田舎教師 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101079028

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  • 5月13日『花袋忌』この一冊

  • 志は挫け恋にも破れた主人公の孤独の心情、その寂しさをあの手この手で遣り過ごそうとする悪足掻き(友人への嫉妬、生活に安穏とする同僚への軽蔑、日々の労働とは無関係の素人研究への熱中、上級資格の検定試験を受けて何とか成り上がろうとする試み、幼いがゆえに純粋な者たちと接する中に見出す慰め、商売女との仮初の交わり、遠いところへの憧憬、世捨人然とした生活、諦念と沈黙・・・)、それが今までの自分の姿と重ねられる。

    "あゝわれ終に堪えんや、あゝわれ遂に田舎の一教師に埋れんとするか。明日! 明日は万事定るべし。"

    自己の内面に一度でも沈潜してしまった者は、その深淵に比して自らを捕り囲む実生活の尺度が余りに卑小であることに、軽蔑と戦慄を覚える。唾棄すべき俗世の中で何者かとして固定され埋れてしまうことへの恐怖。つまらぬ日常は、それこそ毎日、補給され続ける。

    内的な理念によって自らを吊り支えることも能わず、他者と情愛を遣り取りする合せ鏡の間に自己の居場所を見つけることも叶わず、かといって世俗の汚泥に頭まで浸かりせいぜい実利計算にばかり長けた小賢しい愚鈍の俗物に堕することも潔しとしない。自殺もできぬ、発狂もできぬ、宗教にも走れぬ。せいぜいが、束の間、生理的快楽に孤独を紛らわせるくらいしかできない。

    内的な信念への重苦しい誠実さを抱え続けること、実生活の尺度に合わせて「小さく生きる」こと――ルカーチならば、節制 Haltung と呼ぶだろうか――、如何にしてその折り合いをつけていけるものだろうか。執着か妥協か、何が本当なのか分からない。

    嘗ての教え子である女生徒の中に清三の影が残っていることが、救いだ。

  • 河原の景色、放課後の校舎。
    情景描写がとにかく美しい。
    主人公がずっと鬱々としているので、余計に際立つ。

    どこにでもいる普通の青年。ぼんやりと、このままではイヤだ、都会に行って何かになりたいと思うけれど、経済的に進学できず、家計を助けるために教職に就く。自分の境遇を嘆くターンが長くて苦しい。教師としての自分を肯定できたら、いい先生になるだろうになあ。
    ようやくそれを受け容れて前に進もうとしたところで病に斃れる。ひたすら切ない。

    若いときに出会いたかったような、そうでないような話。若いときに読んだら苦しいだろうなあ。何にもなれない、生きていくための何かを見つけることができないのは辛い。
    いま読むと清三くんが自分の子どもであるかのような気持ちになってしまってやっぱり辛い。

  • 友人知人が前途に希望を持って都会に行き、また日本全体が日露戦争という国事に奔走する中、哀惜や諦念の流露を伴い田舎の一教師として埋もれていく主人公の姿が描かれる。

  • 図書館で。
    田舎(と言うほど田舎でもない気もするけど昔の交通手段を考えると都会と田舎は確実に分かれてたんだろうな)の青年が志だけはあるもののカネもコネも決断力もなく日々暮らし、若くして亡くなるというお話。解説に「たいくつな話」とか書いてあってそこまで言っていいのかなぁとは思ったけれども確かに退屈と言えば退屈なお話。

    知人だか知り合いだかの日記を元に書かれた作品、と解説にありましたがこれ、自叙伝じゃないから面白くないのかも。井上靖のあすなろ物語とか面白かったしなぁ。やはり当事者の出来事でないとどこか他人事というか俯瞰した見方になってしまうのかもな、なんて思ったりしました。

  • やるきがあるのかないのかわからないが、現状に満足しない男がああでもないこうでもないと言う話。

  • 将来に夢と意欲を抱く青年が、自身置かれた境遇を恨み田舎教師の生活を悶々と過ごす。そのうち環境にも慣れ、人や自然と接しつつ病に倒れる。救いは失意のうちでなく、出世のみが人生で大切なことではないと悟ったことか。また、多くの友人知人に囲まれることのありがたさを有志で建てられた自然石の碑から感じる。2016.4.16

  • 田舎に赴任してきたからといって、そこで何が起きるわけでもない。ほのぼのとした教師生活を送り、そして若くしてその土地で死を迎える。そんな平和でもあり物悲しくもあるシンプルな物語に読み入ってしまうのは、やはり時代背景のせいか。

  • ダメだ…田山花袋、まだるっこしい…地元が舞台だし、職業も一緒。興味をそそられたが非常に残念。読み切れない。

  • 縁のある羽生が舞台であるので読んでみたが、夢を追いつつ田舎に埋もれ行く若者の半生の話。だんだんと考え方が変わっていくさまが書かれているが、題名の通りのまさに田舎教師の話だと感じた。ただし、田舎教師はこの時代の一般的な若者であり、日露戦争をどう思っているのか、教師という仕事への評価、その時の文壇の雰囲気、そして、羽生や行田にかけての自然が特に丁寧に書かれていた。
    物語としては退屈なものであるが、その時の時代を良く感じることができる一冊ではあった。

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