てんやわんや (新潮文庫)

  • 新潮社 (2000年8月28日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101073019

感想・レビュー・書評

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  • 獅子文六と井出孫六が何故かごっちゃになっていて、
    こういう小説書くんだー、と思っていたら
    全然違う人だった。

    元祖「吉里吉里人」みたいな言い方をされることもある作品だが
    テイストは全然違う。
    っつうか、こっちの独立騒ぎは机上の空論ですらあり得ない、
    ただの願望レベルで、全く何も進展せずに終わってしまう。
    共通点は
    うだつの上がらない人物が主人公、というところくらいか。

    それにしてもこのラストはビックリした、色んな意味で。

  •  わたしのブクログは「分速2ページと、ちょっと」(※文庫本)というタイトルになっているが実際はもうちょっと速くなっているかなあと思う。でもめんどうなので変えないでいる。
     速読というほどじゃないけど、すばやく読むことを妨げるもの、それが方言。文章を脳内でいちいち音声化しないことが、本を速く読むコツらしい。しかし方言は、その独特のイントネーションをつい想像してしまう。
     とくに、われらが愛媛弁(伊予弁?)というやつは、なじみ深いだけにリアルに再生される。それがどうにものんびりした方言なので、なおさら読むスピードは遅くなるわけだ。まあそれが正しい楽しみ方だと思っているので、一向に構わないのだけど。

     愛媛弁満載の小説『てんやわんや』は、愛媛県南部の旧岩松町(その後津島町となり、現在は宇和島市の一部らしい)をモデルにした「相生町」が舞台となっている。敗戦直後の混乱のさなかでものどかで、人々も純粋だ。なかなか好意的に描かれていると思うのだが、しかし、今では愛媛県民からもだいぶ忘れられているというか、もはや知らない人のほうが多い作品だと思う。わたしもなんとなくそんな作品があるってことくらいしか知らなかった。
     同じく愛媛を舞台にした小説といえばなんといっても漱石の『坊っちゃん』だが、それとは違ってこの作品は埋もれてしまっている。(わたしは運よく図書館で借りられたが、某密林では中古品がハードカバーみたいな値段に跳ね上がっていた。)
     もっと、愛媛県民にこの作品を大事にしてほしいと思った。明治時代の松山をケチョンケチョンにこきおろしてる『坊っちゃん』はいつまでもありがたがってるくせに、戦後まもなく書かれた『てんやわんや』は、ほとんど忘れ去られている。なんてもったいない。すげえ面白いのに。

     主人公の犬丸順吉は『坊っちゃん』の「おれ」とは真逆で長いものに喜んで巻かれるタイプ。調子がいいけど憎めないヤツで、先生と呼ばれたりドッグさんと呼ばれたりしている。むしろ、坊っちゃんみたいな直情径行型は、花兵ちゃんこと花輪兵子のほうだろう。
     「相生長者」玉松勘左衛門、大食漢の越智善助、僧侶なのにウナギばっかとってる生臭坊主の田鍋拙雲などなど、個性的なキャラクターがいっぱいで、『坊っちゃん』にも引けを取らない。そうそう、順吉のボス・鬼塚玄三は「狸」と呼ばれている。『坊っちゃん』の校長と同じだ。理由は違うけど。

     そうそう、この作品の越智善助をモデルにした「善助餅」なる和菓子がとてもオススメです。コレ→http://tushima.ocnk.net/product/31
     「トッポ話も懐かしい、ほんとですらい、善助餅♪」
     あのCMが懐かしいなあ。CMでは、善助が食べた餅は50個となっていたけど、作中では小麦饅頭31個とのことでした。なんで50になったんだろう?

     郷土愛がたぎって長くてまとまらない感想になってしまった……。

     当地の方言について興味深い言及があったので引用。津島町ハイレベルだなー。(笑)

  • 戦後間もなく、戦犯の疑いをかけられるかも知れないと、ボスに従って四国に逃げ込んだ主人公。
    やがて四国独立運動に巻き込まれ……

    家も職もなくした、今で言うニートの男が周りの状況に振り回されるドタバタ劇。
    読みやすい文章。

  • 物語の舞台、相生町は、愛媛県津島町がモデル。

    新潮社「日本文学全集 20 獅子文六」で読了。

  • 古本女子の定番、獅子文六を読んでみたら面白かった! 戦後の混乱を避けて四国の田舎町に逃げてきた臆病者の一年。『吾輩は猫である』を女コドモ向けに読みやすくしてあるような感じで、気楽に読めてすごく楽しいです。

  • 東京への気持ちを捨てられない犬丸の疎開先での生活は相生町に馴染む姿や兵子、アヤメとの精神的三角関係に悩み様はユニークであり共感する事もしばしば、獅子文六好きになりました。

  • 敗戦4ヶ月後、戦時中下っ端となれど情報局に勤務の経歴が戦犯になるのを恐れた無産無職の犬丸順吉は、元代議士で社長の鬼塚の命で四国に身を隠し町の長者の食客に。その町は敗戦が嘘の様で食べ物も豊富、風光明媚。四国独立を夢見る町の人達に協力したり。順吉を追ってきた鬼塚の秘書の兵子に以前から心を動かされつつも、一夜の夜伽を受けたアヤメに恋情が募る。この隔絶された町にも近代化の波は押し寄せ農地改革や税金で長者の家も没落気味の所へ大地震が起きる。頼みは自分の身の心境になるも、こういうダメだけど憎めない男の人っているよね。けれど、以前読んだ2作の方が「てんやわんや」していたかも。

  • 宇和島などを舞台とした作品です。

  • 愛媛の宇和島のちょっと下の方。
    へんろ地図を見ていて、この本のことを知る。
    え?てんやわんやって漫才師のことじゃなかったの?てなおバカなびっくりも、読みやすい文章でおもしろくてあっと言う間に読了。
    実際、岩松あたりは誰もてんやわんやしておらず、静かなやさしい町でした。

  • 2009/08/24-08/30
    一色文庫にて260円。
    本を大変きれいに扱う古書店で良い。

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著者プロフィール

獅子 文六(しし・ぶんろく):1893─1969年。横浜生まれ。小説家・劇作家・演出家。本名・岩田豊雄。慶應義塾大学文科予科中退。フランスで演劇理論を学び日本の演劇振興に尽力、岸田國士、久保田万太郎らと文学座を結成した。庶民生活の日常をとらえウィットとユーモアに富んだ小説は人気を博し、昭和を代表する作家となる。『コーヒーと恋愛』『悦ちゃん』『娘と私』『七時間半』など長篇小説の他、『獅子文六短篇集』〈モダンガール篇〉〈モダンボーイ篇〉もある (ちくま文庫)。『娘と私』はNHK連続テレビ小説の1作目となった。『ちんちん電車』『食味歳時記』などのエッセイも多く残した。芸術院賞受賞、文化勲章受章。

「2024年 『父の乳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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