忘れ得ぬ芸術家たち (新潮文庫)

  • 新潮社 (1986年8月25日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784101063300

作品紹介・あらすじ

法隆寺壁画の模写に没頭し、戦争のさなかに法隆寺へ向う列車の中で倒れた日本画家の荒井寛方。烈しく一途に美を語り、最初の出会いから著者をとりこにしてしまった陶工・河井寛次郎。ほかに橋本関雪、上村松園、国枝金三など、著者が美術記者時代にめぐり会った画家や陶芸家たちとの交わりを中心に、美の創造者たちの内面と風貌を生き生きと描き、鎮魂の思いあふれる美術エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 毎日新聞の美術記者だった著者が、当時の取材などを通じて出会った芸術家たちについて語ったエッセイなどをまとめた本です。

    河井寛次郎については、「私は氏の人となりに魅了されてしまった」と著者は語り、「氏は芸術家という言葉がきらいで、陶工とか職人とかいう言葉が好きだったが、しかし、氏くらい芸術家らしい真の芸術家は、そうざらにはなかったと思う」と述べて、河井との思い出が著者にとってかぎりなく美しいものとして回想されています。

    これに対して、画家の橋本関雪については、著者はその作品にもそのひとにも、やや親しみにくさを感じていたことが語られています。そうした著者のえがく橋本は、やや滑稽さを感じさせるところがあるものの、臆病さを内部にかくしながら美の世界に生きたそのすがたは、やはり芸術家であると思わされます。

    「安閑天皇の玉碗」と「白瑠璃碗を見る」はどちらも、安閑陵出土の玉碗と、まったくおなじかたちの「玻璃碗」をめぐるエッセイです。敦煌遺跡から発見された文書にロマンを感じて、それを一冊の長編小説にまとめたこともある著者らしい感性が、率直に示されているように感じられます。

  •  この小説は、普通の小説とは形態は違います。
     この小説が、発売するまで著者が取材した芸術家たち個人などを著者目線と取材した当時の政治情勢も交えて書かれています。
     また、収録されている芸術家たちは「河井寛次郎」「荒井寛方」「橋本関雪」「前田青邨」「国枝金三」「上村松園」など多く書かれています。

  • 情報科教員MTのBlog (『忘れ得ぬ芸術家たち』を読了!!)
    https://willpwr.blog.jp/archives/51477312.html

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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