注文の多い料理店 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101092065

作品紹介・あらすじ

これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません-生前唯一の童話集『注文の多い料理店』全編と、「雪渡り」「茨海小学校」「なめとこ山の熊」など、地方色の豊かな童話19編を収録。賢治が愛してやまなかった"ドリームランドとしての日本岩手県"の闊達で果敢な住人たちとまとめて出会える一巻。

感想・レビュー・書評

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  • 子どものころに読んだ懐かしい宮沢賢治……そしていつのまにか読んだつもりになっていた宮沢賢治(笑)。だいぶ大人になった今、きっと潤してくれる何かがあるような気がして、久しぶりに手にとってみました。いや~素晴らしい!

    岩手出身の宮沢賢治(1896~1933年)、天才詩人はえてして早世してしまうもので悔やまれます。彼の詩はとても繊細でふと涙がこぼれそうになってびっくりしてしまいます。陰も陽も清も濁も綯交ぜた彼の老成した詩姿もみたかったなぁ。

    彼の短編集(童話)は、深い物語の森がどこまでもどこまでも連なっています。読んだ人を悦ばせてくれる食べものがそこここに溢れています。童話や民話の中には、神話のように子どもだけではなく大人にも読んでもらいたいというものがあって、宮沢賢治の作品群はまさにそれだと感じます。

    「……これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。……わたくしは、これらのちいさなものがたりのいくきれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」(序文より)

    『水仙月の四日』と『ひかりのすあし』は、雪深い山で幼い子にふりかかる遭難譚で、一方では自然の峻厳な顔を、他方では慈愛の表情を垣間見せます。形而上的な艶を帯びて不思議な静けさがおとずれます。

    『土神ときつね』は、美しい女の楢の木、野卑で愚直な土神、おしゃれで空疎なきつねの三角関係が描かれています。ハイネの詩集を手に楢の木を訪れるきつねは、満天の星々やロマンティックな話で彼女の心をときめかせます。そのような情景にメラメラともだえる土神は、なぜこんなに胸苦しいのかわからず苦悩します。

    『楢の木大学士の野宿』は、賢治ワールド炸裂! 石ころや岩までも、ぺちゃらくちゃらとかまびすしいこと……ただごとではありませんよ(笑)。

    自然のきびしさと慈愛、豊饒な生と死の円環、森閑とした世界に広がるもの悲しさ……この人はまちがいなく宇宙を秘めた狂人的(天才的)詩人だと思います。そして、この本には彼を敬愛する井上ひさしの解説もあってすごい、賢治の宇宙をひもといていくその言葉はあたたかい思慕と郷愁に満ちています。

    宮沢賢治にしても井上ひさしにしても、さらには石川啄木、斎藤茂吉、「遠野」に魅入られた柳田国男……すぐれた詩人や文豪が多いですね。きっと東北の豊かな自然は、すきとおったほんとうのたべものを彼らに授けたのでしょう。作品をとおしてそのおこぼれをもらうことができた私は、お腹がいっぱいで幸せな気分に浸っています。ぜひみなさんも食べてみてください。
    宮沢賢治の詩集・短編ともに大人の方にお薦めしたい♪

  • 初めての宮沢賢治。

    名前だけは知っていたが読んだことは無かった。
    他の小説で引用されており、気になっていた作品。
    またまた会社の方にお借りした。

    かなり短い短編がいくつも綴られている。
    私には一番苦手なパターンだ。

    表題の注文の多いレストランはなかなか面白かった。まるで絵本を読んでいるかのように、次の場面を期待しながら読み進められる。

    雪渡り、ひかりの素足などは、情景が想像しやすく、頭に映像が浮かび上がってくるのだが、そうでもない作品もかなりあり、読み進めるのに難儀した。
    ひらがなが多い所為かな?

    どの短編もしっかり落ちがあるというわけでもなく、一話読むたびに、この話の正解は何なのだろう??と悩んでしまう。

    本当は正解などは無くて、読者が感じたことがそのまま正解なのだろうけど。

    季節、風景、植物、動物、そういうものが美しく描かれているなぁと感じた。

  • 内容はもう半年前に読んだので忘れたが
    面白かったと思う。

    再読したらまた感想を更新する。

  • 平成元年刷の再読。日本のグリム童話かなあ。

  • 題名からは店はとても賑わっているものだと思っていたが、実際は違く驚いた。内容はとてもよく面白かった!

  • 童話チックなホラー話

    と思いきや、2人の紳士に対する段階的要請法であったり、本当に恐ろしいのは動物の命を軽んじる人間の方で、山猫はそれを懲らしめた
    というような解説を読んで、この作品の奥深さを改めて思い知った

  • 宮沢賢治の童話集。童話だけれど、大人向けのような感じもしました。童話には伝えたい教訓や倫理が込められている。宮沢賢治の作品も、そうした教訓や倫理を巧みに伝える文章でした。面白かったです。「注文の多い料理店」聞いたことはあったけど、「注文の多い」とはそういうことだったのね。無批判であることの危険性、上流階級への批判が込められているように感じました。
    岩手山が出てくる作品もあって、少し興奮しました。栗の木や狐が多く出てくるのは岩手という地の特徴なのかしら。宮沢賢治は農林学校卒ということもあり、自然と人間との関わりテーマとした作品も多いなぁと思いました。

  • 賢治作品を読むにつけ「すきとおった風」という表現がとても好きだということに気づく。
    鏡と輝き飴をこさえる太陽や、鋼や宝石になる空、凶事を予告する象のような雪の丘や、アルコオルを吹き水車をまわす星座。
    丁寧で繊細な風景描写のようであり、また舞台装置のようであり、どこまでの幻想のような、世界の描きかたは、ふと遊びに行くには最適の世界。
    もっとも美しいだけでなく、うっかりすると、取り返しのつかない事態を招く…。
    だから、この世界が恐ろしくも好きなのだろう。

    それとはまた別な次元で個人的に好きなのは、
    「烏の北斗七星」。
    銀河をゆく鉄道と並んで、この世界設定は独特で本当に良い。ミリタリー物は今の時代、童話には不適当だろうけれど。
    戦闘員にして艦艇。今風に描き直せば戦闘機のパイロットにでもしそうだが、「艦」としているのがやはり良い。
    できたら、銀河鉄道を描いた某漫画家先生に挿し絵を描いてもらいたかったと夢想する。

  • 改めて読んでみて、やっぱり面白いなと思った。
    結構ホラー味があって、迷い込んだ人間2人は命の大切さを学べたのではないかと思う。

  • 人となりが作品に出ている。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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