一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 705
レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101093031

感想・レビュー・書評

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  • 昔、仕事の関係で、3年ほど小樽に住んでいたことがある。転居したての頃、花銀通りと呼ばれる近所の商店街を散策していると、かつて石川啄木が逗留したという建物があった。文士ゆかりの地は、北海道には珍しい。なんとなく嬉しくなり、啄木に親近感を覚えた。しかし、商店街を抜けた先にある小樽水天宮という神社で、境内に設置されていた啄木の歌碑を見たとき、覚えたばかりの親近感は遠くに吹き飛んだ。歌碑にはこんな歌が刻まれていたのだ。

      かなしきは小樽の町よ歌ふことなき人人の声の荒さよ

    …ちょっと待て。啄木、あんた小樽を田舎と思ってバカにしてるだろ? 文化と無縁の町と思ってるだろ? というか、この歌碑を税金で建てて後世に残すなんて、お人好しすぎるだろう小樽市!

    私がこの本に星2つしか付けていないのは、こういう私憤による所が大きい。しかし、この件を置いておいても、この歌集には色々と突っ込みどころが多い。虚飾を排し、生活実感から湧き上がる歌を目指すという方向性は素晴らしいが、「正直であればいいってもんじゃないだろう」と思ってしまうのは私に歌心がないせいだろうか?

      一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと

      どんよりとくもれる空を見てゐしに人を殺したくなりにけるかな

    芸術家として誇張表現はあるにせよ、相当ヤバい人であることは間違いない。もちろん啄木には後世に残る歌も多く、有名どころでは、

      東海の小島の磯の砂浜にわれ泣きぬれて蟹とたはむる

      はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざりぢっと手を見る

      たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩歩まず

      友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻としたしむ

      ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく 

    こういう秀歌も多いだけに、ブラックな歌とのギャップが凄まじい。もっとも、美しさも醜さも歌いあげたからこそ、啄木の歌は時代を超えて愛されてきたのだろう。しかし精神状態が良くない時には、闇の方に引きずりこまれてしまいそうだ。感応力の高い人は注意した方が良いだろう。

    ちなみに、啄木には酷評されてしまったものの、実際のところ小樽は、大正ロマンを感じさせる詩情ゆたかな町である。有名な小樽運河も良いが、標高の高い小樽公園や水天宮からは小樽港が一望でき、晴れた日には青々とした日本海が実に美しい。そう捨てたものではないことを、レビューの主旨からは外れるが、小樽市の名誉のために一言申し添えておきたい。

      声荒き町の美空に海あおし君よ嘆くな歌はなくとも

    • 佐藤史緒さん
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の...
      それはともかく小樽に物件、ですか! 詳しい事情がわからないので、私も下手なことは言えないのですが、小樽に通年住む予定なら、可能なら一度、雪の季節に視察に来られると良いです。小樽の自然は本当に美しいのですが、厳しさと表裏一体なので…。雪の季節を乗り切ることが、あらゆる条件に優先します。あと、もしお車を運転なさるなら、駐車場は極力、屋根付きの所をお薦めします。私は3年間、青空駐車場で散々な目にあいました(^_^;)
      2018/05/28
    • 佐藤史緒さん
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連...
      ちなみに花園町という所に住んでいました。例の北一ガラス本店が近い所です。そこから以前お話したキンダーリープまでは、車で約10分。よく子供を連れて遊びに行ったものです。絵本、児童書のほとんどはここで調達していました。大人向けの書物が市内で1番充実してるのは、小樽駅ではなく、小樽築港駅に隣接しているウイングベイ小樽と呼ばれるショッピングモールに入っている本屋です。本の9割はこの2件で調達していました。
      以上、不動産屋さんでは絶対教えてくれない、ブク友ならではの情報提供でした〜(*´∀`*)
      2018/05/28
    • nejidonさん
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみた...
      佐藤史緒さん、貴重な情報をいただいてありがとうございます!とっても嬉しいです。
      キンダーリープとウィングベイ小樽にだけ、真っ先に行ってみたいです・笑
      書店はスーパー・病院と並んで必要事項ですものね。
      小樽にはいつも雪の季節に行っておりました。
      懸念するのは、観光で行く数日間と、住み続けるのとは相当の差があるのだろうなということです。
      寒い地域に住んだことがなく、冬場のシミュレーションが出来ません・笑
      旅行者の私がダウンで厚着していても、現地の方は比較的薄着で過ごしていたのを覚えていますけどね。
      要は「慣れ」かもしれません。
      ハイ、車は大好きなので屋根付き駐車場は必須ですね。

