浅草博徒一代―アウトローが見た日本の闇 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101075211

感想・レビュー・書評

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  • 「浅草博徒一代」佐賀純一著。昭和の初め頃の話が読みたくて見つけた本。著者である佐賀氏の診療所に、とある老人が現れる。彼は診察、というか、治らないのはわかっている、ただどうしても辛いときに注射でもしてもらいたいのだ、と言って、度々診療所を訪れることになるのだが、その男、伊知地栄治は、15で女を追って上京し、やくざ者になった人物。一目見てただ者ではない伊知地氏に興味を抱いた著者が、その半生を聞き、本にまとめた、というもの。大正から昭和、そして戦争を挟んで、という時代、その中を生きてきた伊知地氏の生き様は、あらゆるフィクションを超えている。
    混沌とした時代の日本に実在した、いちアウトローの物語。この本に出会えたのは本当によかったが、この本にはさらにもう一つ、素晴らしいストーリーがある。
    実はこの本は、長らく日本では絶版になっていた。そんな本が文庫版で再発されたのは、海を越えたアメリカである騒ぎがあったからである。それはボブ・ディランが、この本の文章を歌詞として拝借している、という盗作騒ぎからであった。僕はその話はニュースでは聞いていたがあまり詳しく追っておらず、読了後文庫版のあとがきと解説を読んで、これこそがその本と知ったのだ。
    盗作騒ぎはそれほどおおごとにならずに終わった。あとがきによれば、佐賀氏は相当数の海外メディアから取材を受けた。そんな中で、BBCのインタビューへの答えが振るっている。
    「ここにカボチャがある。誰もが忘れてしまったカボチャだ。ところが、ある日、女神がやってきて、魔法の杖で触ったら、黄金の馬車になってしまった。黄金の馬車はシンデレラを乗せてみんなの驚きをよそに宮殿へと急ぐんだ。そんな時、カボチャはこう言って講義するだろうか。『女神さん、君はカボチャである僕を勝手に魔法の杖で触って、金の馬車に変えてしまった。こんなことは我慢できない。僕は断固として、君の不正な行為を神々に訴えるつもりだ』私にとってこのカボチャは特別なものだった。しかし日本ではすっかり忘れられて見向きもされなくなっていた。それがボブ・ディランの魔法の杖で変身して、みんながびっくりするような曲に生まれ変わったら、それは奇跡だ。ほんとにたまげている」
    伊知地氏も凄いし、話を聞いて本にした佐賀氏も凄いし、埋もれたこの本にスポットをあてたディランも凄いのだ。そしてこの本を偶然見つけて読んだ俺も凄いと思いたい。というオチはいらないか。

  • 『浅草博徒一代-アウトローが見た日本の闇-』
    佐賀純一 著

    関東大震災に、二度の戦争を経験した明治、大正、昭和初期を生きたやくざの親分伊地知栄治の体験記を、町医者である著者が録音テープから起こした一冊。

    暴力団でも香具師でもなく、やくざの親分。
    当時の下町の町人たちの生活や、軍部の動向など、当時を知る手掛かりとしては大変に面白い。
    敗戦時の玉音放送の際には、国民皆が泣いたなどと言われているが、実際には殆どのものが終戦に歓喜し、手当たり次第、軍部が貯蔵していたものをかっぱらっていったなど。

    満州での当時の状況や、戦争中の凄惨な行いが、べらんめえ調で語られる。
    正に爺さんの戦争体験記や昔話を聞いてるみたいである。

    本書は昭和60年に発刊された作品だが、数十年後ボブディランの引用疑惑で、再び日の目を見ることになった一冊。
    英語版『confessions of a Yakuza』

  • 自分のルールをもつ人は面白い。戦後のどさくさで儲けた人の話などあったが、サブタイトルにある「日本の闇」はそれほど感じず。
    この手の本は語りたいことや自分の見せたい姿を作るように語られていることは注意しなければいけない点だろう。
    ちなみに、この本の一節をボブディランが歌詞に引用しているとのこと。

  • 大正から昭和にかけて生きた浅草界隈の賭場の親分さんの一代記。本人の話もいいが、ディケンズっぽく挿話で語られる別の人物の物語がまた面白い。親分はやくざの決まりごとの中でまっとうに(?)生きているけれど、もっとアウトローな世界で生きている人たちの目はとても冷めていてとても孤独だ。そっちのほうにぞくっとした。

  • ボブ・ディランの歌詞のモデルになったという話から興味を持って。「鬼龍院花子の生涯」にも通じる、昔ふうのやくざの生き方。

  •  
    ── 佐賀 純一《浅草博徒一代 ~ アウトローが見た日本の闇 200407‥ 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101075212
     
