しろばんば (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 976
レビュー : 104
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063126

感想・レビュー・書評

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  • 家族と離れ、五歳のときから曾祖父の妾であったおぬい婆さんと、山村の土蔵の中で暮らす洪作の小学生時代を描いた作品です。
    洪作はおぬい婆さんに両親よりもなつきます。そんな洪作へおぬい婆さん(自分が追い出されないようにとの魂胆もありましたが)は半端ない愛情をかけて育てていきます。それは、嬉しくもありながら、鬱陶しくもあり恥ずかしくもあり、でもやっぱりほっと癒してくれる……「おばあちゃん」と一緒に子ども時代を暮らした人には懐かしく感じられる部分もあるんじゃないでしょうか。

    作品は、最初から最後まで洪作からみた日常が描かれます。そのため、幼い頃の洪作には大人たちの言動からは気づくことが出来なかった心の内もありました。それが歳を重ね、時には逃げたり失敗しながらも、自分の目で見て考えていくうちに、たぶん、こうなんじゃないかなという彼らの本当の想いに気づいていくようになっていました。
    大好きなさき子の恋愛と死、様々な村の年中行事、我が儘で奔放な少女、おぬい婆さんと上の家(洪作の家の本家)との確執、伯父である校長の退職、気のおかしくなった犬飼先生、初恋、尊敬、孤独、そしておぬい婆さんの死……大きな事件はないものの、彼の周囲を取り巻く世界は刻一刻と変化していきます。その全てが洪作の成長へと繋がり、読者は洪作の世界が速度をぐんぐんとあげ広がっていくのを目の当たりにします。

    中学入学前に洪作は、両親と暮らすために郷里を離れます。
    思い出の詰まった時代から新しい時代へ。
    おぬい婆さんの両腕の中で愛され守られた雛鳥は、やがてひとりで巣だっていきます。

    わたしにとって、平成最後の日に読み終えることができ、原点回帰へと自分を顧みることができる感慨深い作品となりました。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは☆
      コメントありがとうございます♪
      「わが母の記」教えていただきありがとうございます!ぜひとも鑑賞したいと...
      nejidonさん、こんばんは☆
      コメントありがとうございます♪
      「わが母の記」教えていただきありがとうございます!ぜひとも鑑賞したいと思います。
      「しろばんば」では小学生の洪作は母親に対して複雑な感情を抱いていました。おぬい婆さんと母親が口論すれば、おぬい婆さんの味方になりたくなるし、母親が郷里へ帰ってくるとやっぱり嬉しい……
      子どもの頃には、うまく表すことの出来なかった母親への想いが大人になるにつれ、どのように昇華されていくのか、とても興味があります。
      あと数時間で新しい時代の幕開けです。
      新しい時代へ願うことは、nejidonさんのおっしゃるとおりです。そして、いつでも自由に好きな本が読める平和な時代が続きますように。
      2019/04/30
    • hiromida2さん
      地球っこさん!こんにちは!
      地球っこさんの「しろばんば」のレビューを拝見させてもらって…私も 以前に観た井上靖さんの「わが母の記」の映画を思...
      地球っこさん!こんにちは!
      地球っこさんの「しろばんば」のレビューを拝見させてもらって…私も 以前に観た井上靖さんの「わが母の記」の映画を思い出していました。とても 素敵な映画でした。
      今度は「しろばんば」のレビューを拝見して
      私も そちらの本も読みたくなりました。
      色々 読みたい本も増えるばかりですね
      原点回帰と自分を顧みる 感慨深いお言葉 本に本当に癒されます。
      2019/08/28
    • 地球っこさん
      hiromida2さん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      hiromida2さんは映画を沢山観ていらっしゃるのですね...
      hiromida2さん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      hiromida2さんは映画を沢山観ていらっしゃるのですね。本はもちろんのことですが、映画のレビューにhiromida2さんの愛がいっぱい詰まっていて、いつも楽しく拝見させていただいてます♪
      「わが母の記」他のブク友さんからもオススメしていただいてます。残念ながらまだ観られていなかったのですが、是非とも近いうちにレンタル屋さんに行ってみます。
      hiromida2さんのおっしゃる通り、読みたい本は増えるばかり。どうしましょ……笑
      2019/08/28
  • 少年時代の自伝的小説。小学生の少年洪作が曽祖父の妾であったおぬい婆さんと共に過ごす中で様々な出来事を経験して成長していく過程を描いている。

