新編 宮沢賢治詩集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101092072

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに詩を読みたいと思い、宮沢賢治を選びました。
    有名な詩も沢山掲載されています。
    国語の教科書に掲載されていた永訣の朝、懐かしかったです。
    賢治の崇高な魂は透明な結晶となり、降り積もります。
    日本語はとても美しい。
    改めて思わせてくれます。
    順番に読まなくても、好きなように読み進めることが出来るのも詩のいいところだと思います。
    注釈も丁寧です。

  • 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』について
    かつて宮沢賢治を探究のテーマにして以来10年ぶりにこの作品を読んだ。本棚の奥に眠っていた文庫本を引っ張り出すのになかなか難儀した。古ぼけた本に触れただけでも、ちょっと良い思い出である。
    今改めて読んでみると、宮沢賢治が書く言葉、それらが自然の宝石箱とも言えるような輝きをもって入ってきて大変心地よかった。随所に散りばめられた鉱石や光と言った要素が、星空・銀河の背景を舞台に幻想的に輝く情景描写は、まさしく“銀河鉄道”に他ならない。銀河と題すにふさわしい輝きがここにある。
    例えば六にある一文である。
    「するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うといきなり目の前がぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊の日を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたという工合、またダイヤモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざ穫れないふりをして、かくして置いた金剛石を、誰かがいきなりひっくりかえして、ばら蒔いたという風に、目の前さあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦ってしまいました。」
    また、七にこのようなこともかかれている。
    「河原の轢は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲をあらわしたのや、また稜から霧のような青白い光を出す鋼玉やらでした。ジョバンニは、走ってその渚に言って、水に手を浸しました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでも確かに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見栄、その手首にぶつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。」
    このような描写が随所に続く。いかにも美しい。でありながら、このような描写は、自然・宗教・農業・化学というあらゆる分野に精通している宮沢賢治でなければ到底生まれそうもない、と思わせてくる凄みがある。
    一方でストーリーについては、まず、細部をすっかり忘れていたので銀河鉄道の夜ってこんな話だっけ、というのがひとつあり、その後に銀河鉄道に乗る登場人物の脚注や言っていることをじっくり読んでみて、少し背筋が寒くなった。子供らの命を助けるために水から救命ボートにのることを諦めた青年・それにつきそう女子供は、いずれも死人であることを暗示させる表現をもってかかれ、それまでずっと共に銀河鉄道に乗って旅をしていたカンパネラは、最終章で水の中に落ちてしまう。銀河鉄道の夢のいような幻想的描写と打って変わる、一人になることの寂しい静寂がこの作品を支配する。天上への切符をもっていたジョバンニであったが、「どこまでも一緒に行こう」と誓ったカンパネラは、天の川の一ところにあいたまっくらな孔に自身の母親を見いだして、ジョバンニが一瞬眼を話た隙に突如消えてしまう。さんざめく銀河の輝きも、一人で見たのでは到底自信を癒し得ないことにジョバンニは気付いていく。そして不意に、現実へと引き戻される。この流れがあまりに文章の中で自然に現されるので、この部分だけ何度も読み返したほどだった。
    一体銀河鉄道とは何だったのだろう。この作品を読むとその疑問を誰もが抱くであろうが、それを「あの世へと渡る列車」と考えてしまうのは少々安易なようにも思えてくる。本当にあの世への列車であるならば、ジョバンニ・カンパネラがこの列車に乗る前に何らかの事故に巻き込まれていると考えなければならないが、唯一導入部の五の「天気輪」というのが、銀河ステーションにたどり着くまでに何か影響を及ぼしているようにも思われるが、具体的に何を指し示すのか不明であり、想像に委ねている部分が大変多い。一概に特定できないからこそ、その世界で自由に言葉の美しさを楽しませ余韻を残す力が、この作品にはあったのだと思う。おそらく宮沢賢治を読む人は、解釈そのものよりもこうした幻想性、彼のどこまでも広がりを見せる宇宙に魅力を感じているのではあるまいか。
    何を尽くしても、まず彼の作品はその自然の宝石箱を味わうことがすべてであるようにも思う。

  • 科学・地質学の専門用語や外国語が頻出する独特な雰囲気に戸惑いますし、意味がくみ取りにくいものが多いのは否めません。
    その中にあって、ドキッとするぐらい鮮烈な言葉の連なりに出会うことがあります。
    妹とし子の死を詠んだ「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」が、私にとって最も印象に残った作品でした。
    宮沢賢治の詩は、“読む”というより、“格闘する”に近いみたい。そんなことを痛感しました。

  • 「わたくしといふ現象は

    仮定された有機交流電燈の

    ひとつの青い照明です

    (あらゆる透明な幽霊の複合体)

