- 新潮社 (1964年6月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784101063133
みんなの感想まとめ
圧倒的なスケールで描かれるチンギス・カンの物語は、彼の孤独な渇望と征服欲を精緻な文体で綴り、読者を魅了します。モンゴルの大地を駆ける蒼き狼の末裔たちの生き様は、現代の常識を超えた力強さと本能的なカッコ...
感想・レビュー・書評
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いきなりだが、ここでワタクシめの「モンゴル」の知識をお披露目しよう
遊牧民、相撲、元寇、チンギス・ハーン、フビライ・ハーン…
以上である(ひどい)
そしてモンゴルのイメージ(失礼を重々承知で…)
粗野で野蛮な遊牧民…(モンゴルの方、並びに関係者の方、本当にごめんなさい)
ところが知れば知るほどモンゴルの歴史が面白いではないか
モンゴル帝国時代の統制力と経済力のレベルの高さ
力づくだけではない彼らの領土拡大の方法…興味がわく
先日読んだ「世界史とつなげて学ぶ中国全史」に面白いことが書いてあった
それは司馬遷の「史記」(匈奴列伝)からの抜粋
~匈奴は老人より健康な若者を大切にする
また父子は同じテントで寝る
父が死んだら子がその妻を娶り、兄弟が死んだら、その妻を自分の妻にする
一族が絶えないようにするため~
我々からは少し違和感があるものの、遊牧民の生活スタイル・生きるための価値観のよくわかる内容だ
さてどうやってモンゴルを知ろうか…
別に受験生でもないから楽しく知識を得たい
そうだ!ワタクシの好きな井上靖があるじゃないか!
チンギス・ハーン(ここでの記載は「成吉思汗」なのでそれに合わせます)の歴史小説
というわけで本編
成吉思汗の幼名は鉄木真(テムジン)
そのテムジンが生まれた頃(12世紀)、蒙古高原では諸部族の指導権争いが頻繁であった
「上天より命ありて生まれたる蒼き狼あり
その妻なる惨白き牝鹿ありき…」
これがモンゴルの源流に関する伝承だ
蒼き狼と牝鹿の子孫と信じ、大いなる誇りを感じてきたテムジン
テムジンは自分の出生の秘密があった
母ホエルンは掠奪されたメルキト部族から父エスガイがさらに掠奪した女性(女の掠奪は当たり前の時代)
父はエスガイか、メルキト族なのかわからない
それでも自分は蒼き狼の子孫でありたいと躍起になる
そんな中、父エスガイの死により自分達一家以外、全ての同族に見捨てられるという惨めな逆境に
この逆境から這い上がったことと、蒼き狼になるというテムジンの強い思いから始まる領地拡大を伴うモンゴル繁栄
本書は魅力的に描かれた人物が多いが(井上靖作品の好きなところだ)
まずは妻になるボルテを紹介しよう
成吉思汗と初対面の初セリフがこれだ
「私はオンギラントの娘だ
私の躰には狼の血は流れていない
しかし狼の地を分け持った狼の裔どもをいくらでも産むことができるだろう…
…敵の輩を噛み殺すために…」
カッコ良すぎる強く逞しく懐の深い女性だ
そのボルテがメルキト族に連れて、ある若者の妻にされてしまう
テムジンらはボルテを力づくで奪い返すが、やがてボルテが身ごもり、出産
ジュチ(客人)と名付けたテムジン
自分の子かメルキトの子かわからない
運命は繰り返されるのか…
自分と同じ思いをすることになろうジュチを思うテムジン
「汝よ狼になれ 俺も狼になる」
無口で冷酷にさえ見えるジュチは命を落とすかもしれない試練をものともしない
彼の非凡な才能が発揮
褒賞は何が良いかと父に問われたときのジュチ
「限りなく次々に苦難に満ちた命令を与えていただきたい
自分は次々にそれをやり遂げるだろう」
複雑な親子関係
愛情なのか憎しみなのか…
(二人の関係に最後まで目が離せなかった!)
