新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

著者 : 宮沢賢治
  • 新潮社 (1989年6月19日発売)
3.91
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101092058

作品紹介

貧しく孤独な少年ジョバンニが、親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って美しく悲しい夜空の旅をする、永遠の未完成の傑作である表題作や、「よだかの星」「オツベルと象」「セロ弾きのゴーシュ」など、イーハトーヴォの切なく多彩な世界に、「北守将軍と三人兄弟の医者」「饑餓陣営」「ビジテリアン大祭」を加えた14編を収録。賢治童話の豊饒な味わいをあますところなく披露する。

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 夏の間に
    どうしても読んでおきたかった一冊。


    ひなげしを食べようと
    あの手この手を使って騙そうとする悪魔と
    本当の美しさを
    ひなげしに説くひのきのやりとりが面白い
    「ひのきとひなげし」、

    花巻駅を舞台とした
    なんともロマンチックな恋物語
    「シグナルとシグナレス」、

    歌うように軽快な文章で語られる
    可哀想な象の話
    「オツベルと象」、

    人間社会を鋭く風刺した
    「猫の事務所」、

    楽団の中で一番下手だったセロ弾きの青年が
    子猫やカッコウや子狸や野ねずみ親子の力で
    仲間たちの信頼を得ていく
    「セロ弾きのゴーシュ」、

    そして孤独な少年が
    死者たちと巡る銀河への旅を通して
    生きる意味に気付いていく不朽の名作
    「銀河鉄道の夜」などを収めた
    珠玉の童話集です。


    特に「銀河鉄道の夜」を再読して、
    これほど痛切で
    美しい物語だったのかと
    この歳になって改めて感動しました。



    賢治が持つ宗教観の色濃い
    儚く深遠なストーリーと、

    水素よりも透明な銀河の水、
    サファイアやトパーズの河原、
    りんごと薔薇の匂いがする風など
    ロマンチックこの上ない比喩と
    ファンタジックな世界観。


    誰かのために命を賭けて死することが
    人間にとって本当の幸いだという
    賢治のメッセージ。


    賢治の伝えたかった思いを理解した上で
    あえて言葉を変えるなら、
    自分は誰かのために
    生きていきたい。

    自分を救ってくれた愛する人のために、
    自分を必要とする
    誰かの声に応えるために
    今を生きていたい。


    夢から覚め
    現実を生きていく決意をした
    ジョバンニのように。

    被災地の夜に読んだ
    賢治の「雨ニモマケズ」のように。


    悲しみを糧にして
    強く気高く。

  • 小生にとってとってもとっても思い入れのある一冊。
    それは小生がまだ年端もいかぬ純粋に読書を楽しんでいた頃。
    『良書に親しめ』というある方のスローガンに則り、母が、国語の便覧に載っていた文豪たちの作品をかたっぱしから集めてくれたのです。
    ねだると文豪の本だけは二つ返事で買ってくれたものでした。


    ASDの人は、想像力がないと言われがちですし、共感能力がないから物語文はダメダメと思われていますが、小生は毛色が違うようで、一文一文が情景をありありとイメージして読むことに、登場人物のセリフにウキウキすることに、それはそれは楽しくて仕方がなかったのでありました。
    この「銀河鉄道の夜」との出会いは、深夜に観たあのアニメーションが始まりでした。その結末を知っていてもやはり読ませる文章ですから、読む手が止まりません。
    夜にベッドの上でこの本を開いてちびちびと味わうように読んでいました。
    読み終えたらもったいないと楽しみにとっておきたくて、夜を待って少しずつ味わって読んだものでした。

    自己犠牲と二人の少年の友情。
    優しさ、幸せとはなんだろう。二人の少年が行き着く答えは、一体なんでしょう。
    この文章の裏には、キリスト教やタイタニック号の話が織り込まれていてハッとしました。

    宮沢賢治のその文体を分析した方がいらっしゃいましたが、その方の論考も読み合わせるとなるほどと頷けるはず。

    アンソロジーとしても優れていて、教科書に採用された「オツベルと象」から朗読に使われていた「セロ弾きのゴーシュ」まで粒よりです。

    小生は、この中でも「猫の事務所」が好きでした。
    今や学校でも職場でも”いじめ”が流行っていますが、最後の結末部に賢治の意思が出ています。
    賢治らしいなと小生は思いました。

