一千一秒物語 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.67
  • (153)
  • (110)
  • (254)
  • (19)
  • (14)
本棚登録 : 2064
レビュー : 160
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101086019

作品紹介・あらすじ

少年愛、数学、天体、ヒコーキ、妖怪…近代日本文学の陰湿な体質を拒否し、星の硬質な煌きに似たニヒリスティックな幻想イメージによって、新しい文学空間を構築する"二十一世紀のダンディ"イナガキ・タルホのコスモロジー。表題作のほか『黄漠奇聞』『チョコレット』『天体嗜好症』『星を売る店』『弥勒』『彼等』『美のはかなさ』『A感覚とV感覚』の全9編を収録する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 月光のワルツと、シガレットの香り。

    あの世界史レベルで有名な幻想譚『千一夜物語』、アラビアンナイトと関係があるのかないのか分からないけれど、『一千一秒物語』はとにかくヘンテコな物語だ。月と星をテーマにした幻想掌編小説集…と言ってみても、全然説明した気がしない。

    おとぎ話の絵本みたいに幻想的だが、メルヘンというには少しヤンチャが過ぎるような気もする。ピストルをぶっ放してお月様を撃ち落としたり、流れ星と取っ組み合いの喧嘩をしたり、月の光で密造酒を作ったり…。サイレント時代のキネマみたいなドタバタ劇が繰り広げられたかと思えば、こんな詩が混ざっていたりもする。

     お月様でいっぱいで
     お月様の光でいっぱいで
     それはそれはいっぱいで……
      (A CHILDREN'S SONG)

    月光を受けて煌めくビール瓶の破片、理科室に置き去りにされた年代物の天球儀…。そんな風に、この作品に触発された断片的なイメージでしか、内容を語ることができないのがもどかしい。タルホ・ワールドを語るには、私はまだまだ夢を見足りないようだ。

    案外、子どもの方がタルホおじさんとすぐ仲良くなれるのかもしれない。「お月様とけんかした話」を小学生の息子に読んでやったら大笑いしていた。ルビのふられた児童版の出版が待たれるところである。

    ☆彡

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ご自身で読むなら、筑摩の「ちくま日本文学」がお薦め。
      https://www.chikumashobo.co.jp/special/niho...
      ご自身で読むなら、筑摩の「ちくま日本文学」がお薦め。
      https://www.chikumashobo.co.jp/special/nihonbungaku/
      猫は、まりのるうにいがイラストを描いている本が欲しい、、、
      2020/08/06
    • 佐藤史緒さん
      猫丸さん、いろんな情報ありがとうございます! 装丁もあたらしくなるんですね。
      それにしても出版に異様に詳しいアナタは何者?(笑
      猫丸さん、いろんな情報ありがとうございます! 装丁もあたらしくなるんですね。
      それにしても出版に異様に詳しいアナタは何者?(笑
      2020/08/09
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      猫は単なる本好きなだけですヨー
      佐藤史緒さん
      猫は単なる本好きなだけですヨー
      2020/08/09
  • 稲垣足穂は若いときに飛行家志望であったそうだが、足穂のショートショートは広い空の世界でいっぱいだ。
    月や流星をちゃかし、派手に格闘したり襲われたりと、まるでドタバタコントのようで笑ってしまう。
    空に相当な憧れを抱いていたのだろうか。

    遠い空に存在するモノと喧嘩してても、仲の良い悪友であるかのように身近な遊び相手になってしまっている。
    地上に住んでいても足穂は、お月様と“ため口”で言葉を交わせるのだから羨ましい。

  • 大人になってから出会ったのですが、その世界観にハートを射抜かれました。
    お月様、ホーキボシ、シガレット、金平糖、ヒコーキ、半ズボン・・・
    詩のような散文のような形式もかわいらしく、
    夜寝る前に数編読むと、気分が良いです。
    ベランダで月の光を集めてサイダーにする、とか、
    出来ちゃうんじゃないか、という気分になります。

  • 表題作がすごく好きで、前半だけするーっとすぐに楽しく読んで、「弥勒」辺りから苦しくなってきて、「美のはかなさ」で完全に撃沈した。
    AVはおしりフェチやった。

  • 一ヶ月くらいかかって読み終わりました…長かった。
    何が長かったって、「コイツを読む!」って意気を充填するのにやたらと時間がかかり、さらにインターバルも挟みつつだったので、読了するまでの時間がとにかく長くかかりました。

    又吉がむさぼり読む新潮文庫〜といった企画があったので、
    その機会に手に取った一冊なんですが、いかんせん難しい…。
    序盤の幾つかは本当に雰囲気が好きで、文字を手がかりに情景を必死にイメージしながら読んでたんですが、中盤〜終盤にかけてはとてもその作業が追い付かない状態でした。
    なので星は付けられません、さすがに今回は。

    しかし、幻想的な空気と古めの文体が絶妙にマッチしていて、
    これはいつか読み直したいなぁ、と思えました。

    いずれ再挑戦します!

