさんの「しろばんば」のレビューを拝見させてもらって…私も 以前に観た井上靖さんの「わが母の記」の映画を思...
      地球っこさん!こんにちは!
      地球っこさんの「しろばんば」のレビューを拝見させてもらって…私も 以前に観た井上靖さんの「わが母の記」の映画を思い出していました。とても 素敵な映画でした。
      今度は「しろばんば」のレビューを拝見して
      私も そちらの本も読みたくなりました。
      色々 読みたい本も増えるばかりですね
      原点回帰と自分を顧みる 感慨深いお言葉 本に本当に癒されます。
      2019/08/28
    • 地球っこさん
      hiromida2さん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      hiromida2さんは映画を沢山観ていらっしゃるのですね...
      hiromida2さん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      hiromida2さんは映画を沢山観ていらっしゃるのですね。本はもちろんのことですが、映画のレビューにhiromida2さんの愛がいっぱい詰まっていて、いつも楽しく拝見させていただいてます♪
      「わが母の記」他のブク友さんからもオススメしていただいてます。残念ながらまだ観られていなかったのですが、是非とも近いうちにレンタル屋さんに行ってみます。
      hiromida2さんのおっしゃる通り、読みたい本は増えるばかり。どうしましょ……笑
      2019/08/28
  • 井上さんの幼少期を描いたとして非常に有名な作品です。

    大正時代の日常生活の様子が非常によくわかり、人と人との付き合い方が、主人公の洪作の目線、感情を通して描かれている部分が非常に興味深かったです。日常の一コマ一コマが描かれているのですが、洪作とおぬい婆さんの生活、やり取りが読み手を大正時代に引き込みます。あるいは、自分自身が幼少期だった頃の記憶へと導いていきます。
    実際、自分自身も今は亡き大好きだった祖母を思い出しました。幼少期の夏休みに祖母の家で過ごしたこと、一緒に布団を並べて寝たことなど、大きな出来事ではなく、何でもない、ちょっとした祖母とのことを鮮明に思い出していました。

  • 帰国後隔離期間中の2冊目。
    私も一時期祖母と2人で1年間ほど暮らしたことがあり、その間両親と兄弟とは別々だった。
    大人同士の会話は、当の大人と子どもとではその捉え方が違い、子どもの年齢に応じても違うのだろう。そこは子どもワールドで、大人には想像も及ばない。感受性、人生経験、距離感など色々影響される。大人同士の人間関係に子どもは敏感。確かに振り返ると自分もそうだったと思い出す。
    大人になった今、親になった今、子どもたちがどう感じるのか、ということも考えながら発言したい、と考えた。

    親や祖母がだんだん物理的に小さく見てくるのは、その通りだと思う。そこに複雑な思いが去来した。

    こういう本、中学生か高校生くらいの時に読んでおきたかった。そしたらどんな大人になっただろうか。今とは違う自分だろうか。

  • 少年時代の自伝的小説。小学生の少年洪作が曽祖父の妾であったおぬい婆さんと共に過ごす中で様々な出来事を経験して成長していく過程を描いている。

    多感な少年期の感じ方を本当に上手に表現しており、読んでいてこんな気持ちだったな、という箇所が多数あった。また、変に感動させるという意図も感じさせないところもまた良い。おぬい婆さんとのやり取りが心暖かと同時に少し切ない。少年文学の傑作と思う。

  • ふと読みたくなり、中学生以来、久しぶりに手にしました。
    洪作少年の心の機微、おぬい婆さんとの土蔵での日々、美しい湯ヶ島の風景。自分が過ごした時間、場所ではないけれどどこかノスタルジーな気持ちになります。
    再読して、また違う印象も受けました。これからも読み継いでいきたい本です。

  • 自伝的3部作の1作目。
    洪作の小学生時代の物語。

    繰り返し読んでいる本です。
    息子たちが小学生になった今読むと、また違った感慨があります。
    成長による、視点の変化。
    祖母と孫の関係。
    子どもから見た死。
    濃い関係性の中で生きるということ。
    田舎と都会の違い。
    などなど。これからもきっと何度も読み返していくことになると思います。

    さぁ、私も現実逃避はお仕舞いにして、勉強をしなくては(笑)

  • ノスタルジックな夕暮れに始まり、それとの別れに終わる。無論湯ヶ島と婆ちゃの思い出は少年の中で1つになっている。象徴的なしろばんば。

    老いの進みが洪ちゃの成長を表すと共に、ちんまりとした「しろばんば」というワードに収まっていく婆ちゃの人生の、逞しくも寂しい余韻が胸に響いた。

    頼りない甘えん坊な田舎少年が家族に流されながらも、後半自ら人生を見据え机に向かう真面目さ。場面は薄暗いのに反して爽やかで好ましかった。たった5年でこんなに成長するものか。

    大正時代の日本の描写も単純に興味深く、良き読書時間だった。

    余韻に浸って辿り着いた解説が、あらすじに2、3行コメントがついただけのもので物足りない。プロ目線の感じ方、読み取り方を伺いたかった。

    ブクログの感想を読み漁ろう。

  • 面白かったけど、何故か井上靖の作品は退屈さを感じてしまう。子供が成長して行く気持ちの揺れや心理を上手に描いていると思う。

  • 恥ずかしながら初めて読了。
    素直に感動。なるほどこれは、幼年時代を振り返る自伝小説の金字塔。クラシックと云ってもイイ。なんせ舞台は約100年前のことだし。
    中でも、洪作の素直な心情を表す、時に詩的、時には絵画的な表現と、それらを連ねて洪作の心身の成長や複雑化を読者に知らしめる文学的な手際がスバラシイ。
    本書を第1部とする自伝的小説三部作の次なる本「夏草冬濤」を読むのが待ち遠しい!

  • 前半がほんとにほんとに退屈で、何が名作なのかぜんぜんわからなかった。
    出てくる人みんな意地悪いし、仲も悪いし、冗談も言わないし。

    でも中〜終盤、特に死にまつわる話がよかった。

    さき子姉ちゃんの面影や、狂ってしまった犬飼先生や、もうろくしていくおぬいばあさんの姿。
    体験したことのない日常が描かれていて、素朴で情感が強かった。
    映画のなかった時代の映画のように思った。
    何十年も経ってから、記憶を頼りにこれだけのことが書けたのだとしたらものすごいことだと思う。

    ただとりとめがないので、「子供に読ませる名作」としては全然魅力的に思わない。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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