北の海〈下〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.97
  • (21)
  • (23)
  • (23)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 184
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063386

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 四高柔道部の仲間と過ごす金沢での時間が、とてもいいな、と思いました。

    酒も、煙草も、女も、勉強も(!)なく、ひたすら柔道をして過ごす、四高柔道部のメンバー。
    練習量がすべてを決定する柔道。
    練習と、研究。
    人生のある時期を、そんな風に何かに打ち込んで過ごすというのは、とてもぜいたくで、幸せな生き方だろうなと思いました。

    最後、四高に入るために覚悟を決めて、両親のところへ旅立つ洪作の姿が、印象的でした。

    ある意味、このお話は「受験生」向けであるかもしれません。
    目的を成し遂げるために、覚悟を決めて、真剣に学業に取り組む、そこに至るまでの過程の描き方がいいな、と思いました。

    それが、きつきつしてなくて、ゆったりとしているのが、ほんとうにいいです。
    さ、勉強しよう。

  • 『しろばんば』、『夏草冬濤』(なつぐさふゆなみ)、そして本書で自伝三部作となる。井上靖は明治40年(1907年)生まれだから、旧制四高(しこう/現金沢大学)に入ったのは昭和2年(1927年)である。私と同じ旭川出身だとは知らなかった。旧制中学に主席で入学したというのだから元々秀才だったのだろう。主人公の洪作は複雑な家庭環境で育ち、非常に冷めた性格の持ち主となる。ところが受験を控えた時期に蓮見と出会い、春秋の色合いが深まる。
    https://sessendo.blogspot.com/2018/07/blog-post_18.html

  • 学生時代以来の再読。「柔道をやりに来たものと思え。女はないものと思え。いっさいものは考えるな」。無茶苦茶だけどそこまで夢中になるものを得た気持ちはどこかで必要なのだろう。

  • 文豪、井上靖が書いた自伝的小説三部作の最終章にあたる長編小説。実際に読んだのは単行本版。

    おそらく、日本の純文学史上最古のスポ根小説。本作を一言で言うなら、まずこれ。

    親元から遠く離れた地で暮らす主人公、洪作は、なんとか中学を卒業するも高校には受からず、浪人としての日々を柔道に費やして過ごしている。ある日、中学の道場に柔道の強豪高校からの選手が練習にやってくる。洪作は彼が実践する『練習がものを言う寝技のみの柔道』や、彼の所属する高校柔道部のことを見聞きするうちにその魅力に憑かれはじめ、あこがれを確かめるためにその柔道部の夏季練習に参加する。って感じのお話。
    登場する高校は四高といって、金沢の高校(現在の金沢大学だったかな)なんだけど、現実でもクッソ強かった柔道部を擁立していたらしく、この小説は今でも柔道好きたちのバイブル的小説なんだとか。それもそのはず、ストイシズムに骨の髄まで浸かって、頭空っぽにして受け身を取りまくれ、なんつー時代錯誤な標榜を徹頭徹尾根底に敷いてある小説だもの。四高柔道部の連中は気のいい仲間である節はあるけれど、みなどこか一匹狼な風格を漂わせている。人との関わりにうつつを抜かしていたら、強くはなれないんだろうね。爽やかさ、というには暑苦しすぎるが、荒涼とした距離感に気持ちよさを感じる。

    あと、随所に「とんぼ」って表現が出てくるんだけど、それをおっかけると面白い。自分勝手だけど憎めないところがある主人公の魅力が、この言葉に集約されている。

    脇目も振らず何かに打ちこむことのかけがえのなさ、これだよ、この小説は。

  • 下巻も四高に入学するところまで行かずに、というか受験勉強すら最後の数ページ迄しないまま終わる。四高のシーンは夏合宿に参加するだけ、と。
    柔道をするためだけに大学に入る。しかも、全国大会とかではなく、関係者以外誰も知らない七帝。アホの極みというか、なんというか。
    宇田先生といい、食堂のお内儀さんといい、主人公の世話に巻き込まれる群像がいい味出し過ぎていて、何とも言えない名作です。

  • きっかけは「七帝柔道記」。
    それほど柔道柔道していなかった。
    洪作の人柄には魅かれるモノがある。
    「しろばんば」「夏草冬濤」を早々に読まねば。読みたい。

  • 『しろばんば』『夏草冬濤』ときて三部作の最後。高校に入るまでの浪人生活。今まで何にも風来坊だった洪作が、柔道という打ち込める物をみつけ、それによって今までとは違った仲間と出会う。
    ちょっと大人になった洪作です。

    細かい描写はどちらかというと少なめです。
    三部作の中では夏草冬濤が一番好きですね。

  • これを読んで日本海へ行きたくなった

  • 07.6.7

  • 終わった〜!10代で挑戦し挫折した井上靖の自伝的三部作を読破。この下巻でも会話がイキイキしてて、特に洪作が宇田に台湾行きに関して一札とられる場面は面白すぎてニヤけてしまった。全作通し、なんて靖氏は昔をよく覚えておられるのだろう!と感嘆しながら読み終えたら、本作の解説を読んで、ガ〜ン・・・「『坊ちゃん』を漱石の自伝小説と思うのは、よほど単純な人間観と文学感を持った読者だろうが、井上氏の三部作、ことに『北の海』を作者の自伝と思い込むのも同様のことである。」(by山本健吉氏)
    言い訳をすると、洪作が実在したことを願いたくなるような思いが「井上氏=洪作」という錯覚を起こしたのでしょう・・・素直にモノを受け入れ感じ入るところが魅力的であり、別の見方をすれば欠点でもあり、そのことに本人は気付いていない・・・そんな洪作に恋心を抱くれい子の気持ちが、なんだか分かるのです。ついつい世話を焼くはめになる宇田先生タイプに自分は近いと思ってたけれど、こんなに洪作のスタイルに魅かれるのは自分自身にもどこか洪作的なところがあるのでは?と思ってしまいました。
    そして、年齢を経ると同じ物語でも違った見方ができるという通説にものすごく納得できた、良い経験ができたかも。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

井上 靖(いのうえ やすし)
1907年5月6日 - 1991年1月29日
北海道旭川で生まれ、天城湯ヶ島、三島・沼津で18歳まで過ごす。その時代までのことは『しろばんば』をはじめとした「自伝的小説三部作」に詳しい。金沢の第四高等学校(現・金沢大学)で詩作を始め、京都帝国大学を卒業後大阪毎日新聞社に入社。
小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950年デビュー。現代小説、歴史小説、エッセイ、自伝的小説、シルクロード西域関連の作品、詩集など創作範囲は多岐に及ぶ。主な代表作に、『風林火山』『氷壁』『天平の甍』『おろしや国酔夢譚』などがある。
1964年日本芸術院会員に。同年『風濤』で第15回読売文学賞、1980年菊池寛賞、1985年朝日賞などをそれぞれ受賞。1976年には文化勲章も受章しており、多数の受賞歴がある。

北の海〈下〉 (新潮文庫)のその他の作品

井上靖の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
川端 康成
村上 春樹
三島 由紀夫
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印

北の海〈下〉 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする