クラインの壺 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101080123

作品紹介・あらすじ

ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけでヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることになった青年、上杉。アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、謎につつまれた研究所でゲーマーとなって仮想現実の世界へ入り込むことになった。ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は…。現実が歪み虚構が交錯する恐怖。

感想・レビュー・書評

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  • SF領域なのか、ここまでの仮想現実の描写を
    1989年に書いているのが衝撃!
    バグの多いシステムなのは御愛嬌 笑

    ■自分の眼で見たものだから信じたんだ。自分の身体で感じたことだからこそ絶対なんだ
    ↓その後
    ■どうやって見分ければいいのだろう? 今、僕の見ているものが、現実にそこにあるものかどうかを、僕はどうやって知ればいいのだ?

    今後、我々は仮想と現実の区別がつかなくなるのだろうか?
    作者はきっと未来から来たのだろう

  • もうこれは星5では全然足りない!
    星10つけたいくらい最高だった。

    私が1番好きなのは「没入感が高くて、小説ならではの非日常を感じられて、読んだ後に考えさせられる本」なんだけど、この本はまさにドンピシャど真ん中だった。
    SFミステリーが好きなのかもしれない。

    数ページ読んだだけで周りの音が一切聞こえなくなり、完全に作品の中に入ってしまうくらい危険なほどの没入感の高さ。

    最初から最後まで無駄が一切ない。
    文章が上手いので自分もバーチャルゲームの中にいるみたいになる。
    今までで最速の一気読みで、読んだ後は色々考えてしまって眠れなくなった。
    また寝不足だ。

    1989年に書かれたもので、作家さんの先見の明に驚いた。
    今読むからこそ、この本の怖さがわかる。今読んでもバーチャル技術に古さを感じなかった。

    次は『そして扉が閉ざされた』を読みたい。

    こんなに好きな本に出合わせてくれた皆さんの本棚に感謝します!

  • この世界感を30年以上前に作り出した作家さんの発想に脱帽。
    どこまでが現実でどこからが仮想現実なのか、疑心暗鬼で狂っていく心理描写も良かった。

  •  世界の実在性といえば、最近僕が書いたレビューをお読みの方がいらっしゃったら「オメェまたその話かよ」とか言われてしまいそうだが、本作もざっくり言えばそんな感じ。SFミステリーが大好物だということもあって、読む前からして既に期待度は高かったのだが、読み始めるとページを繰る手が止まらず、思わず一気読み。

     展開自体はVRを題材とするのだからこう来るよねと概ね予想通りではあったが、まずこれが30年以上前に書かれたことに驚く。そして、結末の解釈が読者に委ねられているのが良い。つまり、上杉は最終的にクラインの壺の中に閉じ込められたままなのか、壺の外に逃れているのにも拘らず自ら死を選ぼうとしているのか、という点である。読者が記述を丹念に読めば答えが見つかるかといえば、そうではない。寧ろその逆で、読み返すと余計に、どちらの解釈が正しいのか次第に分からなくなってくる。例えば、「戻れ」という声が最初に上杉に聞こえたのはイプシロン・プロジェクトが上杉のことを騙し始めた(と上杉が考えている)時点より前であり、また真壁が指摘したように『クライン2』の目的をただの玩具だと考えることには確かに違和感がある。これらの手掛かりからは、上杉はクラインの壺の中に居るように思える。一方で、上杉をクラインの壺の中に閉じ込めておく理由もよく分からない。もし上杉がクラインの壺の中に居るのなら梨紗は死んでいるわけで、しかもイプシロン・プロジェクトは(アメリカでそうしたように)そのような不祥事を揉み消せるだけの力を持っているのだから、上杉のこともさっさと殺した方が面倒が無いだろう。では、やはり上杉はクラインの壺の外に居るのか……。結局、どちらの解釈にしても決め手がなく、謎は謎のまま、読者は宙ぶらりんのままである。

     世界の実在性について、この本を読んで思ったことを最後に(結局書くんかい)。そもそも我々は、あるいは少なくとも僕は、なぜこの世界の実在性が気になるのだろう? 答えを知ったところでこの世界の在り方自体は変わらないというのに。人の好奇心の成せる業と言って了えばそれまでではあるが、直観的には、この問いにはそれ以上の何かがあるような気がする。例えば、もし仮にこの世界が実はゲームの世界であることを、それなりの、一瞬でもそうかなと思わせるぐらいの、根拠とともに教えられた(もちろんそのような主張を、「この」世界の中で「真に」裏付ける証拠は原理的に存在し得ないのだが)と想像すると、何か、心の奥がざわざわするような不安を感じる気がする。上杉が呑まれてしまったのも、きっとこの恐怖だと思う。では、この不安・恐怖は何処に由来するものか? 世界が確かに存在しているという「事実」が、人が生きる上でそんなに大事なことなのだろうか?

  • 1898年作とは思えないほどに技術描写がうまく、世界観の演出が巧みだった。文章のうまさもあり、スルスルと読めて読後感も良かった。
    SF要素もあるが、これからの私達も気をつけないと…。

  • ❇︎
    クラインの壺/岡嶋二人

    徳山諄一と井上泉(現在、井上夢人)共作筆名。

    内側と外側の区別のない世界。
    この小説の初出が今から約40年前というのが、
    本当に驚きでした。

    現代のバーチャルリアリティ以上に、
    リアルとバーチャルゲームの境目がない
    状態を作るK2という機械の試作品モニターとして
    主人公がチェックを行なっているという設定。

    限られた登場人物の中で、いかにも怪しい人物が
    現実なのかK2という壺の中なのか判別できない
    恐ろしさをヒシヒシと感じました。

    いつか技術がどこまでも進んで、
    生きて経験していること全てが擬似体験に
    なってしまうのか。

  • 再読。当時読んだ時とても驚いたのを覚えています。こんな技術が開発されたらほんとにこんなことになるのでは、と思いました。VRが数年前に出てきた時「まだまだクラインの壺には及ばないな〜」と思った記憶が。岡嶋二人、井上夢人さんの作品は面白いなと思います。

  • 今、読むからこそ、VRだったりが普及して、現実と仮想空間が入り混じる恐怖が伝わってくる小説。1989年の作品みたいです。クラインの壺は実際に存在する言葉であり、読み終わってタイトルの意味を調べて読み返して、納得。結末は読者に委ねられている気がする。何が真実で何が虚構なのか。これからの時代、仮想空間がリアルになればなるほど現実との境界が曖昧になってくる。そもそも今僕が感じている現実も、僕が現実と認識しているだけなんだよなーと、哲学的な観点もあったかもしれない。

  • バーチャルリアリティゲームのテストに参加した2人の話。後半からめちゃくちゃ引き込まれて事態が二転三転するのが楽しい、ほんっとに読む手が止まらん。そして衝撃のラスト!ゾッとする怖い。クラインの壺の外側と内側どっちなん!

  • 面白かった。
    今いる世界は現実か虚構か。
    そこを疑ったらもう生きていけないよなー。
    30年以上前の作品らしいけど、こんな未来が近づいてきてるのかもね。

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著者プロフィール

岡嶋 二人(おかじま・ふたり)
徳山諄一(とくやま・じゅんいち 1943年生まれ)と井上泉(いのうえ・いずみ 1950年生まれ。現在は井上夢人)の共作ペンネーム。
1982年『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。86年『チョコレートゲーム』で日本推理作家協会賞を受賞。89年『99%の誘拐』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年『クラインの壺』が刊行された際、共作を解消する。井上夢人氏の著作に『魔法使いの弟子たち(上・下)』『ラバー・ソウル』などがある。

「2021年 『そして扉が閉ざされた  新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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