一握の砂・悲しき玩具 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1952年5月19日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784101093031

感想・レビュー・書評

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  • 石川啄木 1886.2.20〜1912.4.13 啄木忌

    一時は、小説家を目指した啄木。東京に出てきた当時、森鴎外の主催する観潮桜歌会に三回参加しているとのこと。鷗外は、若手の後見に積極的だったので、石川の小説を2作雑誌社に掲載依頼をしていた。1作は、時間はかかったけれど掲載されて原稿料も手に入ったようだ。その作品がたぶん「病院の窓」かなと、読もうとしてというか少し読んだのだけど、わからなくて、一握の砂に戻る。

    第一歌集で、東京での創作 三行分 5部構成
    私が所有している本は、昭和の五十刷で、もしかしたら現在のものと違うところがあるかもしれない。
    まず、序文が薮野椋中。石川を用いて朝日歌壇を創設。そして、編者が金田一京助。金田一は、本当に同郷で石川をずっと心配して助けた親友だったようだ。wikiの石川啄木の写真は、左側に金田一と撮ったものだと思う。家庭の不幸はあったとしても、本人もなかなか定職に就かず、夢追いがちで、死ぬまで困窮していたが、他にも友人には恵まれていた。友人達もかなりお金を融通していたようだ。やはり、才能に対してですかね。

    「我を愛する歌」
    本人の気持ちを歌っている。教科書にもでてきた、
    “はたらけどはたらけど”や 
    “たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず”はこちらにはいる。啄木の妹さんが、兄は暴君だったので、絶対背負ってないという後日談があるらしいけど。
    “浅草の凌雲閣のいただきに腕組みし日の長き日記かな”は、もしかしたら、奥さんに読まれたくなかったローマ字日記のことかもしれない。イケナイ遊びの様子など記者時代の一時期、ローマ字で書いてあって、死ぬ時焼いてくれって奥さんに頼んだのだけど、奥さんローマ字読めて、更に出版されてしまったという日記ですかね。
    「煙」
    中学時代や故郷を詠んだ歌。
    “教室の窓より遁げてただ一人かの城址に寝に行きしかな”は、本当らしく、神童と言われた啄木も、最後はカンニング事件で退学。
    「秋風のこころよさに」
    秋を詠んでいます。古典的な感じ。
    「忘れがたき人」
    貧しい生活の家族や生活。
    「手袋を脱ぐ時」
    春の歌もあるけど、その他いろいろ。
    歌集なので、一度読んで、わかるわけもなし。
    我を愛する歌の中には、ブラックな悲観的な作品があるけど、若くて尖った感じが良いかな。
    もう少し、生活が、どうにかならなかったのかな。奥さんはよく耐えました。

  • 著者、石川啄木は、ウィキペディアによると、次のような方です。

    ---引用開始

    石川 啄木(いしかわ たくぼく、1886年〈明治19年〉2月20日 - 1912年(明治45年〉4月13日)は、岩手県出身の日本の歌人、詩人。「啄木」は雅号で、本名は石川 一(いしかわ はじめ)。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    啄木の処女歌集であり「我を愛する歌」で始まる『一握の砂』は、甘い抒情にのった自己哀惜の歌を多く含み、第二歌集の『悲しき玩具』は、切迫した生活感情を、虚無的な暗さを伴って吐露したものを多く含む。貧困と孤独にあえぎながらも、文学への情熱を失わず、歌壇に新風を吹きこんだ啄木の代表作を、彼の最もよき理解者であり、同郷の友でもある金田一氏の編集によって収める。

    ---引用終了


    本書で気になった歌を3つ挙げると、

    東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる

    みぞれ降る 石狩の野の 汽車に読みし ツルゲエネフの 物語かな

    はたらけど はたらけど 猶わが生活 楽にならざり ぢっと手を見る


    それから、啄木と親交のあった金田一京助、啄木の著作によく登場するゴーリキーやトルストイの生年没年は、

    ・石川啄木(1886~1912)
    ・金田一京助(1882~1971)
    ・ゴーリキー(1868~1936)
    ・トルストイ(1828~1910)

