ポーの話 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101069289

感想・レビュー・書評

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  • memo:

    ちょっとのことだけはさ、大切にね、他のひとがやらないくらいていねいに、やらなくちゃいけない、って気がするんだよ

    そういうのは、てりかえしです。ゆびはさんだり、ころんだり、そんなのいくらでも、まちがうのです。ポーのいちばんふかい底で、まちがったことをしないのが、だいじなんですよ。

    ポーのきもちがほんものなら、並べた石ころだって、ほんとうの花

  • うなぎ女の子どもとして生まれたポー

    人よりも泳ぎがうまくて、コミュニケーションがうまく
    とれなくて、格好も不格好

    自分が何のために生まれてきたのか
    大洪水が街を襲った夜、それをさぐるための旅に出る

    長ーい長ーい河を泳ぎ、さまざまな人との出会いや別れを経験し
    ついに大海へたどりつくポー

    ポーが悟った自分の使命とは

    優しくて残酷で切ないお話です。

    この世の生命は何のために生まれてきたのか
    自分はどう生きるべきかを考えさせられます

  • この作品にもう一つのタイトルをつけるなら、「裏返り」。そもそもポーは、泥川が裏返ったものとして生まれてきた。それが海へと至ってさらに裏返り、うなぎへと変化するいわば変身物語。ダンテの『神曲』やメルヴィルの『白鯨』などへの目配せも含みつつ、本作はけっきょく、あらゆるものを裏返らせる動力としての母なる「空」について描いているのではないか。その点、仏教的物語でもある。

  • ポーが出会った色々な人達が個性的で面白い。
    長い話に少し疲れも感じたが、後半になると情景がリアルに想像できるようになった。
    童話っぽさがまたいい味を出していると思う。

  • 最初はなんだかとっつきにくかったのです。真ん中に泥川を挟んで醜いものもきれいなものも一緒に流していく泥の川。最初は汚いもの醜いものだけが目についてしかたなかったのですが、第二部までくると少しずつ面白くなっていきました。途中でやめなくて良かった。

  • もうーー本当におもしろいですね‥。童話といっていいのでしょうか。たぶん童話です。童話好きですうう。
    ポー。ポーはかっこいいし、あまりにも動物だし。川と泥とうなぎの話です。
    舞台は中世ヨーロッパあたりかなと思います。蒸気機関とかはまだない感じがします。
    モデルになった土地があるのか気になります。たぶんないけど。
    川を遡って行くポー。きれいで純粋な話です。

  • 物語作家いしいしんじの面目躍如、次から次へと物語が紡がれ広がっていく。善も悪も綺麗なものも汚いものも、何もかも飲み込んで物語は流れていく。
    今まで読んだいしい作品の中で最もアクが強く毒も強い作品かも。しかしアクや毒が強いほどに純粋なるものも光り輝くんですね。ポーという少年がその象徴的存在として、寓話的に扱われています。そのため物語の意図は読み手に委ねられているかのような印象を受けました。

  • うなぎ女から生まれた人間でも魚でもないポー。
    真っ黒い体と裏腹に真っ白い無垢な心を持っている。

    やがてポーはうなぎ女のもとを離れて、
    悪も善も感情もたくさん吸収して、たいせつなものを知る。

    メリーゴーランド、ひまし油。
    天気売り。
    犬じじいと少年、子供。
    埋め屋の旦那と鳩レースの女房。
    海岸の老人たち。
    うみうし女。

    ポーが出会うすべての人がいかにも人間らしくて、いとおしくて、頭から離れない。
    寂しい気持ちにもなったし笑ったし悲しくもなったしうれしい気持ちにもなった。

    少し長いけど、読んでみて欲しい作品。
    なんというかうまい言葉がわたしには見つからないので、それを読んだ人それぞれで感じ取ってもらいたいです。

    いしいしんじさんを読むのは初めて。
    もとはプラネタリウムのふたごをよみたかったけど、本屋になかったので買ったのがポー。

    とにかく情景の描き方が誰よりもドラマチック。

    好奇心の昼間と、悪事を隠してくれる夜。
    きらきらした昼間と、考え事をする夜。
    泥臭い昼間と、空の深い静かな夜。

    色えんぴつで描いたような、すべてがこの世界だからこそあるものだなと思った。

  • 良いことも悪いことも全部、この世は美しい。
    独特の文章と世界観、少しクセがありますが、深い愛に感動します。

  •  泥の中でうなぎを捕まえる「うなぎ女」たちの子どもとして生まれた少年ポーが、数百年ぶりの大雨のなか川を流され、いろんな場所やひとに出会って別れて、また生まれた泥の中に還ってゆくおはなし。

     いしいしんじの作品というのは、どうも、やさしすぎて残酷というか、ぬるま湯でゆっくりと絞殺というか、安寧と絶望がお互いを認識しないまま同居しているというか、そういう表裏的な、生と死が弧を描いているさまがあっさりと描かれていて、読み終わって直後は気持ちが動揺します。
     ぐらぐらするわりに「ああそっか」と思える。どうすれば……と思うけれど回答は示されてる。

     あがなうこと、つぐなうことに対してとてもまっすぐで、最後のほうはずっと「うあああぁああぁ」って言いながら読んでいました。きつかった……。今までのいしい作品のなかで一番きつかった……。

     ポーが無垢で、真っ白すぎて善にも悪にも染まることができて、それでいながらどちらの味方にもならない、良い意味でも悪い意味でも「子ども」であったことが大事すぎてたまらないです。
     あともうひまし油がいとしくてならない。メリーゴーランドも相当だけれど、彼女も充分に歪んでいて、それが少しでも真っ当な方向に向かうことが出来たならと思うともう。幸福になってほしいです。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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