  •  facebookでの「千年読書会」というコミュニティにお誘いいただいて、久々に再読。といっても、細かいところはほぼ忘れていましたが、、(汗

     星々の光に照らされて夜空を駆け抜ける、一両の鉄道列車。行き先は“次なる世界”、そして乗客は不帰の人々、になるのでしょうか。

     この辺り、須弥山の思想なんかも感じさせてくれて、ある意味、古来から続く日本の“死生観”が発露されてもいるのかな、と。石炭袋の設定も“黄泉比良坂”の大穴ともリンクしてそうですし、横文字の名前が多いにもかかわらず、不思議と西洋のイメージは残りませんでした。

     なお、私の中での映像イメージは『銀河鉄道999』にだいぶ影響をもらっています。

     どちらも、どこかに“行きて戻りし”物語であることは共通ですが、あちらは“永遠の命”を求めて、こちらは“次の世界”への橋渡しとして。“旅”の果てに求めるものは“幻影”なのか“夢”なのか。999での“時の輪のどこかでまた会える”なんてフレーズを思い出してみたりも。ん、共通しているのは“幸せ”とは何なのか、との点でしょうか。

     この根底には仏教で言う輪廻転生も感じさせられましたが、、これらの“連環”から醒めた時に向き合う“現実”とは、さて。結局のところ、未完のまま取り残されているのですが、この先の物語を夢想してみるのも楽しそうです。

     ジョバンニとカンパネルラは、またどこかの“駅”ですれ違うコトがあったのか、はたまた、時空を越えた“神隠し”からの回帰なんていうコトもあったのか、とも。現世と幽世の境は意外と、近くて薄いのかもしれません、なんて。

     戦前から変わらずに長く読み継がれているのは、その表現の美しさ、儚さもあると思いますが、日本人の死生観という“民族意識の根底”を揺さぶる要素が籠められているのもあるのかな、ともなんとなく。そういった意味では、考えながら読むのではなく、感じながら読む物語なのかも、知れません。

     子どもに読み聞かせようと思ったら、どのような結末で伝えればいいのか、いろいろと模索してみたいところです。

  • 孤独な少年ジョバンニが友人カムパネルラと銀河鉄道を旅する、言わずと知れた宮沢賢治の代表作のひとつ『銀河鉄道の夜』を表題とした宮沢賢治童話集。
    銀河鉄道からの美しい情景。この世ではない別の世界で、ジョバンニは不思議な出会いを数多くする。童話ならではの柔らかさをまとう夜の狭間で繰り広げられる、残る者と去る者の考え方。犠牲とは、幸福とは、命とは―何気ないやり取りの中にはさまざまなテーマが含まれている。読むたびに「生」に対し静かに、そして真摯に向き合いたくなる。
    決して手放しのハッピーエンドとはいえないけれど、不思議と温かい余韻が残る作品ばかり。表紙絵のように、宮沢賢治の作品には深い青色がよく似合う。

  • これだけの文章を読んでいると、40代にならないうちに亡くなってしまったのも不思議と納得してしまう。
    文章が透明で純粋すぎるもの。
    透明すぎて悲しいもの。
    きっと現世でいきているのはつらかっただろう、と思わせてしまうくらいに。達観と希望と絶望と、一つ一つの話で、さまざまなものが垣間見えてしまう。


    才能があっても健康で長生きしてる人ももちろん存在するけど、大半の人は才能や力と引き換えに、別のものをあらかじめ差し出しているように思う。それが例えば寿命であったり、人柄であったり周囲の環境であったり。
    どこかで精算が行われてしまうんじゃないかなあ。

  • 『セロ弾きのゴーシュ』
    セロを弾くのが下手なゴーシュは、セロを家に持って帰り夜な夜な練習する。毎晩いろんな動物がやってきて嫌がりながら怒りながらも、セロの演奏をするうちに、ゴーシュの腕は見る見るうまくなっていった。演奏会も大成功。
    地道な練習が大事。「努力に勝るものはなし」。

  • 杉井ギサブロー監督のオススメ作品
    「銀河鉄道の夜」宮沢賢治

    杉井監督レビュー
    アニメーション映画化させてもらった作品だが、星空を見上げるたびに、生命という存在が宇宙と共に在るということを想わせてくれた作品。

  • 表題の「銀河鉄道の夜」は、少年2人が銀河を旅する物語だが、ジョバンニの家庭環境やカンパネルラに訪れる結末など、児童書のイメージのある作品なのにそんな夢いっぱいの小説ではない。
    全篇どこかもの悲しい雰囲気を帯びている。
    一つ一つは短編でアッサリと終わる、だがそのどうしようもなさが寂しく切ない。
    でもやはり児童書なのかなと思わせるような、子供のような純粋さのある文章で、明治生まれの作者ということもあってか非常に丁寧な日本語で新鮮だった。
    後ろの解説を読んでも不明点が多く、またいつか読み返す日が来るだろうと思う。