      ブクログのコメント欄に書きこむことでもないなぁと思いながらのコメントでしたが、思わぬ収穫で喜んでおります。
      ありがとうございました。


      2018/05/29
  • ヤバイ、まず冒頭の献辞がヤバイ。今まで読んだどの献辞よりも心打たれる。

    『-また一本をとりて亡児真一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生まれたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。』

    貧困と死別によって着想を得た短歌はどれも哀愁が溢れる。秋に読んで正解だった。

  •  なかなかできていないのですが、図書館に行ったら、普段手に取る本とは出来るだけ違ったジャンルのものにも関心を向けようと思っています。
     とはいえ本書はあまりにも有名な石川啄木の歌集ですから、“何を今さら”という感は拭えず、かなりの気恥ずかしさがあります。
     「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」「たはむれに母を背負ひてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」等の誰でもが諳んじられる歌が採録されている歌集ですが、この歳になるまで全編を読み通したことはありませんでした・・・。

  • 暗いなーと思いつつ、誰しもが持つような負の感情がうまく表されていて、共感できるところもありました。

  • まるで日々の出来事を綴る日記のような短歌集。そのせいか比較的読み易い。

    巻末の年表に目を通し、啄木の境遇に思いをはせながら読むことを薦める。生活苦、望郷の念、思い人、そして病気、様々な作者の思いが身にしみる。

  • 書店でふと気になって購入。最初に読んだのはたしか小学校5年生のときだから、29年ぶりくらいか。まあ、小学生では、この作品はちょっと味わうのは難しかったな、、(笑)

    神童といわれた田舎の青年が家庭を持ち、故郷を離れ、仕事を転々とし、困窮し、病に倒れる。本当は小説家になりたかったという啄木が、気休めに書いていた短歌を集めたのがこの名作です。故郷を思う気持ち、両親、友人らとの懐かしい日々を懐かしむ気持ち。いや、今の年齢になって読むと、共感できる歌も多く、沁みますね。

  • こんな乾いたかなしいひとはランボーの他知らない。
    ランボーは宇宙に突きぬけることで、戻らずに行ってしまったが、この石川啄木は違う。どこまで行ってもおんなじところに帰って来てしまうのだ。だから、どうしても乾いてしまう。彼の心を癒やすものはなにもない。書くことさえも、ときには重たく彼を掴まえる。ここではないどこかへ。彼はそんな場所を探し求めて歩いていたのかもしれない。
    彼の生涯には、貧困という大きな問題が何よりもつきまとっていたのかもしれない。しかし、彼はそれさえも、突き抜けて歌い続ける。彼にとって歌うことはそのくらい、自分自身であったからだ。ならば、どうして、自分は歌わずにいられないのか。彼はその驚きを乗り越えるため、どんなに苦しくとも歌う。苦しさまでもが彼という歌の前では、ことばに変わってしまうのだ。歌人というより、歌そのものだといってもいい。
    だから、彼にはランボーのように筆を折ることができなかった。命続く限り彼は書き続けることで、書くことに反抗し、跳び出そうともがく。彼の歌に流れる息詰まるような感覚は、どこにも行くことのできぬそんな自分へのいら立ち、諦め、そういうものでできあがっている。

  • 一握

  • 【本の内容】
    啄木の処女歌集であり「我を愛する歌」で始まる『一握の砂』は、甘い抒情にのった自己哀惜の歌を多く含み、第二歌集の『悲しき玩具』は、切迫した生活感情を、虚無的な暗さを伴って吐露したものを多く含む。

    貧困と孤独にあえぎながらも、文学への情熱を失わず、歌壇に新風を吹きこんだ啄木の代表作を、彼の最もよき理解者であり、同郷の友でもある金田一氏の編集によって収める。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    「真白なる大根の根の肥ゆる頃 うまれて やがて死にし児のあり」。

    死にし子を歌う一連の絶唱は、『一握の砂』の末尾に付加されたものだ。

    啄木を教科書でしか知らない人は、ぜひ全体を味わってほしい。

    日本語の至宝である。

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