    多感な少年期の感じ方を本当に上手に表現しており、読んでいてこんな気持ちだったな、という箇所が多数あった。また、変に感動させるという意図も感じさせないところもまた良い。おぬい婆さんとのやり取りが心暖かと同時に少し切ない。少年文学の傑作と思う。

  • 自伝的3部作の1作目。
    洪作の小学生時代の物語。

    繰り返し読んでいる本です。
    息子たちが小学生になった今読むと、また違った感慨があります。
    成長による、視点の変化。
    祖母と孫の関係。
    子どもから見た死。
    濃い関係性の中で生きるということ。
    田舎と都会の違い。
    などなど。これからもきっと何度も読み返していくことになると思います。

    さぁ、私も現実逃避はお仕舞いにして、勉強をしなくては(笑)

  • 夕暮れに飛ぶ白い虫を追いかける情景は、
    まるで自分の経験したことのように
    頭に浮かぶ。

    多感な少年の目を通した感覚は、
    この小説が描く大正時代のみならず、
    現代にも共通すると思う。

  • 中学生くらいに読んで、なんだか印象に残っていて…
    30代も後半になり、無性に読みたくなっての再読です。

    子どもの頃は、おぬい婆さんが寝床にいる洪作にお菓子をあげる「おめざ」なる習慣や、妊娠すると酸っぱいものが食べたくなるのだ、という新知識の印象だけが鮮やかに残っていて、後半のストーリーはうろ覚えだったのだけど、この年になって読み返すと、親戚の面倒くさいアレコレや、親や親戚がガミガミうるさく言うことの方に共感しちゃって、楽しめました。

    特に大きな事件が怒ったり、ハラハラドキドキさせるわけではなく、淡々とした日常と心の変化を描いているのに、次を読みたくてたまらなくさせる、こういうのが名作っていうんだなー と感心してしまいました。

    おぬい婆さんの年になったらぜひまた再読したいです。

  • 足長おじさんから息子が薦められて読んだので。
    なんてことはないストーリーと思って読み進めていたら、洪作の成長と共に変化する心情に加えて、変化する時代と大人も含めた一人一人の人生までが見えるような細かい描写に感動した。
    洪作と同年代の息子も感じるところがあったとおもうが、どんな年代の読者も感じるものがあるだろう。
    馬車の御者がバスの登場で苦悩する場面が心に残った。

  • 井上靖の著書を何か読みたいと思い立ち、たまたま目に入ったのがこれだった。
    重くないモノって準備しておきたい。それにしては厚さがあるのでどうしたモノかなとも考えていたんだけど、まあいいかと選んだ一冊。
    期待値は低かったけども、今になって思えば非常によい作品だった。
    井上靖は好きな作家と尋ねられて一番に出てくる名前ではないが、好きな作家の部類には入る存在だと思う。
    やはり、第一位になるにはやはり趣向的な一致が必要なのだ。
    そうなると井上靖には“信頼のおける作家”という表現が一番適当かもしれないな。