  •  地元と言っていい処に住んでいる縁で、賢治に関わるあれこれに触れる機会は他の地域に住んでいる人に比べて多いはず。 大学時代には、我々が「けんじ」と呼ぶことに、他県の友人からは「違和感を覚える」と言われたことも思い出す。


     賢治の童話を基にした絵本やアニメ。イラストや題材をモチーフにしたオブジェ、店舗、グッズ。彼の作品そのものを詳しく知らずとも、何とはなしに身の周りに触れてきた賢治の世界。でも、意外と作品を読んだことがない、という声を聞くのも事実。


     先般「グスコーブドリ」がアニメになった時にも我が家で話題になったのだが、大体の作品を読んだことがあるのは私だけで、妻も子供も実は原本には触れたことがない。アニメや絵本と言った派生作品ばかり。そういうものなのかもしれない。
     さっそく子供向けの「銀河鉄道の夜」を買って与えたのだが、「よくわからない」というのが感想。確かに何か明確な冒険や謎ときがあるではなし、分かりにくいのは無理もない。
     アニメしか見たことがない妻も、感想は「映像はきれいだったがよくわからない」だったし。


     確認、という訳ではないのだが、読み返してみた。




     この文庫に収録された作品の多くに共通するのは「弱き存在」とその彼らが陥る境遇、そして聖なる領域としての星空・宇宙空間・銀河・高きとろこにある存在、だろうか。


     弱き者が虐げられ、いじめられ、不幸な目に遭う。救済が訪れるようではあっても、それは単純なハッピーエンドとは異なり、諦観を含んだ昇華的解決に見える。
     言い返すわけでもなく、戦うわけでもない。よだかは自ら空に昇って命の火を燃やし、かま猫はじっとこらえるだけ。
     「雨ニモマケズ」を思い出す。
     賢治の生き方そのものなのか。


     文学作品に触れる時、あまり作家の人生そのものを意識することはないのだが、宮沢賢治に至っては身近にありすぎ、多くの情報が記憶に刻まれてしまっている。




     このサイトの内容紹介にもあるように、銀河鉄道は未完成作品。他にも収録された作品のあれこれが原稿用紙がなくなったり、数行の空欄があったりと、完成した作品として世に出たわけではないものも多い。わかりにくいのは当然かもしれない。
     が、逆にたくさんの派生作品を生み出す要因でもある。賢治が残した隙間に自らのイメージを注ぎ込んで、新たな世界を想像していく作家もいるだろう。


     賢治独特の世界。
     雨の一日、静かな気持ちで浸ってみるのもいいかもしれない。

  • 銀河鉄道といへばカムパネルラ。カンパネルラ田野畑駅。
    以下は個人的な回想。
    田野畑駅には、残念ながら国鉄時代には訪問できず、三陸鉄道発足後の1988年に訪れてゐます。
    2000年9月には再び北リアス線を訪問、十分に堪能したその夜、盛岡市内のホテルで名古屋の豪雨を知つたのであります。
    風呂から出て寂しくなりはぢめた頭髪を乾燥させながら、部屋のテレビジョンを何気なく点けますと、名古屋を中心に記録的な豪雨になつてゐるとの報道であります。驚愕。

    自分が気楽に旅に出てゐる間、地元ではとんでもないことになつてゐたのでした。のちに「東海豪雨」と呼ばれた災害であります。
    家人も知人たちも、あの雨には恐怖を覚えたと述べてゐました。
    鉄道も運休してゐるといふことで、予定通り帰れるのか不安でしたが、自分が帰る頃には何とか復旧してゐました。ダイヤはズタズタでしたが。
    また、東海道線は運行再開してゐたものの、冠水した枇杷島駅とか清洲駅などは普通列車も通過で、その駅の利用者が豊橋駅ホームで駅員に喰つてかかつてゐました。駅員も「うるせいなあ、こいつ」てな感じで、まともに相手をしてゐませんでしたが。

    宮沢賢治の人と作品が、あまりに理想化されてゐるので、あへてちよつと無関係な話をしてみました。現代日本語が未完成で未成熟な時代だからこそ滋味を感じさせる賢治の文章であります。だから学校の教科書に載せるのはやめてもらひたいと勘考する次第でございます。
    いや、余計なことを申しました。もう休むことにします。晩安。

    http://ameblo.jp/genjigawa/entry-11232549147.html

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