  • 歌の内容は何とも暗い。
    しかし暗いだけでなく、その中に日々の小さなあたたかな出来事や、それらを愛する気持ちが感じられて、啄木の筆致のいみじくがつたわってきた。
    生まれ故郷への哀愁も、貧困による喘ぎも、病による苦しみも、たくさん歌に詰まっている。
    哀しくもなるが、共感もしてしまう。
    豊富なあとがきや啄木自身と彼の歌の解説により、石川啄木をよく知りたいという方にはかなりおすすめです。

  • 歌集を読んでこんなに楽しいと思える日がくるとは。
    日記のように綴られている歌たち、沁みるなぁと思うものも多かった。
    改行をしたり、晩年の歌には「。」や「!」が出てきたりと、自由なところがまた面白い。

    石川啄木については無知だったけれど、あとがきと解説がかなり量があったので先に読んでから歌集を味わうことができた。

    啄木が対談で語った「一生に二度は返ってこない一秒が愛しく、逃がしたくない。それを表すには、形が小さくて手間暇のかからない歌が便利だ。歌という詩形を持っているということは、我々日本人の少ししか持たない幸福の一つだ。俺は俺自身が何よりも可愛いから歌を作る」といった内容が自分に響いた。いいな。


    ▼好きな歌
    不来方のお城のあとの草に寝て
    空に吸はれし
    十五のこころ

    青空に消えゆく煙
    さびしくも消えゆく煙
    われにし似るか

    ストライキ思ひ出でても
    今は早や吾が血踊らず
    ひそかにさびし

    水たまり
    暮れゆく空とくれなゐの紐を浮べぬ
    秋雨の後

    あめつちに
    わが悲しみと月光と
    あまねき秋の夜となれりけり

    呿呻(あくび)噛み
    夜汽車の窓に別れたる
    別れが今は物足らぬかな

    アカシヤの街樾(なみき)にポプラに
    秋の風
    吹くがかなしと日記(にき)に残れり

    堅く握るだけの力も無くなりし
    やせし我が手の
    いとほしさかな。

  • 昔、仕事の関係で、3年ほど小樽に住んでいたことがある。転居したての頃、花銀通りと呼ばれる近所の商店街を散策していると、かつて石川啄木が逗留したという建物があった。文士ゆかりの地は、北海道には珍しい。なんとなく嬉しくなり、啄木に親近感を覚えた。しかし、商店街を抜けた先にある小樽水天宮という神社で、境内に設置されていた啄木の歌碑を見たとき、覚えたばかりの親近感は遠くに吹き飛んだ。歌碑にはこんな歌が刻まれていたのだ。

      かなしきは小樽の町よ歌ふことなき人人の声の荒さよ

    …ちょっと待て。啄木、あんた小樽を田舎と思ってバカにしてるだろ? 文化と無縁の町と思ってるだろ? というか、この歌碑を税金で建てて後世に残すなんて、お人好しすぎるだろう小樽市!

    私がこの本に星2つしか付けていないのは、こういう私憤による所が大きい。しかし、この件を置いておいても、この歌集には色々と突っ込みどころが多い。虚飾を排し、生活実感から湧き上がる歌を目指すという方向性は素晴らしいが、「正直であればいいってもんじゃないだろう」と思ってしまうのは私に歌心がないせいだろうか?

      一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと

      どんよりとくもれる空を見てゐしに人を殺したくなりにけるかな

    芸術家として誇張表現はあるにせよ、相当ヤバい人であることは間違いない。もちろん啄木には後世に残る歌も多く、有名どころでは、

      東海の小島の磯の砂浜にわれ泣きぬれて蟹とたはむる

      はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢっと手を見る

      たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず

      友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ

      ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく 

    こういう秀歌も多いだけに、ブラックな歌とのギャップが凄まじい。もっとも、美しさも醜さも歌いあげたからこそ、啄木の歌は時代を超えて愛されてきたのだろう。しかし精神状態が良くない時には、闇の方に引きずりこまれてしまいそうだ。感応力の高い人は注意した方が良いだろう。

    ちなみに、啄木には酷評されてしまったものの、実際のところ小樽は、大正ロマンを感じさせる詩情ゆたかな町である。有名な小樽運河も良いが、標高の高い小樽公園や水天宮からは小樽港が一望でき、晴れた日には青々とした日本海が実に美しい。そう捨てたものではないことを、レビューの主旨からは外れるが、小樽市の名誉のために一言申し添えておきたい。