  • 表題作は、お月さまと戯れるメルヘンチックなお話。
    なーんにも考えずに読むと楽しい。
    句読点が全くなくて、神秘な世界へ入り込んでしまう。

  • 稲垣足穂 「 一千一秒物語 」表題ほか短編集。

    読み手の時間感覚を解放するのがうまい。時系列より永劫回帰(同一の状態を永遠に反復) を重視している〜一つのシーンで 一人の人間の現在と幾世紀後の姿を描いたりする。


    著者が「六月の夜の都会の空」と表現した 宇宙的郷愁(都会的、世紀末的、未来的な情緒)が 時間感覚の解放に役立っている。

    理解できたか不明だが、短編小説「弥勒」 エッセイ「美のはかなさ」は 面白い。有名な「一千一秒物語」は 擬人化した月や星をどう捉えるのか わからなかった。


    弥勒は 著者の自伝的要素(貧乏地獄経験と終末思想)が面白い。貧乏地獄に耐えるための名言も多い。美のはかなさは 美の壊れやすさをテーマとしたエッセイ。


    名言「美は一切か無かの性格を持つ〜完成されたものは さらに手を加えると 元も子もなくなる際どさを持ち〜積み上げでなく不可解な創造的飛躍によって出来ている」




    貧乏地獄に耐える名言
    *手段が尽き果てた時こそ 人間は最もよく生きている
    *物質、精神とも 常に最少限度にとどめる習慣をつけること。とどめるべく絶えず念じる



    美の はかなさ
    美的なもの=はかなさ+虚無性
    *美的なものの壊れやすさ
    *美的なるものは 極端に傷つきやすい瞬間的な体験の中にある
    *美しきものは 全く現象である

    一千一秒物語の世界
    *「月から出た人」から 始まる創世記のような童話
    *物語が 目的や時間感覚を持たない カオスな構造
    *人間の理想としての 擬人化した月や星
    *宇宙の原理に支配された人間

    六月の夜の都会の空とは
    *宇宙的郷愁、永遠癖、奇異な郷愁的翳り
    *都会的、世紀末的、未来的な情緒
    *ここにいることは実は昔では?
    *一瞬に幾世紀を飛び越えて 未来にいるのでは?
    *ここは地球でなく 他の星では?

    ★六月の夜の都会の空
    *飛行士を目指して上京した最後に見た夜景。どこでもない所へ遠ざかりつつある大都の夜の雰囲気

    *全ての事物と自分が 無関心の中に沈みこんで 何もかもが 何処でもない所へ遠去かりつつある雰囲気

    *構築物も群衆も自動車の列もすでに無限へと拡大し、吾人の観たる夜の都会は透明にして、只エーテルが立体的存在の虚空に投影せる七色のファンタジーのみ








  • この小説は9つの話が書かれてます。中には難解なのもあってなかなか読み進められなかった。 特に楽しく読めたのは黄漠奇聞、チョコレット、星を売る店。美のはかなさは難解だったが、芸術に対して、なるほどと思う箇所有り。 A感覚とV感覚に関しては読む前から何となく卑猥な感じが有り、まさに予想的中(笑) 他の作品は印象に残らなかった。 全体的には面白いと思うので、更なる理解を深めるために、また再読したい小説ではあります。 この小説自体が文字も含めて芸術のような感じがした。小説という概念は捨てた方が良いです。(笑) 難解だった面もあって☆3つにしました。

  • 先日林海象氏の「彌勒 MIROKU」を観て、原作も読みたくなったので図書館にて拝借。うわぁ難解!でも映画のおかげでイメージのみで読み進めました。

  • 童話的な作風の中に男性っぽいぶっきらぼうさがある。塀から身を乗り出して星を盗んでいたら肩を叩かれて、振り向いたら月が睨んでいた、とかそういうの。星と花とリボンもいいけれど、酒場で月と取っ組み合って喧嘩するのもロマンのひとつ。

全160件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

稲垣足穂(1900・12・26~1977・10・25) 小説家。大阪市船場生まれ。幼少期に兵庫・明石に移り、神戸で育つ。関西学院中学部卒業後、上京。飛行家、画家を志すが、佐藤春夫の知己を得て小説作品を発表。1923年、『一千一秒物語』を著す。新感覚派の一人として迎えらたが、30年代以降は不遇を託つ。戦後、『弥勒』『ヰタ・マキニカリス』『A感覚とV感覚』などを発表し、注目を集める。50年に結婚、京都に移り、同人誌『作家』を主戦場に自作の改稿とエッセイを中心に旺盛に活動し始める。69年、『少年愛の美学』で第1回日本文学大賞受賞、『稲垣足穂大全』全6巻が刊行されるなど「タルホ・ブーム」が起こる。

「2020年 『稲垣足穂詩文集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲垣足穂の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ポール・オースタ...
ボリス ヴィアン
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印

一千一秒物語 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×