- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101065021
感想・レビュー・書評
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スタンダールやラディゲのオタクによる,恋愛心理の分析の教科書。話の筋は通俗の域を出ないが,さまざまな自然描写や独白により上品な仕上がりとなっている。あまりに観念的で分析的な読み方を強要されるのが難ではあるが。
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話の流れは好きだが、とにかく心理描写が読みづらいの一言。
この海外文学の手法を文学的に楽しめるか否かは分かれると思うが、まどろっこしさを感じてしまう人は一定数いそう。 -
戦後の時代背景に書かれている物語だが、変わらず現代でもある展開。
結局、人とのかかわりはなにかのことでこ
じれていってしまう。
それがいつの世もドラマや小説の種になる。
古い感じを乗り越えて、二組の夫婦を眺めてみて初めておもしろさがよりますと思う。 -
(01)
ハンパねえ,とも感嘆できそうな支離滅裂と,その分裂をパラノイア(*02)の様に論理的な心理描写で綴り,一歩一歩を綱渡りの様に慎重に繋げていく筆致には驚嘆もさせられる.
パンパンの時代ともいうべき敗戦直後のパンクした世相の中で,2組の夫婦が1人の復員兵によって壊されていく,その舞台が焼野原となった帝都の心部ではなく,リアルな野原と畑と雑木林の武蔵野であるというところに本書の壊れ方の凄まじさがある.
(02)
執拗な筆は,武蔵野の地誌に及ぶ.復員兵の眼を借りて,またその不倫相手の父の書籍を籍りて,盛るようなマニアックさで,地質,地形(*03),植生,動物相が記述され,心裡のレイヤに重ね合わせられる.
ところが,野川や水への固執に代表されるこの変態は,本書に触れられているとおりビルマでのサバイバルな戦争体験,今風に言えば従軍を契機とするPTSD,またその飢えや乾きに由来するが,人跡としての道(道子)や水路,鉄路や航路についても「眺め」は及び,その離人的(*04)パースペクティブが結語の「怪物」に帰ってくるという理窟になっている.
(03)
「はけ」に伴う身体の上昇と下降は,一章が与えられた蝶の飛翔とシンクロナイズされるが,これは「恋ヶ窪」や「狭山」の高いとも低いとも言い難い水源にも響く上下運動である.
その中で丹沢山系の上に見出される富士山も本書における重要な象徴をなしている.復員兵にとって破壊作戦上のベースキャンプ,滅裂心理上のベンチマークに位置付けられた富士山であったが,終盤で「蟹」と対比されるのが,興味深い.この蟹はいったいどこからやって来た蟹であろうか.怪物,水,海,湖とも連関する蟹の象徴はどこから来たのか.
「はけ」が入り組みである谷戸に住まう夫婦は,あるいは巣穴に巣食う蟹とも目されるのかもしれない.もちろん地質的には飛躍があるが,富士山の潰れとしての,丘陵や野の問題として印象されるマークである.
(04)
これは著者らしい自虐の史観(私観)にも関わる問題である. -
2017年7月6日読了
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大岡昇平の作品は実はこれが初めてだったが、意外や意外、すらすら読めた。
昼ドラのようだが、そうではない。
登場人物達の距離感が好きだなぁと思った
のは覚えているが、細部を大分忘れてしまった。
再読しよう。 -
1951年(昭和26年)第4位
請求記号:Fオオオ 資料番号:010672756 -
やっぱり私には大岡昇平はわからない
文章は好き
夫、人妻、そして復員したばかりの不良学生の織り成す「昼ドラ」は、共感とか同情とかいう想いを抱かせるのには程遠い(私にとっては)
皆がみんな自分本位に行動していると思った
あと、「誓いは神の前でするものだ」という言い回しが、「野火」の教会のシーンとリンクするものを感じさせた(考えすぎかもしれない)
戦前と戦後について考えながら読もうと思ったけれど、私はまだまだそういう分析的な視線では小説を読むことができないようです
授業について行けるかなー……