永遠の都〈7〉異郷・雨の冥府 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101067131

作品紹介・あらすじ

終戦の晩秋、悠太の母初江とふたりの弟が疎開先の金沢から、延焼せずに残ったわが家に帰ってきた。悠太は都立高校に進級、弟たちも六中に編入、彼らの新しい生活が始まった。昭和21年9月夏江の出産、翌22年5月晋助狂死、翌月利平病死、五郎は夏江に手紙を残し自殺。初江は娘の央子のパリ留学に晋助の夢を託した。永遠の都・東京に生きる一族の戦争と平和を描く自伝的長編小説の完結。

感想・レビュー・書評

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  • 全7巻の長作をやっと読了。
    その長さや複雑さからから、軽い気持ちでお薦めできる作品ではありません。
    が、それらのとっつきづらさを乗り越えたなら、最後に必ず大きな感銘を受けるはず。この本を読むことは人の一生というものを腰を据えて考えること、とも言える気がします。
    哀しい晋助の末路、悠太と五郎の善人と悪人についての問答、利平の生涯の幕引き、そして最後の夏絵に宛てた五郎の手紙。この最終巻には特に引き込まれる場面が多くありました。

    もし菊絵が亡くなったときに利平がいとと別れていたら?
    もし初江が晋助と恋をしていなかったら?
    もし五郎が虐待されずに育っていたら?
    もしこの時代じゃなかったら?

    読後もたくさんのもしもの可能性を思い、思考の海に沈むことがしばしば。
    人の気持ちの移り変わり、数多の出来事を越えて全くユニークな、その人固有の人生が形作られることの貴重さに改めて想いを馳せました。

    他には大人が綴ったとは思えないリアルな悠太の回想や、戦火の描写の躍動感には特に感じ入りました。
    美しいこと、汚いこと。全てを濁さず流さずどこまでも突き詰めて文という形にした、筆者の細やかな視点と強い精神力に敬服します。

  • 02.6.9

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著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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