    風景やみんなといつしよに

    せはしくせはしく明滅しながら

    いかにもたしかにともりつづける

    因果交流電燈の

    ひとつの青い照明です

    (ひかりはたもち その電燈は失はれ)

    これらは二十二箇月の

    過去とかんずる方角から

    紙と鉱質インクをつらね

    (すべてわたくしと明滅し
     みんなが同時に感ずるもの)

    ここまでたもちつゞけられた

    かげとひかりのひとくさりづつ

    そのとほりの心象スケツチです
    (中略)」

    (『春と修羅』 「序」より)


     あまりにも、卓越した、この「序文」。天性のものなのか、あらゆる「苦闘」の果てにたどりついたものなのか、賢治の、「『本質』を見極める『まなざし」には、思わず絶句し、嘆息するほかない。


     このひとの、様々な経験、社会・文化・宗教・自然、人とのかかわり、ありとあらゆるものから吸収し得る、おおらかで鋭い感性、博学多才ぶり、それを独自の表現で、芸術作品や、具体的な行動へと昇華していく「ちから」。


    そうでありながら、


    「四月の気層のひかりの底を

    唾(つばき)し

    はぎしりゆききする

    おれはひとりの修羅なのだ」

    (「春と修羅  (mental sketch modified)」より)

     
     そう、自分自身が「一己の『修羅』」であることを、厳しく、苦々しく、諦念を以て、見つめることを、やめない。


     それでいて、農村のくらしや災害の厳しさを、我が身をもって知りながら、郷里への素朴な愛着と、深く優しいまなざしが、その根底には脈打ち続ける。


     賢治の「詩(心象スケッチ)」は、「このひとは、こうである」という「決めつけ」をしようとした瞬間から、するりと、抜け出していってしまう、「賢治、そのもの」に感じられる。ちょうど、「習作」の、不思議な文章で書かれた、「とらよとすればその手からことりは空へとんでいく」の「句」のように。


     圧巻なのは、あまりにも有名な、妹トシとの別れをえがいた、「無声慟哭」の、「永訣の朝」等、一連の「詩」。これは、レビュー不可能なので、ぜひ、ご一読をお勧めしたい。(一説には、このことがあってから、賢治は、その後「銀河鉄道の夜」のモチーフとなる、樺太への汽車の旅へ、一人旅立ったとされる。)




    「おまへがたべるこのふたわんのゆきに

    わたくしはいまこころからいのる

    どうかこれが天上のアイスクリームになつて

    おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに

    わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ」

    (「永訣の朝」より)


     

  • この人の言葉の選び方だとか世界観だとか、すごく好きです

  • 『永訣の朝』は何度読んでもかなしくてやさしい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「かなしくてやさしい。」
      うん、とっても切なくなる、、、
      「かなしくてやさしい。」
      うん、とっても切なくなる、、、
      2014/03/03
  • 美しい言葉の数々。詩集は音読するととても気持ちが良いです。永訣の朝に続きがあるとは知らずに勉強になりました。個人的には、産業組合青年会と異途への出発が好き。

  • 春と修羅の序
    高校生の時に読んで科学の言葉を使って表現された美しさと刹那さに魅せられた。
    科学に携わって生きたいと思わせてくれた本

  • 2018/11/25読了

  • 諸君は…(笑)

  • 以前から「告別」が好きで、もちろん、「雨ニモマケズ」も好きなんだけど。

    黙読か音読か悩みながらも、とりあえず気になったものを音読で読み返してみる。

    素晴らしい。

    やはり「告別」は自分の中で特別で、色あせない。

  • 再読。賢治はやはり語彙が独特。詩人には珍しい理数系、というと語弊があるかしら。化学用語みたいなのや、天体(星座)の名前が混ざってくるのが今も斬新で楽しい。編集・解説は天沢退二郎。

  • あめゆじゅとてきてけんじゃ(我が名は号泣しながら音読する丸・・・

  • ちくま文庫の全集で読んだことあるが、どれが選ばれてるか興味もあったのもあり、読んだ。今度は声に出して読んだ。難しい言葉も出てくるが、2日かけて読んだ。音読するとリズムが生まれ、楽しかった。詩は良く選ばれていると思う。ただの詩ではなく興味深い。詩が好きな人、文字が好きな人には特にお薦めである。

  • 因果とは、周期的なリズムによって変化する電流のようなものであり
    この、いわば「因果交流」が複数シンクロして生ずる火花こそ
    あらゆる生命体がもつ、「心」のようなものと言えるだろう
    認知能力に差はあれど、すべての存在は因果の流れから逃れることはできない
    そう考えれば、人間から細菌、あるいは無機物にまで
    心の存在を見て取ることができるのである