    井上靖が自身をモデルとして書いた小説で、そのうちに幼少期を描いたものである。
    主人公:洪作少年は祖父の妾のおぬい婆さんに育てられている。この設定は何とも言い難い関係に思えるが、2人はすこぶる仲がよい。
    ばぁさんは立場が立場なだけに非常に偏屈なのだが洪作のことは目に入れても痛くないってほどにかわいがっている。それには打算はない。本当に大事にしているのだ。
    大体物語の舞台は湯ヶ島というのどかな田舎で、愛想劇なんて起こる訳もないのだ。
    級友との遊び、特殊な食事環境、年の近い叔母、お風呂、父と母と妹、異様な親戚、遠い祖父、転校生、マラソン大会、のぞきみした恋人達、勉強と家庭教師などなどが書かれ、事件が起こってもたかがしれているレベルだ。あくまでも日常。だからするすると読める。読みやすいことこの上ないのだ。
    しかしそれだけでもなく洪作少年を通して見られる世界の温かさ。
    勿論、本当に少年が記したのならば形のないたどたどしいものになるだろうが、子供らしい純粋なまなざしを井上靖は上手い具合に描いている。豪華な描写や舌を巻くような形容はされないが、時にはっとさせられるようなみずみずしさがあるのだ。
    読み終わってからの後味がすこぶるよい、いまバラバラと気に入った部分を読み返してみても素直に素敵だと思えるような本だった。
    特に、最後のおぬい婆さんが亡くなったあとの洪作の心の内の描き方にはぐっと来た。
    技巧は勿論のこと、おもしろさもちゃんと用意してくれる安定した作家なのだ。
    もともと井上靖には昔読んだ『敦煌』のおかげで、よいイメージがある。今回もいい小説だったが、今度は歴史小説にでも着手してみるかな。

  • 作者の子供の頃の話。
    古い時代の話だけど、読んでいてなんとなくその時代の情景が浮かんできました。三部作のようなので、この続きが読みたいな。主人公の成長過程を最後まで見守りたくなりました。

  • 小学校の頃、受験塾の授業で出てきて大好きだったお話。

    でも大学生になった今、
    小学校の頃読んだときとはやはり感じ方が違う。
    小説の中に出てくる覚えてた様々なエピソードも、
    今読んだら違うイメージを持つ。
    やはり小学生の頃は、主人公の洪作と年齢が同じだったので
    子供独特の感性や、おぬい婆さんに対する感情などにリアルに共感できたのと、
    今より想像力が豊かだったのだなぁと思う。
    今はむしろ、さきこ姉ちゃんやお母さんと同じ目線で読んでしまう。
    自分の祖母に対する気持ちの持ち方も変化してきた気がする。

    おぬい婆さんとの別れの場面は何度読んでも泣いてしまい、
    この時の(成長した)洪作は今の自分と重なっていて、つらかった。

    昔は気付かなかったけど、
    この本が井上靖の自叙伝的3部作の1つであり、
    主人公の洪作は筆者の少年時代であると知り、
    こんなに鮮明に感情豊かに子供の頃のことを書けるほど、
    素晴らしい思い出を持ち、郷土を愛していることは素敵なことだと思った。

    あと、読んだ後、伊豆行きたくなった。
    湯ヶ島行って温泉入って蜜柑食べて川で遊んで天城ほたる祭り見て沼津で千本松見て下田の丘に登って漁村を見下ろすような旅がしたい。
    すべて鈍行列車で。

  • この本に出会えて幸せ

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著者プロフィール

井上 靖(いのうえ やすし)
1907年5月6日 - 1991年1月29日
北海道旭川で生まれ、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごす。その時代までのことは『しろばんば』をはじめとした「自伝的小説三部作」に詳しい。金沢の第四高等学校(現・金沢大学)で詩作を始め、京都帝国大学を卒業後大阪毎日新聞社に入社。
小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950年デビュー。現代小説、歴史小説、エッセイ、自伝的小説、シルクロード西域関連の作品、詩集など創作範囲は多岐に及ぶ。主な代表作に、『風林火山』『氷壁』『天平の甍』『おろしや国酔夢譚』などがある。
1964年日本芸術院会員に。同年『風濤』で第15回読売文学賞、1980年菊池寛賞、1985年朝日賞などをそれぞれ受賞。1976年には文化勲章も受章しており、多数の受賞歴がある。

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