新編 宮沢賢治詩集 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.90
  • (164)
  • (110)
  • (189)
  • (10)
  • (1)
本棚登録 : 1615
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101092072

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「わたくしといふ現象は

    仮定された有機交流電燈の

    ひとつの青い照明です

    (あらゆる透明な幽霊の複合体)

    風景やみんなといつしよに

    せはしくせはしく明滅しながら

    いかにもたしかにともりつづける

    因果交流電燈の

    ひとつの青い照明です

    (ひかりはたもち その電燈は失はれ)

    これらは二十二箇月の

    過去とかんずる方角から

    紙と鉱質インクをつらね

    (すべてわたくしと明滅し
     みんなが同時に感ずるもの)

    ここまでたもちつゞけられた

    かげとひかりのひとくさりづつ

    そのとほりの心象スケツチです
    (中略)」

    (『春と修羅』 「序」より)


     あまりにも、卓越した、この「序文」。天性のものなのか、あらゆる「苦闘」の果てにたどりついたものなのか、賢治の、「『本質』を見極める『まなざし」には、思わず絶句し、嘆息するほかない。


     このひとの、様々な経験、社会・文化・宗教・自然、人とのかかわり、ありとあらゆるものから吸収し得る、おおらかで鋭い感性、博学多才ぶり、それを独自の表現で、芸術作品や、具体的な行動へと昇華していく「ちから」。


    そうでありながら、


    「四月の気層のひかりの底を

    唾(つばき)し

    はぎしりゆききする

    おれはひとりの修羅なのだ」

    (「春と修羅  (mental sketch modified)」より)

     
     そう、自分自身が「一己の『修羅』」であることを、厳しく、苦々しく、諦念を以て、見つめることを、やめない。


     それでいて、農村のくらしや災害の厳しさを、我が身をもって知りながら、郷里への素朴な愛着と、深く優しいまなざしが、その根底には脈打ち続ける。


     賢治の「詩(心象スケッチ)」は、「このひとは、こうである」という「決めつけ」をしようとした瞬間から、するりと、抜け出していってしまう、「賢治、そのもの」に感じられる。ちょうど、「習作」の、不思議な文章で書かれた、「とらよとすればその手からことりは空へとんでいく」の「句」のように。


     圧巻なのは、あまりにも有名な、妹トシとの別れをえがいた、「無声慟哭」の、「永訣の朝」等、一連の「詩」。これは、レビュー不可能なので、ぜひ、ご一読をお勧めしたい。(一説には、このことがあってから、賢治は、その後「銀河鉄道の夜」のモチーフとなる、樺太への汽車の旅へ、一人旅立ったとされる。)




    「おまへがたべるこのふたわんのゆきに

    わたくしはいまこころからいのる

    どうかこれが天上のアイスクリームになつて

    おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに

    わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ」

    (「永訣の朝」より)


     

  • 春と修羅の序
    高校生の時に読んで科学の言葉を使って表現された美しさと刹那さに魅せられた。
    科学に携わって生きたいと思わせてくれた本

  • 2018/11/25読了

  • 以前から「告別」が好きで、もちろん、「雨ニモマケズ」も好きなんだけど。

    黙読か音読か悩みながらも、とりあえず気になったものを音読で読み返してみる。

    素晴らしい。

    やはり「告別」は自分の中で特別で、色あせない。

  • 再読。賢治はやはり語彙が独特。詩人には珍しい理数系、というと語弊があるかしら。化学用語みたいなのや、天体(星座)の名前が混ざってくるのが今も斬新で楽しい。編集・解説は天沢退二郎。

  • あめゆじゅとてきてけんじゃ(我が名は号泣しながら音読する丸・・・

  • ちくま文庫の全集で読んだことあるが、どれが選ばれてるか興味もあったのもあり、読んだ。今度は声に出して読んだ。難しい言葉も出てくるが、2日かけて読んだ。音読するとリズムが生まれ、楽しかった。詩は良く選ばれていると思う。ただの詩ではなく興味深い。詩が好きな人、文字が好きな人には特にお薦めである。

  • 最近、人が死ぬってことをよく考える。死って、一体なんなのだろうか。
    永訣の朝を読むたびに、死という旅立ちは本当に孤独で、それを取り巻く人々には、なすすべもない儀式なのだという悲しみを、つよく胸の内に感じる。

  • たまらなく好き。

  • 玲瓏。透明。稜角と青い燐光。
    「春と修羅」「眼にて云ふ」が大好きです。

著者プロフィール

宮沢賢治(みやざわ けんじ)
1896年岩手県花巻市に生まれる。中学生の頃から短歌制作を開始し、盛岡高等農林学校卒業後、童話を書き始める。1921年に稗貫学校(のち花巻農林学校)の教師となり、詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を刊行。26年農学校を退職して、みずから農民となり、33年に37歳で病死。主な作品に、童話「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」、詩「永訣の朝」「雨ニモマケズ」などがある。

「2019年 『セロひきのゴーシュ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

新編 宮沢賢治詩集 (新潮文庫)のその他の作品

宮沢賢治の作品

ツイートする