    それが宮沢賢治の世界観だ

    そこにおいて、ダーウィニズムにいわれる「淘汰」とは
    単なる結果にすぎない
    つまり進化とは、個体の意志によっておこなわれるものではなく
    あくまで、因果の流れによって、偶然に生ずるものでしかない
    星のきらめきや、地層の重なりの重みや、化石の静けさを感じることができれば
    きっと理解できるだろう
    そこにあるのは、永遠の調和の世界なのである

    ま、それもやはり死を賛美する考えに紙一重ではあるのだけどね
    要は宮沢賢治もある意味ファシストなんですよ
    ただし、彼は差別をこの上なく憎むファシストだったということです

  • かつて教科書で読んだ時の作者のイメージ、聡明、聖人君子だけではない、人間味溢れた人物だと今さら気づいた。
    "おれはひとりの修羅なのだ"

  • 宮沢賢治詩集。

    春と修羅

    詩ノート

    文語詩稿

    教科書でなんどか読んだけど、じっくり自分で読んでみるのもいいもんだ。

  • 2013/11/06/Wed.〜12/28/Sat.

    アンジー『アストロボーイ・アストロガール』の歌詞中にある「ガラスどころか空気だま」は、「蠕虫舞手」から来てるのかな。

    【その他印象に残った詩】
    ◉「『心象スケツチ 春と修羅』より」の「恋と病熱」「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」

    ◉『詩稿補遺より』の中の「境内」

    ◉『「疾中」より』の「眼にて云ふ」「夜」

    ◉『補遺詩篇より』の〔雨ニモマケズ〕「夜」

    科学用語、宗教用語、そして方言も含まれ、文語体に慣れていないというのもあって…正直難解ではあった。
    まだ全てを理解はできていないけど、妹のことをうたった詩はやはり胸に迫るものを感じました。

  • 近代の詩人たちの中にあって、極北の夜空に孤高の光を放つのが宮沢賢治である。象徴派の詩人たちが、根源的な生の不安や魂の震えを歌う時、人間の背負う宿命的な摂理と、それゆえの悲しみを歌うのが賢治だ。「無声慟哭」の一連の詩。中でも、とりわけ強く共感性を喚起するのが「永訣の朝」だ。賢治が詠うのは、妹を喪った悲しみの感情ではない。「けふのうちに」失われんとするその時に自分の「すべてのさいはひをかけて」痛切に、とし子の魂の救済を希求しているのだ。その距離とベクトルは無限に大きく、しかも光のように真っ直ぐに放たれる。

  • 洗練と遊びが絶妙に入り交じり、結果として凛とした印象。読んでいて余計なことを忘れて心がスッキリした。

  • しっかりと世界に根付いていて、科学的で、それでいて詩的。宮沢賢治以外の他の誰にも書けない詩たち。

  • 『あすこの田はねぇ 〜 』
    の“これからの本当の勉強は〜”というところは私のこれからの勉強に対する目標になりました。

  • 最近、人が死ぬってことをよく考える。死って、一体なんなのだろうか。
    永訣の朝を読むたびに、死という旅立ちは本当に孤独で、それを取り巻く人々には、なすすべもない儀式なのだという悲しみを、つよく胸の内に感じる。

  • たまらなく好き。

  • 【再読の後レビュー】

  • 玲瓏。透明。稜角と青い燐光。
    「春と修羅」「眼にて云ふ」が大好きです。

  • 「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」、何回読んでも苦しい。

  • 宮沢賢治の存在は唯一無二だと思う。
    斬新な語彙。その語彙の集中がこれほどその人自身を物語るとは。
    賢治にあっては科学の解釈であったり、自然や鉱石や山や森や、はたまた夜の星空や、農業であったり、それらの語彙の集中。

    「〔あすこの田はねえ〕」以下、台風直前から直後にかけての田の実りに対する賢治の歓喜と絶望の落差のすさまじさといったら。

    また読み返そう。次はお気に入りの詩を見つけるために。

  • 現代日本語の黎明期という感のある、訳語、漢字の使い方。

  • 詩を読むのがとんでもなく苦手だということが分かった。
    学校の授業以来に「永訣の朝」を読んだけれど、とても感動した。

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著者プロフィール

宮沢賢治(みやざわ けんじ)
1896年岩手県花巻市に生まれる。中学生の頃から短歌制作を開始し、盛岡高等農林学校卒業後、童話を書き始める。1921年に稗貫学校(のち花巻農林学校)の教師となり、詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を刊行。26年農学校を退職して、みずから農民となり、33年に37歳で病死。主な作品に、童話「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」、詩「永訣の朝」「雨ニモマケズ」などがある。

「2019年 『セロひきのゴーシュ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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