    …… ボブ・ディランと日本のヤクザ。ある詩をめぐる、不思議な関係
     浅草のヤクザ・伊地知 栄治の一代記「本人は寝ている」
     
     伊地知 栄治  ヤクザ 191,‥‥ ‥‥   19‥‥‥ ? /
     佐賀 純一 医師・作家 1941‥‥ 茨城  /「先生は寝ています」
     Dylan, Bob      19410524 America /20161013 Nobel Prize「本人は寝ている」
    https://www.buzzfeed.com/satoruishido/bob-dylan-asakusa-yakuza?utm_term=.hiwdO3zPO#.xsd1o74Mo
     
    http://booklog.jp/search?keyword=%E4%BD%90%E8%B3%80%E7%B4%94%E4%B8%80+%E6%B5%85%E8%8D%89%E5%8D%9A%E5%BE%92%E4%B8%80%E4%BB%A3&service_id=1&index=Books
     
    http://twilog.org/awalibrary/search?word=%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%B3&ao=a
     
    (20161030)
     

  • 本好きの人なら誰でもさうだと思ひますが、わたくしもこれまでは興味のある本はとりあへず購買し、しかし読書速度は購入頻度に追ひつかず、それでも買ひ控へをすることなく、勢ひそのまま積読となる書物が数多くあるのです。
    しかも必ずしも購入した順番に読む訳ではありません。後から購入した本がより興味を引く内容ならば、先輩書籍を差し置いて先に繙くことになります。結果、積読本は増えこそすれ減ることは無く、中には最大で購入後38年経つても未読の本が我が家にはあるのでした。

    この『浅草博徒一代』も、さすがに38年とは言ひませんが、購入後12年近くに達してゐました。このたび、やうやく読んでみて、激しく後悔したものです。もつと早く読むべきだつた!
    いやあ、とにかく面白いの一言であります。しかし「面白かつた」だけで終ると、白痴的な感想文になるので、少しだけ蛇足を。

    著者の佐賀純一氏は、本職は医者なんですが、作家活動も旺盛であります。どうやら聞き書き形式の作品が多いやうですね。さういへば本書も同様でした。
    或る時、佐賀先生の診療所に、背中一面に刺青を入れた老人がやつてきました。佐賀さんはこの男に「ありきたりの言葉ではとうてい言い尽くすことのできない不思議な魅力」を感じ、診察と治療を引き受けたのであります。男の名前は伊地知栄治、1906年生まれ。
    次第に二人は親しくなり、佐賀さんは伊地知の家に招かれるほどになりました。そこで話される伊地知の半生が、ひどく佐賀さんの興味を引き、結局かういふ一冊が誕生した訳です。

    15歳の時に「お佳」なる女性に出会つたのが、アウトロー人生の始まりでした。以後やくざの世界に入り、裏街道を歩くことになります。バクチ打ちとして生きることになり、「出羽屋」の親分に預けられました......

    当時のやくざは、暴力団とは違ひ、その資金源は専ら賭場の上がりでした。変な副業(?)などはしなかつたさうです。ゆゑに賭場の客を大切にし、映画やドラマみたいに、負けて身包み剥がされて裸で追ひ出されるなんてことはあり得ないとか。同様に、いかさま博奕なんかはとんでもない。
    とにかく、地元の住人たちから悪い評判が出ないやうに、当時のやくざは腐心してゐたらしい。
    大正から昭和戦後にかけての、ドサクサ時代。間違ひなく、ここにはもう一つの現代史があります。「正史」だけでは歴史は語れないなあと強く感じるのであります。

    伊地知栄治の話は、聞けば聞くほどその先を知りたくなる痛快なものです。伊地知以外の登場人物もユニイクなキャラ揃ひ。あまりに面白いので、これは佐賀先生の創作ではないかしらんと疑念を抱くほど。
    教訓としては、「気になつた本はさつさと読め!」ですね。
    デハご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-632.html

  • 友達に借りた本だけど、自分の本棚にも欲しい一冊。
    日本の戦前のヤクザ家業がどういうものだったのか、初めて知りました。ヤクザは、もともとは賭場を仕切る人たちだったようです。賭場は法律で禁止されていたから。女を扱う娼館などは、むしろ商売人だったのか。あと、クスリ(ヘロインなど)は簡単に手に入ったから、その辺を取り仕切ることもなかったようだ。
    このヤクザのおじさんは、昔の映画にあるような、仁義とけじめ、決まりごとに拘束された社会の一員。たぶん、戦前の日本は社会のどの部分もそういう風に動いていたんだろう。
    それが、どういう経緯で現在の「暴力団」なんていう形になって、社会からつまはじきにされる犯罪組織になっていったんだろう。いろいろ興味をそそられる一冊であった。
    自分の知らない新しい世界の入り口になる本だったね。

  • ボブディラン盗用作品で有名

  • ボブ・ディランが歌詞に盗用した!?ということで話題になった本作ですが、そんなことは別にして文句無しに面白い。

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