湿原 下巻 (新潮文庫 か 7-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101067056

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  • 雪森厚夫の無実を信じる妹の陣内末子の紹介で、新人弁護士の阿久津純が雪森の弁護を引き受けることになります。ただちに雪森のアリバイを調査し、決定的な証拠を入手しますが、検察側は雪森たちのアリバイを突き崩そうとやっきになり、激しい法廷闘争が始まります。

    そんな中、雪森は自分の真実の姿を知ってほしいと、和香子に向けて『告白』というタイトルの手記を書き続けます。獄中で綴られた彼の手記には、厳しい環境と自分自身の意志の弱さのためにたびたび犯罪に手を染めてきた雪森という男の、純朴な人柄が現われていました。

    10年という歳月が流れ、ついに二審で無罪判決が下されます。しかし、獄中の生活のために勇吉は精神を病み、守屋たちは出所後ただちにセクトの対立に巻き込まれて命を落とし、雪森と和香子は2人で根室をめざしていきます。

    雪森の手記に彼の人物に関する十分な説得力を認めるかどうかが、この長編作品の評価を分けるように思います。

  • 年齢も生い立ちもまったく異なり、片や再犯の連続で刑務所と娑婆を往き来し、それでも更正の兆しが見えてきた男と、片や上流とおぼしき家庭で育ちながらも精神の安定を欠き、確たる信念もなく学生運動に加わる女。現実的でない恋愛がいつしか成立し、その後あり得ない嫌疑をかけられたふたりは冤罪を被る。加賀さんらしいテーマのもとに、加賀さんらしい展開で没頭させられた。過激派組織や拘置所といった社会の湿原に心ならずも引き込まれていく犯罪者と精神病者をこれほどまで魅力的に描くのはさすがだ。

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著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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