一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.83
  • (74)
  • (49)
  • (105)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 878
感想 : 72
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101093031

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昔、仕事の関係で、3年ほど小樽に住んでいたことがある。転居したての頃、花銀通りと呼ばれる近所の商店街を散策していると、かつて石川啄木が逗留したという建物があった。文士ゆかりの地は、北海道には珍しい。なんとなく嬉しくなり、啄木に親近感を覚えた。しかし、商店街を抜けた先にある小樽水天宮という神社で、境内に設置されていた啄木の歌碑を見たとき、覚えたばかりの親近感は遠くに吹き飛んだ。歌碑にはこんな歌が刻まれていたのだ。

      かなしきは小樽の町よ歌ふことなき人人の声の荒さよ

    …ちょっと待て。啄木、あんた小樽を田舎と思ってバカにしてるだろ? 文化と無縁の町と思ってるだろ? というか、この歌碑を税金で建てて後世に残すなんて、お人好しすぎるだろう小樽市!

    私がこの本に星2つしか付けていないのは、こういう私憤による所が大きい。しかし、この件を置いておいても、この歌集には色々と突っ込みどころが多い。虚飾を排し、生活実感から湧き上がる歌を目指すという方向性は素晴らしいが、「正直であればいいってもんじゃないだろう」と思ってしまうのは私に歌心がないせいだろうか?

      一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと

      どんよりとくもれる空を見てゐしに人を殺したくなりにけるかな

    芸術家として誇張表現はあるにせよ、相当ヤバい人であることは間違いない。もちろん啄木には後世に残る歌も多く、有名どころでは、

      東海の小島の磯の砂浜にわれ泣きぬれて蟹とたはむる

      はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢっと手を見る

      たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず

      友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ

      ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく 

    こういう秀歌も多いだけに、ブラックな歌とのギャップが凄まじい。もっとも、美しさも醜さも歌いあげたからこそ、啄木の歌は時代を超えて愛されてきたのだろう。しかし精神状態が良くない時には、闇の方に引きずりこまれてしまいそうだ。感応力の高い人は注意した方が良いだろう。

    ちなみに、啄木には酷評されてしまったものの、実際のところ小樽は、大正ロマンを感じさせる詩情ゆたかな町である。有名な小樽運河も良いが、標高の高い小樽公園や水天宮からは小樽港が一望でき、晴れた日には青々とした日本海が実に美しい。そう捨てたものではないことを、レビューの主旨からは外れるが、小樽市の名誉のために一言申し添えておきたい。

      声荒き町の美空に海あおし君よ嘆くな歌はなくとも

    • 佐藤史緒さん
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の...
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の季節に視察に来られると良いです。小樽の自然は本当に美しいのですが、厳しさと表裏一体なので…。雪の季節を乗り切ることが、あらゆる条件に優先します。あと、もしお車を運転なさるなら、駐車場は極力、屋根付きの所をお薦めします。私は3年間、青空駐車場で散々な目にあいました(^_^;)
      2018/05/28
    • 佐藤史緒さん
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連...
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連れて遊びに行ったものです。絵本、児童書のほとんどはここで調達していました。大人向けの書物が市内で1番充実してるのは、小樽駅ではなく、小樽築港駅に隣接しているウイングベイ小樽と呼ばれるショッピングモールに入っている本屋です。本の9割はこの2件で調達していました。
      以上、不動産屋さんでは絶対教えてくれない、ブク友ならではの情報提供でした〜(*´∀`*)
      2018/05/28
    • nejidonさん
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみた...
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみたいです・笑
      書店はスーパー・病院と並んで必要事項ですものね。
      小樽にはいつも雪の季節に行っておりました。
      懸念するのは、観光で行く数日間と、住み続けるのとは相当の差があるのだろうなということです。
      寒い地域に住んだことがなく、冬場のシミュレーションが出来ません・笑
      旅行者の私がダウンで厚着していても、現地の方は比較的薄着で過ごしていたのを覚えていますけどね。
      要は「慣れ」かもしれません。
      ハイ、車は大好きなので屋根付き駐車場は必須ですね。

      ブクログのコメント欄に書きこむことでもないなぁと思いながらのコメントでしたが、思わぬ収穫で喜んでおります。
      ありがとうございました。


      2018/05/29
  • 石川啄木が好きです。
    自分への圧倒的な自信、時折垣間見せる傲慢さ、このままでは生きたい道では生きていけない弱さ、人間としての甘さ、それでも圧倒的な魅力。

    すべてが含まれている彼の作品が好きです。

    『一握の砂』
    『悲しき玩具』

    両方を読み比べることで、彼のことを好きになる人もいれば、彼のことを嫌いになる人もいると思います。

    有名な作品だけではなく、まだ知らない作品に心奪われるかもしれません。

    今から石川啄木の作品に触れることができるのはうらやましいなぁ。

    もう一度、最初に読んだ時の気持ちで、石川啄木を読み返したいな…。

  • ヤバイ、まず冒頭の献辞がヤバイ。今まで読んだどの献辞よりも心打たれる。

    『-また一本をとりて亡児真一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生まれたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。』

    貧困と死別によって着想を得た短歌はどれも哀愁が溢れる。秋に読んで正解だった。

  • ド貧乏生活を送る。朝日新聞の校正係として採用されたものの「はたらけど、はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり、ぢつと手を見る」。

    大逆事件(社会主義者・幸徳秋水の死刑)後、社会主義に傾斜。

    岩手県

  • 彼の美しく退廃的な歌がすきだ。呪いのような柔らかい言葉も、それを踊るように使ってみせる啄木の感性もすきだ。彼のようになりたくて、でもなれないなと苦しみながら読む本。

  • たくぼくは良き

    性格悪そうなところも好き

  • 亡くなった母が好きだった本。読み返してみると、母の世界が目の前に広がる。またまだ、私には難しい世界。

  • 歌は明治においても、明星にしてもアララギにしても、文化人のものという感じだが、啄木のそれは生活に根差す。
    何となく、とか、心情をストレートに書きすぎるところは、表現として弛みがあると思う。が、人口に膾炙するのも歌の役割か。
    俳句で言うと、山頭火・放哉などの独自路線。だが、彼ら以上に国民的な文学者としての地位があるのは、その魂の叫びが熾烈で、また今でも分かりやすい、普遍性を有するからだろう。

  • 一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集
    (和書)2011年04月14日 23:31
    1952 新潮社 石川 啄木, 金田一 京助


    歌集など読んでみたい感じ、この本を手に取ってみました。歌集や詩集は気軽に再読してみることができて、愛読書にすることができます。

    良い歌集だと思いました。

  •  なかなかできていないのですが、図書館に行ったら、普段手に取る本とは出来るだけ違ったジャンルのものにも関心を向けようと思っています。
     とはいえ本書はあまりにも有名な石川啄木の歌集ですから、“何を今さら”という感は拭えず、かなりの気恥ずかしさがあります。
     「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」等の誰でもが諳んじられる歌が採録されている歌集ですが、この歳になるまで全編を読み通したことはありませんでした・・・。

全72件中 1 - 10件を表示

石川啄木の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×