続いて、母ホエルン
テムジンがドン引くほどの激しさと、愛情深さを併せ持つ
目まぐるしく変化する環境を受け入れ続ける柔軟さと、懐の広さを持つ
征服した多種族の孤児、血縁関係のない子供たちに対する平等な愛情を惜しみなく与える女性だ
さらには愛妾クラン
気高く美しいメルキト族の娘だ
自分の命をかけて躰の清浄を守ってきた誇り高き娘
「私からすべてのものを取り去れ
宝石も、美麗な衣服も、贅美を尽くした調度も…
そして私を常に合戦の雄叫びの中にあらしめよ」
いかなるところへ出陣する時も、テムジンと共にすることだけが彼女の望み
例え身ごもっても、たとえ息子が3歳児であっても
その息子ガウランに与えた残酷な使命…
彼はモンゴルの狼になったのだろうか(う、泣ける)
さて肝心の成吉思汗の人物像はいかに
独断で物事を決め、その決断力にはスピード感を伴った
完全なる独裁者ではあるものの、人の意見はよく聞く
また人を見る目もあり、また人の心を読むのにも長けていた
仲間への報酬は惜しまない
恩は決して忘れず、何年かかっても恩返しを実行する
彼の戦略はいかに
刃向かう敵は、殺戮と略奪を欲しいままにし徹底的に潰す
協力する部族や国は、信仰の自由を与えや外来文化を受け入れる
(先日読んだアレクサンドロスの政策とよく似ている)
またモンゴル国家の軍政と民政を組織化し、かつ戦闘以外の各人の仕事の配備まで成吉思汗が采配していた
異国との交戦で得た武器や製造方法、道路整備、情報網の徹底、農耕技術、刑罰法度など
どんどん取り入れていく
半農牧となり、隊商が集まり、市場がたつ
異国との争いで異国文化に触れるごとに色彩が急に豊かになる映像が目に浮かぶ描写もお見事
興味深い成吉思汗の跡継ぎ選び
成吉思汗には正室との間に4人の子供がいた
末子ツルイを一番愛していることは誰の目にも明らか
そしてモンゴルでは未子相続の制度がある
もしくは長子であり誰もが認める武勲を立てているジュチか
どちらかであろうと皆が推測する
が、結論は一番目立たない第三子のエゲデイを選ぶ成吉思汗
一座の者たちは驚きを隠せない
兄弟の中で一番温厚篤実であり、総轄者に相応しい器量だと言い、
そう言われてみれば…と皆が納得するところが面白いのだが…
(ああ、この時のジュチの気持ち…どれほどの口惜しさと悲しみを持ったのだろう)
モンゴルがより良い生活を求めるには近隣国への侵略しかなかった
それによって得た獲物と来貢品のが皆に配分される
成吉思汗は貧しい身なりのモンゴルの民を豊かにしたかった
その思いを胸に領土拡大を続け、気づけば略奪により絹、宝石などあらゆる品々を手にし、
宏壮な離宮、贅を尽くした館と庭園…と次々手に入れていた
武将や兵たちもすっかり装いが変わり、モンゴルらしさが失われていく
かつて成吉思汗はこうした生活を己が一族の者に、すべての男女に与えることを夢見たはずなのに…
何故か割り切れない思いがつきまとう
成吉思汗だけがモンゴルの服装をし、モンゴルの靴を履き、モンゴルの習俗にしたがって生活していた
享年65歳成吉思汗没す
冷静で温度低めの淡々とした描写であるが、腹の底で煮えたぎるマグマのように熱い気持ちが見え隠れし、心を揺さぶる
引き気味の描写と冷たい炎が燃え続け、疾走する
モンゴルの乾いた大地が残酷な侵攻による残虐行為の爪痕を消し去る
そこで流した血と涙
そんなものを残していては前に進めない…
遊牧民の象徴のようだ
無彩色の乾いた空気をザラっと感じる
モンゴルの戦い方とはこういうものなのか…
壮大なモンゴルの歴史が体中を熱く駆け巡った
彼らの文語的で堅い話し言葉がこの作風と非常にマッチしており、徐々に味わい深くなっていくんだな~コレが
非常に無口に描かれている成吉思汗のキャラクターを上手に知らしめるエピソードが井上靖らしく見事であるし、
各キャラクターの魅力も相変わらずの「あっぱれ」だ
しかし井上靖作風の「出来過ぎ」「カッコ良すぎ」にシビレまくっているが、こういうのっていつか飽きるのかしら…
最後にしょうもないネタですが…
幼名がテムジンなのだがこちらの小説では漢字で書かれており、「鉄木真(テムジン)」と表記される
これに慣れるのに非常に時間がかかり、しばらくの間、鈴木真(スズキマコト)さんに見えて困った困った!
だってスズキマコトさんになったとたん、急に真面目なサラリーマン風になってしまう…
チンギス・ハーンから遠過ぎる!
