麦ふみクーツェ (新潮文庫)

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レビュー : 289
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069227

感想・レビュー・書評

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  • 【246】

  • 今思うと笑っちゃうけど、幼稚園児の頃だと思うけど、よく押し入れに閉じこもった。真っ暗な中で何してたんだろ?よく思い出せないけど、何だか想像上の自分の世界を作って、そのなかで、誰かに話かけたりしていたような、ぼんやりとした記憶がある。親でもない、兄弟でもない、現実の友だちでもない“その誰か”と、心のなかで話続けていたような・・・

    この物語の主人公の「ぼく」は、その生まれもった体格などから、小学校で同級生や先生から何となく「へんてこなもの」として遠ざけられる。それは、最初の方は、ほとんど独り言だけってことからもわかる。
    そんなとき、ぼくは屋根裏で「へんてこなひと」に出会えるようになる。とん、たたん、とん、という足ふみの音とともに屋根裏に現れる“クーツェ”にぼくは、いろいろと話かけるようになる。でもクーツェの答えは謎かけのようなものばかりで、ぼくもわかったような、わからないような、という毎日を過ごす。

    そうするうちに、主人公を取り巻く、おじいちゃんや父さんや、町のたくさんの大人たちのいろんな“事件”に巻き込まれていき、おじさんや先生や女の子という、他人からは見たら「へんてこ」と見えるかもしれない人たちに出会い、彼らに対して自分を不器用ながら、自分の言葉で伝えようとすることで、「へんてこ」は実は「へんてこ」じゃなく、ある意味輝きをもったものだってことが少しずつわかり始め、それが彼らやまわりの多くの人の共感となって広がり、ぼくは、すごい「仕事」をなしとげることができるまでになる。

    最後に、ぼくは、おじいちゃんが生まれた土地を訪れる。ぼくはもう、自分の体格や生い立ちで卑屈になったり自分の殻に閉じこもったりはしない。自分のルーツを確かめるかのように、ぼくはクーツェがしていたように、自分で足をあげて大地を踏みしめる。その時、ぼくはクーツェに会いに行く必要はなくなっていた。
    (2010/2/28)

  • 表紙とタイトルに惹かれて読んでみましたが、最初でくじけ
    ました・・・意味がよく分からなかったです。
    いしいさんの本は「プラネタリウムのふたご」もそうでしたが正直私の頭では理解できないです。
    高評価ですが、ごめんなさい。
    表紙だけの評価として★3つで。

  • 思ったよりスケールの大きな物語。
    人の死や「やみねずみ」、悪意、硬直化した心など、目を背けたいものもしっかり描かれている。

    「ねこ」と呼ばれる大柄な少年と、数学者の父、自称ティンパニ奏者の祖父。
    物語の後半はねこがそんな家族のもとを離れ、成長していく。
    そこから物語のテンポがよくなってきて、だんだん読むのが楽しくなっていった。
    そこで「クーツェ」が何者かがもわかる。

    この本は十年位前、当時十代だった知人に教えてもらった本だ。
    私もその頃読んでいたら、もっと多くのものを感じとれたかな…。

  • 読むのに時間がかかった一作。
    前半があまりに暗くて辛い。
    その分後半があったかくて幸せ

    へんてこはあつまらなくちゃ生きていけない
    へんてこさに誇りを持つためにわざを磨かなくてはならない

    この言葉で星が2つ増えた

  • 再読。体は大きいけど虚弱、猫の鳴きまねが得意で指揮者の勉強をしている「ねこ」、変わり者の数学教師のお父さん、町の楽団を指導しているお祖父ちゃん、スクラップが趣味で作曲もする用務員さん、切手収集が趣味の郵便局長さん、その妹でねこを下宿させてくれる料理上手なおばさん、盲目の元ボクサーちょうちょおじさん、その親友の盲目のチェロの先生、娘のみどり色、どのキャラクターも優しく魅力的で、本筋とは無関係なちょっとしたエピソードに、ふいに涙が出そうになる。ブラッドベリの「霧笛」を思わせる恐竜、色の名前のついた三匹の盲導犬、水夫とオウムなど、動物がらみの挿話も好き。変人のお父さんがどうしてオムレツだけ上手に作れるのか、最後の最後でわかったときにグッときました。

  • 完全な空想の世界。
    とてもあったかい想像に支えられた、不思議な世界の話です。
    色々な事に傷つきながら、色々な人に出会いちょっとずつ成長していく主人公が素敵です。
    何があっても自分なりの一定のリズムでまえに歩いていく、そんな生き方をしたいです。

  • 独特の世界だった。読み進む内にこの世界にはまってしまう。最初意味の分からいクーツェの言葉が奥深いってことに気づかされる構成がすごい。

  • 素敵な素敵な童話


    いいこと わるいこと みんなおなじさ

    大きい小さいは距離の問題

    へんてこはじぶんのわざをみがかなきゃならない

  • 小学三年生の夏、ぼくは、海辺の町に住んでいました。
    自転車や物干しの金具はあっという間にさびつくし、お世辞にも綺麗な海じゃなかったから、
    潮風のにおいは清々しいものとはあんまり言えなかったかもしれない。

    だけど、テトラポッドに登って、遠くの方を眺めていたり、
    どこかから流れ着いた得体のしれないごみなんかがテトラポッドに
    挟まっているのを観ると、空想が広がって、世界はとても広いものだ、と思ったりしていました。

    その夏は、毎日、図書館に通いつめて、司書の人に顔を覚えられるくらいに
    本を借り続けて物語の世界に浸っていました。

    本そのものとはあまり関係はないのだけれど、
    麦ふみクーツェを読むと、ぼくはそんな頃を思い出します。

    良質な物語は、その人の心の面積をほんの少し拡張してくれる気がします。

    主人公はねこと呼ばれる少年で、彼は誰よりもうまく猫の鳴き声を真似することができた。
    彼はものすごく大きな体を持っていて、母親が亡くなってしまったのも、
    大きな体の自分を産んだからだと思っています。

    彼はある日、自分にだけ聞こえる麦ふみの音を聞くことになります。
    とん、たたん、とんというリズムは物語を通して響き続けることにもなる。

    お父さんは数学の美しさにに魅せられた変わり者、
    おじいさんは吹奏楽の王様として、ティンパニを操りながら、
    港の倉庫で街の人たちの吹奏楽団の指導役をしている。

    この作品にはへんてこなひとたちばかりが登場します。
    お父さんは数字に取りつかれ、おじいさんは音楽に取りつかれている人たちだし、
    目の見えない元プロボクサー、玉虫色スーツのセールスマンや、
    色盲なのに、みどり色と名付けられた女の子などなど。

    へんてこな人たちは、そのへんてこさ故に、目立ってしまう。
    でも、へんてこさを持った人たちは、そのへんてこさを磨いていくしかないのです。
    それが、へんてこであるということに誇りを持てるたった一つのことだから。

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著者プロフィール

いしいしんじ
1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。
2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、
16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。
そのほか『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『四とそれ以上の国』『海と山のピアノ』など著書多数。
趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2019年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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