サラマンカの手帖から (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101068053

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  • 短編七作品を収録しています。

    第四話「献身」は、働きざかりに不幸にも病を得て、死に直面しつつある男と、その妹の物語です。少年のころから優れた才能を示し、詩や文学に深い理解がありながらも、アフリカにわたって海千山千の者たちとわたりあってビジネスの世界に精魂を傾けた兄の独白というかたちをとっていますが、そのなかにしばしば彼を見守る妹の心理が挿入されるという実験的なスタイルで書かれています。

    第五話「洪水の終り」は、フランスの大学でおこなわれる夏期のセミナーのために日本からやってきた男と、おなじセミナーに参加するためにワルシャワからやってきたテレーズ・モロツカという若いユダヤ人女性との物語です。さまざまな国からやってきた学生たちの、ときに羽目を外した交流が描写されるとともに、テレーズの精神に刻印された第二次世界大戦の傷痕が引き起こした悲劇がえがかれています。

  • 商品の説明
    スペインの古い町サラマンカに、人生の安らぎを求めて旅する男女の心理を描いて静かな感動を呼ぶ表題作。死の床にあるランボウと彼を看取るその妹の独白をとおし、史実と想像力を総合させた手法で、放浪の詩人の生と死を浮彫りにした「献身」。流れゆく現実世界の奥に潜む人間の生の本質を追求したこれら短編小説7編は、著者自身の西欧体験の中から生れた作品群である。 (解説頁・菅野昭正)

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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