宣告 中 (新潮文庫 か 7-15)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101067155

感想・レビュー・書評

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  • 本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    死を宣告されて独房で過ごす青年の、苦悩する魂の劇を描く、極限の〈愛と死の物語〉。
    T大を卒業した楠本他家雄は、自堕落な生活を続けた挙げ句、バーで証券会社の外交員を絞殺する。その楠本は拘置所に入ってからカトリックに回心し、彼の手記に感動した心理学を専攻する女子学生と親密な文通を始めていた。淡々と過ぎて行く日常のなか、連続女性暴行殺人犯の砂田の死刑が執行される。死を宣告されて独房で過ごす青年の、苦悩する魂の劇を描く〈愛と死の物語〉。全三巻。

    ---引用終了


  • 作品の中心となる死刑確定者・楠本の青年期から犯行、逮捕に至るまでが、破滅的で暗黒な心理描写を交えとんでもない濃度で語られる。
    宿直の医官達の微妙な人間関係やジレンマ、確定者達の生きるモチベーションや心の動きなど、伝えられる情報はとにかく多岐に渡り、ただただ息を呑む。

  • 主人公?はこんな悪いやつだったのか、というのがわかる。矯正にいたこともあるので、拘置所の医療については非常によくわかるイメージで描かれている。Ganser症候群でどたばたしたら当直中に自殺騒ぎ、というあってはならないことだがあるかもしれない展開。休むヒマもなく読み応えも重たい。


  • 前半は太宰治の人間失格を思わせるような、他家雄の手記。太宰治と違うところは太宰治が純粋な『善』であり、他家雄は純粋な『悪』であることだろう。純粋な『悪』とは、彼の堕落した生活と殺人の動機には全く反省の色が無く、それらは思いつくまま自然に行われた生理的なものだったからだ。『悪』と理解できずに世間とのズレに苦しみながら生きる、その真面目さ不器用さは、曲がった幼少期のまま歳をとってしまったからだろう。

    後半からは動きがあり、近木医師や各死刑囚の模様を描き、淡々と時が立っていく中に日常の少しの変化と出来事が重なっていく。時は誰にでも平等に残酷に過ぎていく。

  • 近木精神医や楠本死刑囚と文通する女学生とのなにげない接点、学生運動に絡めた若者たちの理論…色々な関係者が登場してくる中巻です。

    しょうがないとは思いますが、ちょっとダレてきますね。

  • 長いんだけど読みやすい。臨場感があっていつ死刑の宣告が来るのか自分までびくびくする。死刑廃止論者の根拠がよくわかる。

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著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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