(全国のスズキマコトさん 勝手な妄想なのでどうかお許しください)
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心の中にモンゴルができてしまった。
獲物を追い求め、野を駆ける蒼き狼の末裔たち。彼らはただ生きるため、そして狼の血を継ぐ者であるがゆえに、侵略し、殺戮し、略奪を繰り返す。その圧倒的なまでの力強さと、現代社会の常識や倫理観を超越した生き様が、読後も私の心から離れない。テムジン、ムカリ、ボオルチェ……彼らが仕事中も食事中も、心の中を疾駆し続けている。
彼らの価値観や生活様式は、現代に生きる私たちの共感や理解の範疇にはない。それでも、彼らの放つ圧倒的なスケールと、生命力に満ちた姿に、強く惹きつけられる。
本能的なカッコよさ。ウォー -
ユーラシア大陸を横断する巨大なモンゴル帝国をたった一代で興したチンギス・カンの孤独な渇望と旺盛な征服欲を、精緻かつ静謐な文体で綴った歴史小説。
母が他部族に略奪されていた前後に彼を身籠ったため、モンゴルの一部族の長であった父の血を受け継いでいないのではないかと生涯苦悩しながらも、モンゴルの男たらんと、モンゴルの伝承上の始祖「蒼き狼」になることを渇望した「テムジン」。
まだ少年の時分に父を闘争で失い一族全てから見捨てられながらも、彼はやがて頭角を表して周辺の遊牧民族たちを統一し、「チンギス・カン(盛大なる大君)」の尊称を得る。
それでも彼の征服欲は留まらず、次々と周辺国へ侵略の目を向けていく…。
チンギス・カンの、消えない苦悩と孤独な心情、征服者としての傲慢さと非情さと冷静さ、家族や周囲への愛情といった、雑多なまでに様々な感情や性質が、井上靖特有の物哀しさと優美さを併せ持つ精緻な文体で綴られることで、矛盾なく融合し、複雑で陰影に富んだチンギス・カン像を構築しています。
それでも、栄華のなかで迎えた筈のチンギス・カンの最期の時の心情は、ひどく侘しく、孤独に満ちている。
結局、最期の最期まで、彼は自身の中に根付いた孤独から逃れることができなかった。
学生時代から何度も読んでいるけれど、読むたびに、その物哀しさ・侘しさに胸打たれる作品です。 -
久しぶりに読んだ井上靖。
硬質で格調高い日本語がよかった。
無理に空想を膨らませるのではなく、淡々と、でも見てきたことのようにチンギスカンを描き切る。
あとがきの、この作を描くに至った経緯が見事。 -
#875「蒼き狼」
横山光輝の漫画を先に読んでしまつたが、アレはやはり漫画だけあつて成吉思汗をヒーロー的に描いてゐました。内容は同じながら、井上靖の筆致はもつとハードボイルドで突き放した感じがしました。
著者は元元蒙古民族の興隆を書くつもりだつたのが、成吉思汗といふ一個人にスポットを当てたのは、何より彼自身が蒙古民族の興隆そのものを具現化した人物だつたからだといふ。成程、桁外れの凄い人物ではあります。現在の視点で「英雄」と呼べるのかどうか知りませんが、時代も土地も全く違ふわたくしどもが云々しても詮無い事なのでせうね。 -
淡々とテムジン・成吉思汗の一生を追っていく小説。
これが非常に面白かった。名前でしかしらなかったテムジンの弟、こども、仲間が色をもち、生き生きと動き出して、みんな魅力を放っていた。
蒼き狼のような伝説はローマの伝承のロムルスにも似て、世界いろんなところに存在するようだ。
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モンゴルの英雄チンギスカンの波乱の人生を綴った物語。
覇者となったチンギスカンの人物像や行動の底に流れる想いなど井上靖さんなりの解釈で綴られている。 -
チンギス・ハーン モンゴル オノン ケルレン
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全1巻
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どれほど大きな戦果を挙げていようと、
どれだけ数多の財宝・女・家畜を得てようとも、
それにキリはなく。
その果てしない行為の代償によって、
死ぬ間際には、
最愛の人全てが故人となっていた。
死ぬ時まで戦のことを考え、
死んでいく。
事切れる瞬間まで。
幸せな人生とは何なのだろうか。
最期まで
父を想い続けた
憎き最愛の息子。
