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本 ・本 (743ページ) / ISBN・EAN: 9784101063188
感想・レビュー・書評
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「自伝三部作」の第二弾。小学校を卒業し、浜松中学に進学した洪作は、その後沼津の中学に転校して、三島の叔母のもとに身を寄せることになります。
洪作は親戚の「かみき」の家を訪れて、蘭子とれい子の姉妹と再会します。思春期を迎えたばかりの洪作は、あいかわらずのわがまま放題の美少女たちにとまどい、彼とともに徒歩通学をしている同級生の増田と小林の二人とともに、自意識をもてあまして落ちつかない気持ちにさせられます。
一方で洪作は、一つ年上の金枝を中心とするグループに魅かれていきます。金枝は級長でありながら、タバコを吸ったり授業をさぼったりと、多少不良少年めいたところをもっていましたが、海外文学に通じていました。ほかに、スポーツ全般が得意で、歌を詠むという意外な趣味をもつ木場、大人びて他人のふところに自然に入り込むことのできる藤尾、動作は緩慢ながらも人並外れた記憶力をもち成績優秀な餅田など、ほかの生徒たちとはちがった個性をもっており、やがて洪作は彼らの仲間にくわわって、それまで知らなかった世界を知っていくことになります。
本作の舞台となっている時代はおそらく大正から昭和に入るころだと思われますが、ローティーンの少年たちに特有の自意識のありかたが見られる一方で、現代の少年にくらべてずっと大人びている部分と、反対に初心な部分とが見られるのも、興味深く感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読了
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井上靖の自伝的小説で,小学生時代を描いた「しろばんば」の続編にあたる小説.中学生になって親元をはなれてくらすちょっと気弱な洪作だったが,だんだんと1学年上のちょっと不良っぽいが,人間的魅力あふれる藤尾,木部などとまじわるようになっていく.それに比例して成績は下がっていくが,あまり気にせず自由奔放に生きていく.伊豆の故郷に帰って「しろばんば」の舞台で昔をふりかえる部分は感動的だ.「しろばんば」を読んでいるとそれだけますます.あと女の子に対する少年ならではの恥じらいの気持ちは昔の少年時代を思い出してやまない.最後のシーンで藤尾,木部らと土肥に旅に出る場面は,少年らのよむ詩にあわせて,洪作は舟の中,青空の下眠っていくが,なんとも美しい情景だった.
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