      声荒き町の美空に海あおし君よ嘆くな歌はなくとも

    • 佐藤史緒さん
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の...
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の季節に視察に来られると良いです。小樽の自然は本当に美しいのですが、厳しさと表裏一体なので…。雪の季節を乗り切ることが、あらゆる条件に優先します。あと、もしお車を運転なさるなら、駐車場は極力、屋根付きの所をお薦めします。私は3年間、青空駐車場で散々な目にあいました(^_^;)
      2018/05/28
    • 佐藤史緒さん
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連...
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連れて遊びに行ったものです。絵本、児童書のほとんどはここで調達していました。大人向けの書物が市内で1番充実してるのは、小樽駅ではなく、小樽築港駅に隣接しているウイングベイ小樽と呼ばれるショッピングモールに入っている本屋です。本の9割はこの2件で調達していました。
      以上、不動産屋さんでは絶対教えてくれない、ブク友ならではの情報提供でした〜(*´∀`*)
      2018/05/28
    • nejidonさん
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみた...
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみたいです・笑
      書店はスーパー・病院と並んで必要事項ですものね。
      小樽にはいつも雪の季節に行っておりました。
      懸念するのは、観光で行く数日間と、住み続けるのとは相当の差があるのだろうなということです。
      寒い地域に住んだことがなく、冬場のシミュレーションが出来ません・笑
      旅行者の私がダウンで厚着していても、現地の方は比較的薄着で過ごしていたのを覚えていますけどね。
      要は「慣れ」かもしれません。
      ハイ、車は大好きなので屋根付き駐車場は必須ですね。

      ブクログのコメント欄に書きこむことでもないなぁと思いながらのコメントでしたが、思わぬ収穫で喜んでおります。
      ありがとうございました。


      2018/05/29
  • 石川啄木が好きです。
    自分への圧倒的な自信、時折垣間見せる傲慢さ、このままでは生きたい道では生きていけない弱さ、人間としての甘さ、それでも圧倒的な魅力。

    すべてが含まれている彼の作品が好きです。

    『一握の砂』
    『悲しき玩具』

    両方を読み比べることで、彼のことを好きになる人もいれば、彼のことを嫌いになる人もいると思います。

    有名な作品だけではなく、まだ知らない作品に心奪われるかもしれません。

    今から石川啄木の作品に触れることができるのはうらやましいなぁ。

    もう一度、最初に読んだ時の気持ちで、石川啄木を読み返したいな…。

  •  こういうのを楽しみ、味わえる人間でありたいと思い読みました。悲しいことにそういう人間ではありませんでした。
     わかるやつはよかったですが、わからないやつはとことんわからなかったです。アホで辛い!

  • 啄木は5・8・5を好む、今でいう早口ラップ的な。もっと文字の多いやつも結構ある。しかし、書く内容は風景情緒やワビサビなどではなく、日記のようなリアルの日常。おそらくこの攻撃的なリズムで日常を打破したかったのであろう。現実への怒りが滲む、生の言葉たち。

  • 東北の旅行中であること、voicyフェスで安宅和人さんが良く読まれる人として話されていたので気になり再読。

    どこか懐かしくなる心に沁みる詩が溢れホッコリ。記憶力の悪いワタシでも記憶にある様な作品がチラホラ。

  • □内容
    啄木の処女歌集であり「我を愛する歌」で始まる『一握の砂』は、甘い抒情にのった自己哀惜の歌を多く含み、第二歌集の『悲しき玩具』は、切迫した生活感情を、虚無的な暗さを伴って吐露したものを多く含む。貧困と孤独にあえぎながらも、文学への情熱を失わず、歌壇に新風を吹きこんだ啄木の代表作を、彼の最もよき理解者であり、同郷の友でもある金田一氏の編集によって収める。 (amazonより)

    □感想
    私は収録されている歌を全て覚えているわけではありませんが、一番好きな歌人といえば?と問われれば、彼の名を挙げるでしょう。
    「人間の屑」などと揶揄されることもある啄木ですが、その人間くささや、日常の苦しみやささやかな喜び、虚無を綴った歌には共感を感じずにはいられない。
    お金がなければ青空文庫でも読めますが…車に積んで、ちょっとした時に読みたい本。

    (たけい)

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