実は、誰よりも愛していたことを知る。
すでに時遅し。
あらゆる辛苦を耐えてきたチンギスでも、
これだけは耐えることはできなかった。
人間の人生の儚さ。
そして、寂しさ。
昭和35年10月刊行。 -
血縁中心に聚落を構成し、離合集散を繰り返すモンゴルの遊牧民たち。ボルジギン氏族の首長エスガイの息子、鉄木真(テムジン)は、父の死後仲間から見捨てられ、流浪するが、その才覚からやがて頭角を現し、部族を統一して成吉思汗(盛大なる大君)になると、大部隊を率いて周辺国を次々侵略していく。侵略戦争に明け暮れる鉄木真(成吉思汗)の生涯を通して、「女たちは犯され、男たちは虐殺される」殺伐とした世界を淡々とした筆致で描いた作品。
著者はあとがきで、「成吉思汗のあの底知れぬ程大きい征服欲が一体どこからきたのか」を書きたかったと言っている。
この点について著者は、鉄木真(成吉思汗)が複雑な出自(父親と血が繋がっているかどうか分からない)を持つがゆえに、蒼き狼を始祖と仰ぐモンゴル族の荒々しい血を証明しようと遠征につぐ遠征で侵略戦争に明け暮れた、と解釈(想像)しているようだ。違和感があったのは、最愛の妃(正妻ではない)の忽蘭(クラン)の存在。忽蘭は、安定した生活より成吉思汗と共に戦乱に身を投じることを望み、乳飲み子を抱えながら侵略をけしかけている。こんな女性、ちょっと想像できないな。
鉄木真の「合戦に勝ったときは、宜しく敵の女たちを寝台の上に並べて敷きつめ、それを褥として寝むことである。女という女にはモンゴルの子を孕ませ、モンゴルの子を産ませよ。それ以外に女の使い道はないではないか」というセリフも強烈。 -
中国の歴史はなかなか頭に入ってこないが、昭和の文豪達は、壮大なロマンに魅せられていたのだろう。
男尊女卑が凄いことは、共通である。 -
ちょうど学校で元の歴史をやったので。
キプチャク汗国?バトゥ?フラグ??っていう状態だったけど、読んだら結構わかった!
チンギスハンは父親が蒙古人じゃないかもしれないと思っていたから、蒼き狼として認められる(自分が認める)ように征服戦争を続けなければならなかったし、ジュチも然り。
忽蘭かっこいいー。喋り方が男っぽすぎるけど。 -
チンギスハンの一生。意外と周囲に恵まれていたこその覇権だったという感想。彼の青春時代に描かれる万能感と、年老いてからの孤独や不安との対比がとてもよく描かれていると感じた。
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有名なチンギス・カンの生涯を、モンゴルの草原が目の前に見えるほどの臨場感で、駆け抜けたような疲労感があるほど一気に引き込まれて読んでしまった。
親子の葛藤、民族の誇りなど、みんなそれぞれの強い思いで生き抜いたのだろうなと。
昔『敦煌』を読んた記憶もあるけれど、改めて『楼蘭』『天平の甍』も読んでいきたいと思いました。 -
⭐︎4.5
文字が小さすぎてきっと老眼が進行したはず。
ただ物凄く面白かった。
成吉思汗(チンギス・カン)の出生から客歿までを、作者としての特別な批評を加えずに淡々と綴る。その淡白さと、堅固な文章も相俟って小説として面白味に欠けてもよさそうなものだが、全くもってそんなことがないのが凄い。
後書きにもあるように、この小説は成吉思汗の底知れない征服欲の根源を描き炙ることが根幹にあり、そのために鉄木真(テムジン)少年や成吉思汗の苦悩や血腥いカタルシスが度々描かれる。
サマルカンド(現在のウズベキスタン)付近において、父である成吉思汗の帳幕だけが歴史的なモンゴルの様相を呈していたシーンが印象的だった。
皆の贅沢な生活を実現するべく大陸を駆け回っていたはずが、彼にとって蒼き狼としての証明や理想はそこになかったんだろうなぁ。
次は『敦煌』を読んでみたい。 -
モンゴルモチベ上げようキャンペーン
やっぱり井上靖の歴史ものの、時代がずんずん進んでいく感じ、歴史の流れに乗っているみたいで楽しい
成吉思汗の飽くなき征服欲に当てられて、自分もモンゴルの広大な草原を馬で駆け回りたくなる
歴史の舞台となった大陸の草原に、夢を抱いてしまう -
静かに淡々と、それでいて血湧き肉躍るかっこよさのある話だった
-
ウ~ン。どうなんだろうか?
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著者プロフィール
井上靖の作品
